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2022年5月14日土曜日

2022.05.14 伊藤まさこ 『そろそろからだにいいことを考えてみよう』

書名 そろそろからだにいいことを考えてみよう
著者 伊藤まさこ
発行所 朝日新聞出版
発行年月日 2019.07.30
価格(税別) 1,500円

● 陳志清「からだにいいこと Q&A」が巻末に添えられているのだが,それは読まなかった。何が身体にいいのかを知りたいと思って読んでいるわけではないのでね。
 伊藤まさこさんの著書は見つけ次第読むと決めている。そういう著者は他にも何人かいるが,若い頃と違って “読む” を徹底できなくなっている。そもそも本を買わないようになった。

● 本の書き手には,書かずにはいられないから書くという人と,書くことしかできないから書くという人の2つの類型があると思うのだが,作家と呼ばれる人たちは後者が多いのかもしれないと思っている。
 だいたいが,俗世とうまく折り合いをつけていける人では,読んでもらえる作品は書けないものだと思う。古くから森鴎外などの例外はいないわけではないが,鴎外とてギリギリで折り合っていたのではないかと思う。
 伊藤さんは前者。書かなくても彼女の人生は成立する。が,折り合いをつけるのが上手い方ではなかったと思う。であればこそ,今があるのだろう。

● 以下にいくつか転載。
 炒めものは,食材をあれこれと入れないシンプルなものが一番と思っている(p21)
 豚ばら肉は,大きめのブロックで買い,用途に合わせて切りながら使います。ミンチにしてあるものより食べ応えがあるし,なによりこのほうがおいしい。(p27)
 トマトは完熟のおいしいものを,卵は新鮮なものを。シンプルな料理は,素材のよさが決め手になります。(p31)
 でも,ひとつ続けていることがあって,それは時々,食べない日をもうけるってこと。(中略)バカンスの語源は「VACANT」つまり「空き」。気持ちがいっぱいいっぱいだと,心の余裕がなくなってしまうし,いいアイディアも出てこない。(中略)からだに空きができると循環もよくなり快適になる。(p48)
 これが食べたい! そう思ったら,すぐに食べないと気が済まない。(中略)そんな時は,ちょっとジャンクなものでも,気にせず食べます。きっと食べたい理由が,からだや気持ちにあるはずだから。(p52)
 買いものからはじまり,後片づけまでと考えると,料理って手間と時間のかかる大変な家事。それに器えらびまで? と思う方もいるかもしれませんが,ちょっと気にしてえらんでみると,テーブルの上は見ちがえるもの。ひと手間で変わるなら,惜しみなくやりたいと私は思うのです。(p118)
 家の中の散らかりようは,自分の心の中の散らかり具合と比例するものです。(中略)では,そうならないためにはどうすればいいかと考えて,自分の中で決めごとをつくりました。すごく簡単,出したらしまう,です。食器に本,コードやクリップなどの細かいもの・・・・・・ありとあらゆるものの定位置を決め,そこから出したら元の場所にしまう。(p122)

2021年10月24日日曜日

2021.10.24 伊藤まさこ 『まさこ百景』

書名 まさこ百景
著者 伊藤まさこ
発行所 ほぼ日
発行年月日 2020.08.06
価格(税別) 1,800円

● 著者は「ほぼ日」上で「weeksdays」というセレクトショップを運営している。本書はそのプロモーションの意味合いも持っているのだろう。ただし,宣伝臭は皆無に近い。
 お気に入りのモノを紹介している。同じような趣向の本を前にも読んだ記憶があるが,定かではない。

● 紹介されているモノの背後にあるのは,こだわりと言ってしまっていいんだろうか。そう言ってしまうと,少し以上にピントを外すことになるんだろうかなぁ。
 何でもいいということがないのだ。ぼくは大いにそれがあるので,こうして著書を通じて著者と向き合っている分にはいいけれども,直接に向き合うとひと言も話が通じないだろうな。

● 以下に転載。
 ほかほかの蒸籠をテーブルに持って行き,蓋を開けた瞬間,毎度歓声があがるのも料理をつくる側としてはうれしいポイント。湯気の持つ威力ってすごいのです。(p13)
 最近,わたしをハッとさせる仕草をする人は,多くがリネンのハンカチを持っている,ということに気がつきました。清潔できちんとアイロンがかかったまっ白なリネンは女の人をきれいに見せるのです。(p19)
 ものをたくさん見て,瞬時に「いいものとそうでないもの」を見極める仕事についている人は,とにかく目が速い。(中略)わたしもどちらかというと速い方。森の中できのこを見つけるのも得意です。(p27)
 「もう小花柄は似合わない」。数年前のある時,そう思ってからきっぱり着るのをやめました。(中略)好きと似合うは違うもの。(p101)
 ひとつでもひっかかるところがあったら買わない。ものをえらぶ時,それくらいの潔さがあってもいいんじゃないかと思っているんです。だってほかのだれでもない,自分が使うものなのだから。(p165)
 どうやら「ほしい」気持ちは前面に押し出すといいものと巡り会えるみたい。(p211)
 自分とみんなをとりまく景色が少しでもよくなりますように。(p231)

