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2019年4月7日日曜日

2019.04.07 川島蓉子・糸井重里 『すいません,ほぼ日の経営。』

書名 すいません,ほぼ日の経営。
著者 川島蓉子
   糸井重里
発行所 日経BP社
発行年月日 2018.10.22
価格(税別) 1,500円

● サラリーマン(ウーマンも)は読んだ方がよいと思う。頭がスッキリする。
 大量に付箋を貼ってしまった。もう一度読み返して,貼った付箋を剥がす必要があるかも。

● その大量に付箋を貼ったところを以下に転載。
 ほぼ日手帳は,社員のひとりが「ほぼ日読者の生徒手帳をつくろう」と言い出したところから始まりました。(p22)
 当時,若くて一番ひまそうなスタッフに「担当をやってみたら」と言ったら,その人がすごくたくさんの手帳を買ってきて,事務所の一室に広げて,うんうんと考えていました。ぼくは「そんなことはすぐにやめなさい」と言いました。ほかにないものをつくろうとしているのだから,ほかのものを見て考えても意味がありません。(p23)
 たとえば試験の問題を解くとき,秀才はすぐに解ける問題を片づけて六〇点くらい確保してから,答えのわからない問題にかかるそうです。(中略)うちはどちらを選ぶかというと,取れるかどうかわからない四〇点を大事にしているんです。もっと言えば,誰にも解けない一%の難問に,あえてつっこんでいくことが重要だと考えています。(p25)
 じぶんがお客さんになったら本当によろこぶかどうかを,本気で考えることにしています。(p26)
 「いい」「悪い」で判断するようになると,みんながどんどん同じになります。なぜかというと,「悪い」より「いい」を選ぶからです。だから,「いい」「悪い」で判断しなくていいんです。「好き」と言っているものは,やっぱりどこかに魅力の分量がたっぷりとあります。(p27)
 手帳に書くことは,スマートフォンのアプリを立ち上げて書くのとは少し違います。すぐに生の言葉が手帳に乗っかる。(p30)
 大企業がうちの手帳と同じものをつくって,一〇〇倍の量を売ろうとしたとします。「ほぼ日よりもはるかに安くすれば,みんながほしがるよ」というビジネスモデルも描けます。けれど,それは間違いです。どうしてダメかというと,その手帳には「心」の問題が抜けているからです。(p32)
 手帳は毎日のように接するものだし,手帳にものを書いている時間はじぶんひとりです。そんな時間を持っている人たちがお客さんであるというのは,ものすごくありがたいことです。「いい時間」を過ごすお客さんと,ぼくらはつながることができていますから。共有しているものの広さと深さが大きい。(p39)
 たとえば成功した八百屋さんの本があったとして,ほかの人がそのノウハウを読んでも,おそらくブレるだけだと思います。八百屋さんで成功した人は,ほかの道を選ばずにそれだけをやってきたから成功できたわけです。けれど,その八百屋さんの成功物語を読んだ人はまだなにも選んでいない。その違いは実はものすごく大きいんです。(p40)
 チームで仕事をするようになって,「ゼロから生み出すクリエイティブなんて案外ないぞ」と気づいたんです。クリエイティブにはやっぱり「供給源」が必要です。それは成功しているものを模倣することとはまったく違う話です。(p42)
 ぼくはいつもなにかを始めると,枠を決めてその中でやるのではなくて,「もっといい考え方があるんじゃないの」と,言葉を超えてものを言いたくなるんです。(p56)
 買いものというのは面倒や手間ではなくて,実は楽しみなんです。じぶんのポテンシャルの表現であり,自由のシンボルでもある。選挙に近いものがあるんです。(p57)
 株式上場して経済系のメディアから取材を受けると,「経済人」としてのコメントを求められます。そういうときも,どうにか「生活人」として放そうとしてきました。(中略)「ほぼ日」は買いものの場でもありますが,それを楽しむ街でもある。人が幸福に暮らしている状態,あるいは人が幸福に暮らしている場をつくりたい。そして,それに参加していたと思って,ほぼ日をやってきたんです。(p73)
