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2023年6月12日月曜日

2023.06.12 松浦弥太郎 『松浦弥太郎の「いつも」』

書名 松浦弥太郎の「いつも」
著者 松浦弥太郎
発行所 CCCメディアハウス
発行年月日 2023.02.07
価格(税別) 1,400円

● 副題は「安心をつくる55の習慣」。
 著者に,生き方,暮らし方,仕事の仕方を説いた著書は多いが,本書もその系譜に連なるもの。こうした “論” が説得力を持つか否かは,書き手が実際に歩んできた人生行路や世に出してきた仕事の実績によって,自ずと左右されるものだろう。その点で言うと,高校を中退して単身アメリカに渡って,世情を裏から眺める(眺めざるを得ない)ところから出発して,現在に至っている著者は,説得力のある “論” を展開できる書き手のひとりとなるだろう。
 「松浦弥太郎か,おまえは」という揶揄の言い方もあるらしいが,そこまでの認知を獲得するのは生半なことではない。

● ぼく一個は『本業失格』や『くちぶえサンドイッチ』『最低で最高の本屋』といった,若い頃の体験を綴った作品に今でも惹かれるけれども,著者の “論” を読むのも嫌いじゃなくて,全部ではないけれど,かなり読んでいる。
 それで自分が変われると思うほど読書の効用を高く見積もってはいけないが,活字の文章の没頭できる数時間を得ることは,幸せのひとつに数えていいと思っている。

● 以下に多すぎる転載。
 僕らが人生を使って追い求めているのは,決して,成功とか勝負で勝つとか,成果が出るとか,他人から認められるとかではないんです。そろそろ,その無限ループから抜け出しましょう。ここから抜け出さない限り,うかめるものもつかめないと思うのです。(p3)
 僕らに必要なのはしあわせではなくて安心なんです。(中略)安心とは,日々,喜びを見つけ,どんなことにも感謝をすること。夜になればぐっすりと眠れて,明日もきっと大丈夫と思える気分のことです。(p3)
 「つまらない。めんどうくさい」「意味がない。関係ない」と思ってしまうのはよくわかります。日々というのはそんなことだらけです。けれども,それを避けたり,適当に向き合ったりしていたら,日々がとても残念なものになっていきます。とにかくつまらなくなります。(p14)
 どんなことでも楽しむとは,楽しくないことが起きても,楽しむということです。かんたんなことではありません。(中略)どうであっても,すべてラッキーと思えばいいのです。(中略)楽しむことに条件をもうけないで,どんなことでも楽しもうと決めてしまいましょう。(p14)
 自分のすることすべてが否定されるような出来事が,人生にはたびたび起こります。しかし,それですら学びととらえれば,その後の自分の成長を思い,感謝して受け入れることができます。(中略)いつも感謝する。全肯定で,どんな物事もすべて受け止める。力を振り絞らなくてもそうするだけで,自然とぐんぐん前に進めます。(p16)
 予定を詰め込んで,それをこなすことが優れているのではありません。計画は,慌てたくないから立てるのです。(p24)
 喉が乾いていればいるほど一気に飲みたくなります。ゴクリ,ゴクリと飲むのは気持ちがいい。だけど喉の乾きはそれほど癒やされません。喉を通るのが一瞬だからです。(中略)ゆっくり飲んだほうがからだにもいいし,喉の乾きもやわらぐのです。(p28)
 いかに自分が毎日新しくいられるか。(p30)
 リラックスするためにもっともかんたんで有効な方法は,深呼吸することです。(中略)緊張している時は深呼吸。悲しくなった時も興奮した時も深呼吸。(p32)
 何かを成し遂げた人間に共通する点をひとつ挙げるとしたら,それは限りなく素直であることではないでしょうか。(中略)アドバイスをするとすぐにメモをして,「ありがとうございます」「やってみます」と反応する人には,誰もがサポートしたくなります。(p39)
 素直さの鍵になるのは,自分との向き合い方です。プライドや経験に足を引っ張られてしまうと,何かいわれてもすぐに「そうなんですか?」「いえ,私はこう思いますけど・・・・・・」と悪気なく反応します。何事も一度は受け止めて,自分の考えや意識よりそちらが正しいのではないかと信じてみることが必要なのです。(p40)
 歳をとっても素直な人に共通しているのは,謙虚だということ。どんなに年齢や立場が上であっても,あるいはどんなに財産があったとしても,人より自分が長けているとは思っていません。(中略)環境に恵まれたり,運や巡り合わせがよかったりしたからなど,自分以外の力があったからだと考えています。(p41)
 いつも笑顔でいれば,一日一日必ず前進します。僕は毎日そう思っています。(中略)笑顔のもとはあなたと関われてうれしいという感謝です。(p42)
 気をつけたいのは,あいさつは,できるだけ相手より先にするということです。(中略)僕自身は,人よりも先にあいさつをしようと心がけています。どんなに年下の人であっても,「あなたのことを認めています」「あなたのことを必要としています」と伝えたいからです。(p49)
 僕たちは評論家ではないので,一つひとつに同意したり反論したりしなくていい。世の中で起きていることを,ユニークは人間劇としてとらえると見え方が違ってきます。(中略)とにかくおもしろがること。(p52)
 僕は,この世界は人々だけでなく,自然も含めたすべての助け合いで成り立っていると思っています。(中略)昔も今も,私たちはあらゆる活動を通じて,互いが助け合うためにはどうすればいいのかを学んでいます。ある意味,人生はそのためにあると言ってもいいでしょう。(p53)
 もし誰も自分を助けてくれないとしたら,まだ向き合う力が弱いということです。自分によからぬ野心があったり,どこかで力を出し惜しんでいたりしているかもしれません。(p55)
 人づきあいの中で一番価値あることが信用です。信用とはどうやってつくるのか。それはつまり約束を果たすこと,果たし続けることです。(p63)
 だけど何があっても許す。何をされても許す。そうしないと前に進めないのです。(p67)
 「許す」というのは,相手の態度にこだわることではありません。むしろ相手に執着しないということ。自分の中でその経験をくるくると丸めてゴミ箱にポイと捨ててしまえばいいのです。(p69)
 最初から,どうやって裏切ってやろうかと考えている人なんてほとんどいないのです。(中略)だから裏切ったのではなく,そこに至るストーリーがあったということ。「よほどの理由」があったのです。(p70)
 人は矛盾していて当たり前ですので。(p83)
 (豊かさとは)お金で買えないものをどれだけ持っているかということですね。(p88)
 欲望は持てば持つほど膨らんでいくのです。(p88)
 豊かさとは持たないこと。僕はそんなふうに思います。(中略)この世にあるものはすべて,決して自分のものにはならないという考えを持つのはいかがでしょう。(中略)あらゆるものは世の中からの預かりものだと考えるのです。ですので,責任を伴います。世の中から一時的に預かっているのだから,大切に扱わなければいけないのです。(中略)僕は身の回りにあるものを大切に扱うことは,とても豊かなことだと思うのです。そこに活き方が現れるからです。(p90)
 本当の豊かさとはものに執着せずに,自分の心が自由であることだと思います。本当の資産家の多くは,どなたも服装も持ち物もとても質素です。物質的な豊かさを求めていないから。(中略)おそらく,所有することには意味がないと知っているのです。(p92)
 手に入れたものは存分に味わうことがものに対する礼儀です。(p95)
 ものが増えると選ぶという行為が生じます。(中略)実はそれもストレスなのです。少しの使えるものをずっと使う。それでいいのです。(p99)
 世の中は「買い物は楽しい」という訴求にあふれています。(中略)私たちはその欲望と戦うことになります。(p99)
 喜びも,楽しみも,悲しみも,苦しみも誰かと分かち合うことで,お互いの心に安心を与えます。(p102)
 学歴や職業,年齢,勤務先などよりも,その人がどんなライフスタイルを持っているのかが重要になってくると思っています。(中略)「どんな人なのか」を判断するのにもう肩書きは役に立ちません。(p106)
 お腹が空いていることは,つらいとは思いません。(中略)実は快適なのです。(p110)
 僕はいつ頃からか服装で主張しなくてもいいと思うようになりました。主役は服装ではなく自分なのです。(p111)
 僕が目指すのは,清潔感があり,印象に残らない装いです。(p113)
 もっとも心がけているのは,玄関と水回りをきれいにしておくこと。(p114)
 遊びは,あらゆることの原点です。太古から人は遊ぶことで学んできました。(p117)
 床屋へは一〇日に一回通い,髪を切っています。歯は三ヶ月に一度のクリーニング,整体には月に二回ほど行ってからだを整えています。(中略)この習慣は何があろうと守っています。なぜなら,これが僕にとっての精一杯の身だしなみの基本だから。(中略)健やかさは,もっとも信用と信頼を感じさせるものだと思います。(中略)気を抜くとすぐに乱れます。そのことに先に気がつくのは,自分ではなく他人なのです。(p118)
 自分が自分であるためには守るべきものがあります。それは自分です。自分を大切にすることが,安心につながります。自分のアイデンティティを守れるかどうかは,優秀であるかや,世の中の役に立つかではなく,最後まで自分を信じ切れるかどうかにかかっています。(p140)
 まずは信じることです。何事も疑ってかかるとなかなか軌道に乗りません。(p145)
 おそらく相手は気がついています。感謝していないわけではないのです。十分わかっている。感謝しているし,うれしいと感じています。それでも態度に示したり,言葉にできたりする人が少ないのです。(p148)
 何が起きてもそこで感情的になったり,あるいは落ち込んだりせずに,とにかく状況を把握する。そうすれば,不安で何も手につかないということはなくなります。(p150)
 私たちは,知らず知らずのうちに日常が答え合わせのようになっています。こうすればこうなるという,おおよそ結果がわかっていることを繰り返すのです。(中略)しかし,そこに学びはあるでしょうか。(p146)
 急いで学ぶことで,時間を無駄にします。じっくり学んだほうが,効率がいい。(中略)投資でも同じです。急ぎすぎると稼ぐことはむつかしい。(p158)
 疑うことと信じることは共存しています。疑うと同時に信じることで人は強い意思を持つことができます。(p165)
 仕事や暮らしにおいて,どうしてこんなに自分はダメなんだろうと思ってしまうことは,誰にとっても茶飯事です。けれども,何があろうと,最後の最後まで,自分を信じることです。皆が皆,もはやこれまで,と思ったとしても,自分は絶対大丈夫だと思うことです。(p168)
 仕事の成り立ちは,困っている人を助けるための行動です。それを覚えておくと,仕事の目的を見失わずにすみます。「何のために」と思い悩むことがあったら,助かる人の顔を思い浮かべてください。(p174)
 これはおそらく僕だけではなく,動画配信やインスタライブなど突発的にやっているように見えるものでも,多くの人が入念に準備して臨んでいるはずです。期待値を超えるようなクオリティの高いものは,しっかりと準備に時間をかけているのです。仕事で問われるのは成果ですから。(p178)
 手ぶらでは会わない。これは僕の信条です。相手が喜ぶ何かを準備する。(p179)
 原稿を執筆する時も,実際に描いている時間はどんなに長くても二時間くらい。けれども,その三,四倍の時間は何を書くかを考えています。(p181)
 人の心を動かすのは,企画内容よりも情熱だということです。(p187)
 みんなが見ているのは,その人のその場における当事者意識と態度です。つまり仕事への情熱があるかどうかなのです。(p190)
 ではどうすれば,情熱を持てるのか。自分を鼓舞できるのか。もとになるのは,物事すべてに対する好奇心,そしてお客様に対するサービス精神ではないでしょうか。(p192)
 成長する,成長したい,そのためには楽しむこと。仕事でも暮らしにおいても,意識的に楽しむことです。(p196)
 僕にも成長するための心がけがあります。逃げない。避けない。否定しない。この三つです。つまり,どんな無理難題にも逃げないで対処して,どんなに苦手なことでも避けないで受け止める。そして起きたことを否定しない。(p197)
 仕事で疲れるのは,自分のコミットメントが浅いからではないか(中略)どこか冷めた気持ちでその仕事に向き合っているから,疲れを感じるのではないかなと。すなわち,楽しめていないから疲れる。(p199)
 「世の中のどこかには,自分が夢中になれる仕事があるはずだ。いつかきっと出会える」と思っているのではないでしょうか。それは幻想です。厳しい言い方になりますが,そう考えるあなたはすでに思考停止しています。仕事の楽しさやおもしろさは,誰かに与えられるものではないのです。自分で工夫し,自分でつくり出すものです。(中略)覚悟を決めてコミットメントして,自分事にしてしまえばいい。そうすれば,夢中になれるはず。ちなみに「夢中」はラッキーを呼び込むための最高の魔法です。(p200)
 約束とは与えられると,苦しくなりやすいのです。約束は常に先手を打つ。(p206)
 自分から手を挙げることです。(中略)多少の見切り発車でもいいでしょう。経験を待っていたら,いつまでたってもやりたい仕事には就けません。(p208)
 いつか誰かが自分を認めてくれる,ということはありません。(中略)受け身の姿勢でいる間は,チャンスは巡ってこないし,なりたいものにはなれないのです。(p209)
 両手に持てるものは限られています。ものだけではなく,情報や知識,そして人間関係もそうです。(中略)いろいろなものを持ちすぎていませんか?(p217)
 時には思い出すら,足かせになることがあります。(中略)忘れてもいい思い出もあるはずです。(p218)
 自分に必要な物量を見極める。余計なものを持ち続けない。「いつか使う」「いつか使えるかも」とは考えない。捨てることが失敗とか損だと思わない。(p220)
 僕のポリシーはシンプルです。お金も時間も,感動することに使う。ここで大事なのは,欲しいものではなく,感動すると思えることに使うこと。たったこれだけです。(p222)
 心もからだも,人間関係もキャリアも,植物に水をやるように,すべて自分で育てるものです。(中略)自分のことは自分でしか育てることはできないのです。(p223)
 自分だけでなく,他人や社会にも同じように,「育てる」という意識を持つと,物事の見方が変わり,不思議と心が寛容になるのがわかります。(p224)
 言葉を探します。(中略)誰かが行った言葉ではなく,本に書いてあった言葉でもなく,自分の内面から湧き上がってきた言葉でないと心は動きません。(p230)

2021年12月4日土曜日

2021.12.04 松浦弥太郎 『ふたりのきほん100』

書名 ふたりのきほん100
著者 松浦弥太郎
発行所 光文社
発行年月日 2021.04.30
価格(税別) 1,500円

● 副題は「恋愛と結婚のエッセンシャル。」。自分がそのとおりにはできていなかったとしても,落ち込まないことが大事でしょ。このとおりにできてる人なんか,まずもっていないから。
 松浦さんってストイックな人なのだろうが,ストイックさを周囲に感じさせない気配りもある人なんだろうか。