2021年1月17日日曜日

2021.01.17 伊藤まさこ 『本日晴天 お片づけ』

書名 本日晴天 お片づけ
著者 伊藤まさこ
発行所 筑摩書房
発行年月日 2018.04.25
価格(税別) 1,600円

● なぜ片づけるのか,上手な方法があるのか。そういう話ももちろん出てくるのだけど,片づけに限らず,生活というものをどうデザインするかという話。
 総じて,著者は,見た目の美しさ,デザインがいいこと,を選択の第一条件にしているように見える。
 ちなみに,著者はパソコンもMacを使っている。

● 以下に転載。
 私はたくさんのものと向き合う仕事をしていますが,家の中はわりといつも片づいています。(中略)それは暮らしの流れをよくして気分よくいたいから。理由はわりあい単純です。(p2)
 無理せず楽しく元気よく。お片づけい終わったあとの心は,晴れ晴れと広がる青空のよう。ああ,だから私は片づけが好きなんだなぁ。(p3)
 このセラー,扉がガラスというところもポイント。いつでも中が見渡せるので,うっかり同じものを買ってしまったり,持っていることを忘れて賞味期限が過ぎてしまった!なんてことがないのです。(中略)見渡せることによって沸き起こる緊張感っていいことなのかもしれませんね。(p18)
 しまうと使わなくなる,というのが私の考え方。好きなものだからこそ,いつも目が届き,すぐに使える状態にしておきたいと思っています。(p27)
 使わなくても好き,というものもありますよね? 私はその気持も大切にしたい。要はものが多くてもその台所の持ち主が心地よければそれでいい。(p27)
 古着なんかでも若い子が着るとかっこいいし様になるんですよね。服を「着倒す」力があるというか。そして逆に私が着るとどうも貧乏臭くなってしまう。なので少しくたびれたなと思う服は,心を鬼にして思い切って処分します。(p32)
 私は三月中旬を過ぎたら基本的には冬物は着ません。(中略)それから九月の初めになったら夏ものは着ません。(中略)私のまわりのおしゃれさんはやはりみんなそんな感じ。「おしゃれは気合い」だと自分に言い聞かせて多少やせ我慢しています。(p34)
 基本的にその人が幸せであれば,無駄なものをたくさん持っていてもいいのではとも思います。あまり情報に振り回されず,自分らしくいられればいいんじゃないかな。(p35)
 一日の動作をあらためて書き出してみると,自分と自分のまわりをきれいに保つためにこれだけいろいろなことをしているのかと驚くばかり。ということは放っておくとどんどんきたなくなっていく・・・・・・こわいものです。(p36)
 年齢を重ねるとお化粧に時間をかけるよりも,身だしなみをきちんとととのえる方が大切,そう思っています。(p40)
 私がすてきだなと思う人は清潔感を漂わせている人。そのためには自分に気を配る,自分のためにケアの時間を使うことがとても大切だな,と思っています。(p40)
 まず決めたのは,とりあえずでものは買わないということ。それから,多少使いづらくてもデザインのいいものを買おうということ。(p54)
 自分にとっての,なんだかいいなっていう感じをもっと信じた方がいい,(中略)そんなものを大切にしながら,ひとつひとつていねいにえらんでいったら,やがては好きなものだらけの部屋になるんじゃないかな,と思うのです。(p74)
 これは九九パーセントくらいの確率で言えることだと思うのですが,仕事ができる人は,返信がものすごく早い。(中略)何事にも言えることだけれど「ためない」ってとっても大事だなと思います。(p92)
 お皿の上は常に美しくあるべきだと思っています。盛りつけも,食べている途中も,また食べ終わったあとも。(p95)
 旅のよしあしはホテルで決まるといってもいいくらい大切に思っているのです。レストラン同様,質の高いサービスを受けることは自分自身の勉強にもなる,そして長い目で見るとそれは人生のプラスになっているのですね。(p107)
 自分の身体にかけるお金は多めになってきています。たとえば月に二度の美容院,鍼治療,エステなど。お金をかけた分,見た目にそれは表れるもので,これはもう大人の必要経費なのだなと思っています。(p108)
 こうなるまでには,買いものの失敗をたくさんしました。勢いで買ってしまった服はまったく似合いませんでしたし,旅先の浮かれ気分で買った器は自分が作る料理や他の器と合いませんでした。(p108)
 何よりお金に執着しないこと。それにかぎります。今までの経験ですが,執着している人で風通しよくお金が回っている人に会ったことがありません。それからケチケチしないこと。ケチな人にはケチな人が集まってくるような気がするから。(p109)
 「ためる前に,拭く」は私の掃除の基本。毎日,少しづつの手間で家中がいつもすっきりさっぱり気持ちいいのだから,やらない手はありません。(p132)
 掃除器具は使い勝手がいいのはもちろん,見た目もとても重要。なんと言っても美しいデザインの道具は持っていて気分がいいし,出しておいても邪魔にならない。それどころか部屋のアクセントのひとつにもなってくれるのですから。(p144)

