読書で人生が変わるなどということは,まずもってないものでしょう。読書が人を賢くすることも,たぶん,ないと思います。 読書は安価でお手軽な娯楽であり,時間消費の手段です。それでいいというより,娯楽でない読書は可能な限り避けたいものです。 娯楽としての読書があれば,老後もなんとかしのげるのではないでしょうか。というか,しのげると思いたいわけですが。
2013年1月17日木曜日
2013.01.17 福岡伸一 『フェルメール 光の王国』
書名 フェルメール 光の王国
著者 福岡伸一
小林廉宜(写真)
発行所 木楽舎
発行年月日 2011.08.01
価格(税別) 2,200円
● 著者はベストセラー,『生物と無生物のあいだ』で知られる生物学者。もっとも,ぼくはまだ読んでいないんですけどね。
その著者がフェルメールを訪ねて,各国の美術館を訪ねる。
● 著者がフェルメールの真骨頂とするのは「光のつぶだち」。本書でも引用されているが,赤瀬川原平さんの視点(視覚のレンズ効果)とほぼ同じものと言っていいだろうか。
というより,フェルメールといえば,誰もが指摘することなのか。
● カメラ・オブスクーラ(針穴写真機に似た箱形の光学装置で,風景や部屋の配置や遠近を正確に二次元平面に写し取ることができる)の話題を紹介しながらも,フェルメールと同時代にデルフトに住んだレーウェンフックに著者は注目する。「フェルメールは,レーウェンフックの作った顕微鏡のレンズを覗き,おそらくそこで「光のつぶだち」を発見したのではないか」(p18),と。
● オランダから始まって,アメリカ,フランス,イギリス,アイルランド,ドイツ,オーストリアと,フェルメール作品を所蔵している美術館を巡っていく。
その地にゆかりの哲学者や科学者を紹介しながら話をつないでいくところも面白い。オランダではスピノザ,ニューヨークでは野口英世,パリでは数学者のガロア,ロンドンではワトソンとクリック,アイルランドではライアル・ワトソン,ベルリンではルドルフ・シェーンハイマー。
フェルメールを深く掘っていくというよりは,横に横に話をつないでいく感じ。
● つまり,読みものとして楽しめばいいのだと思う。上質なエッセイ(あるいは紀行文)だ。もともと,ANAの機内誌「翼の王国」に連載されたものだ。読みやすいのも道理。
全編に散りばめられている写真もいいですな。特に,額縁まで眺められるのは,ひょっとしたら本書だけかもしれない。
● とはいえ,読了後はいっぱしフェルメール通になった気分を味わえる。
フェルメールについての著者の一応の結論は,「この世界にあって,そこに至る時間と,そこから始まる時間を,その瞬間にとどめること。フェルメールは絵画として微分法を発見したのである」(p238)ということ。
2013年1月14日月曜日
2013.01.13 赤瀬川原平 『赤瀬川原平が読み解く全作品 フェルメールの眼』
書名 〔新装版〕赤瀬川原平が読み解く全作品 フェルメールの眼
著者 赤瀬川原平
発行所 講談社
発行年月日 2012.06.15
価格(税別) 1,800円
● 本書に掲載されているフェルメールの作品は36点。彼の「全作品」である。それに赤瀬川さんが解説を付けているわけだ。
● 彼のフェルメールに対する視点は,本書の冒頭「はじめに」で明らかにされている。
フェルメールの絵は光学的で,神秘的である。(中略)二律背反というか,暖かいのに冷静,穏やかなのに研ぎすまされている
筆づかいは要所要所かなり粗いのに,描かれた絵の本物そっくり感はぞくっとするほどだ。でも何にぞくっとするのだろうか。一つは視覚のレンズ効果が描かれていることだと思う。
カメラ以前に,フェルメールはその絵の中にレンズ効果を描き込んだのである。
ふつうならもう少し,そのポーズなり表情なりを,“絵らしく”安定して落ち着いたところを描くものである。でもフェルメールの絵は違う。人々の生活の生の瞬間をすぱっと正確に切っている。その時間の切り取り方のところでも非常に写真的で,大胆である。画面に描かれた人物の,とくに複数の場合の互いの心理関係などが,それぞれの動作や表情の上で,見事にその瞬間に凍結されている。● 「中断されたレッスン」でも,「愛や身分によって視線の強さや屈折度が変わる,そういう視線そのものの振舞いをとらえることが,フェルメールの興味なんだと思われてくる」(p30)という。
● 「娘の頭部」では,「生きた表情が画布に完璧に再現されると,それだけでおのずから霊的な力がやどるのではないかと,そんなことを考えさせる」(p41),と。
● しかし,「信仰の寓意」に対してはこんなふうにも。
地球儀を股にかけた格好,床の上のかじったリンゴ,血を吐いて転がる蛇。マンガ的というか,劇がみたいだ。(中略)お手のものの手前のカーテンも,何だか安っぽいコピー商品みたいだ。やはり絵の中に思想が入ると,フェルメールでもこうなる。(p88)
2012年12月25日火曜日
2012.12.22 利倉 隆 『イメージの森のなかへ フェルメールの秘密』
書名 イメージの森のなかへ フェルメールの秘密
著者 利倉 隆
発行所 二玄社
発行年月日 2008.02.25
価格(税別) 1,900円
● 絵画鑑賞に関してまったくの素人に向けて,こういうふうに鑑賞すればいいんだよっていう感じで,ガイドしてくれるありがたい本。
● ヨーロッパの絵画を見るにあたっては,聖書は旧約新約とも読んでおかないといけないようだ。できれば,ギリシア神話についても承知しておいた方がいい。かの地における教会や修道院の存在感を実感できればさらにいいのだろう。
● 本書で紹介されている作品は次のとおり。
絵画芸術の寓意
真珠をはかる女
牛乳を注ぐ女
真珠の首飾りの女
手紙を読む青衣の女
手紙を書く女と召使い
レースを編む女
デルフトの眺望
真珠のネックレスを持つ女
天文学者
窓辺で手紙を読む女
音楽の稽古
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