 洪水のように情報があふれている中で,本当に知っておきたいことはなんだろう,知っても知っても飽きないものはなんだろうと考えたときに,やっぱり古典だと思ったんです。(中略)じぶんひとりで古典を勉強してもいいけれど,じぶんたちが主催したほうがもっと勉強できると思ったんです。いままでのような方法ではなく,学ぶ時間に浸れるような楽しみ方で,うちができないかと考えました。(p74)
 普段の仕事の中で漫然と過ごしている時間がとにかくもったいないと思ったからです。そんな時間があるなら遊べよ,と。(p92)
 「働き方改革」といっても,額に青筋を立てて,息を止めて集中するような働き方がいいと思ったら大間違いです。(中略)「もっといい考えがあるんじゃない?」と繰り返し問い続けることが大事なのであって,それは集中力とは違います。(p93)
 その難しいことをやるから給料がもらえていると,みんなが思っています。でも,難しいことに直面する大変さそのものは,本当のところなにも稼いでいません。そこではなく,考えれば考えるほどおもしろくなって,みんなのよろこぶものになっていく。それが稼ぎを生むんです。(p94)
 どんなミーティングだって「じぶんだったらこうする」と考えてから集まらないと意味がありません。個人が一生懸命に考えたことを集めるから,お互いに「ああ,それはいいな」とか,「じゃあ,そこは頼むぞ」と言い合ってチームプレーになるはずです。(中略)ひとりで考える時間がないと,なにも始まらないし,ひとりで考える時間が基礎だぞ,ということをもっと前面に打ちだそうと思ったんです。(p95)
 企業の風土を決めるのは,「なにがかっこいいか」ということです。「ダラダラして見えるけれどなんとかなっている」ことがかっこいいと思われれば,それがその会社の社風になります。(p97)
 (おもしろいアイデアがどんどん出る会社をつくるための糸井さんの役割は)あえて言えば,消極的でいたほうがうまくいくような風土をなくすことかもしれません。(p99)
 好きなものについて考え続けたり,興味のあることを続けたりすることが,人の能力を伸ばしていきます。それを邪魔されないことが「集中」ということの本当の意味なのではないでしょうか。(p100)
 いまの時代,給料というエサだけで人は本気で働かないのではないでしょうか。お金で人材が釣れる時代は終わったような気がしています。(p102)
 会社の中で女の人が働きづらく,伸び伸びとできないのが一番つらいことですよね。ルールでは「どうぞ」と書いてあっても,ルールでないところで「どうぞじゃない」ということもあって,それでは意味がないと思うんです。(p106)
 「きちんと時間を守って遅刻をしない人が,だらしない人を非難しないように」とみんなに言ったことがあります。「きっちりできる」ということだけが,ほかに増してなによりも大事なことではないんです。(中略)「身を粉にしてすべてを捧げられます」という人がえらくなってはダメなんです。(p106)
 ぼくは,ハンディを負っている人に対して,そうじゃない人が意地悪になるのがとてもいやなんです。「じぶんは子どもがいる人のぶんまで責任を持たされました」ではなくて,「よーし,俺がやるよ。頑張ろう」となってほしい。いつ,じぶんが支えてもらう側になるかわかりませんから,じぶんが支えられるときは支える。それが社会というものです。(p109)
 「面接用の人格」が現れてしまうんです。たとえば「明るくはきはきしている人」と書くと,明るくはきはきした演技ができる人が来てしまう。(p112)
 これ見よがしなのはダメで,そういうことはじぶんから言うべきではないと思っているかどうかが,センスなのだろうなと思います。(p113)
 少なくともうちでは,「いい人ではないけれど力がある」という理由だけで人をとることはないようにしています。(p114)
 採用基準に「一緒に働きたいか」という気持ちのようなものを入れてはいけないというのが,いいルールをつくりたい人たち,いわば昔の官僚のような人たちの言ってきたことなのでしょう。なぜそんな理由を入れてはいけないかというと,説明しきれないからです。(p118)