2021年1月10日日曜日

2021.01.10 伊藤まさこ 『おべんと探訪記』

書名 おべんと探訪記
著者 伊藤まさこ
発行所 マガジンハウス
発行年月日 2017.03.22
価格(税別) 1,400円

● 主には,高校生の娘に作った弁当を紹介して,そこに短い文章を添えたもの。仕事を持ちながら,毎朝弁当を用意するというのは,やったことのない自分にもその大変さは想像できる。
 お金を渡して,これでコンビニか学校の売店で好きなものを買って,とやるのが簡便で,じつは子供の方もそれを望んでいるのじゃないかと思うのだが,著者と著者の娘の間ではそういうことはない。

● 吉本ばななのインタビューも載っている。弁当を選ぶときのポイントを訊かれて,「添加物がなるべく入っていないもの,という視点で選ぶことが多いかな」と答えているんだけど(p29),添加物が入っているかいないかなんて,どうすればわかるんだろうか。
 添加物というと,今では保存料の代名詞になっているかと思うのだが,なぜ添加物を避けるんだろうかね。

2020年9月26日土曜日

2020.09.26 伊藤まさこ 『おいしい時間をあの人へ』

書名 おいしい時間をあの人へ
著者 伊藤まさこ
発行所 朝日新聞出版
発行年月日 2019.03.30
価格(税別) 1,600円

● アフィリエイト狙いのブログ的な,広告記事かと感じた部分が全くないわけではない。が,自身が一度も試したことがなく,じつはさほどに旨いと思ってもいないのに,人には勧めるというのは皆無。
 これだけのものに生活の中で触れてきたのは,仕事がらという以上に,本人の志向の産物でしょう。


● 以下にいくつか転載。
 薔薇柄が印象的なパッケージは,義政氏の弟,義信氏によるもの。(中略)おいしさはもちろんだけれど,見た目も重要!と感じる瞬間です。(p12)
 この味を家でも・・・・・・と思って自分でも作ってみたのですが,なかなかこうはならない。(p46)
 伊藤さんでもそういうことがあるんだから,ぼくがそうなのは全然恥ずかしいことではないのだな。ただ,自分でも作ってみたくなるその対象が,伊藤さんとぼくとではかなり違うはずだが。
 おいしいカフェオレの条件は,できるかぎり濃度の高いコーヒー少量を,たくさんの牛乳で割ること(p78)
 新鮮な素材は手を加えないでそのままで十分おいしい。だから料理がどんどんシンプルになっているんですって。(p98)
 このシベリア(お菓子の名前)のために,ご主人なんと夜中の12時から仕込みを開始するのだそう。「お客様が楽しみにしていてくれますから」の言葉に頭が下がったのでした。(p141)
 そうか,プレゼントし甲斐のある人っているけれど,その人にとって私がそういう人なのか。うれしいなあ。(p156)
 外食が続いたり,海外へ旅をしたりした後は,必ず白いごはんとこの昆布。胃が整うのはもちろん,心まで整うすばらしい味。日本人に生まれてよかったなぁと思う瞬間です。(p160)
 胃が整うのはわかるが,心まで整う? 本当か。そういう味がこの世にあるのか。

2020年9月22日火曜日

2020.09.22 伊藤まさこ 『おやつのない人生なんて』

書名 おやつのない人生なんて
著者 伊藤まさこ
発行所 筑摩書房
発行年月日 2014.12.05
価格(税別) 1,600円

● 甘いもの愛。自分の身体の重要なところが甘いものでできている。甘いものが織りなす時間の豊穣さ。その時間と自分との絡み合い。
 そうした自分ヒストリーを書籍にして残していける人って,やっぱり凄いと思います。凡百の体験しかしていないのなら,読んでもらえるはずがないわけだから。


● 以下にいくつか転載。
 おやつを食べなくても,もちろん生きてはいける。けれどおやつのない人生なんてさみしい。そして,おやつがあれば,いつでもたのしく,きげんがいい。人生,いつでもおやつを食べている時のようにいきたいもんだと思っています。(p3)
 組み合わせが上手く行き,おいしいひと皿ができあがると,満ち足りた気分になるものです。(p13)
 「ちょっとコーヒー1杯飲みに来た」という風情でひとりぶらりとやって来ては,いつもの席に座って思い思いに自分の時間を過ごしているおじさんたちを見ていると,せっかく京都に来たならば,あそこも行こう,ここも行かなくては,と前のめりになる自分が少し恥ずかしくなる。(p39)
 おやつを食べた後は,さあ,これからまた仕事をするぞ,とすっかりやる気になっている。自分の体の中に流れる空気が入れ替わる,そんな気がするのです。(p132)
 きれいに切れる理由はいくつかあって,まずはよく切れるナイフを使うこと。切るたびにナイフについたクリームを拭き取ること。それあら思い切りのよさも秘訣のようです。(p146)

2020年9月19日土曜日

2020.09.19 伊藤まさこ 『美術館へ行こう』

書名 美術館へ行こう
著者 伊藤まさこ
発行所 新潮社
発行年月日 2019.04.25
価格(税別) 1,500円

● 国や自治体や大企業が運営する美術館ではなくて,もっと小体な美術館が取り上げられている。本書を出すために取材に行ったと思われるところもなくはないが,多くは何度も行っている著者のお気に入り。たとえば,日本民藝館や岡本太郎記念館,鎌倉文学館など。
 したがって,それらお気に入りが何故にお気に入りなのかを,著者が語る。そこが本書が提供する読みごたえ。
 数日,東京にいるので,岡本太郎記念館には行ってみようと思っている。

