著者 松浦弥太郎
発行所 講談社
発行年月日 2018.09.13
価格(税別) 1,300円
● 内容はタイトルが代表している。コピー&ペーストして使い回せるようなものは捨ててしまえ。
主には仕事についての話なのだが,技術ではなくて態度の問題と思われるので,人生万般に通じる話。
● 以下に転載。
それをある人は,「成功する方法」と呼びます。もしかしたらある人は,「すてきな人になる秘訣」と言うかもしれません。「なりたい自分になる方法」という表現がぴったりくると言う人も,少なからずいるでしょう。僕は,その答えを見つけたのです。 まだ,本のはじまりですが,もったいぶらずに書いてしまいます。それは,「1からはじめる」ということ。(p1)
「売れる,売れない」よりも,「困っている人を助けることができるかどうか」が重要なのです。(p26)
とても忙しくて,夕方のたった二時間で,買い物も食事の支度も子どもの世話もあれこれの雑用もこなさなければならないとき,「ここで自分が果たすべき役目はなんだろう?」と考えてみるのです。(中略)それを忘れて,やるべきことに番号を振ってこなしていくというような態度でいると,一つひとつに確実にあったはずの「それをやる理由」が消えてしまいます。それどころか,自分自身が消えてしまいます。(p27)
ソフトバンクで孫正義さんの部下だった友人から,孫さんが何度もおっしゃっていて,一番印象に残っている言葉を教えてもらったことがあります。「登る山を見つければ,もう半分登ったのと一緒だ」僕の解釈では,「山」というのはビジョンです。(p35)
仕事というのは合理性の追求のように見えますが,それだけでうまくいくものではありません。(中略)情熱。懸命さ。本気。これはすべての原動力ではないでしょうか。(p39)
じっくりと考えて,確実な方法で計画を立ててからはじめるのではなく,とりあえずスタートするのが大切です。これは,今の時代に寄りそったやり方でもあります。(中略)スタートアップは,これまでの世の中になかったものを生み出してこそ存在意義があるのに,アイデアをゆっくりあたためていたら,他の人も同じようなことを思いつくかもしれません。(p44)
人の見ているところならばできることが,人が見ていないところでできるかどうか。これが本当に「1からはじめる」ことができるかどうかの分かれ道です。(p56)
僕たちにはみな,多かれ少なかれ「人に好かれたい」という気持ちがありますが,人に好かれようとしてやることは,たいていは「よくないこと」です。(p62)
いつもにこにこして感じがいいけれど,好かれようとして無理はしない。気軽なおしゃべりはするけれど,しゃべりすぎない。みんなと仲はいいけれど,特別に親しい人は誰もいない。この絶妙な距離感を保ちながら,やるべき仕事を淡々とこなしていると,距離感がいつしか尊敬に変わります。(p65)
五〇歳になって「もういいや」と言っている人は,実は若いときから「もういいや」と思っていた人なのです。(p69)
自信とは,どうすれば生まれてくるのでしょうか。その一つの方法は,自分の中に「答え」を持っているかどうかだと僕は思います。たとえば,生きるとは何か,ということに対して。たとえば,働くとは何か,ということに対して。たとえば,暮らしをいとなむとは何か,ということに対して。(p75)
年齢を問わず,自分を信じられない人は,自分をわかっていないのではないか,そんな気がしてなりません。(中略)自分を観察するというのは,怖いことです。なぜなら誰でも,弱いところ,汚いところ,人に言えないようなところを持っているから。それを直視するのはつらいし,完全に直すというのもむつかしいけれども,「僕という人間は,こういう人間なんだな」というのをわかっているかどうかで,自分とのつきあい方も変わってくると思うのです。(p76)
贅沢品で自分を大きく見せても,いいことは一つもありません。(中略)僕のまわりには,何百億もの資産のある人たちが大勢いますが,そういう人ほど「お金のにおい」を見事なまでに消しています。(中略)おそらくそうした人も,お金持ちになる途中では,派手なものを買ったりしたと思います。しかし,徐々に学んでいったのでしょう。「自分を大きく見せようとしないことが,人間関係においては大切だ」と。(p82)
ルーティンでこなせるようなことは,全力でやらないほうが,最終的にはうまくいくのです。いつも一生懸命にやっていたら,トータルで一生懸命になれない。(p90)
あらゆる仕事は生身の人との関係性だから,もっと「人の感情」を深く理解しなければいけないと僕は思っています。世の中には,いろいろな人のいろいろな感情が日々生まれています。人の感情をいつも観察し,できるだけ早く「新しい感情」を察知して,その理由を調べて言語化していく。僕の仕事は,これに尽きると言っていいほどです。(中略)世の中の人の感情を理解するとは,「みんなが何に困っているかに,好奇心と愛情をもって気づく」ということでもあります。(p101)
嫌いな人のすごいところから,何かを学ぶ。好きな人の弱いところから,何かを学ぶ。見えていないところから学ぶには,並大抵の観察では足りませんが,それが楽しいのです。(p105)