 ルールや基準を決めるときに,完成形には達しないまでも,いい点を取ろうとするから苦しくなるんです。その一番大きな原因は「不平等ではないか」という問題に応えようとするからです。けれど,そこには永遠に答えがありません。(中略)(平等には)できませんよ。それをわかっていない人とは,そもそも付き合えないと思います。たとえば,「なぜぼくを落としたんですか。理由を聞かせてください」という問い合わせをしてきた人がいたとしたら,それを聞いてきたことがすでに失格です。(p119)
 うちには,伝家の宝刀のような言葉が二つあって,「誠実」と「貢献」です。「誠実」については,「誠実は,姿勢である。弱くても,貧しくても,不勉強でも誠実であることはできる」ということ。「貢献」については,「貢献は,よろこびである。貢献することで,人をよろこばせることができる。そして,じぶんがよろこぶことができる。貢献することにおいて,人は新しい機会を得る」です。そして,「誠実」と「貢献」では,「誠実」のほうが重要です。(p130)
 効率を優先したり,じぶんの成果を期待しすぎたりすると,「信頼」は失われてしまいます。(p136)
 「誰がつくったか」よりも,「どんな場がつくったか」のほうが大事だと思っています。(p168)
 信頼できる先輩から「お前はできるよ」と言われたら,「できないかもしれない」と考える時間はなくなりますよね。そこがとても大事なんです。(中略)一方で,「一度は小説を書きたいんだよね」と言っているけれど,実際にはなかなか書かない人もいますよね。あれは,「お願いします。あなたはきっとできるから」と頼まれていないからだと思うんです。(p170)
 「上が聞いてくれない」と文句を言っている人が,「上がどんどん聞いてくれる」ようになったときにどうするか。その人の本気度が問われます。(p177)
 俳優さんたちが,舞台を見事につとめたカーテンコールで,右,左,正面,上,と見回して手を広げるときのうれしそうな顔。あれは,誰かから「お金を出すから,好きに遊んでこいよ」と言われて得られるものではありません。そういう楽しみを会社の中でつくっていけたらいいなと,いつも考えています。(p180)
 これからの時代のおもしろさというのは,誰かひとりがおもしろいと思ったものと,何億人がおもしろいと思ったものが重なるところにある。(p195)
 ぼくが感じたのは「人は口で言えないことを書けるようになったときに,じぶんがわからないことを言えるようになってしまった」ということです。それを,どこまでじうんがわかることだけを言うように戻せるか。(p206)
 あらゆることにおいてぼくは「これは正しくて,これは正しくない」と対立的に考えるのはつまらないと思っています。(p208)
 「こんなことがあったらうれしい」ということが実現したら,そこに人が集まり,たくさんのやりとりが生まれる。新しい顧客が創られるとはそういうことだと思ったんです。(p215)
 ぼくらは「スペック」や「情熱」の競争は避けたいと考えてきました。(中略)そんなことばかりしてきたから,会社が生き生きしているかどうか,社員がよろこんでいるかどうかは,あまり関係のないこととされてしまったのかもしれません。(p218)
 うちに入社する人の大半は,ほかの会社を辞めてほぼ日に来てくれるわけですから,それだけの魅力がないといけないと思います。(p230)
 ぼくの思う社長の役割は,社長がいなくても大丈夫なようにするにはどうするかを考えることです。(p239)
 みんなが渋い顔をしているところから,いいものは生まれません。「うわー,みんながよろこんでいるぞ」といった笑顔が見られるのが最高なことで,いいに決まっています。(p246)
 三年先を考えるには,一〇年先のことも考えていないといけません。そんな先のことが見えるはずがないと言いたいところですが,「いい方向」はあるわけですから,そこに向かう航海図を描くようにしています。そして,「こっちに行こう」と決めたら,勝算を証明できなくても行っていい。(p255)
 ぼくが大事にしているものは肯定感のようなものです。同じものを見たときにおもしろいと肯定するか,つまらないと否定するかは,人それぞれです。ぼく自身は否定感を抱えている人間ですが,「生まれてよかった」と思える人が集まる社会のほうが人を幸せにするはずです。だから肯定感につながるものを提供することが,ほぼ日のベースにあるのだと思います。(p259)