● いくつか転載。
 高い吹き抜けのアトリエを覗き込む用に見ている時など,奥からご本人が飛び出してくるのでは?と思うほど。ひとりの人間の中にいったいどれくらいのエネルギーが潜んでいるのだおう? ここに来るたび,そう思わずにはいられなくなるのです。(岡本太郎記念館 p64)
 元来せっかちな性格だったという太郎先生。すごい勢いで絵を描いているかと思ったら庭に出て彫刻に向かい,かと思えば今度は口述筆記・・・・・・と,家の中をぐるぐると歩き回り,わき上がるイメージを形にしていったのだとか。(岡本太郎記念館 p64)
 岡本太郎もまたADHDだったのかと思いたくなるんだけども,たぶんそうじゃないんでしょうね。だって,ここには注意欠陥はないからね。
 民藝館に来るといつも頭の中でひとり,「ごっこ遊び」をしています。このやきものの壺には来る途中で見かけた小さな白い花を活けたらいいな,大ぶりな漆の椀は,ころりとした根菜たっぷりのみそ汁がきっとお似合い・・・・・・(日本民藝館 西館 p70)
 展示するために作られた場所(本館)と住んでいた場所(西館),もちろんどちらに置いてあるものも柳の目の行き届いたものであることに変わりはないけれど,住んでいたというだけでこんなにもひとつひとつの物のありかや役どころがはっきりと伝わるのかと目からウロコなのでした。(日本民藝館 西館 p71)
 やさしげだったり,はかなげに見えるちひろの絵ですが,ご本人は案外思い切りのよい人だったとか。(ちひろ美術館 p84)
 はじめてここにものを置いた時に,美しいってこんなに簡単なことだったんだなって思った。ものの美しさは,空間との取り合わせにあるということを痛感しました。(museum as it is p103)
 それまで見知っていた色糸を使った日本の刺繍ではなく,白地に白の糸で密に刺繍された洗礼服。ユキさんは,その陰影の美しさにただただ驚いたのだそう。「人ってなんてすごいのだろう」と。(ユキ・パリスコレクション p134)
 美しいものが分かる人というのは,人の気持ちが分かる人。(猪熊弦一郎現代美術館 p149)

2019年12月8日日曜日

2019.12.08 伊藤まさこ 『台所のニホヘト』

書名 台所のニホヘト
著者 伊藤まさこ
発行所 新潮社
発行年月日 2013.01.30
価格(税別) 1,500円

● 勤労女子,特に子育て中の勤労女子は,間違ってもこの水準を狙ってはいけない。ストレスまみれになるだろう。それ以上に失うものが多すぎる結果になるだろう。
 冷凍食品を使うことに罪悪感のカケラも抱いてはならない。抱いてないだろうけど。

● 以下にいくつか転載。
 何年か前だったら,肉とパンとチーズと赤ワインが何日続こうとも全然へっちゃらだったのに,ここ二,三年の間に私の中野欧米人気質がすっかりなりをひそめてしまいました。(p51)
 どんなに熱くてもがまんして握った方が断然おいしい。けっして,冷めたごはんを握らぬように。(p54)
 電子レンジを持っていないので,クッキングシートに包んで凍らせたごはんは蒸籠で蒸して解凍します。(p55)
 どのカレーも最世に玉ねぎをじっくり炒めますが,ここをおざなりにしてしまうと,でき上がりが雑で味気ないものになってしまうので要注意。あとはスパイスと仲良くなること,できあがったら鍋底を水につけるなどしていったん冷ますこと。冷めるときにぐぐっと味がしみこんでおいしくなりますからね。(p57)
 私の鍋はネギと鴨,白菜と豚バラ,芹ときりたんぽなど,入れる具は二種類くらいととても少なめ。その方が鍋の中の素材とがっちり向き合えるような気がするからです。(p89)

2018年12月4日火曜日

2018.12.04 伊藤まさこ 『おべんと帖 百』

書名 おべんと帖 百
著者 伊藤まさこ
発行所 マガジンハウス
発行年月日 2016.03.10
価格(税別) 1,400円

● 高校生の娘の弁当を作るという想定。女子高校生っていうのはこんなに少食なのか。曲げわっぱに詰めるんだけど,これが小っちゃいもので,これでたりるのかなぁ。
 という,突拍子もない疑問で申しわけない。足りるんだろうな,たぶん。

2018年12月1日土曜日

2018.12.01 伊藤まさこ 『おいしいってなんだろ?』

書名 おいしいってなんだろ?
著者 伊藤まさこ
発行所 幻冬舎
発行年月日 2017.07.25
価格(税別) 1,400円

● 衣食住をきちんと考えている人の本を読むと,自分もそうしているような錯覚に陥ることがあって。それで安心してしまって,「出来合い&インスタント&レトルト&ファストフード」の道を邁進することをやめない。それこそ俺の生きる道,みたいな。
 困ったものだ。と本気で思っていないのが困ったものだ。

