書名 コテンコテン流 クラシック超入門
著者 砂川しげひさ
発行所 東京書籍
発行年月日 2000.07.19
価格(税別) 1,200円
● 砂川自在流の音楽エッセイ。読み方は自由。
● 以下にいくつか転載。
クラシック・ファンは基本的に人が称賛する曲には異を唱える輩だと思ったほうがいい。(中略)音楽評論家の新聞評でも,ベタボメの文章なんか発表したら,クラシック・ファンから総スカンを食うのだ。(中略)世渡りのうまい評論家はどこかをホメれば,かならずどこかをケナスのを旨としている。(p12)
ぼくは毎日のようにこの公園をウォーキングしている。ウォーキングの理由は,健康のためもあるけど,音楽を聴くためでもある。(中略)で,リスニング・ウォークに何を聴けばいいか。(中略)いちばん適しているのはバロック音楽。強弱もあまりなくまんべんなく聴こえるのがいい。(p42)
ぼくは,なんでいまだにピアソラがこんなに持ち上げられているのかさっぱりわからないのだ。たかがアルゼンチンのダンス音楽ではないか。(p77)
よくオーディオ雑誌などで,超高級スピーカーやアンプのある部屋を紹介したカラー写真を見るが,あれは,音楽ファンというより,オーディオ・ファンだろう。純粋の音楽ファンとは区別したほうがいい。(中略)ある有名な音楽評論家の重鎮などは,CDが出現する前まで,畳の間の片隅でモジュラー型の電蓄!で音楽を聴いていたという。ほんとうはそういうので音楽を十分に堪能できるのだ。(p82)
フルトヴェングラーの「ドン・ジョバンニ」なんか,ずっと昔にビデオ・テープを買ったが,映像と音の悪さでうんざりしていた。それがDVD版になると,なんて鮮明な映像とクリアなサウンドになっていることか。(中略)とにかくオペラは高いチケットをはたいて行かなくても,十分タンノウできるという結論に達したのだ。(p136)
さて,クラシック紳士淑女諸君。クラシックをずっと聴きつづけてきた君たち。こむずかしい音楽学者のご託や,ロバ耳評論家に惑わされることなく,ひたすら自己の感性にしたがって,クラシックを楽しんできたファン諸君。(p153)
書名 コテン氏のラストコンサート
著者 砂川しげひさ
発行所 朝日新聞社
発行年月日 1990.11.30
価格(税別) 1,126円
● 砂川さんの音楽エッセイをもう1冊。
● 以下にいくつか転載。
この間,念願のDATを買った。これがうわさどおりのいい音で,いまこれで昔録ったオープンテープからのコピーを楽しんでいる。また,BSからのPCM録音はすばらしく,またエアチェック病が再発する気配だ。(p2)
また懐かしい用語が出てきた。DAT,マニアのものだったと思う。DATとはそもそも何か? Wikipediaの説明がわかりやすい。「音声をA/D変換してデジタルで記録,D/A変換して再生するテープレコーダーまたはそのテープ,また特にその標準化された規格のこと」。パンピーには関係ないものでしたね。
パンピーはレンタルショップでCDを借りて,CDラジカセでカセットテープにダビングして,それだけで満足するものだった。それだって便利になったなぁと思っていたものだ。
古代ギリシャ人は人間の裸像をたくさん彫った。人間の肉体こそ神がつくりたもうた最高の美,と彼らは考えた。(中略)この肉体賛美こそが,現代のバレエにも基本的なところで,つながっているのではないだろうか。(p28)
やっぱり,消え去ったようなオペラを掘り出すなんて,油田を掘り出すのと同じくらいむつかしそう。時間は正しい審判をする。(p98)
大編成の管弦楽を聴いて脳天をピカピカさせているクラシック・ファンがいるとすれば,そいつはガキである。(中略)ピアノの独奏会で花束をかかえて舞台の最前列ですわっているのは,雀の卵。弦楽四重奏曲にじっと耳を傾けながら,眉間に深いシワをよせて,否! などとほざいているのは,田舎イモ。(中略)やっぱりクラシックのいきつくところは室内楽ではないでしょうか。(p154)
目の前の名人たちは,「おれたちは好きでやってんだ。君たちが聴こうが聴くまいがそんなことおいら知んないよ」といった純粋楽団なのだ。(p156)
書名 コテン氏の面白オペラ
著者 砂川しげひさ
発行所 朝日新聞社
発行年月日 1989.01.10
価格(税別) 1,000円
● 約30年前のもの。砂川さん,本職は漫画家。本書の装丁も手がけているし,カットも描いている。
一方で,クラシックマニア。
● アカデミックなところで勉強しちゃった人の評論は,ぼくのような素人には歯が立たないうえに,読んでてあまり面白くない。
砂川さんのものは,面白い。向上心があって読んでいるわけではないから,面白ければいいし,面白くないものは読んでも仕方がない。
ぼくがしているのは,消費としての読書だから。何かに役立てようと思って読んでいるわけではないから。
● 以下にいくつか転載。
これは素人考えかもしれないが,オペラは出だしが勝負という気がする。序幕で「アッ」と思わせれば,その舞台は九九パーセント成功だ。(p30)
ぼくは前々から,この譜めくり人にもっと脚光を当ててしかるべきと考えていた。(中略)われわれはこの任につく大半が女性である事実を忘れている。しかも美女が多い。(p44)
ある有名なピアニストの演奏会で,突然,赤ん坊が泣き出した。あんまり泣くので,会場の係が外にでるように忠告した。すると若い母親は「子供にいい音楽を聴かせてなにが悪い」と逆に食ってかかった。そのとき偶然に隣の客席に居合わせた保母さんが赤ん坊を抱いて外に出た。そして演奏の間じゅう,そのコをあやし続けた。演奏が終わると,母親は赤ん坊を受け取って,彼女に礼もいわずに立ち去ったという。(p60)
これ,本当に実話なんだろうか。
今どきの小学校では運動会の徒競走で順位をつけない,ゴール前であとから来る人を待って,みんなで手をつないでゴールするのだ,という話がかつて流行った。
しかし,その光景を実際に見たという人は一人もいない。自分が勤務している小学校ではそうしていたという教師もいなければ,自分が通っている小学校ではそうしていたという児童もいなければ,うちの子どもが通っている小学校の運動会ではそうしていたという保護者もいない。
都市伝説的なものだろう。いかにもありそうだと誰かが作った話が燎原の火のごとく広まった。
上の母親の話もそれと同じなのじゃないかと思うんだがね。いかにもいそうだという前提で,誰かが作った話が広まったのではないのかねぇ。
安い,安い。こんな調子で十枚借りた。これらを,わが家の,PCMプロセッサーとビデオ・デッキを駆使して完全コピーをする。(p110)
PCMプロセッサーかぁ。あったねぇ,そういうの。CDをビデオテープにコピーするやつ。当時は,とんでもなく高度な技術を駆使した器械なのだろうと思っていた。ぼくには高嶺の花でもあった。
今は,パソコンに吸いあげることができる。装備も時間も格段に短縮された。しかも,コストが安くなった。うたた感慨にたえない。いい時代に生きていると思う。