 魚を治療するより水の問題を考えて,できるだけなにもしないようにすること。魚を飼うということは,水を飼うことだという結論にたどり着きました。組織にも,同じように自然治癒力があるのだと思っています。一つひとつの問題に向き合って,「きみの言いぶんを言ってみろ」とやるよりも,環境を整えたほうがずっとよくなる。(p263)
 以前は社員みんなと順番にご飯を食べたりもしていましたが,それがまぁ,つまらなかった。全然楽しくありませんでした。お互いに義務になってしまいますから。社員全員と面談したこともあります。そのときも楽しいことは一つもありませんでした。みんな結局,おもしろいことを言わなくなってしまいますから。(p265)
 チームの仕事をやっていくということは,フリーであることと決定的な違いがあります。それは,とても簡単に言えることでもあります。「なにかあったとき,投げ出せない」ということです。(p279)

2017年5月20日土曜日

2017.05.20 川島蓉子 『TSUTAYAの謎 増田宗昭に川島蓉子が訊く』

書名 TSUTAYAの謎 増田宗昭に川島蓉子が訊く
著者 川島蓉子
発行所 日経BP社
発行年月日 2015.05.07
価格(税別) 1,500円

● 「TSUTAYA」を知らない人はいない(と思う)。代官山の蔦屋書店は観光名所にもなっている(かもしれない)。最近だと,銀座のGINZA SIXにも出店した。
 GINZA SIXの蔦屋には行ってみた。人混みをかき分けて。この場所で普通に本屋商売をやったのでは,利益など出るはずがない。テナント料で潰れてしまうだろう。
 蔦屋がやっているのは,取り扱う本の絞り込み。スターバックスとの提携。といっても,その辺にあるスタバと同じではない。ワインも飲めるスタバだ。客単価をあげる工夫。客単価に見合ったサービス。

● というわずかな予備知識があったせいか,本書は面白く読めた。面白いのはいいんだけど,ひとつだけ問題があった。
 気になったところには付箋を貼ることにしている(以下に転載する箇所)。ところがその付箋が同じページに2つも3つもということになってしまった。しかも,ほとんどのページに。
 
● 内容は増田流企画論。企画とはどういうことか。企画するにあたっては何が大事なのか。企画マンはどういうところに気をつければいいのか。情報の取り扱いをいかにすべきか。そういったことが縦横無尽に語られる。
 肝心なことは言わずにぼかしておくというセコいことはしていないように思える。

● 増田さんがいわゆる置屋で育って,小さい頃から,体を売って身過ぎ世過ぎをする女性たちを見て育ったことも明かされる。
 巻末に乗っている写真を見ると,優男に見える。が,負けず嫌いで強靱な精神の持ち主であることは,本書を読めばわかる。それでもってこの外見をまとっているところも,彼の魅力のひとつなのだろう。
 強靱であると同時に,両性具有的なところ(もちろん,精神面でね)も持ち合わせている人のようにも思われる。であるならば,鬼に金棒ということになる。

● 以下に,多すぎる転載。これでも当初からはけっこう絞っている。
 (“ハード”による生活提案って,どういうことですか?)事の発端は,iPhoneにあります。生活提案が本来的な意味でなされた時,それは国境,人種,世代,性別を超えて広がっていくと,僕はかねがね思ってきた。そしてiPhoneはまさにそう。スティーブ・ジョブズは,ヒット商品を生み出したのではなく,生活提案を行ったんだよね。(p16)
 戦後から今まで,人々は便利さを求め,さまざまな物事の効率を上げることに必死になってきたよね。それがここへきて,必ずしも人に幸せをもたらさなかったことに,ようやく気づき始めた。(中略)人の幸せとは,恐らく効率と真逆の方向を指していると思う。(p18)
 これは数十年も前から言われてきたことだ。誰もが気持ちの奥底では気づいていたんじゃないかと思う。けれども,そのまま来てしまった。それって,効率化を図るツールが面白いからかもね。
 新幹線とか飛行機とかパソコンとかインターネットとか。iPhoneだって効率化のためのツールとして使っている人が多いんじゃない?