● 以下に転載。
 物をたくさん持っている人が幸せとか,持っていない人が不幸せとか,もはやそういう感覚はなくなりました。金持ちだろうが貧乏だろうが,楽しみや幸せはそう変わらない。(オオヤミノル p12)
 最高の店でも,場末の店でも,そこをどう使うかは本人次第。食べ手が,店のランクに合わせた礼儀とアイデアを知っておくべきだと思うんです。(オオヤミノル p12)
 生きていく達人の条件は,ランクにかかわらず“ていねい”かどうかだと思います。物はもちろん,人,時間,ひらめきに対して“ていねい”かどうか。(オオヤミノル p13)
 コーヒーを淹れる際,「ていねいに」と言うと,みんな時間をかける。でも時間をかけると,一滴と一滴の間が長くなるだけで結果おいしくならない。ていねいな人はおうおうにして早いもんです。早さには運動神経が要り,運動神経には経験と知恵が必要です。(オオヤミノル p14)
 赤い肉は血の味がしますね。いい血の味はいろいろな味がする。(オオヤミノル p20)
 高い材料で時間をかけて,勉強した人が作る最低を食べるか,あるいは安い材料でCPで鍛え上げられた人の最高を食べるか。ランクが低いものの最高と,ランクが高いものの最低は一緒ではない。ランクは実は上下関係ではなくて,世界が異なる。高いランクの最低を食べるくらいだったら,低い世界の高いところを食べたい。(オオヤミノル p25)
 コンソメ文化はまだまだ根強い。かつて家庭でお母さんが洋食的なものを作る時,何にでも固形コンソメを入れました。(中略)デザインの味はほんとうにはおいしくない。(オオヤミノル p30)
 写真を始めた頃,アラーキーが好きで荒木さんみたいな写真を撮りたくて同じペンタックス67というカメラに九十ミリのレンズを付けてポートレートを撮ってました。でも当然荒木さんの写真にはならない。でも同じ機材を使っているから,荒木さんの写真を見ると,どうやって撮っているのかある程度は想像できる。そうやって違いを知り,自分の写真について考えるわけです。(長野陽一 55)
 友人知人は皆,食べる速度が速い。料理の仕事に携わる人が多いということもあるけれど,やはり根が食いしん坊だからではないか。早く,速く。おいしい一時を逃してなるものか。そういう意気込みが感じられて頼もしい。(p103)
 カウンターは舞台で料理人は役者のようだなと感じる。料理人がかっこいいのは,観客である我々に常に観られているからではないだろうか。(p107)
 コトコト煮る,というより,ガーッと火を通すことによって,フルーツの味がぎゅっと詰まったおいしいジャムが出来上がる。(p112)
 料理の環境にいると太る傾向があるんですよ。中華料理のコックさんの多くは太り気味です。味見するという理由もありますが,食べなくても,油成分などを吸収している。(陳志清 p123)
 食欲は生きようとする本能なので,それを一回ストップすると,逆に生きたい,生きようとする意欲が出てくる。それから比べたら,将来の心配とか悩みは,今生きるのにそう困ることではない。(大沢剛 p148)
 人間は毛の生えてない猿なんですね。体毛も皮下脂肪もそう多くない人間は,本来暖かいところで暮らす生き物だと思うんです。だから運動して自力で温めるのが一番いいけれど,それが十分にできないのでせめて外から温めて巡りをよくしようと。(大沢剛 p154)
 食事の内容が糖に偏っていると,食べたあとに血糖値が上がって,その後下がりやすいんですね。下がるときに空腹を感じます。(中略)だから血糖値を下げないもの,例えば上質な油やタンパク質を摂るといい。(大沢剛 p155)
 使っているところに血液が上がってきますので,頭ばかりを使っていると上のほうに血液が集まりやすくなるんですね。(中略)そういう時は歩くと,上にのぼり過ぎていた血液が下がる。(大沢剛 p156)
 お腹が空いた時に,グーグーと鳴っているのが気持ちいいんですよ。お腹が空いてイヤじゃなくて,すごく気持ちのいいほうに向かっていることを実感しました。(p157)
 食べたいものを食べるということは,食べたくなくなったら食べるのをやめるということとセットなので。これくらい残すのもなとか,高かったからなっていうのは体の欲求以外のところで無理矢理詰め込むことになるのでそこは潔く食べない。(大沢剛 p159)
 私の周りの料理上手たちは,いつも台所をピカピカに磨き上げている。「料理のにおいが残っているのが気になる」これはみんなの共通感覚。(p168)
 要は手加減ですね。これがあるからこそ面白いのですが。手加減ってものがおいしさの表現なんです。(河田勝彦 p248)
 生地が出来上がることを「乳化した」と言いますが,この乳化が大事なんですよ。その時,ピカッとツヤが見える。それがタイミングなんです。これを見落とすと大変なことになる。(河田勝彦 p250)
 例えばクロワッサンも,火が幽霊のように動いていますので,全部を同じ形で仕上げるには,型に入れて焼くしかない。ところが型に入れると味も変わってしまう。好きなように,伸びたいように伸ばしてあげたほうが,味はだんぜんおいしい。(河田勝彦 p257)
 (おいしいってなんでしょうね)難しい問題だけど,自分のなかでは答えが出ているような気がしています。結局作る人の雰囲気とかも一緒に食べている。人柄と,あとイメージする力。(吉本ばなな p279)
 泡立てた生地に砂糖の半量を混ぜ,全体をさっくりとかき混ぜてよく馴染ませる。それから残りの半量の砂糖を入れ,軽く混ぜたら型に入れる。どうして一度に混ぜないのでしょう,入る分量は同じなのに。そう先生に尋ねるとこんな答えが返ってきた。「生地に砂糖がすべて混ざりこんでいるよりも,ところどころのほうが甘みが感じられるでしょう?」 この時の先生の言葉は,お菓子作りだけでなく,その後の料理作りに大いに役立つこととなった。(中略)ちょっと引き算して,最後に中心となる味をきりりと利かす。料理の味がぼやけなくなったのは,このおかげに他ならない。(p305)