● 以下に転載。
 行動は,感情を変えることができるのです。(p13)
 あなたがそばにいるときも,離れているときも,わたしは「あなたを優先する」と決めています。(p25)
 気持ちの張りを失うと,美しさは簡単に喪われてしまいます。(p49)
 短所を気にするのではなく,よいところをどんどん伸ばしてください。(p59)
 わたしたちによくないことが起きたとしても,必ずそこにはよほどの理由があるのです。そのよほどの理由は,静かにそっとしておくことがよかったりもするのです。(p79)
 いつも明るく過ごします。そのために,心とからだを整えます。(p81)
 ふたりのことに,手遅れはほとんどありません。そもそもゴールが存在しないのだから,結果を急がなくていいことに意味があります。(p127)
 答えがかんたんに手に入る現代社会だからこそ,正しい問いをふたりで見つけたい。(中略)正しい問いとは,ほんとうに必要なことは何か。ほんとうに知りたいことは何か。というように,問いの動機に立ち返ることです。(p135)
 本当のよろこびを生み出すのは「もの」ではなく,その「もの」から生まれる時間です。(p145)
 どんなことでも最短距離を選ばずに,ちょっと寄り道という遠回りをしてみる。そこにある余裕や余地から生まれる,新しい考えや発想をわたしは大切にしていきたいのです。(p161)
 永遠を信じると,今日がおろそかになり,感謝の気持ちも薄れていってしまいます。(p169)
 どんなものでも時間がたてば,冷めるものです。(中略)そのままにしておくと,冷めは悲しみに変わります。冷めたものは,温めなおせばいいのです。(p173)
 譲ることは負けることではありません。人と争わずに,一歩前に進むための心がけなのです。(p185)
 心のゆとりとは,自分を自分でいっぱいにしないこと。(p189)
 老いとは自由になっていくこと。もっているものを整理して,人間関係を整理して,自分の心を整理して,少しずつシンプルになっていくこと。(p205)
 面倒くさいからと逃げてばかりいると,前に進みません。どんなときでも,一歩前に進む気持ち,何があっても逃げない,という心構えが大切です。(p245)
 できるだけ嫌いなことや逃げてなことに触れないよう,出くわさないように注意をしてあげましょう。(中略)嫌いなことや苦手なことを克服することを求めてもいけません。(p305)
 バカにされることがわかっていても,オヤジギャグを連発する人は,ユーモアの価値を知っています。(p319)
 ものごとには上手い下手があります。(中略)だけど,その行為に心がこもっていれば,人は不満を抱いたりしないものです。(p341)
 人にはできないことがあるのです。相手ができないことは受け入れることです。相手ではなく,自分のために。(p351)
 欠点こそ,人の魅力のひとつです。だから欠点を嫌わないでください。人は,完璧だから自信がもてるのではありません。完璧ではない自分を知っているからこそ,失敗も想定内でいられます。だから不安がなくなるのです。(p369)
 何かあったときに「えー!」と否定的に受け止めていると,そこから前に進めません。大切なことは,その先にあります。(p371)
 世の中の多くのことには,答えがありません。むりやり答えを出そうとすると,その場しのぎになることも多いのです。(p381)
 だけど暮らしのコンセプトは,おもしろく,楽しく。何をするにも,何を考えるにも,すべてがそこにつながっていると,日々を明るく,軽やかに過ごせます。(p425)

2020年12月27日日曜日

2020.12.27 松浦弥太郎 『人生を豊かにしてくれる「お金」と「仕事」の育て方』

書名 人生を豊かにしてくれる「お金」と「仕事」の育て方
著者 松浦弥太郎
発行所 祥伝社
発行年月日 2020.03.10
価格(税別) 1,450円

● 本書と同じようなタイトルの本がいくつもある。それらいくつもの本と本書が異なるところは,かけている元手の違いだ。
 水増しは一切ない。仕事や生き方の心構えを説いている本なのではあるけれども,ギュッと中身が詰まっている。著者が実際にしてきた苦労(その多くは普通にしていたのでは体験できないもの)とそこから上がってきた教訓で満ちている。
 ゆっくりと読んでいくのが良いだろう。速く読めるのを自慢しているような輩は特に。文章は平易でサッサと読んでいけるものだが,そこをあえてブレーキをかけてゆっくりと。

● 以下に多すぎる転載。
 「体力のある者が勝つ」。ある日,僕のビジネスにおける師が教えてくれた言葉です。(中略)ここで言う体力とは,いわゆる身体的なものではありません。その本質は,知識という底力。人と人とのネットワークと信用,ガソリンとも言える,いくばくかのお金です。(p3)
 作物を育てる。人を育てる。人間関係を育てる。病気の治療や問題解決など,待つことが大切なことは,日常生活でもたくさんあります。ビジネスにおいても「待つ」ことの本質は,それと同じです。それらを待たずに急いだらどうなりますか? 間違いなく失敗するのです。例えば,一カ月で一〇キロ減量できる方法など,本来,一年かけてやるべきことを,待たずに得る成果には,必ず大きなリスクがあり,決して健全ではありません。ですから,「待つ」ということは,あらゆることの基本中の基本。大切な姿勢です。(p5)
 お金の動きが泊まっている時は,何も起きていないということですから,いいことではありません。物事が順調にいっている時には,お金が動いているのです。(p17)
 編集長時代に,人は嫌なことを忘れさせてくれるものにお金を使うのだ,と気がついて,雑誌作りに生かしました。嫌なことを忘れさせてくれるものを作る仕事とは,「困っている人を助けること」です。(p33)
 利益の本質,それは「感動」です。利益とは,感動する人の数に比例するもので,利益が多いということは,それだけたくさんの人に感動を届けたということ(中略)答えはとてもシンプルです。しかし,たくさんの人が感動するものは,そう簡単には見つかるものではありません。(p37)
 せっかく買ったクルマをすぐに売ってしまうのですから,損をしているように見えるのですが,(中略)それは損ではないのです。体験したクルマですから,価値も高く,再販価値も高いのです。その経験のおかげで,誰も知らないようなクルマの特徴を延々と語り続けることができますし,それを発信することもできます。(中略)インターネットのおかげでありとあらゆる情報が手に入る時代だからこそ,体験することの価値がどんどん高くなっています。(p46)
 「自分の頭で考えろ」とよく言われますが,何から始めていいのかわからない時はまず観察から入ることです。そして想像し,思考する。(p55)
 現場では,僕は若くて素直だし,体力もあるから,どこへ行っても一番人気で取り合いになるくらい。そのうち日給も多くもらえるようになりました。人に必要とされれば,多く稼げることはこの時,学んだんです。(p67)
 初めての海外で,言葉も通じないし,そんな安いホテルに泊まったこともない。周りは全員知らない人で,怖いという意味では,すべてが怖かったです。でもそこにいると,いつの間にか,それが普通になるんです。(p69)
 なかなか厳しい旅でしたが,そこで僕が感じたのは自由でした。自分で考えて,自分でやったことが,すべて自分に返ってくる。そんな日々がとても新鮮だったのです。(p70)
 タクシーの運転手さんから面白い話を聞きました。東京都港区の南麻布は高級住宅街として知られていますが,そこから羽田空港に行ってほしいと言われて,「高速道路を使いましょうか?」と聞いたところ,「必要ありません」ときっぱり断られたそうです。(中略)下の道で行っても間に合う時間に家を出ているのであれば,時間を節約したところで大して意味がありません。その人にそって高速代は,無駄遣い,つまり悪い浪費ということです。(中略)お金持ちと言われる人たちは,使い方をしっかり考える習慣が身についていて,悪い浪費をしないのだと感心しました。(p92)
 僕自身,お金の使い方にはたくさんの失敗をしてきました。その失敗を思い返し,原因を突き詰めると,自分の目で確かめていなかった。失敗のリユのほとんどはたったこれだけのことなのです。(中略)他人任せにせず,間接的な情報を鵜呑みにせず,どんなささいなことでも自分の目でしっかりと確かめて判断し,お金をその確かめたものに変えていく。これほどお金が喜ぶ使い方はないのです。(p100)
 「成功の反対は失敗ではなく,何もしないこと」という言葉から,一歩を踏み出す勇気をもらいました。(中略)失敗を恐れるあまりに,勇気を失い,何もしない人になってしまうことくらい残念なことはないのです。(p105)
 株を買って毎日のように株価をチェックしていても,下がってくると,また下がった,今日も下がった,と落ち込んでいるうちにうんざりしてきて,チェックするのがイヤになってしまう,というのも失敗のパターンです。数字から逃げるから損を大きくしてしまいます。(p114)
 異論はない。損切りは大事なことだから。しかし,株についていえば,買ったら買ったことを忘れているくらいでちょうどいい。株価なんかチェックしないこと。ノンびりしている方が儲かる確率は高いと思う。
 好きなことを続けていたら,いつの間にか稼げるようになっていた,という話をよく聞きますが,そこまできれいな話は,現実にはあまりないように思います。やはり仕事をするなら,費用対効果がいつも頭にないと,なかなか稼げるようにはならないし,収入は安定しないのです。(p121)
 やはりただぼんやりしているだけではダメなんです。(中略)どんなことにも通じる法則ですが,自分がしっかりしよう,自分でなんとかしようと覚悟しないと,うまくいかないのです。(p131)
 本が欲しくて買うというよりも,僕とのコミュニケーションの代わりに買ってくれる。人は,ただ,物にお金を払うだけではないという,商売の基本がわかってきたんです。(中略)自分に興味を持ってもらえたら,ある程度は売ることができます。その頃,自分を買ってもらう,自分も売りものの一部なんだ,と知りました。(p132)
 困っている人を助けることが面白かったんです。「どうしても欲しいけど見つからない」人に対して,自分ができることを果たす。そこに自分自身の価値を見つけました。そういう仕事の姿勢はずっと変わりません。(p136)
 肉体労働の世界であっても,一生懸命やれば信用されるようになるんです。あいつは真面目でいいやつだ,と評判になると,こっちに来い,と引っ張ってくれる人も出てきます。そういう時のうれしさが僕の仕事の原点にはあるのです。(中略)いつも人に喜ばれること,人が認めてくれることを,藁をもつかむような気持ちでやってきました。(p140)
 投資先のもっとも間違いのない選び方は,自分が一番詳しいもの,もしくは自分が大好きなものです。(中略)一番詳しくて,大好きなものとは,まず「自分」が思い浮かぶはずです。(中略)だから自分という「投資」先を忘れてはいけないのです。(p148)
 鉄則は,自分で調べて自分で考えることです。利益を得たい気持ちで,専門家や詳しい人を頼って,どうしたら良いかを聞いているうちは失敗することが多いでしょう。(p150)
 投資において,欲は禁物。リスクの学び方,楽しみ方とは,この言葉に尽きるのです。(p154)
 チャンスというのはほとんどの場合,常に試練という形でやってくるのです。訪れる試練をただの困難と捉えてしまうのか,もしくは,その中身はチャンスだと思うのかで,リターンが大きく違います。(p155)
 投資の世界で成功する秘訣は,投資対象についてどれだけ詳しくなるかに尽きます。(p155)
 ラッキーが偶然訪れることは,ほぼないと思っています。起きていることは,基本的にはすべて自分次第で,棚からぼた餅が落ちてくることは,滅多にありません。偶然に見えても,それは,その人自身が起こしているものです。(p157)
 こうすれば成功するだろう,と思っているわけではなく,好奇心が旺盛だから,すぐにやりたい,やろう,と反応するのです。そういう態度が偶然を引き起こしているように思えます。(p159)
 ピカソの絵画に興味を持っても,スマホで見ることで好奇心を満たしていると,その好奇心は育ちません。美術館に足を運び,実際に鑑賞することで,次は,この作品が見たい,彼の作品の背景にあることをもっとよく知りたい,と好奇心が伸びていきます。(p160)
 投資信託や株式への投資で一億円の利益を出すのはたやすいことではありませんが,自分でビジネスを始めて一億円の利益を出すことはそこまで難しくはありません。一番リターンの高い投資は自分への投資です。(p161)
 もっともレバレッジが効く投資は,自分が感動することへの投資です。僕は,そう考えています。いろんなことを面白がって,楽しんで,何かに感動するようなライフスタイルを続けるために投資をするのです。(中略)感動すれば,誰かに伝えたくなります。(中略)そうやって感動が人を動かすのです。(p162)
 感動するためには,自分自身が常に学び続けなくてはなりません。同じことを続けていても感動は減る一方です。情報収集も必要になりますし,ワクワクし続けるためには人任せではいけないのです。(p164)
 人は年齢を重ねるにつれ,変化が起きにくくなりますが,それでは成長することができないのです。何より,いい友人を作るためには,自分自身が成長し続ける必要があります。(p171)
 株を運用していて失敗する人に共通して言えるのは,期待しすぎということです。例えば,どこかの会社の株を一〇〇万円で買うとします。そういう人は,来年には二〇〇万円になっていると思ってしまうのです。(中略)感動もそれと同じです。増やすことができるのは,せいぜい年に五パーセントくらい,つまり一〇〇人を一〇五人にするくらいのところから始まります。でも,それを続けた人が成功するのです。(p182)
 時間と仲良くしたいと思ったら,どんなふうに仕事をすればいいのでしょうか。僕が意識していることのひとつに,「準備に時間をかける」があります。(中略)仕事はもっともっと想像力を働かせて,相手の期待値を超えるものでないと成功とは言えません。平均より少し上,八〇点,九〇点を目指すやり方もありますが,それでは誰も感動してくれないのです。一二〇点,一三〇点出せてやっと,喜んでもらえます。そのためには準備に時間をかけることが一番の近道です。(p198)
 僕が続けていたのは,自分が大好きだという想いを語り続けることです。どこへ行っても,事あるごとに語ってきました。(中略)そこから何かが動き始めるのです。だから自分の「好き」を語る時は,照れないで堂々とするのが鉄則です。(p203)
 世の中に「ぼったくり」と言われるようなものは,基本的にないと思っています。高い,これはぼったくりだ,と言ってしまうとそれでおしまい。なぜそれが高いのかが理解できないということです。(p208)
 信用を築くためには時間が必要ですが,失う時はあっという間です。多いのは,お金のトラブルと男女関係のごたごたでしょうか。(中略)会社員であれば,経費の精算などはしっかりと規定に沿って行うようにしてください。(p216)
 なぜなら,そう思わない限り前に進めないからです。(中略)どんなに理不尽で,どんなに自分が不幸な経験をしたとしても,それを許して認めない限り,そこにとどまってしまいます。こういう経験のおかげで自分は学べたのだという感謝がない限り,そこから脱却できません。だから,全肯定なのです。(p220)
 「成功するための条件は何ですか?」と質問されたら,「何かに詳しくなること」と,答えます。人より詳しければ,絶対に成功するのです。世界一詳しかったら世界一になれます。(中略)詳しくなるためにはどうすればいいのか。僕に限って言えば,努力ではなく単純に興味があるから,いつもそういう気持ちで(中略)世の中を観察していて,そこで知り得た情報を,意識しないまま自分の中にインプットしているのです。(中略)自分が詳しいことをどうやって仕事に変えるか,どうすればライフワークになるのか。僕の場合は,わかりやすいところで言うと,言語化とメッセージ。あとは,雑誌やインターネットのメディアで文章を書き続けるということ。(p226)
 僕は「暮しの手帖」の編集長として学んだのは,雑誌の編集技術よりも商売のやり方だったと思っています。いいものを人は「いいね」とは言っても買うとは限らない。どんなものなら欲しくなるのか,買いたくなるのかを徹底的に考えました。(中略)編集長で取次会社に足を運ぶ人はあまりいなかったと思うのですが,僕にとっては情報の宝庫でした。(p233)