 もはや物量で勝負する時代ではなくなっている。これだけモノがあふれている時代に,モノだけ並べられても,人は何の幸せも感じないわけ。(p20)
 物量で勝負するなら,(中略)ネットで済むわけ。人がリアル店舗に行くのは,そこに行ってライブでワクワクしたいからでしょう?(p22)
 簡単に言うと,僕らが考える“生活に必要なモノ”しか置かないということです。(中略)提案したいライフスタイルに必要な商品を選んで,ライフスタイルが伝わるように置いて売る。(p24)
 SNSがこれだけ人気になっている事実ひとつとっても,人々がコミュニケーションを楽しみたいってこと,わかるよね? つまり,コミュニケーションにあふれた生活を,人々が望んでいることは明かです。(中略)「コミュニケーションを楽しむ」は,僕らがやる提案のうちのたったひとつ。そういう風に,お客さんにとって気持ちいい生活提案を,100通りくらい揃えなければならないと,僕は考えているのです。(p25)
 こういうことって,業界内だけ,たとえば家電業界の中だけに目を向けていたら,絶対にできない。業界外,いわばアウトサイダーとしての視点が必要なんです。(中略)業界内にどっぷり浸かっていると,そこでの常識から抜け出そうなんて思わなくなるから。(p29)
 業界の慣習や常識を変えようとすると,とてつもないエネルギーが必要になるんだよ。でも新しい企画を世に出すって,そういうこと。(p30)
 モノを選ぶだけじゃダメなんです。選んで並べて見せる。お客さんに「こんな暮らしにしたいな」ということを実感してもらうことが大事なんです。そのためには,編集してお薦めできる専門性が必要とされるわけ。(p40)
 そう,本当に走るんです。渋谷のCCCのオフィスから二子玉川の「蔦屋家電」まで,自分の足でランニングする。そして,目的地に着くまで,頭の中でいろいろ瞑想したりイメージするわけ。(中略)その時は,必ず女の子と一緒に走るんだよ。女の子ってトレーナーなんだけどね。で,僕が気になったこと,気がついたことを言って,メモにしてもらっているわけ。(中略)一度きりじゃなく,時間帯を変えて何度か走るようにしている。朝と夜では風景も変わるわけだから,得るものも違ってくる。(中略)言葉だけじゃなくて写真も撮るんだ。(p41)
 オフィスっていう室内空間そのものには,何の情報もないわけだから,現場を身体で感じることが大切なの。あえて走るのは,単に物件や周辺のことをリサーチするだけでなく,走りながら考えること,思いつくアイデアすべてが,僕の企画につながっていくから。(p42)
 あの場所って「気」がいい。パワースポットというか,何かすごくインスパイアされるんだよね。(中略)新しい企画って,未知の領域に挑むことでしょ。努力してアイデア出そうとしても,大概ダメなんです。いい企画とうものは,自然にぽーんと出てくるもの。しかも,身体的に,あるいは心身的に,アイデアが出てくる環境っていうものがある。場とか,空気とか,匂いとか,あるいは情報とかも影響するかも。(p48)
 「代官山 蔦屋書店」は2階建ての建物だから,空が広いのです。何もない参道と広い空がある。これって,「時間がある」ってことなんだ。(p53)
 結局,場所や空間が,ブランドというものを作っているんです。(中略)もし「アップル」が,「アップルストア」を持たずに,パソコンを作って卸しているだけだったら,今みたいなブランドンはなれなかったと思わない? (中略)お客さんと直に接する「アップルストア」の存在は,「アップル」のブレンディングにとって,ものすごく重要だった。つまり,ネット時代にリアル店舗が持つ意味,それは,まさにブランディングなんです。(p54)
 リアル店舗で本を売ることだって,まだまだ可能性があるんです。(中略)それは,「本をわざわざ買いに行きたくなる場」であり続けることです。(p56)
 最終的には,リアル店舗の世界においても,ネットサービスを運営する企業のお店が,生き残っていくのだと僕は考えている。つまり,ネット通販とリアル店舗の双方を持っている企業は,将来的にはネットの売上げが主力になっていくわけ。(p59)
 世の中に既にあるとかないとかは,お客さんにとってみたら,あまり関係ないことじゃない? それより僕は,「本を選ぶ空間や時間を大切にする」という体験を,お客さんに味わって欲しかった。(p65)
 怖さにまさる楽しさ,いや,怖さを乗り越え,楽しさにまで持っていかないと人は成長しない。僕はそう考えているんだ。(p72)