2018年8月4日土曜日

2018.08.04 伊藤まさこ 『おいしい時間をあの人と』

書名 おいしい時間をあの人と
著者 伊藤まさこ
発行所 朝日新聞出版
発行年月日 2017.05.30
価格(税別) 1,500円

● 20人との対談。会って,話をしてもらうには,こいつなら会ってもいいかと思ってもらえなければ。類は友を呼ぶの範疇。ぼくら読者はそのおすそ分けをいただく,と。
 有次18代目の寺久保進一朗さんの話が,特に背筋を伸ばしてくれた。問題はそれが持続しないこと。こちら側の問題。

● 以下に転載。
 一事が万事そうなんです。自分が思っていること,考えていること,そのままをテーブルの上に並べるだけ。それ以上に見せる必要はないんです。(矢野顕子 p14)
 私の場合,「歌う」は,もともとは「体から音を発する」ことでしょうか。なんかね,しょっちゅうフンフンフンフン言ってるらしいの。(矢野顕子 p17)
 私は,所有欲なり食欲なりを満タンにすることにはあまり興味がないんです。いちばん大事なのはその欲を満足させることではないということはわりと早くから思いました。だから,極めない。極めるのは音楽だけ。ひとつあればいいじゃんって。(矢野顕子 p20)
 ニューヨークは特別なところです。街に駆り立てられる。ものをつくる人間にとってはすごくいいんです。(矢野顕子 p20)
 「あなたと私は違うのよ」ということを前提にする人生のほうが,私は心地がいいわけですね。(矢野顕子 p22)
 私は基本,火山のように,ここに(と胸に手を置く)マグマがあって,音楽が勝手に出てくる。そういう生き物なんです。音楽をつくる生き物。だから,どんな方が登山に来てもいいし,ごはんを食べに来てもいいの。(矢野顕子 p23)
 「正しく使う」と,余分なもん,持たんでええねん。必要なものだけ,大事に使う。器でも割れたらついだらええ。塗りも,欠けたら塗り直したらええ。何も大変なこと違う。(寺久保進一朗 p41)
 道具を正しく使うということは,腰が入ってへんと,使われへんよね。つまり「姿」を正しくするということ。そうすると無駄な動きがなくなる。1時間に10秒ずつでも無駄な動きを省くならば,1日にしたら何分間か,貴重な時間を節約できる。(寺久保進一朗 p45)
 料理屋さんはたくさんの道具を使うけど,置くとこがちゃんと決まってる。(中略)それは手が自然にそうなるんや。ねえ。ものを大事にするというのはそういうもの。(寺久保進一朗 p46)
 北欧はすごくよかったですね。あんなに豊かな生活があるということに驚きました。家具や日常に使うものがすごくよくて。(中略)本当に消費が少ない文化なので。(田根剛 p77)
 やっぱり舞台ですね。ゲーム感がいちばんあるんですよね。運動神経というか,スポーツ感。(片桐はいり p88)
 依頼を受けたときは,まずその人が何を着ているかを見るんです。どういうものが好きか,この先どういうふうになっていきたいかということも聞く。着るもので人生が変わる可能性だって,あるわけだから。(椎名直子 p99)
 台詞を言うためにお芝居をするのではなくて,生活の動作の中に台詞をまぶしていこうという意識があるんです。(是枝裕和 p106)
 役者さんは,大事な台詞であるほど台詞に意識が集中してしまいます。でも普通,人はそんなふうにしゃべらないから,意識をそらさせるのが大事で。(是枝裕和 p106)
 ちゃんとそこにいられるというのが,役者さんの一番の能力だと僕は思います。今までここで生活してきて,これからもここで生活していくんだろうな,ということを,ちょっとした動きで感じさせる。(是枝裕和 p108)
 学んで身につくものもあるし,学校で教えられないものもあるし。ただね,少なくとも,学ぶシステム自体はあったほうがいいだろうと思います。(是枝裕和 p112)
 普通の若い子たちがダサいと思っているところのほうが実はかっこいい,というのは感じましたね。(臼井悠 p143)
 カウンターが似合わない女はいないです。(臼井悠 p147)
 夜中のみそ汁とかも冷たいまま食べちゃうな。熱々とはまた別のおいしさなんですよね。(種村弘 p151)
 ある時代のロールモデルになる人は,吹っ切れ方が違う気がします。(種村弘 p158)
 みんなインプットはするじゃないですか。本を読んだり,映画を見たり。それがどこまでいったらアウトプットの側に化学変化を起こすんだろう。(種村弘 p151)
 状況や環境で人は違うし,関係も変わる。でもつい,自分のスケールにのせてその人を判断しようとするのね。(阿川佐和子 p169)
 オートバイは運転しているときのひとつひとつの行為がおもしろいんです。そのぶん集中していないと危ないですが,その魅力はあると思う。(杉本哲太 p189)
 お菓子屋さんを参考にするということはほとんどありません。どうしても真似になってしまいますから。うちはとにかく,真似はしたくない。素材などのヒントはジャンルの違うところからもらうことが多いです。(依田龍一 p197)
 構えているとかえってダメですから,何かの拍子にピピッとくるときが,いいアイデアが出るようですね。(依田龍一 p198)
 うちも先代のころから,「ものをつくるときにはコストのことは考えるな」と。はじめから「これは千円にしよう」などと考え出すととくなものはできません。(依田龍一 p202)
 自分の好みを明快にしておくということではないでしょうか。(中略)結局,人の好みで出しても,わけがわからなくなっちゃうんですね。何が良いものなのか。(依田龍一 p203)
 アートディレクターやデザイナーはなんとなく感性でデザインしてくと思われているかもしれませんが,僕の知っている優れたアートディレクターは,言葉の力も持っています。(水口克夫 p208)
 一回どつぼにはまると自分でも何がオーケーかわからなくなってしまって。でも,なんだろう,ここが違うんだよなということに執着しているとダメなんじゃないかと思います。次のセリフでフォローできたり,他の人との関係で成立したりすることもあるので。(沖田修一 p223)
 劇場って,あるときから客席を暗くして,舞台の上の芸術を邪魔しないように静かに鑑賞するようになった。それもあっていいけど,そればかりでは何か違うんじゃないかなと思って,劇場のあり方を考えるようになった。客席も演劇なんだから,客席の賑わいとか,お客さん同士が見合えるとか,そういうこと大事だから。(串田和美 p242)
 自分を納得させるのは時計だったりカレンダーだったりするでしょ。それって「どっちが主役?」って感じがするな。人間は自分らでつくったシステムをだいたい過信する。お金もそうだし(串田和美 p246)
 コミュニケーションは休憩時間や就業後で十分。現地の言葉でも何を言っているかはだいたいわかるようになる。相手の質問に答えるのは難しいけど,適度に笑って適度に怒っていれば,なんとかなる。ヘラヘラしてるとダメだけど。(内田鋼一 p264)
 海外に行くときでも手ぶらで行く。使い慣れた道具とか一切持っていかない。不自由でも,そこにあるものでやってみたい。(内田鋼一 p270)
 お客様への応対は,その人の人間性というのかな,人生観が出るのではないかと思っているのです。これまで何が好きだったか,どんな美しいものを見てきたか。そういうことがすべて出る。(黒川光博 p274)
 虎屋が考える和菓子の定義は,植物性の原材料でつくられているということです。(中略)あんことクリームを混ぜたりするとおいしいんですよね。でもやらない。それに何の意味があるかと言われると,意味はないかもしれない。おいしいんだからいいじゃないかというほうがよほど説得力がある。だけどそれをしないででこまでできるか。(黒川光博 p277)