2020年12月20日日曜日

2020.12.20 松浦弥太郎 『しごとのきほん くらしのきほん 100』

書名 しごとのきほん くらしのきほん 100
著者 松浦弥太郎
発行所 マガジンハウス
発行年月日 2016.03.31
価格(税別) 1,500円

● 著者が手探りしながら,掴み取った “術” が披露されている。労せずしてそれを知ることができるのは,著者の体験の上澄みを掬うようなものだ。
 では本書を読めば,著者が到達したところからスタートできるのか。そこは心配しなくても,環境がちゃんとゼロから出発させてくれることになる。
 棚からぼた餅的な話はそうそうない。っていうか,まったくない。

● 以下に転載。
 放っておくと僕たちの毎日は「新しさ」から遠ざかり,やるべきことの繰り返しになります。新しさから遠ざかると成長はできません。(p9)
 覚えておきましょう。誰でも知っていることこそ,一番強いテーマだと。(中略)普遍的なものの中に,無限の新しさが潜んでいます。(p11)
 大切なのは,余計なことをしないこと。(p15)
 経験値をもとに積み上げていく仕事をすると,新しさは生まれません。(p23)
 期日がないものは,仕事ではありません。(中略)時間軸がくっきり見えれば,自分で考え,行動に移すモチベーションになります。(p53)
 打てば響くような俊敏さをもつよう,日頃から自分を整えておきましょう。「一日考えてからお返事します」というのでは,チャンスは逃げてしまいます。(p57)
 理屈が通った正しい文句もあります。しかし,文句に問題を解決する力はありません。何か起きたら,自分から動きましょう。(p73)
 「一石二鳥だな」と思ったら,手を出さないと決めておく。これはマナーであり,自分を守る知恵です。(中略)一石二鳥はたかが二鳥。桁外れの大成功をしている人は,一つしか取らないたしなみを知っています。(p77)
 成功している人は,ありとあらゆる失敗をし,それをちゃんと研究した人です。(p81)
 あらゆる仕事の先には人がいるから,答えは人がもっています。(p85)
 人脈が広がりすぎると関係性が空洞化する(p93)
 人は,面白いものと美しいものに引かれます。文章も会話も,伝え方はいつも面白く,美しくしましょう。(p99)
 人を動かすものは感情です。要点だけまとめたリストでなく,思いを込めたストーリーを語ってこそ,動機がちゃんと伝わります。(p113)
 文章を書くコツは,「上手」という言葉を忘れること。(中略)文章の先にいる誰かを思い浮かべて書きましょう。(p115)
 この世界にたくさんの素晴らしさがあったとしても,見つかるかどうかは,その人次第です。(p119)
 正しい方法というのは,愛があるかどうかかもしれません。(p129)
 「ギブ・アンド・テイク」でもなく,「フィフティ・フィフティ」でもなく。(中略)何も要求せず,自分から与えることで生まれる大きな力が,ものごとを成功させるヒントとなります。(p131)
 仕事も人間関係も,一話完結ではありません。(p135)
 自分で見つける。自分で工夫する。自分から発案する。この3つは,誰かから必要とされる「価値ある存在」になるための基本姿勢です。(p143)
 世の中で評価されているものは,興味があったもなくても,知っておくこと。これが仕事の基礎知識となります。(p151)
 本気になれるかなれないかが明暗を分けます。状況を変えるのも,物事を動かすのも,人の心をゆさぶるのも,本気の力。(p183)
 「人がやっていることはやらない」こう決めてしまうと,勝ち負けの渦に巻き込まれずにすみます。(中略)人がひしめいていたら「どうぞ」と譲ってしまいましょう。(p195)
 逃げなければいけないときは,勇気を出して逃げましょう。格好悪くても,弱虫と笑われても逃げる。義理を欠いても,誰かに嫌われても逃げる。(p197)
 いつも笑顔であること。徹底して前向きであること。人に与えつづけること。運を味方につけたいのなら,この3つを守りましょう。(p203)
 もしも迷いが生じたら,計算で答えを出してはいけません。(中略)目を閉じて自分に聞きます。「君はそれをやりたいかい?」。答えがノーならすぐ断る。(p207)
 人の好き嫌いはまた,すぐに変わるもの。(中略)深く考える必要もないことです。(p231)
 言葉で説明できないのなら,自分自身もよくわかっていない証拠です。(p241)
 頭を働かせるよりも心を働かせたほうが,豊かになれる。(p243)
 ときには我慢して,相手を優先しましょう。ただし,控えてばかりだと無責任な傍観者になってしまうことがあります。(p255)
 「食事のしたくが億劫」とお惣菜を買い,「やることがなくて退屈だ」と不平を漏らす。(中略)手間ひまをかければ,退屈するひまがなくなります。(p269)
 不健康なときほど,体に悪いものを食べたくなるもの。ジャンクな味が欲しくてたまらなかったら,体調を崩す前兆かもしれません。(p273)
 「ありあわせで,なんでもやる」とは,無駄がない,賢いやり方に思えます。でも,ありあわせで本質まで届くでしょうか?(中略)日常的にありあわせで済ませるのは,準備を怠っていること。(p279)
 常にちゃんと選ぶ,セレクションという意識を大事にしましょう。(p281)
 すてきな人は,年を重ねるほど素直になり,どんな話も感心して聞きます。(p315)
 優先すべきは,自分が話すことより,相手の話を聞くことです。耳を傾ける姿勢から,さまざまな可能性がひらけます。(p319)
 大人とは静かであるべきです。(中略)擬音がつく動作は慎むこと。(p327)
 辛いときは,息を吐く。緊張したときは息を吐く。覚えておくと役に立ちます。(p329)
 自分が社会とコミュニケーションをとる準備ができているかどうか,きちんと鏡を見ましょう。(p333)
 年をとること,変化していく自分を,存分に楽しみましょう。(中略)時に逆らわずに変化を楽しみ,柔軟に対応していくさまは,実にすてきです。(p335)
 その人という人間がもつエネルギーに,無条件にひかれてしまう。(中略)そんな人は,パッションとロマンがある人。(p351)
 満遍なくいろいろできるオールマイティなプレイヤーが求められる時代は,少し前に終わりました。自分の好きなことを極めましょう。(p403)
 「ミーハーだ」と言われたら,悪口ではなく「好奇心旺盛」というほめ言葉だと受け止めましょう。世の中の人が夢中になっていることに,自分も一緒に夢中になれるのは,心が若々しいから。(p405)
 たしかに生きた証しとは,人の記憶に残ること。突き詰めていくと,どれだけ人の役に立てたか,助けることができたか,感動を与えられたのかということでしょう。(p423)

2020年10月18日日曜日

2020.10.18 松浦弥太郎 『着るもののきほん100』

書名 着るもののきほん100
著者 松浦弥太郎
発行所 小学館
発行年月日 2020.02.01
価格(税別) 1,500円

● ユニクロのサイトに連載した短文をまとめたもの。短文といっても,読みきりのエッセイのようなものだ。
 いろんな理由でユニクロが嫌いな人でも,おそらく,読み進めていくことができるだろう。

● 以下に多すぎる転載。
 何をしたらよいか,何がしたいかではなく,今日,今,この瞬間,何を学ぶのか,何を学びたいのか,それだけでいいのだ。そのひたむきさが純粋な心なのだ。(p56)
 いつか読んだ,ソール・ベロウの『この日をつかめ』という一冊があった。その本の中に,現在と生きる,という一文がある。何事も今,今を見る,今を感じる,今と向き合い,今から逃げない,すなわち,今を大切にするという生き方だ。(中略)今から目をそむけない。明日や未来も,今この時,ここにあるのだから。(p78)
 仕事の見つけ方を僕は知っている。せっかくだから教えてあげよう。とても簡単だよ。それはね,自分がやったほうが,きっとうまくいく。もっとよくなる。要するに,きっと誰かの役に立つ。もっと誰かの役に立つということをすればいいのさ。(中略)もっと,困っている人を見つけよう。その人たちが何に困っているのかを知ろう。(p90)
 目に見えない場所こそが,実は汚れていて,そういうところをしっかりきれいにすると,掃除後のきれいさが違う。目に見えない場所だからこそ,きれいにすれば,なぜかその場の空気が変わる(p94)
 とにかく熟知。熟知に勝るものはないんだ(中略)とにかく一番詳しい人になればいい。そうすれば,みんな君を頼りにする。(中略)あとは,一番詳しくなったら,矛盾しているようだけど,自分よりも,さらに詳しい人を探すのさ。(p120)
 やりたいこと,やるべきことというのは,たくさんあるけれど,そのリストアップをして,正しい優先順位をつけられるのかどうか。これはすべての基本ではないのかと私は思う。(中略)大事なのは,その順番は常に変わるってことなんだ。いや,その順番を常に疑わなくてはいけないってこと。当然ながら,状況は常に変化するからね。(p129)
 そのビジョンを紙に書いて,じっと見つめてほしい。小さいんだ,きっと。そのビジョンが。(中略)自分一人のためになりがちなんだ。そんな自分一人のためだけのビジョンは何の役にも立たないので捨てたほうがいい(中略)ビジョンは,毎日,ほんとうにそれでいいのかと問い続けるのが大事。一度考えたからそれでいいと思ったらダメ。(p143)
 印刷技術や製本,紙,デザイン,その内容の表現など,すべてにおいて,その時代の才能とクリエーティブが,ぎゅっと凝縮された書籍という印刷物の美しさ。そして,情報ではなく感動を伝えるという本来あるべきメディアの姿から,今を生きる僕らが学ぶべき大切なことがある。(p189)
 相手が誰であろうと,仕事の話をする際は,その相手への敬意を払った服装をしていくのがマナーである。(p190)
 身だしなみとは,まず清潔であることだよ。髪型や肌,指の先,たとえば,匂いもそうだ。清潔であるということは,自分は人間関係を稚拙にしているという姿勢の表れだよね。(p191)
 僕らが一所懸命であることが,身だしなみからわかるからこそ,みんなは力を貸してくれるんだ。(p191)
 地図は持たない。そう,地図は自分で作るんだ。それが旅。(p203)
 何を着るかよりも,どう着るかのほうが大切で,その人が何を着ていたかという印象よりも,どんな着こなしをしていたかという印象のほうが記憶に残るのよう。(p215)
 そうなのよ。人生は自由。自由だけど,飾れないものでは駄目。飾った時に人に喜ばれるような人生を歩まないとね。(p274)
 自分がラッキーだと感じているのなら,それを当然と思っているか,もしくは感謝をしているかのどっちかだと思うけれど,(中略)感謝という態度があなたから消えなければ,あなたはずっとラッキーでいられるわ。(p278)
 むつかしいのは,ほんの小さなラッキーに気づくかどうかだと思うわ。ほとんどの人は,小さいラッキーのことを見逃してしまうわ。(p278)
 仕事って,自分が日々の暮らしの中で,与えられたラッキーを,自分のできることで返していくってことだと思う。(中略)そうすれば,またラッキーは与えてもらえるような気がするの。(p280)
 「嫌い」というのは,他人に対して自分を知ってもらいたいという自己顕示欲でしかなく,そう思うと,「嫌い」という意識を持つくらいばかばかしいことはにと思うんだ。(中略)もっと「好き」を大切にしたらいい。「好き」を増やせば,「嫌い」は自然と消えていく。(中略)「好き」でないことは,「苦手」ということくらいにとどめておくといい。誰にとっても「苦手」はある。まあ,言葉遊びのようだけど,「嫌い」という言葉には希望がないと思うんだ。(中略)希望を感じない言葉や考え方は,必ず誰かを悲しませてしまうよ。(p323)
 手首が見えていると,つないだ手と手がきれいなの。私は最近それに気づいたの。(p328)
 みんなあなたの笑顔に救われているのよ。なぜなら,あなたはいつも笑っている。いつも楽しそうなの。それはとってもすてきなメッセージになっているのよ。(p336)
 多くの人がしあわせになりたい,もっとしあわせになることを求めるけれど,それよりももっと大切なことがあるわ。それは喜ぶこと。私はね,心からの喜びって,しあわせよりもはるかに大きいと思っているの。(p337)
 フランス語が話せなければ話せるように学べばいいの。できないことを理由にしてはだめ。それよりも,あなたがパリに行きたいか。行きたくないか。それだけよ。(p346)
 とにかくたくさん着ていれば,自然と自分に合ってくる。(中略)服は飾るものではなく着るものだから。(p398)
 準備? そんなもの必要ないわ。迷いがないなら今,出発よ。(p427)
 悲しくなくても,ときどき泣かないと身体にわるいんじゃないかと思うのよ。私。(p432)
 父は散髪についても一家言あった。「伸びてからでは遅い。延びる前に切れ」(中略)下着の入れ替えも,この言葉に通じていて,古くなってからでは遅い。古くなる前に新しいのに替えるという考えだった。(p454)
 旅を楽しむなら,その街の朝と夜を味わいなさい。ただの朝と夜ではなく,早朝と深夜ね。(p458)
 否定したり,拒否したりするのは簡単。でも私は,できるだけ受け入れたいの。目の前で起きていることを・・・・・・・(p463)
 私は,とにかく自分が一番得意なことを,思い切りこの世界にぶつけたい。自分が大切な人を思い切り愛したい。照れずに,恥ずかしがらずに思い切りそうする。ただそれだけを精一杯やる。(p470)
 チャンスやラッキーというのは,いつだって試練や困難の先にあるもの。(p474)
 僕はこんなふうに自分の好みや習慣を変えるのは嫌いではない。それが自由ってものだし,その小さな変化が,新しい世の中を見せてくれることだってある。(p497)
 将来のしあわせよりも,今日,今のこの瞬間が子どもにとってしあわせであるように精一杯,接しよう。(p503)
 男らしさとは,清潔の中の無造作である。(p510)
 大切なのはなりたい自分をイメージすることさ。できるだけ具体的に。イメージさえできれば,それは必ず実現できる。とにかくイメージをすること。学びとはすべてそのためのもの・・・・・・(p514)