 お客さんが「編集権を持つ」時代に入ったわけ。(中略)いわば自分で情報を検索して,自分の好みで編集したコンテンツを作っている。それで,何らかの自分らしさを表現したいと,お客さんが考えるようになった。(中略) (ところが)モノが多過ぎて,どこから何を選べばいいかわからない。それと,自分が思い描くような編集って,自分の発想だけでは,かたちにしづらいでしょ。(中略)だからお店の側から,生活提案を積極的にやっていかないといけない。ひとりひとりのお客さんにとって,「価値のあるものを探し出し,選んで提案してくれること=提案力」こそが求められる。(p78)
 提案してもらわないと編集できないってのも情けないけれども,じつにどうもそのとおりだと思う。しかし,中にはできる人もいるだろうね。
 生活者の中のそうしたエリートが,CCCのような企画屋と並んで,民衆を引っぱっていくんだろう。ごく少数が多数を引っぱるという図式は,いつの世でも変わらないように思う。
 「効率を求めたら,効率は実現できない」と,僕は思っている。(中略)つまり,効率は何の武器にもならない。(中略)効率重視は,そもそも売上げが上がることを前提に組んだものだから。その前提がなくなったら,意味をなさないということです。(p81)
 人口動態を見て明らかなように,人数が見込める団塊世代を相手にするのは,商売として理にかなっている。しかも,意外と開拓できていないということは,裏を返せば可能性大ということです。(中略)団塊世代は,お金も時間もあるし,かつての60代や70代と違って,圧倒的に健康で元気に暮らしている。若い頃に,映画,音楽,芝居,アート,本や雑誌といったカルチャーに触れてきたこともあって,(中略)エンタテインメントに対する欲求が上の世代より高い。そこに大きな可能性を感じてね。(p94)
 自分が感動した思いを誰かに伝えたいというのは,もともと人間が持っている根源的な欲求だと思う。(p96)
 企画とは顧客価値を高めることにある。(中略)「TSUTAYA」を始めた時,深夜まで営業することにしたんだ。今ほどコンビニが発達していなかった時代だから,業界からは奇異に見えたみたい。(中略)本や映像や音楽のソフトを,夜遅い時間に,選んだり買ったりするのは,お客さんにとって楽しいに違いないっておもったから。言い換えれば,顧客にとっての価値が大きくなると考えた。(p104)
 生活提案とうものは効率化できるのか? 答えは,できない。これ,パターン化して合理化・効率化できることじゃないんだ。(p106)
 ヒューマンスケールにこだわりたかったということもあります。ひとりの人間として,お客さんの目線に立ってみることです。それはそうでしょう。お店は誰のためにあるかって言ったら,お客さんなのだから。そこから眺めてみれば,その場ならでは,そのお店ならではの心地よさって,絶対に必要。それこそが価値になる。(p108)
 本とは提案の塊みたいな存在でしょ。それが集積された図書館って,これからの社会にとって,最も重視されるべき公共施設だと考えていた。(p112)
 今やらなきゃ,今変えなきゃって想いがあって,そこに刺さる企画は,とにかくどんどん進めたいんだよね。自分の中の必然,やらなきゃって想いで動いた企画は,後から考えると,必ず核心をついているものだから。(p117)
 これからのチェーン店は,全国どこでも均質なお店を展開することではなく,地域の独自性を土台に,地域の人に愛される個店を作っていく。そんな風になっていくんじゃないのかな。(p118)
 CCCが売上げ世界一,利益世界一,みたいな目標を掲げるような集団になり,自分に関係のない目標を立てられて,かんばろうぜと言われても,何かしらけちゃうでしょ。それより,新しい企画がスタートして,どんな企画にしようかってことを,皆で考えている時が最高に楽しい。そういう会社にしたいと,ずっと思ってきたのです。(p127)
 企画の本質って,世の中にないアイデアや発想を生み出して,かたちにしていくこと。それで,人々に幸せや豊かさを感じてもらうことなんだ。そうやって,顧客の創造と,市場の創造を行っていくのが企画なの。その意味で「アップル」は,企画会社だと,僕は思っている。(p130)
 「どういうモノを作るか」「どのような売り方をするのか」「どういうビジネスを作るのか」ということ。「どういう」「どのように」にあたる部分が,企画ということです。(p130)
 企画とは,クライアントの理解の領域を超えたアイデアや発想を作ることです。(中略)人の理解を超えるとは,延長線や積み上げだけじゃ,絶対にダメ。いわば「勘」を働かせてクリエイションすること。それをやり続けないと,企画の成長も人の成長もないと,僕は思っているから。(p133)
