書名 70代で死ぬ人,80代でも元気な人
著者 和田秀樹
発行所 マガジンハウス新書
発行年月日 2022.03.31
価格(税別) 1,000円
● 出す老人本が片っ端からベストセラーになっている感のある和田秀樹さんの1冊。本書で何が説かれているかというと,「元気なうちはなんでもやって生活の自由を楽しむ。そういう人のほうが老化を予防でき,脳を刺激して認知症の進行も遅らせることができます。「何事も用心するに越したことはない」と受け止めていろいろな制限や制約を生活の中に持ち込んでしまうと,それだけ老いを加速させることになりかねないのです」という,174ページにある文章に集約できそうだ。
● 和田さんの本がベストセラーを連発するほどに読まれているとすると,定期健診を受診する人は減っているんだろうか。健診なんて意味がないという意見だからね。むしろ,薬を強制することになって害を為すとも読めるくらいだ。
現役組は強制的に受けさせられることになるが,引退組はどうしているんだろう。受けたければ現役のときと同じくらいの自己負担で受けられるようだ。しかし,ぼくは受けたことはない。これからもないと思う。
● ちなみに,現役最後の年に受けた健診で糖尿病だと指摘された。食事だの運動だのに気をつけるというレベルを超えてはっきり治療が必要だ,と。
やむを得ず近くの医院に行ったんだけど,そのうちにコロナになってね,病院通いは止めた。現在に至る。結果的に和田説に従ったことになる。
● 以下に転載。
70代はむしろ,奔放なくらい自由に生きたほうがいいと思っています。(中略)70代を自由奔放に過ごした人なら,80代になっても知的好奇心を失うことなく,多彩な人間関係を保つことができます。刺激的な毎日を過ごせるのです。(p5)
若いときなら少しぐらい血圧や血糖値が高くても薬は飲まなかったのに,自分でも「用心するに越したことはない」と受け入れるのも老いのはじまりなのかという気がします。(p35)
でもそのとき,「だからアクティブにならなくちゃ」と考える人はどれくらいいるでしょうか?(中略)健康を気づかった節制生活は,みずから「老い」を早めることになるかもしれません。「健康でいたい」「長生きしたい」と願う気持ちが逆にその人を老け込ませてしまうとしたら,何だか皮肉な話です。(p38)
90歳過ぎても元気な人は,用心深く生きてきたから元気なのではなく,あるいはとくに身体を鍛えたわけでもなく,自分がやりたいことをやって毎日を楽しんで暮らしてきた人が多いのです。(p44)
心がけていただきたいのは,とにかく年齢を十把一絡げにしないことです。(中略)老いには個人差があるのですから,自分の好奇心ややってみたいことにブレーキをかけなくていいのです。(p46)
体力が半分に落ちたのなら,倍の時間をかければできる計算です。そこで「やってられないな」と考えるのではなく,「面白いな」と考えてみてはいかがでしょう。実際,面白いのです。(中略)のろのろやってみると「そうか,こういう仕組みだったのか」とか「この作業がポイントだったのか」と気がつくことが出てきます。(p50)
70代になると,一人が似合ってくるのです。べつに寂しそうでもないし,拗ねているようでもないし,かといって気負いも緊張している様子もありません。ごく自然体です。一人でいることが様になっています。(p56)
老いてはじめて似合ってくる世界や様になる世界もあります。そのことに気がつけば,格好いい70代でありたいという気持ちも生まれてくるはずです。(p57)
老化のなかには自分で呼び込んでいるものや,進めているものがたしかに含まれているような気がします。「老いは気持ちから」というのはやはり否定できないのです。(p88)
70代であっても颯爽としていなければいけません。(中略)贅沢が絵になりますし,フォーマルなファッションもカジュアルなファッションも似合う年代なのです。(中略)おしゃれは他人に気がついてもらってこそ気分がいいのですから,行動的で人付き合いにも積極的になったほうが張り合いがあります。(p95)
70代くらいになるとたいていの人が自覚することですが,わりと気楽に他人に声をかけることができるようになります。(中略)人見知りしなくなるのです。(p97)
妻は夫が考えるほど妻の役割にはとらわれていません。むしろそこから抜け出せたことをずっと楽しんでいました。(中略)したがって,男性はとにかく閉じこもらないで外に出る,人付き合いでも旅行でも,自分が楽しめる世界を見つけることです。70代ならまだまだそれができる年齢なのです。(p108)
高齢になると細胞も老化してきますから,代謝が悪くなってしまうのは仕方ありません。そこで気がついていただきたいのは,「だからこそ,食べ物でエネルギーを補充しなければいけない」ということです。(p133)
高齢になっても自分が親しんできた世界,やり続けたいと思っていることは何でもできる。レベルを下げる,楽な方法を考える,器具やグッズの力を借りる,ときには誰かの手を借りる・・・・・・どんな方法でもいいので,とにかく諦めないことです。(p149)
唯一絶対の正解がない限り,自分の考えや答えも一つの見方として言葉にしていいはずです。(中略)私は,そのことに10年くらい前に気がつきました。それまでは,勉強するのは「答えを出すため」だと思っていました。(中略)勉強するのは答えを求めることだと思っていました。ところがだんだん,「どんなものにも答えはない」と考えるようになりました。(中略)そうだとすれば,勉強するというのは,さまざまな可能性を求めることになってきます。(中略)いろいろな可能性を探っていくのが勉強と考えれば,終わりはなくなります。(p154)
90歳を過ぎたお婆ちゃん同士が,昔話で盛り上がっています。何が楽しいのか,笑ってばかりいます。(中略)老いの極意がもしあるとすれば,ああいう無邪気さや,屈託のなさかもしれないとときどき思うことがあるのです。(p170)
早期発見や早期治療は高齢者にとってはかならずしも幸せな晩年を約束しない(p190)
朗らかに暮らせるだけで免疫細胞が元気になりますから,それがそのままガン予防にも繋がってくるのです。(p195)
いま私は60代ですが,10年後,20年後と考えていくと,わりと単純な答えしか出てきません。まず,「楽に生きたい」ということです。たとえ,ガンや認知症になったとしても同じです。(中略)つらい闘病生活をするくらいなら寿命と諦めて生活の質を落とさないで暮らしていけばいい(p205)
高齢になってくると,少し動いただけでつらくなってきます。そこで頑張る必要があるでしょうか。(中略)義務感や,自分を追い込む考え方からは解放されていいのが高齢になるということだと思います。(p207)
人生のピークをどこに持っていくかというのは案外,大事なテーマのような気がします、若いころは,どうしてもそのピークを早い時期に迎えたいと考えてしまいます。(中略)ピークが遅ければ遅いほど,下り坂はありません。死ぬ直前まで幸せな人生なら,輝いたままでピークを終えることができるのです。(p211)