2020年9月13日日曜日

2020.09.13 松浦弥太郎 『期待値を超える』

書名 期待値を超える
著者 松浦弥太郎
発行所 光文社新書
発行年月日 2020.03.30
価格(税別) 760円

● 松浦さんはデジタルを駆使する仕事に移った。それによって仕事論にも変化が生じたかといえば,生じているはずだ。
 業務内容が変わったのに軸はまったくブレない,なんてあり得ない。ブレていない=新しい仕事に対応できていない,ということになるだろう。松浦さんに限ってそれはないでしょ。
 少なくとも,デジタルツールを自身で使う前と後とでは,デジタルツールに関する見方だけは変わっているはずで,これが変われば他にも影響を及ぼすだろう。

● しかし,以上のことはぼくの想像であって,本書にはそういう話は登場しない。
 本書は松浦さんの仕事論の最新バージョンなのだが,ツールや個別の方法論ではなく,仕事哲学あるいは心構えについての話だ。

● 以下に転載。
 いま思えば,当時の僕G売りものにしていたのは,若さと体力,そしてひたむきさだったのでしょう。どこの職場でも真面目に働けば働くほど重宝されました。だけど,「ひたむき」という,ありきたりのものに高い値段はつきません。(p4)
 自分だけが得をするような商売は決して長続きしません。人の期待値を超えること-とにかく,人に尽くし,相手が喜び,得をして,そのおかげで自分も最後に利益を得ることが商売の基本です。(p7)
 仕事とは,困っている人を助けること。何に困っているかを見つけること。これは,どんな仕事であっても同じです。(p24)
 僕は編集長に就任したとき,編集思考ではなくビジネス思考に切り替えたことで,自分が何に詳しくなるべきかがわかりました。それは「人の感情」です。それがわかるようになれば,どんな商売だってできる。どんなときに,どんな気持ちになるのか。つらいときにどんな言葉をかけてもらいたいのか。ひとりで映画を観たいと思うのはどんなときか。引越しのときに手間だと思うのはどんなことか。そういう思考方法を身につければ,どんな商品やサービスが求められているかを予測できるようになります。(p27)
 ビジネスには相手が必要です。コミュニケーションで大切なのは,自分都合ではなく,常に相手目線で考えること。これは当たり前のようで,意外と見落としがちなことです。(中略)あらに言えば,深く理解した上で,相手の未来をどこまで語れるか。(p29)
 会社に所属していたとしても,あなたが話をするとき,相手が見ているのは,あなたという「個人」です。(中略)セルフブランディングとは,自分をどう見せるか,人からどう見られたいかではなく,自分を好きになってもらったり,ファンになってもらったりすることです。自分を大きく見せる必要はありません。(p31)
 商売人は「面白い話」「新しい話」が大好きです。(中略)僕がこれまで仕事で会った人たちを見ていると,たくさん稼いでいる人ほど面白いことと新しいことに興味がありますし,会社でもトップに行く人ほどそうです。(p34)
 収入は,感動する人の数に比例します。世の中の商いは,すべてその原理で動いているので,自分の収入を増やしたければ,喜ぶ人,感動する人を増やすことを考えるといいのです。(p36)
 企業のトップには,周囲から天才と揶揄されるくらい強い信念をもつ人もいますし,優秀な人ほど手ごわいのは,どの業界でも共通しています。(中略)こういうときに大きな力を発揮するのが楽しむというコミュニケーションです。「会いたくない」で止まってしまっては仕事になりません。いっそのこと開き直って楽しんでしまいましょう。(中略)人と人との関係性は,変化するのです。自分が避けたいと思っているとうまくいきません。(中略)が,自分がアクションを起こすことで,関係が変わっていくのも楽しいものです。(p37)
 断られると「話を聞いていただいてありがとうございました」とお礼を言って,帰ってきて終わりです。(中略)僕にとって失敗とは,何もしないこと。かけた時間や労力はムダではありませんし,落ち込むこともありません。(p41)
 世の中では,得意なことを仕事にした人より,仕事をしていくうちに自分の得意を見つけた人がほどんどです。僕もそうでした。(p43)
 いわば上司は取引先です。(p47)
 相手に理解してもらうためには,うまく話す必要はありません。どれだけ自分たちの熱意を伝えられるかです。そのためには一人のほうがいいと僕は感じています。(p54)
 発言しない人,自分をわかってもらう努力をしない人は,次に何かをしようとするときに,その場に呼ばれなくなるのです。(p67)
 僕は誰かから突然,面白い話をしてほしいと言われたときに,三十分でも一時間でも話し続けられる自分でありたいと思っています。(中略)そこで思い切って何かやることには,想像以上の価値があるのです。(p69)
 ビジネスでは,いかに相手と深いつながりをもつかが重要です。どんなことにも一生懸命取り組むこと。プライドは自分の内面にとどめておくものです。(p70)
 練習をするのは保険のようなもので,不安を取り除くためです。失敗は命取りにはなりませんが,不安は命取りになります。完璧を目指すのではなく,やれることはすべてやったと思えるように練習してください。(p79)
 たいていの不安は,情報収集で解決するのです。(p81)
 人は完璧な人には票を入れたがらないのです。それより言葉を噛んだり,手もとが震えていたり,途中でセリフを忘れたりするところに共感します。わざとそうする必要はありませんが,そのほうが一生懸命さが伝わることは事実です。(p86)
 一度にたくさんの情報を提供するよりも短く伝えるほうが相手の感情に訴えることができるのです。(p87)
 質問に答えられないときの一番いい答えは「わかりません」です。いい答えが返せない時点で失格ではなく,相手は不測の事態にこちらがどう対応するかを見ていますから,誠実に対応すれば何も問題はありません。(p89)
 交渉するときは,自分の立場を主張するだけではうまくいゆきません。むしろ相手の立場をどれくらい理解できるかが大切です。そのためには相手側からの質問項目をできるだけたくさん考えてみてください。(p122)
 どんなにタフな交渉でもいつも相手の顔を立てるつもりでいます。(中略)交渉ごとでは主導権を握る必要はなくて,むしろ負けているくらいでいいのです。(中略)戦うことがムダだと思っているからです。勝ち負けにこだわると,小さなことが気になって仕事が前に進まなくなります。仕事とは,決して勝ち負けではありません。(p126)
 問題になるのは起きたことそのものではなく,向き合い方,切り抜け方です。(中略)だからまずは正直になりましょう。(中略)ビジネスパーソンに必要なのは,優秀さよりも勇敢さ,そして誠実さです。ミスしたとき「ミスしました」と報告できる勇敢さがあれば,なんとかなることがよくあります。(p131)
 トラブルで求められるのは我慢する力です。(中略)その場の感情に突き動かされてしまうと,事態はより悪化します。怒りの沸点は,七秒しか持たないと聞いたことがあります。だからどんなにカッとなっても七秒やり過ごすことができれば,あとは自然とおさまります。(p136)
 自分たちの思惑を前面に押し出そうとすると,どうしても近視眼的になります。それでは大局をつかむことができず,長い目で見るとあまりいい傾向とは言えません。一歩弾いたコミュニケーションを心がけていると,相手のことや仕事のことがよく見えます。(p158)
 ビジネスにおいては,全戦全勝もあまりいい傾向とは言えないでしょう。いいことには必ずマイナス面がついてきます。(中略)八勝七敗くらいがちょうどいいと思っています。(p158)
 観察は,商売を支えるヒントやアイデアになります。ただぼんやり眺めているだけでは仕事につながりません。コツは「なぜ」を素早くつかまえることです。(中略)自分が疑問に思って調べたことは,貴重な一次情報ですから,ずっと自分の中に残ります。それがアイデアの種です。(p161)
 僕は週に一,二回走ってますが,これは運動不足の解消のためというよりは,むしろ心のため。身体を動かして汗をかくという単純な礬水を続けることで,心が整うのです。(p166)
 くじけそうな気持ちを奮い立たせてくれるのは,自信です。自信とは,立派な自分にだけ宿るものではありません。どんな自分であってもいいのだと自分を信じることです。(p170)
 失敗は,ある意味では「おいしい」経験です。それで注目されたり,一発逆転のチャンスでもあります。人は順調な人生より失敗の多い人生に共感しますから,そういう意味でも悪いことではありません。優等生が成功するより,劣等生が成功するほうが,注目を集めます。
 そして失敗はとてもいいネタです。(中略)失敗しても怒られても,それをネタにして話をすれば,楽しんでくれる人はきっといます。(p171)
 マネジメント側にいる人間は,何があっても安定していないとダメです。自分の底を見せるようなことをしてはいけません。安定しているから,周囲は信頼してくれるのです。(p173)
 その人生に,足がすくんで前に進めないような緊張や世界が終わったかと思えるほどの落胆,何かを成し遂げたときに味わう世の中のすべてを味方につけたような喜びは,あるでしょうか。(中略)「ほどほど」とは成長を諦める言葉のように思えます。(p180)

2019年5月2日木曜日

2019.05.02 松浦弥太郎 『1からはじめる』

書名 1からはじめる
著者 松浦弥太郎
発行所 講談社
発行年月日 2018.09.13
価格(税別) 1,300円

● 内容はタイトルが代表している。コピー&ペーストして使い回せるようなものは捨ててしまえ。
主には仕事についての話なのだが,技術ではなくて態度の問題と思われるので,人生万般に通じる話。

● 以下に転載。
 それをある人は,「成功する方法」と呼びます。もしかしたらある人は,「すてきな人になる秘訣」と言うかもしれません。「なりたい自分になる方法」という表現がぴったりくると言う人も,少なからずいるでしょう。僕は,その答えを見つけたのです。 まだ,本のはじまりですが,もったいぶらずに書いてしまいます。それは,「1からはじめる」ということ。(p1)
 「売れる,売れない」よりも,「困っている人を助けることができるかどうか」が重要なのです。(p26)
 とても忙しくて,夕方のたった二時間で,買い物も食事の支度も子どもの世話もあれこれの雑用もこなさなければならないとき,「ここで自分が果たすべき役目はなんだろう?」と考えてみるのです。(中略)それを忘れて,やるべきことに番号を振ってこなしていくというような態度でいると,一つひとつに確実にあったはずの「それをやる理由」が消えてしまいます。それどころか,自分自身が消えてしまいます。(p27)
 ソフトバンクで孫正義さんの部下だった友人から,孫さんが何度もおっしゃっていて,一番印象に残っている言葉を教えてもらったことがあります。「登る山を見つければ,もう半分登ったのと一緒だ」僕の解釈では,「山」というのはビジョンです。(p35)
 仕事というのは合理性の追求のように見えますが,それだけでうまくいくものではありません。(中略)情熱。懸命さ。本気。これはすべての原動力ではないでしょうか。(p39)
 じっくりと考えて,確実な方法で計画を立ててからはじめるのではなく,とりあえずスタートするのが大切です。これは,今の時代に寄りそったやり方でもあります。(中略)スタートアップは,これまでの世の中になかったものを生み出してこそ存在意義があるのに,アイデアをゆっくりあたためていたら,他の人も同じようなことを思いつくかもしれません。(p44)
 人の見ているところならばできることが,人が見ていないところでできるかどうか。これが本当に「1からはじめる」ことができるかどうかの分かれ道です。(p56)
 僕たちにはみな,多かれ少なかれ「人に好かれたい」という気持ちがありますが,人に好かれようとしてやることは,たいていは「よくないこと」です。(p62)
 いつもにこにこして感じがいいけれど,好かれようとして無理はしない。気軽なおしゃべりはするけれど,しゃべりすぎない。みんなと仲はいいけれど,特別に親しい人は誰もいない。この絶妙な距離感を保ちながら,やるべき仕事を淡々とこなしていると,距離感がいつしか尊敬に変わります。(p65)
 五〇歳になって「もういいや」と言っている人は,実は若いときから「もういいや」と思っていた人なのです。(p69)
 自信とは,どうすれば生まれてくるのでしょうか。その一つの方法は,自分の中に「答え」を持っているかどうかだと僕は思います。たとえば,生きるとは何か,ということに対して。たとえば,働くとは何か,ということに対して。たとえば,暮らしをいとなむとは何か,ということに対して。(p75)
 年齢を問わず,自分を信じられない人は,自分をわかっていないのではないか,そんな気がしてなりません。(中略)自分を観察するというのは,怖いことです。なぜなら誰でも,弱いところ,汚いところ,人に言えないようなところを持っているから。それを直視するのはつらいし,完全に直すというのもむつかしいけれども,「僕という人間は,こういう人間なんだな」というのをわかっているかどうかで,自分とのつきあい方も変わってくると思うのです。(p76)
 贅沢品で自分を大きく見せても,いいことは一つもありません。(中略)僕のまわりには,何百億もの資産のある人たちが大勢いますが,そういう人ほど「お金のにおい」を見事なまでに消しています。(中略)おそらくそうした人も,お金持ちになる途中では,派手なものを買ったりしたと思います。しかし,徐々に学んでいったのでしょう。「自分を大きく見せようとしないことが,人間関係においては大切だ」と。(p82)
 ルーティンでこなせるようなことは,全力でやらないほうが,最終的にはうまくいくのです。いつも一生懸命にやっていたら,トータルで一生懸命になれない。(p90)
 あらゆる仕事は生身の人との関係性だから,もっと「人の感情」を深く理解しなければいけないと僕は思っています。世の中には,いろいろな人のいろいろな感情が日々生まれています。人の感情をいつも観察し,できるだけ早く「新しい感情」を察知して,その理由を調べて言語化していく。僕の仕事は,これに尽きると言っていいほどです。(中略)世の中の人の感情を理解するとは,「みんなが何に困っているかに,好奇心と愛情をもって気づく」ということでもあります。(p101)
 嫌いな人のすごいところから,何かを学ぶ。好きな人の弱いところから,何かを学ぶ。見えていないところから学ぶには,並大抵の観察では足りませんが,それが楽しいのです。(p105)
 仕事にしても暮らしにしても,すべての起点は熟知だと思っています。プロジェクトをはじめるにしても,料理をするにしても,最初にそのことについて人一倍詳しくならないと,アイデアも出てこないのです。(p110)
 熟知に至るために,僕自身が心がけているのは,オールマイティを目指さないこと。ところが世の中には,僕と反対のことを思う人が多数派のように感じます。つまりみんな,「いろいろなことに長けていないといけない」と思っているのです。(中略)全方位でパーフェクトを目指したら,なりたい自分になるどころか,へとへとにくたびれて潰れてしまう。あれもこれもそつなくできる人は,熟知することはできません。(p113)
 かつては,「なんでも平均より上の人」が求められていました。100点はないけれど10点もない。全部70点でそろえられる人がいいとされていたのです。しかし,僕は自分の経験値に照らしてみて,それはやっぱり違うと思います。今の時代はとくにその傾向が強くなっています。「100点が一つあって,あとはみんな20点」くらいでいいのです。(p115)
 自分より若い人や自分より立場が下の人にも,頭を下げて「教えてください」とお願いする。これも「1からはじめる」ということであり,熟知のための基本です。(中略)頭を下げて「教えてください」と言えない大人が多いのは,ほとんどの場合,プライドが邪魔をしているような気がします。(中略)プライドというのは大事なものだけれど,大事なときにだけ使うものです。普段は折りたたんで,しまっておく。そのくらいでちょうどいいと思います。(p118)
 手っ取り早く「知る」だけでいいという姿勢でスタートしたら,データチェックやウェブの斜め読みで終わってしまい,決して熟知には至りません。そのゴールに感動はないのです。だからこそ,熟知からはじめましょう。(p125)
 あなたが料理について熟知し,100のことを知ったなら,いずれ料理について200のことを知っている人に出会います。その人は快く教えてくれますから,それでさらに詳しくなります。この場合の詳しくなるとは,「100+200=300」ではありません。「100×300=20000」という,飛躍的に熟知が深まるイメージ。そのくらい,詳しい人と詳しい人が会うとすごいことが起きます。(p128)
 ある記事では,二四時間走り続ける正解最高峰の耐久レース「ル・マン」で優勝した一流ドライバーが,こんなことを語っていました。レースに勝つためのコツは非常にシンプルで,つねに次のコーナー,次のカーブのことだけを考え続けることだと。(中略)あとはいっさい,考えない。僕はこの話を知り,「まさにこれだ」と思いました。(p135)
 どんなに気前よく人に明け渡しても,本物の熟知であれば,いくばくかは自分だけの情報としてしっかりと残るということです。熟知をするならば,何事も,その域を目指したいと考えています。(p138)
 僕は,自分のヴィジョンに向かうための方法を発見し,その実行と検証を習慣化させることを「勤勉」と定義しています。(中略)僕が憧れているすてきな人,何かをなしとげた人は,みな勤勉です。淡々と単調な毎日を過ごしています。遊ばないし,よけい物欲に流されない。(中略)やろうと思えばいくらでもできるのに,決してしない。(p144)
 本人は,「短い時間で容量よくやっている」と悦に入っているのかもしれません。でも,要領よくやればやるほど,実は時間を無駄に使っていることが多いのです。(中略)「とにかくこなせばいい」という気持ちでやったことは,仕事でも,料理でも,ものづくりでも,愛情不足のあまり,からからに干からびて見えます。(p153)
 何かを知ろうとしてインプットしてばかりでは,やがて行き詰まります。そこであえて「ちゃんとアウトプットしないと」と意識し,実際にアウトプットすることで,新しい知恵や経験が入ってきます。(p155)
 アウトプットが「今まで誰も言葉にあらわしていないことを言語化(図式化)すること」である以上,それはパッチワークであってはなりません。本に書いてあることや,誰かが言った言葉を,上手にパッチワークしてそれっぽく仕上げるのが得意な人はたくさんいます。(中略)「コピー&ペーストはぜず,1からはじめる」と自分で決められるかどうかが,良質のアウトプットができるかどうかの分かれ道です。(p156)
 別に無理をして,仕事を好きになる必要はない。ただ,仕事を嫌いにならないためには,「好き」というよりも「楽しい」と思えることが大事だと考えています。仕事を好きになるのはむつかしいけれど,仕事を楽しいと思うことは意外に簡単です。仕事を楽しむ方法は,工夫をすること。自分なりの仕事のやり方を1から自分で考えれば,それで不思議なくらい楽しくなります。(p160)
 どんなにルールが決まっている仕事でも,必ず自分の立ち入ることのできる部分が半分以上あります。(中略)とても過酷な単純作業であっても,黙々とやる人と歌を歌いながらやる人がいて,仕事を楽しめるのは歌を歌いながらやる人です。歌うという自分なりのカスタマイズが加わることで,同じ単純作業が違うものになる。すると仕事は楽しくなるのです。(p162)

