著者 松井忠三
発行所 KADOKAWA
発行年月日 2014.07.10
価格(税別) 1,300円
● 『無印良品は,仕組みが9割』に続いて本書も読んでみた。無印が持っているマニュアルについて,その効用を説いたもの。
本書は,無印の人事について紹介しつつ,著者の意見を述べたもの。
● 入社3年目の社員に店長をやらせる。海外には何もないところに一人で行かせる,しかも,いきなり行かせる。社員とすれば,語学をはじめ,事前の準備をする時間はない。
つまり,修羅場を体験させる。
無印良品では,入社して三年前後の社員が店長になっていきます。 (中略)自分より年上で,自分より経験年数の多いスタッフもいます。ところが自分自身は,すべての仕事ができるようになったとは言えない状態です。 そのようななかで,どのようにリーダーシップを発揮し,現場を回していくか。 これが新入社員にとっての最大の修羅場体験になります。(p93)自分が務まるかといえば,今の自分では100パーセント無理。若い頃の自分だったら? やはり無理だったろうな。
● そうした修羅場体験をさせるのも,人を成長させるためだ。座学や人の話を聞く形の研修ではダメだ。
自分を成長させるためには,どうすればいいのか。 資格をとったり,ビジネススクールなどに通う人もいますが,そういった場で身につけられる知識やスキルでは,それほど成長できません。実体験を伴っていないからです。 自動車の免許を取るとき,教習所でさまざまな理論を学び,運転の基本も学びますが,実際に上達するのは,免許を取って一人で道路に出るようになってからでしょう。(p20)● そうした修羅場体験で何が得られるのか。つまるところ,生き抜く力,何とかする力。これさえあればどうにかなるという究極を支えるもの。それを練るには,そうした修羅場を実地に体験するしかないというわけだろう。
どんな時代でも生き抜く力を養うには,何とかする力を磨くしかないのです。(p124)
むしろ失敗してから生き方や働き方を変えた人のほうが,底力のある社会人に成長します。(中略)負け知らずの人より,負けを知っている人のほうが,ビジネスの世界では圧倒的に強いと断言できます。(p113)● 無印では,全員を社長が務まる人材に育てようとしているのだろうか。新人に対してマネジメント研修も行う。
浅く広く知識やスキルを持っている程度のゼネラリストでは通用しません。自分が本筋としてやれる仕事を二つぐらい持ち,それに関しては専門度を高めるのが理想的なゼネラリストです。 一つの分野の知識やスキルを深めるスペシャリストは,一見強いように感じますが,ともすれば自分の部署のことしか考えられない,部分最適の社員になってしまうのです。(p34)
マネジメント,つまり経営の基礎は,普通は入社してから一〇年以上経った中堅以上の社員が教わるものでしょう。それを私たちは,入社一年半の新入社員に教えています。 なぜなら,リーダーシップはいつでも誰にでも身につけられるものだと考えているからです。(p89)● 「リーダーシップはいつでも誰にでも身につけられるものだと」しても,リーダーはかくあるべしと固定的に考える必要はない。時と場によって,好ましいリーダーのキャラクターは違ってくる。
とはいえ,リーダーが心がけなければならないことがらは,もちろんある。
私はリーダーに理想像というものはないと考えます。(中略)だからこそ,自分なりのリーダーシップを見つけることが求められるのです。 リーダーに求められるタイプは,時代やその時の文化,会社の組織や性質と,あらゆる変数の中で変わっていきます。(p160)
リーダー論やマネジメント論を求める人は多く,書籍も多く出ています。しかし,一番大切なのは「仕事にかける思い」です。(p162)
「自分は完璧だ」と思い込んでいる人は,視野が狭くて人を受け入れられません。そして,人を受け入れない人は,人に受け入れてもらえるはずはないでしょう。そういう人がリーダーに向いていないのは,言うまでもありません。(p183)
自分の考えを相手に伝えるより,相手の考えを受け止めるほうが重要なのです。(p118)
リーダーと,先生などの人の上に立つ人は,似て非なるものです。先生や師匠の立場の人は,能力的にも人間的にも勝っていないと生徒から信頼されないでしょう。けれども,リーダーは完璧でなくても部下や後輩はついてきてくれます。(p184)
上司に対して部下が進言するのは,それなりの理由がなければなかなかできないでしょう。部下の反論は聞いてみれば正しい場合が多く,もしそれが“強めの反論”であれば,相手が正しい場合が八割以上だと私は思っています。(p196)
大事なのは小さな正論ではなく,大局観をもって物事を見るということです。「目上の人を敬うべきだ」「自分のほうが経験年数は長いからよく知っている」 そんな小さな正論をふりかざしても,部下は不満を持ち,上司について行く意欲をなくすだけでしょう。(p198)
最近は飲み会などを苦手とし,仕事でだけ付き合えばいいというドライな考えの若者も増えています。それは最近の若者がコミュニケーションを取るのが苦手だからという理由もあるかもしれませんが,コミュニケーションの楽しさを知らないからかもしれません。 飲み会に行っても上司や先輩が仕事のグチをこぼしたり,自慢話をするようでは,聞いている側は面白くないでしょう。それで敬遠する若者も多いのではないでしょうか。 それなら,上司や先輩が面白い話をすれば喜んで参加するということです。飲み会の参加者が集まらないリーダーは,自分自身に人徳がないのかもしれません。(p211)
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