2017年8月11日金曜日

2017.08.11 伊藤まさこ 『夕方 5時から お酒とごはん』

書名 夕方 5時から お酒とごはん
著者 伊藤まさこ
発行所 PHP
発行年月日 2016.11.15
価格(税別) 1,500円

● 衣食住や友人との付き合い,要するに生活,それをていねいに重ねることの大切さ。お金があればあるなりに,なければないなりに,できる範囲で。
 わかってはいても,なかなかできない。女性もフルタイムの仕事を持ってるのがあたりまえになった。仕事とていねいな生活を両立させるのは相当な難事だろう。いはんや,男性においておや。

● 伊藤さんにしても,それを仕事にしているから,ここまでできているってことかもしれないよなぁ。いやいや,そんなことはないのか。
 もって生まれた性格ですかね。努力しなければそれをできない人っていうのは,たぶんずっとできないままで終わるんじゃないかと思うんだけど。一時的に発憤することはあるかもしれないけれど,持続させるのはなかなか難しいと思う。

● ぼくなんかその典型。衣食住って,基本,どうでもいいと思ってしまっている。
 8畳の1Kに住んで,ご飯だけ炊いておかずは納豆とかふりかけとかレトルトカレー。たまに簡単にできる野菜炒めを作って食べる。冬はこれまた手軽に作れるおでんとか。出汁はもちろん市販の顆粒のやつを使う。服は必要な数しか持たず,着たきり雀になるのも辞さない。
 酒は安ウィスキーか焼酎を炭酸か水で割って飲む。春夏秋冬,それで通す。肴はスーパーかコンビニでテキトーに買ってくる。
 そういう生活で充分だと思っている。実際に最近もそういう数年間を過ごしたことがある。