2019年4月10日水曜日

2019.04.10 松浦弥太郎 『考え方の工夫』

書名 考え方の工夫
著者 松浦弥太郎
発行所 朝日新聞出版
発行年月日 2018.10.30
価格(税別) 1,200円

● 「知的生産の技術」とか「思考の技法」を説いているのではない。仕事に臨むときの心構えを説いている。
 核は,常識に流されるな,ということだろうか。または,最短距離を行くな,ということ。

● 以下にいくつか転載。
 いまは「考えなくてすむ時代」です。なんでも調べられるから,自分で考えて答えを見つける前に,わかってしまったりします。僕にはこれが,とてもおそろしく,自分をそこなうものに思えるのです。(p7)
 これに関しては,今も昔も変わらないと思っている。ネットがない頃でも調べ魔はいた。ネットがあっても検索の手間を惜しむ人はたくさんいる。
 いつだって「考えなくてすむ時代」なのだ。 
 「今日,誰をどうやって助けようか?」(中略)僕の場合,この思考を支えているのは,「親切とまごころと工夫」です。(p26)
 「その指示よりも,実はもっと良い方法があるかもしれない」という視点が抜け落ちると,自分が成長できなくなります。いつまでたっても仕事が「自分ごと」にならず,「やらされているひとごと」のままでは,やがてモチベーションもなくなっていくでしょう。(p32)
 道具というのは,時には鉛筆を使ったりパソコンを使ったりと,使い分けてこそ役に立ちます。(p33)
 みんながいいと思って定着している,一見なんの問題もなさそうな部分を疑ったり否定したりするのですから,メインストリームからはずれたものの見方をすることになります。(p39)
 ぼくは,問題がないなら変える必要はないのではなくて,変えてはいけないと思っていた。じつは今でもそう思っている。
 部分は部分だけで存在しているのではなく,常にシステムの一部だ。問題がないのに部分を変えると,全体がギクシャクしてくる。コンサルタントに頼んでもたいてい上手くいかないのは,そのあたりに理由がある。
 自分で見つけて自発的にやる仕事は,人に頼まれてやる仕事とは比べ物にならないほど工夫の余地がありますし,自分をひとまわり大きくしてくれます。そして,その仕事を探すには,愛情不足を探すのが一番なのです。(p46)
 自分のやっていることは,みんなが現実逃避できるものかどうか?(p51)
 「社会貢献=いま,社会で起きている大きな問題」というとらえ方には,首をかしげることが多いのです。社会貢献とは,もっと身近なものではないでしょうか?(p56)
 いくらAIが発達したとしても,人をしあわせにできるのは人だけです。いかにして人々に愛と希望をを与えるか。愛と希望を提供するために,自分が何を生み出していけるのか。(p57)
 考えることは,希望である。僕はそう信じていて,だからこそ日々,考えつづけています。(中略)考えたあとは,必ずそれを自分の外に出し,表現すると決めています。(中略)しかし注意したいのは,そのアウトプットが単なる情報の伝達になっていないかどうかです。(中略)アウトプットの一番の目的は,人と関わることです。それならアウトプットするべきものは,感動ではないでしょうか。(p64)
 注意しなければいけないのは,無関心。斜に構えた冷めた態度でいると,感動のアンテナが折れてしまいます。子どものように喜んだり,驚いたり,感情豊かに暮らすことが,決して古びない感動をアウトプットしていく一番の方法です。(p69)
 僕は,自分自身が相手になりきることにしています。たとえば五〇代の男声である僕が,二〇代の女性になり一〇代の少年になり,おばあさんにも子どもにもなり,時には外国人にもなります。(p74)
 SNSを見て「大学生にいま人気なのはこれか」と知るよりも,街に出かけて行って,実際に大学生を観察したほうが,はるかに大きな学びとなります。(p76)
 「こんなの恥ずかしい」とか「つまらなそう」と思ったとしても,それがいま,世の中に受け入れられていることならば,何かしら理由があります。「どうせつまらないだろう」と疑ったり,「くだらない」と決めつけたりする前に,話題のもの,はやっているものは自分で試そうと,僕は決めています。(p77)
 相手の問題をどれだけ考えられるかが,自分を他の人と差別化する方法ではないかと僕は思っているのです。(p86)
 もしも成長したいなら,全勝してはいけません。競争において,勝つことだけにこだわっていると,小さくまとまってしまいます。(中略)負けるということはプライドが許さなかったり,苦しかったりつらかったりしますが,負けることでしか学べないことが数多くある。(p99)
 会社にいる時間が八時間だとしたら,八時間,精いっぱい働かなくてもいい。僕はそう思っています。八時間ずっと全力投球するのは「考えない働き方」のような気がするのです。(p104)
 生産性にこだわり過ぎると,小さくまとまってしまう。僕はそんな気がしてなりません。(p134)
 これからお伝えする一二の言葉は,僕の成功哲学であり,ゴールデンルールです。誰かの何かを引用した,尊敬する人に教えてもらったなど,そういうことはまったくない,自分自身のオリジナルで考え出したものです。(p141)
 人は,自分の知らないことには興味をもちません。逆に言うと,人は自分が良く知っていることには興味をもちます。(p153)

2018年11月24日土曜日

2018.11.24 松浦弥太郎 『明日,何を作ろう』

書名 明日,何を作ろう
著者 松浦弥太郎
発行所 KADOKAWA
発行年月日 2017.04.21
価格(税別) 1,400円

● パスタ料理がいくつか出てくる。ぼくは市販の乾麺を茹でて,これまた市販のレトルトのミートソースを温めてかければ,充分以上に旨いと思っている。だから,そうしている。
 さすがに麺から作るわけではないけれども,ソースを手作りする著者と,レトルトですませるぼく。基本の姿勢が違うということ。

● 以下にいくつか転載。
 おいしいものほどレシピはシンプルなのだ。(p47)
 「どうして毎日こんなに熱心にディスプレイをしているのですか」と聞くと,おじさんは「働くことを自分がこんなに楽しんでいるってことを,お客さんに伝えたいんだよ。新鮮な食材を売るだけではつまらない。とにかく,人というのは,楽しんでいる人のところに集まるものだと祖父に教わったんだ。(中略)」と答えた。(p120)
 朝,手作りのジャムがテーブルにいくつも並んでいる光景をぼんやり見て,ああ,なんてささやかな,しあわせなのだろうと思う。そして,たったそれだけのことだけれど,そのジャムが手作りであるという贅沢を思い知る。(p155)
 料理のおいしさとは,口に入れた時は,それが何味なのかわからないくらいの淡さがよくて,鼻や舌や喉の感覚を使って,自分のちからで味を探して,それを見つけた時が「おいしい」ということであると聞いたことがある。(p157)
 それは料理する人の心持ちで変わるように思う。食べている時においしいものを作ろうとするか,食べ終わってからの後味がよいものを作ろうとするかの違いである。または,空腹を満たすだけのものか,心を満たすものにするかとの違いである。(p158)

2018年8月1日水曜日

2018.08.01 松浦弥太郎 『泣きたくなったあなたへ』

書名 泣きたくなったあなたへ
著者 松浦弥太郎
発行所 PHP
発行年月日 2017.05.02
価格(税別) 1,300円

● 娑婆で生活を全面展開しながら,ここまでの高みを目指すのは,出家して修行の環境を整えたうえで悟りに至るのより,はるかに困難かつ価値あるものと思われ。

● 以下にいくつか転載。
 ほんとうは何もかも放り出したいけれど,くちびるを噛んで・・・・・・つぶやく。自分にはできると。(p15)
 今だから言えますが,その頃僕は心療内科に通っていました(治療のために,今に至るマラソンをはじめたのです)。僕はこんな質問をしました。「仕事をつづけるために必要なことはなんですか?」するとその方はこう答えました。「プライドを捨てること。それと,とにかく忍耐です」と。(p30)
 人からしてもらって嬉しいこと。人からされて嫌なこと。僕はこのふたつの感受性を人一倍高めたいと思っています。(中略)正直,自分がとてもつらくなるのはわかっているけれど,仕事というか社会生活,家族との関係にしても,がんばるってこういうことじゃないかなと思う。感謝のありがとうをあらわすって,こういうことじゃないかなと思う。(p35)
 そう,照れないというのは大事なんだ。たまに思うけれど,照れない人には勝てないなぁと。(中略)そう思うならそう思い,そうしたいならそうする。その気持ちを貫くこと。「照れない」というのは,ひとつの「勇気」であり「覚悟」,「ごまかさない」こと。(中略)恥じらいも大事だけど,大事な時は照れない自分でいたい。(p48)
 お金さんを仲よくなるには,お金さんが喜ぶ使い方をすること。お金さんについて学ぶべきことは,稼ぎ方でもため方でもなく使い方です。(中略)人を喜ばせるお金さんの使い方をしなければなりません。みんなが幸せになる「とりかえっこ」を考えねばなりません。(p70)
 人生とは,欲望をちからにして,一本の道を作っていくんだよね。道は細く長いかもしれないけれど,その先はきっとぱあっと広いんだ。(p119)
 怒ってもいいことはひとつも起きない。(中略)怒ってすっきりするとか言うけれど,僕はそのすっきりは,もういらないかな。(中略)でも,意見は言う。服従はしないし支配もされない。迎合もしない。意思決定は自分でする。何もかも自分で選ぶ。きちんと話す。それが僕の答え。怒りを答えにしないだけです。(p123)
 怒らないと,自分の「何か」が変わる。これだけはほんとうです。「何か」って,自分がこうなれば嬉しいなということです。これだけはほんとう。いいことがたくさん起きます(すごい秘密ですこれ)。信じていいです。(p126)
 許して,学んで,前に進むことによって成長できる。だからすべてを許しましょう。そう考えると許しとは,相手のためではなく自分のためのものです。(p129)
 人はどうしても物事を白黒はっきりさせたがるというか,イエスかノー,もしくは良い悪いに分けたくなるけれど,心持ちとして,表と裏をいつも大切にする,もしくは共存させるバランス感覚って必要なんじゃないかな。(p150)
 いいこと,悪いこと,楽しいこと,悲しいこと,正しいこと,間違ったこと,すべての源は「自分」です。自分が体験したいと思っているからいろいろな出来事に出会います。(p153)
 冷めていくのが普通なんです。(中略)だからこそ,冷めたことに,あきらめたり,悔やむのではなくて,冷めたことに気がついたら,すぐに,少しでも温め直そうと思うのが大事で,そういう心持ちを忘れてはいけないと思うのです。(p155)
 しあわせってあたたかさだと思う。(中略)時間がかかっても温め直すって大切なんだ(p157)

