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2014年12月10日水曜日

2014.12.06 松井忠三 『無印良品の,人の育て方』

書名 無印良品の,人の育て方
著者 松井忠三
発行所 KADOKAWA
発行年月日 2014.07.10
価格(税別) 1,300円

● 『無印良品は,仕組みが9割』に続いて本書も読んでみた。無印が持っているマニュアルについて,その効用を説いたもの。
 本書は,無印の人事について紹介しつつ,著者の意見を述べたもの。

● 入社3年目の社員に店長をやらせる。海外には何もないところに一人で行かせる,しかも,いきなり行かせる。社員とすれば,語学をはじめ,事前の準備をする時間はない。
 つまり,修羅場を体験させる。
 無印良品では,入社して三年前後の社員が店長になっていきます。 (中略)自分より年上で,自分より経験年数の多いスタッフもいます。ところが自分自身は,すべての仕事ができるようになったとは言えない状態です。 そのようななかで,どのようにリーダーシップを発揮し,現場を回していくか。 これが新入社員にとっての最大の修羅場体験になります。(p93)
 自分が務まるかといえば,今の自分では100パーセント無理。若い頃の自分だったら? やはり無理だったろうな。

● そうした修羅場体験をさせるのも,人を成長させるためだ。座学や人の話を聞く形の研修ではダメだ。
 自分を成長させるためには,どうすればいいのか。 資格をとったり,ビジネススクールなどに通う人もいますが,そういった場で身につけられる知識やスキルでは,それほど成長できません。実体験を伴っていないからです。 自動車の免許を取るとき,教習所でさまざまな理論を学び,運転の基本も学びますが,実際に上達するのは,免許を取って一人で道路に出るようになってからでしょう。(p20)
● そうした修羅場体験で何が得られるのか。つまるところ,生き抜く力,何とかする力。これさえあればどうにかなるという究極を支えるもの。それを練るには,そうした修羅場を実地に体験するしかないというわけだろう。
 どんな時代でも生き抜く力を養うには,何とかする力を磨くしかないのです。(p124)
 むしろ失敗してから生き方や働き方を変えた人のほうが,底力のある社会人に成長します。(中略)負け知らずの人より,負けを知っている人のほうが,ビジネスの世界では圧倒的に強いと断言できます。(p113)
● 無印では,全員を社長が務まる人材に育てようとしているのだろうか。新人に対してマネジメント研修も行う。
 浅く広く知識やスキルを持っている程度のゼネラリストでは通用しません。自分が本筋としてやれる仕事を二つぐらい持ち,それに関しては専門度を高めるのが理想的なゼネラリストです。 一つの分野の知識やスキルを深めるスペシャリストは,一見強いように感じますが,ともすれば自分の部署のことしか考えられない,部分最適の社員になってしまうのです。(p34)
 マネジメント,つまり経営の基礎は,普通は入社してから一〇年以上経った中堅以上の社員が教わるものでしょう。それを私たちは,入社一年半の新入社員に教えています。 なぜなら,リーダーシップはいつでも誰にでも身につけられるものだと考えているからです。(p89)
● 「リーダーシップはいつでも誰にでも身につけられるものだと」しても,リーダーはかくあるべしと固定的に考える必要はない。時と場によって,好ましいリーダーのキャラクターは違ってくる。
 とはいえ,リーダーが心がけなければならないことがらは,もちろんある。
 私はリーダーに理想像というものはないと考えます。(中略)だからこそ,自分なりのリーダーシップを見つけることが求められるのです。 リーダーに求められるタイプは,時代やその時の文化,会社の組織や性質と,あらゆる変数の中で変わっていきます。(p160)
 リーダー論やマネジメント論を求める人は多く,書籍も多く出ています。しかし,一番大切なのは「仕事にかける思い」です。(p162)
 「自分は完璧だ」と思い込んでいる人は,視野が狭くて人を受け入れられません。そして,人を受け入れない人は,人に受け入れてもらえるはずはないでしょう。そういう人がリーダーに向いていないのは,言うまでもありません。(p183)
 自分の考えを相手に伝えるより,相手の考えを受け止めるほうが重要なのです。(p118)
 リーダーと,先生などの人の上に立つ人は,似て非なるものです。先生や師匠の立場の人は,能力的にも人間的にも勝っていないと生徒から信頼されないでしょう。けれども,リーダーは完璧でなくても部下や後輩はついてきてくれます。(p184)
 上司に対して部下が進言するのは,それなりの理由がなければなかなかできないでしょう。部下の反論は聞いてみれば正しい場合が多く,もしそれが“強めの反論”であれば,相手が正しい場合が八割以上だと私は思っています。(p196)
 大事なのは小さな正論ではなく,大局観をもって物事を見るということです。「目上の人を敬うべきだ」「自分のほうが経験年数は長いからよく知っている」 そんな小さな正論をふりかざしても,部下は不満を持ち,上司について行く意欲をなくすだけでしょう。(p198)
 最近は飲み会などを苦手とし,仕事でだけ付き合えばいいというドライな考えの若者も増えています。それは最近の若者がコミュニケーションを取るのが苦手だからという理由もあるかもしれませんが,コミュニケーションの楽しさを知らないからかもしれません。 飲み会に行っても上司や先輩が仕事のグチをこぼしたり,自慢話をするようでは,聞いている側は面白くないでしょう。それで敬遠する若者も多いのではないでしょうか。 それなら,上司や先輩が面白い話をすれば喜んで参加するということです。飲み会の参加者が集まらないリーダーは,自分自身に人徳がないのかもしれません。(p211)