仕事にしても暮らしにしても,すべての起点は熟知だと思っています。プロジェクトをはじめるにしても,料理をするにしても,最初にそのことについて人一倍詳しくならないと,アイデアも出てこないのです。(p110)
熟知に至るために,僕自身が心がけているのは,オールマイティを目指さないこと。ところが世の中には,僕と反対のことを思う人が多数派のように感じます。つまりみんな,「いろいろなことに長けていないといけない」と思っているのです。(中略)全方位でパーフェクトを目指したら,なりたい自分になるどころか,へとへとにくたびれて潰れてしまう。あれもこれもそつなくできる人は,熟知することはできません。(p113)
かつては,「なんでも平均より上の人」が求められていました。100点はないけれど10点もない。全部70点でそろえられる人がいいとされていたのです。しかし,僕は自分の経験値に照らしてみて,それはやっぱり違うと思います。今の時代はとくにその傾向が強くなっています。「100点が一つあって,あとはみんな20点」くらいでいいのです。(p115)
自分より若い人や自分より立場が下の人にも,頭を下げて「教えてください」とお願いする。これも「1からはじめる」ということであり,熟知のための基本です。(中略)頭を下げて「教えてください」と言えない大人が多いのは,ほとんどの場合,プライドが邪魔をしているような気がします。(中略)プライドというのは大事なものだけれど,大事なときにだけ使うものです。普段は折りたたんで,しまっておく。そのくらいでちょうどいいと思います。(p118)
手っ取り早く「知る」だけでいいという姿勢でスタートしたら,データチェックやウェブの斜め読みで終わってしまい,決して熟知には至りません。そのゴールに感動はないのです。だからこそ,熟知からはじめましょう。(p125)
あなたが料理について熟知し,100のことを知ったなら,いずれ料理について200のことを知っている人に出会います。その人は快く教えてくれますから,それでさらに詳しくなります。この場合の詳しくなるとは,「100+200=300」ではありません。「100×300=20000」という,飛躍的に熟知が深まるイメージ。そのくらい,詳しい人と詳しい人が会うとすごいことが起きます。(p128)
ある記事では,二四時間走り続ける正解最高峰の耐久レース「ル・マン」で優勝した一流ドライバーが,こんなことを語っていました。レースに勝つためのコツは非常にシンプルで,つねに次のコーナー,次のカーブのことだけを考え続けることだと。(中略)あとはいっさい,考えない。僕はこの話を知り,「まさにこれだ」と思いました。(p135)
どんなに気前よく人に明け渡しても,本物の熟知であれば,いくばくかは自分だけの情報としてしっかりと残るということです。熟知をするならば,何事も,その域を目指したいと考えています。(p138)
僕は,自分のヴィジョンに向かうための方法を発見し,その実行と検証を習慣化させることを「勤勉」と定義しています。(中略)僕が憧れているすてきな人,何かをなしとげた人は,みな勤勉です。淡々と単調な毎日を過ごしています。遊ばないし,よけい物欲に流されない。(中略)やろうと思えばいくらでもできるのに,決してしない。(p144)
本人は,「短い時間で容量よくやっている」と悦に入っているのかもしれません。でも,要領よくやればやるほど,実は時間を無駄に使っていることが多いのです。(中略)「とにかくこなせばいい」という気持ちでやったことは,仕事でも,料理でも,ものづくりでも,愛情不足のあまり,からからに干からびて見えます。(p153)
何かを知ろうとしてインプットしてばかりでは,やがて行き詰まります。そこであえて「ちゃんとアウトプットしないと」と意識し,実際にアウトプットすることで,新しい知恵や経験が入ってきます。(p155)
アウトプットが「今まで誰も言葉にあらわしていないことを言語化(図式化)すること」である以上,それはパッチワークであってはなりません。本に書いてあることや,誰かが言った言葉を,上手にパッチワークしてそれっぽく仕上げるのが得意な人はたくさんいます。(中略)「コピー&ペーストはぜず,1からはじめる」と自分で決められるかどうかが,良質のアウトプットができるかどうかの分かれ道です。(p156)
別に無理をして,仕事を好きになる必要はない。ただ,仕事を嫌いにならないためには,「好き」というよりも「楽しい」と思えることが大事だと考えています。仕事を好きになるのはむつかしいけれど,仕事を楽しいと思うことは意外に簡単です。仕事を楽しむ方法は,工夫をすること。自分なりの仕事のやり方を1から自分で考えれば,それで不思議なくらい楽しくなります。(p160)
どんなにルールが決まっている仕事でも,必ず自分の立ち入ることのできる部分が半分以上あります。(中略)とても過酷な単純作業であっても,黙々とやる人と歌を歌いながらやる人がいて,仕事を楽しめるのは歌を歌いながらやる人です。歌うという自分なりのカスタマイズが加わることで,同じ単純作業が違うものになる。すると仕事は楽しくなるのです。(p162)
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