2018年7月29日日曜日

2018.07.29 松浦弥太郎 『ご機嫌な習慣』

書名 ご機嫌な習慣
著者 松浦弥太郎
発行所 中央公論新社
発行年月日 2018.02.25
価格(税別) 1,300円

● 松浦弥太郎さんのエッセイ集。自分の「あるくみるきく」を集めてみたとのこと。
 『暮しの手帖』から新天地に移って,めまぐるしい変化を体験し,それも一段落したあたりのものだろうか。落ち着きというか安定を感じさせる。書くことによって自分を支えるというような,切羽詰まった感はないようだ。 

● 以下にいくつか転載。
 一日が終わり,ふうと一息つき,ベッドに入ったとき,自然としていることがある。あらゆるものやこと,人,家族,社会など,そういう自分に関わるすべてのことに,手を合わせ,感謝をすることだ。「今日も一日ありがとうございました」と必ず言葉にする。(p20)
 彼と一緒にいると,一分間に一〇回を超えているのではと思うほど頻繁に「すげー!」と言われるので,なんだか自身が湧いてきて元気にもなる。だから,彼のまわりはいつもたくさんの人が集まっていて,わいわいがやがやと笑顔でいっぱいなのだ。(p27)
 ふたつめの習慣は,「はじめてのこころ」。これも僕にとってのスタンダードでありベーシックだ。とにかく大事なのは,毎日,何事に対しても,うきうき,わくわく,どきどき,一生懸命な,初心者でいることです。(p37)
 成長とは,当たり前のことの精度を高めることであり,当たり前のことができた上での,新しい気づきや,新しいチャレンジなのだろう。(p45)
 おおよその人は,失敗の本質を見極めようとしないから,失敗した段階で,あきらめるか,否定するかで中絶させてしまう。せっかく物事を動かしたのに,ひとつやふたつの結果だけで止めてしまうという,これこそ,もったいないこと,をしている場合が多い。(p50)
 僕の知るところ,何かしらで成功という結果を出している人ほど,話を聞くと,その失敗の数は尋常ではなくて驚かされる。(p52)
 そんなふうに,壊れたら直すことを繰り返していくうちに,ものとの関係がだんだんと深まっていく。絆という,しあわせがある。(中略)壊れたら捨てるとか,壊れたらそのままにするとかは,もってのほか。自分自身も含めて,あらゆるものすべてが壊れるのは当然だから,その都度しっかり修復に励むというのが,大げさなようだが,僕らの人生そのものではなかろうか。(p56)
 最近になって僕は,本が好きということは,人が好きということ。そして,読書というのは,人の話に耳を傾けることであるとわかった。(中略)友だちと呼べる本があるということは,なんてすてきなことだろうと思っている。(p59)
 ある種の仕事の給料の額は,感動の量と比例するのではないかと思いついた。たとえば,お笑い芸人がテレビ番組を通じて,笑いという感動をたくさんの人に与えた場合,テレビの特性として,その数の多さは尋常ではないだろう。だからこそ,人気のお笑い芸人の給料が多いのは納得できる。(p62)
 文章を書くときにいつも意識しているのは,読んだ人が,その文章を読みながら,いかに書かれたものをビジュアル化できるかである。要するに,言葉と文章を使って,どれだけ具体的に映像を浮かばせられるかである。(p70)
 自分が言葉で伝えたいことがあるなら,A4サイズの紙でよいので紙芝居を作ってみて,それをまずは自分で眺めてみる。そして本当に面白いかどうかをよく考える。(p71)
 言葉とは,そして文章とは。いかに賢くならず,いかに上手にならないようにと心掛けることが,僕にとって最も大切なことである。文章を書いた後に,必ず確認することがある。それは文章を声に出して読んでみることだ。(p72)
 僕が書いているものも,すべて僕だけのものではない。僕が誰かの真似をしたり,それによって経験したり,何かから影響を受け,学んだことばかりだ。一言だけ言えるとしたら,決してどこかから盗んできたものではないということだ。自分のちからで見つけ,誰かに与えられたものなのだ。(p77)
 味とは与えられるものではなく,自分から探して見つけるもの。だから,おいしくないのは自分のせい,他人のせいにはしない,と,よく言われて僕は育った。(p112)
 よい道具とは,人が人を助けようという精いっぱいの真心と工夫によって作られたもの。それはすなわち手仕事の美しさを放ち,使えば使うほどに,深いきずなが生まれ,日々の暮らしを支えてくれるもの。よって,大切にし感謝し,よき使い手になるべし。(p120)
 日々の暮らしに,しあわせを増やすことは,そう簡単ではありません。でもそれは,料理をすることで手に入れることができるのです。健康もそうですし,いろいろなことへの意思決定や,対応力,観察力,ものを選ぶちからなど,たくさんの知恵と工夫が,料理という学びによって,しあわせを生む小さな種になるのです。(p127)
 髪は伸びる前に切る。理容店は,一番客になれというのは父の教えだ。(中略)おいしいものに出合ったら,とことん食べ続けるというのも父の流儀だ。食べ続けると,その味のおいしい理由が必ずわかる。理由がわかると,もっとおいしくなると父は言った。(p136)
 父は僕に「ここ(「ウエスト」)で働いている人たちの言葉遣いをよく聞いておきなさい。姿勢と歩き方をよく見ておきなさい」と言った。「どうして?」と僕が聞くと,「きれいなんだ」と父は答えた。(p138)

2018年7月28日土曜日

2018.07.28 松浦弥太郎・ワタナベケンイチ 『まいにちをよくする500の言葉』

書名 まいにちをよくする500の言葉
著者 松浦弥太郎(文)
   ワタナベケンイチ(絵)
発行所 PHP
発行年月日 2018.01.05
価格(税別) 1,500円

● 暮らしは学びであり,したがって感謝の対象である,という松浦さんが,アフォリズムよりもっと短い言葉を500個出して1冊に編んだもの。松浦さんにしてもさすがに500個はきつかったのではないか。

● 「問題を表現してみよう そうすれば半分は解決する」というのに付箋を貼った。

2018年7月12日木曜日

2018.07.12 松浦弥太郎 『孤独を生きる言葉』

書名 孤独を生きる言葉
著者 松浦弥太郎
発行所 河出書房新社
発行年月日 2017.12.30
価格(税別) 1,000円

● 過去のエッセイ集のアンソロジーかと思う。いずれも基本的な心構えなのだ(と思う)が,なかなかできないことばかりだ。はいわかりました,と実行できることであれば,わざわざ本にすることもないわけだが。
 多くの人が同じことを語っているのかもしれないが,松浦さんの文章で読みたいものだ。

● こういうものから転載するのも何なんだけど,以下にいくつかを。
 プライドから自由になったとき,「自分らしさ」を超えた自由が生まれます。(p55)
 いちばん大切なことは,「正しくないこと」を否定しないこと。「正しくないこと」を否定するのは,正しいことではないのです。(p57)
 まず自分から自分の価値観について語りましょう。(中略)心をひらかなければ,相手も心をひらいてはくれないものです。(p72)
 最後までやさしくできないのなら,やさしい言葉を口にしてはなりません。成長を見守る覚悟がないのなら,厳しい言葉を投げつけてはいけません。(p91)
 自分を満たす前に,相手を満たせば,たいていの人と良きつながりをもてます。(p97)
 勇気は頭からではなく,足からわいてくるものです。(p108)
 すべての大切なものは世界からの預かりものであり,自分のものなど,実は何ひとつありません。たとえばお金を持っているのなら,「お金を使うという役割」を世界から与えられているだけです。(p109)
 掘り続けた先に宝物が眠っていてもいなくても,掘り続けた一途さは,決して無意味ではありません。(p114)

2018年3月5日月曜日

2018.03.05 松浦弥太郎 『自分で考えて生きよう』

書名 自分で考えて生きよう
著者 松浦弥太郎
発行所 中央公論新社
発行年月日 2017.02.25
価格(税別) 1,300円

● 『暮しの手帖』からクックパッドに移り,「くらしのきほん」をスタートさせた。環境が大きく変わったろう。松浦さんって,もともとITに対してのめり込んでいた方ではなかったと思うんだが。どちらかといえば,アナログ派というイメージだった。情報カードにペンシルで手書きというイメージ。

● その松浦さんがクックパッドに移ったんだから,文字どおりの新人の気分だったろう。が,機器の使い方だの,ネットの取り扱いなんぞというのは,すぐに慣れる。
 大切なのはやはりコンテンツ。あとは,本人も言っているけれども,のめり込む度合い。たとえば,更新頻度や間違いの修正に要する時間の短縮など。そういうところで,松浦さんに手抜きはないのだろう。

● といって,本書でクックパッドでのとまどいを詳しく語っているわけではない。松浦流の仕事論,生活論,人生論を本書でも語っている。

● 以下にいくつか転載。
 どんなに立派といわれる仕事や学びよりも,料理や掃除,洗濯という,日々繰り返される家事全般の仕事こそがもっとも尊い行為であり,そこにこそ真実があり,本当の学びや楽しみがある。(p11)
 本来のおいしい味とは,食べながら自分で探して見つけるもので,ひと口食べてすぐにわかるようなものではないのだ。(p15)
 勝負において,圧勝というのは一時は心踊るものである。しかし,圧勝の恐さを忘れてはいけない。というのは,その後に必ず大きな負けも作用するということだ。作用には常に反作用が働くのも自然の摂理。なので,勝ち続けたいなら,たまに負けるのが良い。(p19)
 優れた人は,きっと自分が真似をしたい型を見つけることが得意であるということだ。実はそこに独自性があらわれる。もっと言うと,型を見つけることができたら,目的のほとんどは済んでしまっているようなものである。(p24)
 行き詰ったときは,まわりの人に助けを求めるのが一番いい。もうダメだと思ったら早いほうがいい。(p50)
 英国の老舗靴店で靴を注文したことがある。その店の主人に靴の手入れで大切なのは何かと聞いたら,見えるところではなく見えにくいところの手入れをすることだと言った。とくにヒールだという。(p71)
 おもてなしはしてもらうのが当たり前ではなく,お客としての協力があってのこと。客ぶりの良い自分であれば,いつでもどこでも,すてきなおもてなしを受けることができるだろう。(p73)
 「ありがとうを一〇〇回言うことが,夢や希望を叶える最高の秘訣なんだよ」 知人は実業家として大きく成功している人だから,言葉に説得力があった。(中略)「いや違うんだ。ありがとうを言うのは人だけでなく,モノや植物,空や太陽というような,どんなものにも,ありがとうと言葉をかけるんだよ。そうすれば一日に一〇〇回言うのはむつかしくはない」(p88)
 この知人っていうのは,斎藤一人さんではないかと思った。
 女性が強くなっていくと,さらにわがまま坊やな男性が増えるに違いないのだ。(中略)世の女性たちよ。男を甘やかさないでほしい。(p93)
 自宅であっても退屈したらパソコンを開くのではなく,靴を履いてぶらっと外に出るほうが,どれほど豊かな時間の使い方なのかと思う。(p211)
 餃子は,餡に味つけをして,できればタレを使わないほうがおいしいのだ。(p231)
 蕎麦はわざわざ音を出してすすって食べるのがよいとされているけれど,それは違う。(中略)すする音が出てしまっても許される料理とされてきただけ。(p233)
 「料理は結局,材料である。材料を選ぶことである」という,芸術家の北大路魯山人の言葉がある。(中略)豊かな暮らしとか,心地良い暮らしとか,確かな仕事,価値のある仕事というのは,いかにして良い材料を知り,選ぶかということなのだろう。(p250)

2018年2月25日日曜日

2018.02.25 松浦弥太郎 『おとなのきほん』

書名 おとなのきほん
著者 松浦弥太郎
発行所 PHP
発行年月日 2017.09.04
価格(税別) 1,300円

● 50歳になった著者が,「おとな」の仕事の仕方,生活のあり方について,自身の考えを述べたもの。
 といっても,基本はこれまでの松浦さんの著書と変わるところはないように思う。50歳になったら変節したのか,と感じるところはないはずだ。

● たしか邱永漢さんだったと思うが,50歳だろうと60歳だろうと70歳だろうと,誰もが初めてなる50歳,60歳,70歳なのであって,50歳としては新人なのだと語っていた。60歳もしかり,70歳もしかり。なるほどと思ったことを思いだした。
 だから,50歳になればそれが初めての50歳なのだから,誰もが戸惑うものなのだろう。

● 孔子の『論語』以来,年代論が賑々しく語られてきた。だけども,あんまり区切らない方がいいのかもしれないんだよね。50歳になったからといって,特に何をどうするというのは,あえて考えないという行き方もあるだろう。
 考えなくても,身体は正直だから,近くのものが見えなくなるし,階段を登るのは億劫になるし,ITの動きについていくのはしんどくなる。それに任せるか抵抗するかは人によるが(世間的には抵抗する方が推奨されているだろう),そうしたひとつひとつに自分なりに対処していけば(あるいは,諦めれていけば)それでいいのではないか,とも思う。