2014年7月9日水曜日

2014.07.09 松井忠三 『無印良品は,仕組みが9割』

書名 無印良品は,仕組みが9割
著者 松井忠三
発行所 角川書店
発行年月日 2013.07.10
価格(税別) 1,400円

● 無印良品には,店舗で使っているMUJIGRAMという2,000ページに及ぶマニュアルと,本部の業務をマニュアル化した,6,000ページを超える業務基準書がある(らしい)。
 なぜそれを作ったのか。きっかけは2001年の38億円の赤字を建て直すためだったという。

● そのなぜかについて,具体的には次のように述べられている。
 これほどの膨大なマニュアルをつくったのは,「個人の経験や勘に頼っていた業務を“仕組み化”し,ノウハウとして蓄積させる」ためです。 ではなぜ,個人の経験と勘を蓄積させようとしたのか。 「チームの実行力を高めるため」というのが答えの一つです。仕事で何か問題が発生したとき,その場に上司がいなくても,マニュアルを見れば判断に迷うことなく解決できる。たったこれだけのことでも,仕事の実行力が生まれ,生産性は高まるでしょう。(p14)
 当時のお店づくりは,個人のセンスや感覚に頼っていました。たしかに素晴らしい感性を持つ店長がいて,その店長のもとではいい売り場ができていました。 ところが,そういう“一〇〇点満点”のような店長は,一〇〇店舗のうち,二~三店舗ぐらいの割合でしかいません。半数以上の店は,標準以下の“六〇点の店づくり”をしている状態だったのです。(中略) 今まで個人のセンスや経験に頼っていたことを企業の財産にできるように,合理的な仕組みをつくることが有効でしょう。これが,MUJIGRAMをつくろうと思った瞬間でした。(p38)
● 無印良品はもともとセゾンの堤清二氏の創設にかかるものだった。が,著者はセゾンのやり方に批判的。セゾンの風土が経験至上主義だったとふり返り,また堤氏に企画を通すための準備作業の不合理さを嘆き,「セゾンの常識は当社の非常識」だと言う。
 「経営」はコミュニケーションの量とスピードで決まります。コミュニケーションを阻害する大量の企画書は,経営の実行力を著しく落としてしまうのです。(p192)
 時代の風というのがあるのかもしれない。今は著者のやり方がいいのだとしても,経験至上主義がフィットしていた時代があったのだろう。時代を超えた普遍的なやり方というものがあるわけではないように思う。
 実際,セゾンは一世を風靡したのち,時代の風向きが変わったのに,それに対応できなかったために,沈んだのだろうから。