 つかまえるのじゃなくて,育てればいい。赤ちゃんのように。お客さんも社員も。(中略)もっと言うと,創造する。(p138)
 人が成長しようと思ったら,自分の理解の領域の外側,自分の能力より高いところを,何とか,かたちにしないとダメなのです。(中略)僕はよく言うのだけど,歩けるようになってから歩いた赤ちゃんはいない。自転車に乗れるようになってから自転車に乗った人はいない。(p140)
 (私は時々,データは過去のことを語っているだけで,未来については,何も語っていないのではないかと思っちゃうんです)その考え方,単純過ぎます。僕は昔から,企画で最も重要なことは,それが情報に起因しているかどうかだと考えてきた。(中略)だから,CCCを立ち上げた時から,情報が自動的に入ってくる仕組みとか,ネットワークを作らなければならないと考えてきたし,それを実行してきたわけです。(p143)
 データというものは過去のものだけれど,徹底した事実の集積なわけ。(中略)それを,冷静に眺めて分析することから,未来に向けた切り口を見つける,感じることはできる。(p145)
 僕,普段から心がけていることがあるんです。いろいろな人の気分を聞いて回るってこと。(中略)自分の感覚はわかっているから,その感覚が,この人と共通しているか,あの人と違っているのか,そういうことを知りたいと思って。(p146)
 データは大切。でもそこから「言葉=理由や説明」を読み取ろうとしてはいけない。徹底した事実として分析すれば,総体から浮かび上がってくる波形のようなパターンがあって,そこから言葉になる前の「!」を読み取ることができる。しかも,データが多ければ多いほど,どの波形は真実に近づいてくる。(p148)
 楽しさって感覚的なことじゃない? だから,ビッグデータを,感性を使って企画に落とし込んでいくことが最も大事。しかも,その企画は人を楽しくさせなくてはいけない。(p159)
 たとえば「美しい風景」があったとする。もとにあるのは,美しい風景という「事実」なわけ。それを,「どんな風に美しいのですか」と聞いて,「優美な春っぽさを感じた」みたいに言ってしまうのが「情報」。(中略)でも,事実はいったん,「情報化」されてしまうと「事実」に戻れない。(中略)「優美な春っぽさを感じた」という「情報」は,必ずしも「美しい風景」という「事実」と符号していない。何らかの視点によって切り取られ,あるいは編集された上で,言葉や数字になっているわけです。でも人は,「情報化」されてしまうと,その根っこに「事実」があったということを,忘れてしまいがちなんだ。(p160)
 本当の答えを探さずに,皆どうやったらお客さんが来るかと販促に一所懸命になるわけ。でも,それが間違い。答えがあってこそ,販促に意味が出てくるものでしょ。答えがなくて,どんなに販促してもお客さんは来ない。(p163)
 (なぜ企画会社を作ろうと考えたのか)「立場に価値がある」と思ったからです。だって,ゼロからスタートする弱小企業が,資金力や組織力を持っている大企業と同じフィールドで競争したら,勝ち目ないでしょ。でもフィールドを変えたら,つまり立場を変えたら,新しい価値が生まれるかもしれない。(p168)
 企画マンが成功しようと思ったら,絶対に忘れちゃならないこと,話しましょうか。「増田さんが言っているのだから,いいんじゃない」ということ。つまり信用です。人さまから信じてもらえる人であるかどうか,そういう意味での「カリスマ」になれるかどうかは,とても大事なことです。(p170)
 「函館 蔦屋書店」も,今は赤字だけれど,そのうち黒字になり,市場を制圧することになる。あの規模で市場を制圧してしまうと,後発の人は函館市場に参入できない。もし適正規模で函館に「TSUTAYA」を作っていたら,恐らく競合が逆に2000坪のお店を作り,小さな「TSUTAYA」は撤退を余儀なくされてしまう。(p179)
 最初の興行をするための場,それを確保するためのお金がいる。だから最初は赤字。でも,「場代」を払わずに場を仕切ろうとしても無理。赤字を覚悟してでも,最終的に場を仕切ることを目指さなきゃダメ。(p180)
 うちの父親は,事業に失敗したりしている。そういうのを見てきているから,世の中,甘くないことも知っている。(中略)起業は勝負事という意識,そして勝たなければならないという意識が,人一倍強い。なぜって,勝負に負けちゃうと,家族や社員を路頭に迷わせちゃうから。(p191)
 性というものは,本来的には利他でしょ。(中略)置屋の世界の女たちは皆,それがよーくわかっていた。だから,何事においても,お客さんとうものは,エゴだけじゃ来てくれない,喜んでもらわないといけないと,僕は思っているんだ。(p197)