● 以下にいくつか転載。
 商品として考えた場合,おとなの多くは“新しさの全盛期”を過ぎています。もしもみずみずしい赤いりんごのような商品であれば,“新しさの全盛期”を過ぎたら価値はありません。(中略)しかしそれがりんご酒のような商品であれば“新しさの全盛期”を過ぎても価値は失われません。時を経て熟成され,おいしさを増すこともできる。(p19)
 りんご酒になるための準備は,しかし,50歳になってから始めようと思っても遅いのかもしれない。というか,自分をりんご酒にするにはこうすればいいという,万人に共通の方法論などないのだろう。
 そこは人それぞれとしても,りんご酒になるための発酵過程は,じつはかなり若い頃から始まっているのかもしれないよね。
 面白さに知識を付け加える。これもおとなのコミュニケーションです。ただし,これが逆になると,すべてが台無しになります。(p22)
 僕らはコンテンツを見てもらうとき,ユーザーから時間をいただいています。時間とお金というのはとても似ていて,人は何に時間とお金を使うのかを考えると,「自分を助けてくれるものに使う)という答が浮かんできます。(p27)
 いつでも,どんな状況でも,人を笑わせることができる人は素晴らしいし,僕もそうなりたいと憧れています。笑わせるセンスをみにつけること。これはおとなの教養といってもいいでしょう。(p30)
 「また会いたい」という気持ちになる相手。それは面白くて楽しい人です。「もう一度会いたい」と別れてすぐ思う相手。それは自分の話をすごく大切に聞いてくれる人です。(p37)
 自分にもしもまだ伸びしろがあるなら,新しい人とつきあったほうがいい。まだ伸びしろがあると気づかせてくれる人,その伸びしろが伸びるように支えてくれる人は,新しい友だちです。自分では,自分の伸びしろを伸ばすことはできません。ずっと仲良くしてきた親友な仲間も,伸びしろを教えてはくれません。(p42)
 「この人と会ってよかった,友だちになりたい」と感じる人には共通点があります。みな,仕事が好きな人たちです。どんな仕事でもいいのです。(p46)
 今でも守っているお金とのつきあい方が,いくつかあります。まずは,「お金が好きだ」と思うこと。はっきりそう口にすること。それだけお金を大切に考えるということです。そしてもう一つは,矛盾しているようですが,「お金を追いかけない」ということ。(p83)
 頼まれた以上の仕事をする。それがお金をたくさん稼ぐ一番の方法です。(p86)
 お金の使い方についても,僕は基本を守っています。それは,お金を友だちと見なし,お金が喜ぶような使い方をするということ。「えっ,僕をそんなことのために使うの?」と“お金さん”という友だちががっかりしたりすることには,お金を使わない。(p90)
 無限だと思っていた時間が有限だという現実が突きつけられる年齢になったら,やりたいことだけに絞らないと,チャンスが来たときにトライできなくなります。(p97)
 僕なら,本当に迷った時は時の流れに任せます。激流に巻き込まれてしまったら,体の力を抜いて泳ぐのをやめます。自分の中の思考をとめる。それでも自分のまわりはどんどん動いていくので,それにゆだねてみるのです。(p98)
 五十歳を過ぎた僕が,おとなのおしゃれを考えたときに大切と思うこと,それは,品質とか,組み合わせとかではなく,体を鍛えることなのです。(中略)だらしない体では,着こなせない。むしろ,服に対して失礼なのではないかとすら感じています。(p107)
 去年夢中でやっていたことを,今年はさっぱりやっていない。それも大いに結構だと思うのです。新しいことを次々とやる秘訣は,「やる・やらない」の境界線を作らないことだと思います。(p117)
 どんなに偉くて権力を持っていても,すべてを手にれているように見える賢くて美しい人でも,人間はみんな弱いと僕は思っています。(中略)みんな弱くて困っていて,いつも何かに助けてもらいたいと思っているし,自分を救ってくれるものを探しています。(p134)
 正直に打ち明けてしまうなら,僕が朝四時半に起きるのは,べつに夜十時に寝ているからではなく,あらゆる不安が大きくて目が覚めてしまうという部分も少なからずあります。(p136)
 みんなが「こんな感じ」とか「こういうふう」と思っているのにもかかわらず,まだ誰も言語化してないような大切なことを,仕事を通じて言語化したい。(中略)自分の言葉によってみんなの気持ちに役に立つことが,僕のいろんな仕事の目的です。喜んでもらう,気づいてもらう,役立ててもらう。(p137)
 やっぱり僕は偉い人にはなりたくありません。僕はプレイヤーをやめた評論家にはなりたくありません。(p144)
 とても幸せで,恵まれているからこそ,お返しをしなければいけない。だから僕は,もっと成長しなければいけないのだと。(p155)

2017年9月13日水曜日

2017.09.13 松浦弥太郎 『「自分らしさ」はいらない』

書名 「自分らしさ」はいらない
著者 松浦弥太郎
発行所 講談社
発行年月日 2017.01.25
価格(税別) 1,300円

● 本書で説かれていることをひと言で要約すれば,自分らしさ(と自分が考えるところのもの)に捕らわれるな,ということ。
 そのうえで,「心で考える」「想像力と感受性を働かせる」こと(p34)が重要だよ,と。

● 以下にいくつか転載。
 「何かを始めたいなら,『自分らしさ』など捨てたほうがいい」 このルールを発見した時,ぼくは自由になりました。(p3)
 ずっと休業していたのに,ある時点でぱちんとスイッチを切り替えるように,心で考えられるようになる人もいます。そういう人はどんどん伸びていくし,これまでつかってなかった能力が一気に吹き出すようです。「そのスイッチとは,なんだろう?」 僕なりに考えた答えは,プライドを捨てること。(p35)
 意思決定する際の「核」はおそらく,情報を理性で分析する性質を持つ,頭の中にはないのでしょう。感受性や洞察力などを備えた心の中にこそ,意思決定の「核」があるのです。(p40)
 根っこには愛情が必要です。感受性や想像力から生まれたものだとしても,愛情を伴わない行動は,相手に届かなくなります。また,(中略)愛情がなければ感受性も想像力も働かないものです。(p47)
 僕はメディアでコンテンツを作ったり,こうして文章を書いたりしているわけですが,絶えず注意しているのは,「教えてあげよう」あるいは「このメッセージを伝えよう」と思わないこと。そう思った途端,何一つ成し遂げられず,すべて無駄になるような気がしています。(p54)
 頭だけで考えて,いくら斬新なこと,面白いことを発信しようとしても,既存のメディアよりも優れたことはなかなか出てきません。メディアや起業は頭をつかうプロフェッショナルが集まり,アイデアを送り出すシステムを持っているのですから,同じやり方を一人でやっても,なかなか難しいものです。しかし,心の働きであれば,常に一対一の試合となります。プレイヤーその人の心のあり方が問われます。(p55)
 さんざん雑誌を作り,今もメディアをやっていて実感するのは,「人はまったく見慣れない初めてのものに対して,一切,興味を持たない」ということ。なぜなら経験値がないから,解釈しようがないのです。(中略)人は,自分がよく知っているものをもっと知りたい気持ちが強いから。まったく知らない新しいことを知るよりも,よく知っていることのなかの新しさを知りたいのです。(p58)
 世の中のみんなの欲しいものや困りごとと,自分自身の欲しいものや困りごとは,イコールではありません。世の中の求めているものは,自分の感覚の角度の外にあることのほうが多いはずです。(p67)
 長く残っている会社は,「自分らしさの更新」をしています。馬具づくりからスタートしたエルメスが,「自社らしさ」にこだわって鞍や鐙だけつくっていたら,今の一流メゾンでいられたでしょうか? 答えは明白です。(p85)
 変化のスピードに対応する訓練として最適だと思い,自分プロジェクトとして僕が取り組んでいるのは,「一瞬で慣れる」ということ。その状況,その環境,その場所に,すぐに慣れること。時間をかけて馴染んでいくのではなく,スタートしてすぐに慣れることを自分に課しています。(p85)
 自分らしさを捨てること。素直でまっさらな自分になれば,いろんなことを受け入れ,いろんなことを猛スピードで学べ,一瞬で慣れることができるでしょう。(p88)
 読む人がどう捉えるか,どう受け取るのかを想像して書く。誰も傷つけないように,誰も悲しまないように,注意して書く。その答えをどんどん自分で突き詰めていくとふと思ったことがあります。「結局、僕は,自分が愛している人のために文章を書いているんだな」読んでくれるのが知らない人で,不特定多数の相手だとしても,僕はその人たちのことを愛しています。愛している人に対してどう書くかをいつも心で考えています。(p126)
 僕たちはなんとなく,「冷静沈着なのが頭で,自由気ままなのが心」というとらえかたをしがちですが,うまくいっていない兆候に敏感なのは,心のほうです。(p135)
 僕は前向きな自己否定を続けているので,いつもトライアル&エラーです。人より失敗の数は多いけれど,それだけトライしている証拠なので,構わないと思っています。(p143)
 「人事異動はくじ引きでいい」 僕がメンターにしている経営者が,ある時,こうおっしゃっていました。(中略)彼はこんな話もしてくれたのです。「能力のある人というのは,何でもできるんです。一流の羊飼いとして暮らしてきた人を草原から連れてきて会社の社長にしても,本当に一流の羊飼いなら,なんとかこなしてしまうものだよ」(p143)
 僕が尊敬してやまないメンターの一人は,真摯で賢い事業家です。彼のもとにはいろいろな人やメディアから「ぜひ,話を聞かせてください」という依頼がくるのですが,全部断っているのだそうです。(中略)「僕は言うことがしょっちゅうころころ変わるから,だめなんですよ」(中略)毎日いろんなことに興味を持って,いろんなことを学んでいるから,考えがそれに応じて変わってしまう。そこを指摘されるのは嫌だから,応じられない,と。(p146)
 その先に人がいてこそ,僕たちは夢中で,時間を忘れて打ち込めるのです。(中略)目的のその先に人がいる。それこそ,心をつかえる一番の理由です。なぜかというと,人はそこにしか幸せを見つけられないから。役に立つこと,ほめられること,必要とされること,愛されること。人が幸せを感じるのは,この四つしかありません。(p167)

2017年7月27日木曜日

2017.07.27 松浦弥太郎 『ほんとうの味方のつくりかた』

書名 ほんとうの味方のつくりかた
著者 松浦弥太郎
発行所 筑摩書房
発行年月日 2014.03.25
価格(税別) 1,300円

● 引き続き,松浦さんの“人生読本”。

● 以下にいくつか転載。名言集を作っているようなものだな。
 今,僕がいちばん怖いと考えているのは,収入の格差などではなくて,知識や情報,意識の格差です。たとえば,じつは自分の時間やお金や人生が,何らかの見えない形で,この社会に搾取されているかもしれないのに,「そんなこと私には関係ない」「わからない」「今のままでいいのです」と言っている人が意外に多いことを、もっとみんな考えてもよいのではないかと思います。(p19)
 ノートに貯まっていくのは,感動したことと嫌だったことのどちらかである,ということがわかりました。要するに,うれしかったこととうれしくなかったことしか覚えていないということです。(p38)
 自分が好きでもないのに,相手に自分を好きになってくれというのはおかしな話です。(中略)何でも好きになろうという姿勢がないかぎり,関係性というものは生まれません。(p49)
 素直になるために僕が気をつけているのは,まず人の話を聞くときは,相手のすべてを信じることです。ですから多くの人が口ぐせにしている,「何で?」とは聞きません。(p50)
 世の中の人はみな忙しいですから,「あそこにおいしい店ができたよ」と言っても,「ああ,そうなんだ」でおしまいです。たいていの人は,確かめません。でも成功している人は違うのです。できるだけすぐにきちんと自分で確かめるのです。(p51)
 ダメなところを直す方法ではなくて,人にはダメなところをカバーするための得意な能力というのが,絶対に存在するのです。いわゆる人の長所というのは,じつはそれなのだと思います。(中略)短所は直りません。死ぬほどの思いをしたなどとトラウマになるようなことがあれば直ることもあるかもしれませんが,短所は直らないものです。と言うよりも,直す必要がないのです。それがあっての長所だからです。(p55)
 人は第一印象をとても大事にするもので,たいていの場合,目の前に見えているものを信じて判断します。(中略)つまり残念ながら,真面目や一生懸命さがあっても,服装という見た目がだらしなくては,なかなかそれが伝わらないのです。(p64)
 あるとき尊敬している年上の女性が,「女の人をきれいにする秘訣は何ですか?」という質問に応えて,こうおっしゃっていました。「どんなに体型が悪くても,顔の造りが悪くても,女の人は髪型です。髪型と髪の手入れをして,きれいな髪できちんとしていたら,みんなきれいに見えますよ」。(p66)
 僕は礼儀作法とマナーというのは,自分を助ける奇跡を起こす魔法の一つだと考えています。そのくらい大切なことだと思うのです。(p69)
 相手の心に届くお礼をするためには,筆まめであることです。筆まめというのは福を呼びます。何かをいただいたら,必ず,その日のうちにお礼状をかく(中略)お礼状というのは一日過ぎてしまったら,もう送るチャンスはないのと同じです。(p71)
 チャンスというのは改まった場ではなくて,日常のなかに現れるものなのです。(p74)
 時間について僕がとても大切にしているのは,なによりメリハリをつけるということです。(中略)一日中,全力で走るわけにはいかないのが現実です。(p77)
 いちばんいけない時間の使い方は「なりゆきまかせ」です。なりゆきまかせにしていると,結果として「やらされている」という犠牲者精神が生まれると思います。(p78)
 時間という友達をきちんと管理しておくために,僕は食事の時間をしっかり決めています。(中略)食事なんて,空いている時間にさっと食べればよいと考えている人に限って,仕事のしかたもだらしなくなりがちに思えます。(p79)
 自分の時給を算出してみて,僕は少なくともその三倍は会社の数字に貢献したいけれど,そのためにはどうしたらよいか,と考えます。働くならば,そのくらい会社に貢献したいと思って仕事をしなければ,仕事の面白みがないとも言えるでしょう。(p81)
 あなた自身がお金を好きにならないと,お金もあなたを好きになってくれません。お金を好きになるというのは,お金を深く学ぶということで,これは人を好きになるのと同じです。(p86)
 浪費というのは人間にとって必要なものだと僕は思っているからです。(中略)人間はストイックになりすぎると,人としてのやわらかい部分を失っていくものです。(p87)
 知識とは,自分で経験したり,考えたり,発見して得るものであって,本来,少人数のためのものであるはずなのに,その知識がはなから多数派に向かって放たれているというのは,考えたり,発見するという人間としての生きる喜びを一つ手放すようなことではないだろうか,と思います。(p94)
 道具とは自分の行為の機能を助けるためのものですから,えんぴつ一本にしても,自分で選んで,日々手入れをします。ですから僕の場合,道具はむやみには増やしませんし,日々生かされないものは自分の道具として選びません。(p95)
 現代は情報化社会ですから,電車に乗っても,街を歩いても,どこにでも憶測という名の情報が溢れています。(中略)でもそれを正しくて真実だと思っていると,とんでもないことになります。何でも知っている人になってしまうと,一見,知的で豊かに見えますが,その人の人生は先細りしてしまうような気がします。(p97)
 自分自身で考えることなしでは,本や人が教えてくれることは自分の身にはつきません。(p102)
 人は楽しそうにしている人のところに集まるものです。楽しんでいる人のことが気になるものです。なぜなら,自分もそれに影響されたいからです。(中略)人が集まるということは情報も集まります。(p103)
 かわいげや愛嬌というものは,弱さやかっこ悪さや愚かさなど,そういうことを受け入れ,愛することから始まるのだと思います。強くなければいけないとか,賢くなければいけない--そのような考え方は,逆に自分をとても不自由にします。(p104)
 かわいげや愛嬌というのは,いろんなものと関係を持つための接着剤のようなものかもしれません。からからに乾いた人になってしまうと,なかなか人とくっつくことができないものです。(p104)
 面白さというのは何なのでしょう。僕は「ヘン」ということではないかと思っています。ヘンなことは面白いのです。ヘンだから面白い。(中略)なぜなら人はヘンなものしか好きになりませんから。あたかも正しいことを心から好きになったりすることはないのです。(p105)
 家庭料理とは,外でお金を出しても食べられないものです。(中略)家庭料理に技術はいりません。必要なのは知恵と愛情です(p118)
 自分を嫌いな人たちや自分を批判している人たちに対して,僕がこうしようと決めていることは,とにかく「認める」ということです。無視をしないことです。なかなかできそうでできないことですが,それが大事なのです。敵だった人が何かの拍子に「味方」になる体験はみなさんにもあると思います。(中略)そのためには、まず僕自身が心を閉じないということです。(p138)
 どんな方法で何をしようとしても,自分が一途であるというのは,大きな力になり得るという気がします。(p140)
 楽しさは人が与えてくれるものではありません。自分の工夫によって生まれるものです。(p145)
 完成一歩手前でも一からやり直すことができる勇気と柔軟性と気力を持っているかどうかということなのだとも思います。仕事において,もしもあなたが一歩でも前に出たいのであれば,それしかないというのが僕の実感です。(p145)
 底力とはいったい何でしょうか。僕は,日々の仕事における当事者意識なのだと思っています。自分のことだと感じられるか感じられないかということです。当事者意識を持って仕事をしないかぎり,よい仕事はできないでしょうし,よい仕事につきものの高いリスクも背負えないものです。(p146)
 運を味方にするために,僕には勝手に決めている条件というのがあります。まずは自分が「健康で元気であること」,「笑顔を絶やさないこと」,それから,「何事からも逃げないこと」です。とくに最後の,「逃げないこと」は大切で,物事から逃げると運は確実になくなります。逃げるよりも,むしろもがくことをすすめたいです。(p152)
 もう一つ,運を味方にする条件があるとするなら,それは,「人のせいにしない」ということです。よいことも悪いことも,すべて自分が原因だと考えることです。(p154)