● ぼくが組織に対して苦々しく思っていることが二つあった。ひとつは,やらなくてもいい議論が幅を利かせていること。もうひとつは,報連相をもてはやす風潮。
 そこのところをピッと指摘してくれているので,気分がよくなった。
 私は,「会社に議論は似合わない」と考えています。 社員同士で丁寧に議論して,方向性を決めるのではなく,方向はトップが決め,方向が定まったら,実行の全エネルギーを注ぐような身軽さをもっていなければなりません。 そのスピード感や判断力は,仕組みによって磨かれていきます。 卑近な例ですが,たとえば会議をペーパーレスで運営する仕組みにするだけで,会議の準備作業を大幅に省略できます。(p35)
 行き過ぎたホウ・レン・ソウは人の成長の芽を摘んでしまう行為さと,私は考えています。常に上司が仕事に絡むので,部下の自主性や自分自身で創意工夫しようとする意識が育たなくなるのです。(p177)
 行き過ぎたホウ・レン・ソウは社員の意識を自分の部署に縛り付けてしまうので,内向き思考になり,“部分最適”の温床となります。全体最適の視点を養うためにも,リーダーは手綱を握りすぎないことが大切なのです。(p179)
● マニュアルに対しては,創造性を殺すとか,受け身になるとか,自分で考えなくなるとか,わりとマイナスっぽい言辞が呈されることが多いと思う。そうではないと著者は言う。
 どんな作業にも「うまくいく法則」があります。それを見つけ,標準化するのです。(p16)
 「それぐらい,口でいえばわかるのでは?」と思われるようなことまで明文化する。これは“仕事の細部”こそ,マニュアル化すべきだという考えがあるからです。(p24)
 マニュアルは,仕事に潤いさえ与えてくれます。 無印良品のマニュアルは,現場で働くスタッフたちが「こうしたほうが,いいのに」と感じたことを,積み重ねることで生まれた知恵です。(p25)
 標準をつくらないうちに改善しようとしても,迷走するだけです。何事も基本なくては応用がないのと同じで,無秩序な創意工夫は力になりません。(p74)
 マニュアルは組織だけでなく,個人にも必要でしょう。マニュアルに沿った仕事をすると受け身になるといわれますが,それは他人がつくったマニュアルをそのままなぞっているからです。自分のマニュアルをつくれば,自分の仕事を俯瞰できるので,問題点や課題を見つけられます。(p198)
● マニュアルを作ってもうまくいかないことがある。それにはそれなりの理由がある。それはもちろん承知のうえだ。そのうえで対策を施す。
 仕事は「生き物」です。日々,変化し,進化していきます。「今の仕事のやり方」が,来月もベストなやり方であり続けることはありません。 ところが,仕事のやり方を一度決めてしまうと,それに満足してしまい,しばらくは見直しもしないケースが多いようです。(中略) これが,マニュアルが使われなくなる最大の理由でもあります。せっかく決めた仕事のやり方が,すぐにビジネス環境や仕事の現場に合わなくなってしまうからです。(p92)
● 業績が悪化すると,たいてい社員の危機意識が足りないからという声があがる。社員の意識を変えなければ,と。
 しかし,意識を変えることから着手すると巧くいかない。まず,仕組みを作って,それに沿って動くことによって,業績の改善を図る。そうすれば,社員の意識も変わってくる。意識が変わるのは最後。
 そもそも,言ったって通じないのが人というものなのだ。そのあたりを具体的に指摘するわけだが,このあたりは現場で体験した人ならではの説得力がある。
 社員,あるいは部下の意識をどう変えればいいのか。(中略) たいていは教育から買えようとして,外部からコンサルタントを招き,社員に研修を受けさせて,意識改革をしようとします。 しかし,それでうまくいく試しはありません。(p46)