 夢とかロマンとかって人間の気分を高揚させてくれるじゃない? そこを抜きにして,お店を作ってもダメなんです。(p198)
 自分が,本来持っている愛とか欲,夢とか,そういうものを刺激してくれるのが文化だと,僕は思うのです。音楽だって,映画だって,本だって,アートだって,エロスに触れるところがあるから人を感動させるわけ。そのすべてが文化なの。(中略)だから,文化とはエロス的なもの。当然,マーケティングにおいても,エロスの視点を持つことって大事なんだ。(p198)
 僕が他の人と違うのは,ワープする力を持っているということ。つまり,その人の目になれる。(中略)相手の目線に乗り移れるということが,ワープという意味。だから相手の気持ちや,言おうとしていることとか,全部わかっちゃうわけ。(p199)
 僕は,誰よりも遊んだという自信がちょっとあったわけ。服だけじゃなく,ライフスタイルという意味でも,周りの誰よりも経験したっていう意識があった。ところが,鈴屋に就職してサラリーマンになり,それが大間違いだと気づいたわけ。 鈴屋の社長の遊びっぷり,そのゴージャスさに驚いた。(中略)そういうのを見て,ライフスタイルって,究めたらもっともっと上があるんだって思ったわけ。それで,「僕は全然,イケていない」と思い,「もっともっと知らなくちゃ」と思ったの。だから徹底的にやった。(中略)クレジットカードの限度額もあっという間に超えちゃっていた。それくらいお金使った。(p206)
 実は自由でいることって厳しいし,難しいという話。管理されている方が圧倒的に楽なんだよ。だから人は,無意識のうちに自由であることをやめて,管理されるようになってしまう。だけど,そういう社員に,本当の企画は立てられない。(p215)
 それ以来,デザインとかクリエイティブの現場の仕事は,基本的にチェックしないことにした。創造性というか,クリエイティビティーってさ,凡人にはわからない世界じゃない? 普通の人は,実際にかたちになって初めてわかる。(p218)
 日本の社長のほとんどは,会社一筋,仕事一筋になってしまいがちなんです。(中略)つまり「会社=自分」になっちゃう。(中略)そういう社長は何でも現場に口出しして,自分で決めちゃう。でも,それじゃダメ。社長の仕事は経営なのです。そうでない役割は,思い切って任せればいい。(p219)
 僕だって,サラリーマン時代,軽井沢のベルコモンズを蒔かされた時,自己嫌悪の連続だった。だって仕事ができないから。(中略)行き詰まらなきゃだめだよね,人って。(p221)
 僕がCCCを興した時の事務所には,墨文字でふたつの言葉が額装されていたのです。「約束」と「感謝」。(中略)約束を守ることって難しいよ。(中略)じゃ,約束を守るために,何が必要だと思う? (中略)感謝です。約束した相手に,感謝の気持ちを持つことです。有難いという感謝の気持ちを抱いていれば,その人との約束は絶対に破れないじゃない?(p225)
 会社の規模が大きくなってくると,社長がちやほやされるようになって,どうしてもいい気になりがちなもの。(中略)それに慣れてしまうと,ちょっとした不愉快なことに文句を言うようになる。だから,周囲がいらないことにまで気を使う,気を回すようになってしまう。(p236)
 (驕りを抑えるにはどうしたらいいか)「お客さんを見ること」だよ。(中略)だから「商売人」の本質を究めることこそが大事。その本質を考えれば,驕っているヒマなんてない。(p237)
 僕があえてオフィスの真ん中に,階段を作った理由のひとつは「人の目線」ということなの。いちいちセキュリティドアを開けて,エレベーターに乗って,なんてしてたらダメ。あの階段では,上から下までランドスケープ,つまり景色を見渡せるでしょ。大切なのはね,やっぱり「人の目線」なのです。(p241)
 川島 日本企業って,どうしても「気持ちいい」,もっと言えば「かっこいい」を低く見ている気がするのです。しょせん,外見や上辺じゃないのと。 増田 男は見た目じゃなくて,中身だと。 川島 そう,それと同じです。でも,そんなマッチョな発想が,日本の製品やサービスから,「かっこいい」とか,「きれい」とか,「気持ちいい」をなくしちゃったと思うんです。(p243)
 直列型の組織の中では,「見つめ合い」が起こる。部下は上司を見る。上司は部下を見る。それだけだから,「見つめ合い」。でも並列型の組織の中では,「同じ方向を見つめる」ことが必要なのです。(p260)
 自由であるためには使命感が必要だから。やりたくないことをしない,というのは自由でも何でもない。やらなければならないことをやるの。それが自由だから。(p265)