2017年7月25日火曜日

2017.07.25 松浦弥太郎 『ベリーベリーグッド』

書名 ベリーベリーグッド
著者 松浦弥太郎
発行所 小学館
発行年月日 2015.12.06
価格(税別) 1,300円

● 仕事に対する構え,暮らしに対する構え。これを話材にして,松浦さんはかなりの数の著書を出している。当然,内容は重複するはずだけれども,そのことをあまり感じさせないのは不思議だ。
 ひょっとすると,重複はないのか。って,そんなことはないだろう。読む側の忘却効果もあるんだろうけど。

● 本書も新鮮な気分で読めた。以下にいくつか転載。
 手紙の目的とは,相手に喜んでもらうこと。嬉しくなってもらうこと。(p10)
 「料理で覚えるべきことは,技や知識ではなく,愛情の表現です」と教えてくれたのは,料理家のウー・ウェンさんだ。(p23)
 ロンドンにいれば素晴らしいアイデアが生まれるのか,ニューヨークにいれば斬新なアイデアが生まれるのか,それは迷信のようなことで,どこで何をしていようとも,アイデアとは,過去の記憶から発掘するようなもの。(中略)すなわち,アイデアとは思い出すものである。となると,人生において,どれだけ多くの実体験と経験を記憶しているのかが大切と言えよう。(p38)
 僕は彼女にこう言った。二年間も暮らしていれば,あなたしか知らない真実や物語が,きっとたくさんあるはず。なぜそれを書かないのかと。一線を超えて,あなたが心を開かない限り、何を書いても僕は信用できないとも。そう,文章を書くという行為はつらいこと。つらいけれど,書きたいことがあるというのが物書きなのだ。(p41)
 旅をしているのに,一人きりの時間をいつもと同じように過ごしているだけ。こういう旅が僕は好き。(p51)
 僕にとって旅先の朝食くらい楽しみなことはない。(p53)
 その朝食屋には毎日通う。浮気はしない。これが大事。(中略)毎朝,通える朝食屋が見つかると,旅に暮らしが加わる。旅に暮らしが加わると友だちができる。(p54)
 コミュニケーションにおいて,人は皆,常に自分との同意見を他人に求めている(p80)
 料理は,味や見た目よりも,食べやすさがもっと大切なんです(p83)
 何かを変えたければ,まずは先に自分を変えること。賢者の言葉だ。(p113)
 自分のからだが,不摂生のためにだらしなく太っていたりしていたら,勝負服も生かされないと思うのです。(中略)すてきな服というのは,すてきなからだでなければ,すてきに感じられないからです。(p119)
 見た目の勝負というのは,いざという時,裸になって立ち姿で勝てるかというのがほんとうのような気がする。(p120)
 ぱっと見では見えない,かくれているきらきらした輝きを,いかによく見て発見するかである。すてきなことや美しいことはそうやって見つけるものだと思っている。(p125)
 幸運とは,いつも誰かという人が運んできてくれるもので,自分一人で手にできるものではないということだ。幸運とは,拾うものではなく,必ず誰かが手渡してくれるもの。(p131)
 時たま練習するのは足し算にしかならないが,ちょっとでもいいから毎日続けていると成長は掛け算になるという言葉を僕は信じ続けた。(p141)
 「私には人より優れているところなんて何もありませんよ」と言う人であっても,少し一緒にいれば,すぐに「ここですよ」と見つけることができる自信が,僕にはある。(p148)
 本来,どんなことにも,それなりに要する「ちょうどいい時間」があり,「ちょうどいい時間」から生まれる,喜びや楽しさ,美しさ,クオリティというものを,忙しさを理由に手離してしまってはいけないと僕は思うんだ。絶対に。(p153)
 人は人を愛することによって,ほんとうの意味で自分を愛することができる。そんな仕事であってもその先には必ず人がいる。その人が,人に愛される人になるために,自分に何ができるのか。(p159)
 落ち込んだ時は,行けるところまで,とことん落ち込めばいい。そこに次のステップへの扉の発見があるのだから。我慢した中途半端な落ち込みよりも,どこかをつかんでいる手をぱっと離して,とことん落ち込んでみる。(p174)

2017年7月21日金曜日

2017.07.21 松浦弥太郎 『僕の好きな男のタイプ』

書名 僕の好きな男のタイプ
著者 松浦弥太郎
発行所 講談社
発行年月日 2014.11.27
価格(税別) 1,300円

● 引き続き,松浦さんのエッセイを読んでいく。何とかマネをしたいというのではなく,一服の清涼剤を服用するという感じ。

● 読書はそれでいいと思っている。1冊の本との出会いが自分を変えた的なことは,少年期を含めてもそうそうはないだろう。滅多にないことだから,あるとそれ自体が本になったりするのだ。
 ましてや,大人が本で変われるなんて,ぼくには信じることができない。

● 以下にいくつか転載。
 人間というのは言葉でいくらでも酔える動物です。それなりのスキンシップや,それなりの言葉や,態度による愛情表現はなくてはならないと思います。(p17)
 一人で生きていけない人が,人と一緒に何かできるはずがありません。一人でいられない人が,二人でいられるはずもないのです。(p22)
 ルールなんていらない。ルールだからやるのではなく,自ら気づいてやりたい。(p33)
 偶然は,目的をもたない人に訪れない。(p52)
 旅というと,「自由で何でもあり!」という雰囲気を感じてしまう人もいるかもしれませんが,その刹那が楽しいだけで,何も残らなかったりします。(中略)観光というのは飽きるもの。遊園地のアトラクションを順番にこなすように,つくられたお楽しみをクリアしていくだけ。(p53)
 避けるべきは働くのが嫌いな男。働くのが嫌いな人は,他人に興味がありません。なぜなら働くというのは,社会のため,人のためになること。仕事とは,その先にいる人を喜ばせるために,自分を役立てることです。(p62)
 友人の女性に「どういう男性がタイプですか?」と(中略)聞くと,「才能のある男性が好き」と即答しました。「何かひとつでいいから,私が絶対かなわないと思う才能のある人がいいな。私はそういう人を尊敬する」と話を続けました。(p68)
 「この人にはかなわない」と痛烈に感じる瞬間。それは「相手は本気だ」と感じたときです。どんなことがあろうと,どんな場面であろうと,本気の人が勝ちます。(p74)
 世の中は,二つのタイプに分かれます。量を欲しがる人と,質を求める人。人間関係ですらこれは同じです。(中略)人間関係において質を求めるなら,大切なのは個であることです。孤独というのは,人が生きていく絶対条件だと僕は考えています。(p76)
 人にいばるすてきな大人を,僕は見たことがありません。(p82)
 何でも知っているけれど,知らないふりをする。これぞ,ダンディズムに通じる男のあり方だと思います。(中略)自分が知っているつもりでも,実はたいして知らない。知っていても,さらに深いところがある。(p84)
 個人的で小さなことにとらわれていると,大きなことはできない。自分のプライドなんて後まわし,最優先することじゃない。(p89)
 家族からも仕事からも切り離された一人の人間として,やりたいことがある。これはなんとも素晴らしいことだし,野心がある人は個を保っているので,生活感がにじみ出てこないのではないでしょうか。(p99)
 真面目なだけの男はつまらないものですが,真面目に欲が加わった男は人をひきつける魅力をもちます。なぜなら,欲というのは,命に直接つながった部分。おいしいもの,美しいもの,どきどきするものに欲を抱くのが人間です。(p102)
 世の中のすべては,人を助け,人の役に立つことで成り立っています。(p108)
 客である自分のほうから挨拶するのです。スーパーマーケットでもコンビニエンスストアでも,お店の人が言う前に「ありがとうございます」と頭を下げる。そうすると相手は和らぎ,自分は豊かになっていきます。(p118)
 僕は一生懸命聞き,心から感動してしまいました。もともと僕は質問魔なのでどんどん質問し,面白ければ「面白い,面白い!」と手を叩いて笑うほど。やがてその紳士は,こうおっしゃいました。「君は聞き上手だから,嬉しくてどんどん話してしまうよ。みんな,仕事の指示は真剣に聞くけれど,普通の話をこんなに聞いてくれる人はいないからね」(p121)
 人は,押されれば押されるほど押し返したくなります。「わかってほしい!」と勢いで詰め寄られると,逆に受け入れられなくなる心理があります。(p126)
 女性にもてる男を観察すると,たいてい無口な人です。(p131)
 背もたれがないスツールに座っていても背筋はぴしっと伸びており,カウンターに寄りかかってもいない。リラックスしているのに,行儀のいい子どものように,小さくちょこんと座っています。(p140)
 自意識過剰でもなく,ナルシストでもなく,ごく普通のたしなみとして,男はもっと鏡を見るべきだと思っています。(中略)できれば見たくないものも,鏡は遠慮なく本当を映し出します。(p142)
 仕事で失敗が多くても,絶対に休まない人は,それだけで信用されます。(p144)
 上等な店での支払いの際,僕はカードを使いません。極上の食材は現金で仕入れるので,カードという“ツケ払い”は客ぶりとして不親切なのです。(p147)
 普段の生活の中でも,耐えなければいけないことはたくさんありますが,我慢すればするほど,すてきな男に近づけるのではないでしょうか。(p150)
 教養とは,日々を生き延びるための解決能力である。(p155)
 一人でできる自分磨きなど,たかが知れていると僕は思います。(p156)
 「外見はおしゃれをしているけれど中身は別にどうでもいい」というのは空疎な人ですし,「いろいろなことを学んで内面を磨いているから服装はどうでもいい」というのは無作法な人です。(p181)
 人を愛するとは,どういうことでしょうか? 人を愛するとは,その人を生かすということです。(p195)

2017年7月17日月曜日

2017.07.17 松浦弥太郎 『いつもの毎日。』

書名 いつもの毎日。 衣食住と仕事
著者 松浦弥太郎
発行所 KKベストセラーズ
発行年月日 2010.07.29
価格(税別) 1,300円

● 途中まで読んだところで気がついた。この本,前に読んだことがある。集英社文庫で読んだのだった。途中で気がつくくらいだから,現時点では読んでいないも同然だ。
 ので,そのまま最後まで読んだ。

● せっかくだから,以下にいくつか転載。
 履き慣れて心地よい靴を,ちょっとのことで手放さなければならないというのは,なんとも残念だと僕は思います。その点ハンドメイドの靴は,何があっても修理ができます。(p31)
 それにしてもつくづく思うのは,よいものがいかに地味かということ。(p38)
 寝心地というのは人それぞれ。Tシャツや下着のままで寝ても平気だという人もいるでしょう。(中略)上質のパジャマを着て,寝心地のよさを味わうことは,そう悪くない,小さな贅沢だと感じます。(p41)
 オーソドックスで上質なものについて知りたいなら,皇室の人たちに注目すると新しい発見があります。(中略)バッグと靴に関して言えば,本当にスタンダードで,よいものを身につけています(p45)
 あくまでニットは「素材を着るもの」であり,飾りもデザインもいりません。(p47)
 四角くて白いただのハンカチが五〇〇〇円だったら,「なんでこんなハンカチが,こんなに高いんだろう?」と思うのが普通です。(中略)これは自分の傾向だなと思うのは,「なんでこんなに高いんだろう?」と思ったとき,「同じようなハンカチで,もっと安いものがいくらでもある」と,そっぽを向かないこと。(p58)
 ファストファッションがもてはやされ,次々と生み出される安い品を賢く使うという潮流ですが,僕はもったいないと思います。安いものから安いものへと飛びついていると,いいものを知らずに時だけが過ぎてしまうでしょう。(p61)
 世界には,たくさんのものがあふれています。うっかりすると,調和を乱すようなものも侵入してきます。吟味し,暮らしの中に余分なものが増えないよう,よくよく気をつけていないとあぶないのです。(p79)
 自分の子どもの頃を思い出すと,「当時は気がつかなかったけれど,ずいぶん安物で生活してきたな」と感じます。普段使うものは量販店の安物でも,よそいきのものにお金をかける,それが少し前までの日本人の価値観でした。昔,植え付けられた価値観のままでいる人が,今でも多いのではないでしょうか。(p84)
 家具,食器や生活雑貨,タオルとリネン。この三つについて,「この店」というのを決めておくといい気がします。(p101)
 人に謝るときも先手を打ちましょう。トラブルが起きて,相手が「抗議しようか,このまま我慢してなかったことにしようか」と考えているあいだに,先手を打って相手のところに駆けつけてしまいます。(p120)
 大切なのは,手帳やスケジュール帳を見なくても,自分の予定がわかるようにしておくこと。(p129)
 仕事に追われないためには,来るそばからどんどん,手放していくこと。つまり,すぐできる仕事から,締め切りが二週間先だろうと一ヵ月先だろうと,その場でやってしまうくらいフットワークを軽くするのです。「頼まれた瞬間に片付けてしまう」というのは,慣れてしまえば本当に楽です。いつまでにやるかを,スケジュール帳に書く必要すらありません。(p130)
 僕はなるべく人に会い,顔を合わせて話をするようにしています。だけれど「この件」そのものについては,電話でも用が足りると思っています。人と会うのは,余分な話をするためです。(p140)
 ものすごくおいしいものを,ほんの少し。おみやげを買うとき,僕はいつも心の中でつぶやきます。(p142)