 そもそも,ビジネスモデルが世の中のニーズと合わなくなっているから業績が悪化しているのであり,社員の意識だけを変えようとしても根本的な解決にはなりません。 ビジネスモデルを見直して,それから仕組みをつくっていく。 その仕組みに納得して,実行するうちに,人の意識は自動的に変わっていくものなのです。(p47)
 人は一度の失敗からは学ばない,二度失敗してようやく学ぶものなのだ(p60)
 言葉でいくら言っても,人は納得しないと動かないものです。(p61)
 私は無印良品の集会などで,本書でお話ししてきたことを,社員に向けても繰り返し伝えています。 ところが,一ヵ月ぐらいしてから尋ねると,九八%ぐらいの人が覚えていません。それは社員のやる気がないという話ではなく,人間とはそもそもそういうものなのです。 人はすぐに忘れるものであり,改善してもすぐに元に戻ります。 放漫経営で会社が傾きかけ,プロの事業再生屋の力も借りて必死で会社を建て直したものの,経営が安定してくるとまた余計なことに手を出すような中小企業の経営者は大勢います。(p216)
● 残業縮減の問題。特に,日本ではホワイトカラーの生産性が低いと昔から言われてきた。長時間働くけれども,そのわりに成果はどうなのか,と。
 たしかに,とぼくも思う。要は無駄なことをしているのだと思う。いや,会社側が無駄なことをさせているのだ。パワーポイントを使ってプレゼン資料を作るのに,フォントや図柄にこだわりすぎるとか。
 加えて,無能な上司が,無能でも口を出せるところ(=どうでもいいところ)に口を出して,部下に修正の手間を強いる。そういうことをやめればいい。
 働く側の問題もある。今までやってきたやり方を所与の前提と受けとめてしまって,それをなぞることに集中してしまう。
 それらを治していくのもなかなか大変,というか気が遠くなるほど大変なことだ。
 まずは,努力そのものを是とするのではなく,成果に結びつく努力であるかどうかを考えること。
 無印良品にも,「わかりました,頑張ります」と答える社員は少なからずいます。そのような人は,努力すること自体を重視して,「どのポイントを,どのようなステップで努力すれば結果を出せるのか」を考えない傾向があるようです。 当たり前の話ですが,結果を出して初めて仕事は成り立つものです。努力しても結果を出せないとしたら・・・・・・,やはりそれは,努力の方法が間違っているのでしょう。(p156)
 多くの経営陣や部課長は,部下に「努力をしてもらうこと」を喜ぶものです。連日徹夜をしている姿を見て,「頑張っているな」と評価する場面は,いまだに多くの企業で見られます。前項で述べた「努力の方法」を無視した態度です。 これではいつまでたっても生産性は上がらず,効率化は図れません。(p160)
● その他,いくつか転載。
 戦略や計画をいくら綿密に練っても,実行しない限り,絵に描いた餅にすぎません。多少の戦略の間違いは実行力で取り戻せます。まずは,第一歩を踏み出す決断が必要です。(p33)
 優秀な人を採用するためにコストをかけるのではなく,優秀な人材を育てるべく社内に人材育成の仕組みをつくるほうが,時間はかかっても組織の骨格を丈夫にします。(p57)
 上司が部下を「さん付け」で呼ぶのは,実行するのはたやすいでしょう。では,自分自身が「さん」で呼ばれるのはどうでしょうか。 部課長という役職につきながら,新入社員からも「さん」で呼ばれることに納得がいかないのであれば,自ら壁をつくっているも同然です。そういう心が組織の風通しを悪くし,ものを言えぬ風土を形成してしまうのです。(p123)
 無印良品で運用しているほとんどの仕組みは,他社の仕組みにヒントを得ています。オリジナルのものは,ほとんどないといってもいいかもしれません。 知恵の源泉は,徹底して他社に求めているのです。どうして,他社を参考にすることを基本にしているいのか。それは,「同質の人間同士がいくら議論をしても,新しい知恵は出てこない」という事実に尽きます。(p127)