● が,たまにはこういう本を読んで,風を入れたくなる。以下にいくつか転載。
 手軽にできるのがいいに決まってはいるけれど,手間を端折りすぎておいしさが半減するのはいやだ(p3)
 お酒に魅了されたのは,シャンパンとの出会いがあったからでは? と思っている。(p18)
 家に帰って,便利さに驚いた。今までこれなしでどうやって暮らしていたのか。(p32)
 「おいしい」とは味だけでなく,見た目の要素もかなり重要。(中略)時に驚きがあるとよりいい。(p38)
 素材にもよるけれど,最近,茹でるよりも蒸す方がおいしいでのは? と思っている。(p40)
 大きいの,小さいの。いろんな大きさにすると口の中がたのしい。(p61)
 私に特技があるとしたら,それは味の記憶をはっきりと思い出すことができるということではないか。(p68)
 (いちじくの)葉を生ハムに添えるととてもいい感じなのだ。楕円の皿に大きめの葉をおき,切ったいちじく,その上に生ハムをはらりはらりと空気を孕ませながらおく。ただ葉があるだけなのに,皿の上の景色はいつもとまったく違って見えた。(p104)
 この和えものは少し固めがいい。さいの目の形がきちんと残った方が見た目に美しいからというのがその理由。(p132)

2017年7月16日日曜日

2017.07.16 松浦弥太郎・伊藤まさこ 『男と女の上質図鑑』

書名 男と女の上質図鑑
著者 松浦弥太郎・伊藤まさこ
発行所 PHP
発行年月日 2014.09.05
価格(税別) 1,700円

● 松浦さんにはまだ「暮しの手帖」編集長というイメージが付いている(ように思う)。“今日もていねいに”という。
 たとえば上野駅構内のANGERSは,「上質な暮らし,美しいデザイン」をテーマに,ステーショナリーや書籍などを並べている「雑貨屋」であるらしい(文具店だと思っていた)。その書籍の中に松浦さんの本や暮しの手帖社の本が,かなりの比率を占める形で並んでいる。

● 上質という言葉が似合う人だ。それを自ら発信してもいる。その松浦さんに対して,上質の女性代表が伊藤さん。これにも異を唱える人はあまりいないだろう。

● その二人が交互に具体的なブツを披露し合うのが本書の内容。以下にいくつか転載。
 エルメスのハンカチは,アイロンをかけると気持ちよくシワが伸び,惚れ惚れするくらいに仕上がる。同時に心までぴしっと整えられる。この感覚が自分の日々をどんなに支えてくれているのだろうかと思う。(松浦 p20)
 男を見分けたければ,指先と手がいつもきれいに手入れされているか,そして,どんな肌着を身につけているかを知れば一目瞭然だろう。いい男は,いちばん目に付くところと,いちばん見えないところの気遣いがきちんとしている。(松浦 p44)
 その彼女の食事の風景に目が釘付けになった。スープとパン,グラスには多分,水。食後はひとかけらのチーズ・・・・・・そんな約しい光景だったのだが,きちんとテーブルクロスを敷き,美しく盛りつけ、まるで一流レストランにいるかのような身のこなしで食事をしていたのだ。「ひとりのときこそ,きちんとする」その姿は,気高くて美しかった。(伊藤 p47)
 傘をさすのは嫌いだが,日傘をさすのは好きである。(伊藤 p55)
 ものというのは人でもある。たとえば,そこにあれば,こちらを向いて,いつもにこにこと微笑んでくれる友だちのような存在とでもいおうか。(松浦 p100)
 気に入るものが見つかるまでは,とりあえずこれでいいと間に合わせの買い物は決してしない。間に合わせで買ったものは,あくまでも間に合わせなので愛着も湧かないし,いつか気に入ったものが見つかったときはいらなくなるからお金の無駄遣いになる。(松浦 p120)
 一枚の写真をあたかも小さな掌編を読むように見つめてみる。そうすると,いろいろなものやいろいろなことが見えてくる。そしてまた,自分の心の底にあるような記憶までもが浮かび上がってくる。(松浦 p160)
 安いものばかり食べていると安い男になるぞ,と若い頃,大人におどかされた。含蓄のある言葉である。(松浦 p168)
 「人は自分が見たいものしか見ない」という言葉を,風呂に浸かり,ぼんやりしながら独り言つ。(松浦 p208)
 今の若い人は,経済状況が悪いなかで育ってきたから,お金を使うのを怖がるみたいだけど,お金は使わないと増えないものなんですよ。(松浦 p222)
● こういうのを読むと,当然にして自分を反省することになる。食べられればいいや,着られればいいや,住めればいいや,っていう感じで長年生きてきて,この歳になってしまった。
 若い頃は(20代の頃だけど)ここまでは墜ちていなかったと思う。30歳からは楽な方がいいという方向に簡単に流れてしまった。
 お洒落はやせ我慢だということは,頭ではわかっている。が,その我慢をしてみようとは思わない。それがすっかり定着してしまった。

● 休日には,半分ホームレスのような恰好で街をふらついている。今の時期なら,サンダル,短パン,Tシャツだ。しかも,いたって安いやつだ。見る人が見ればすぐにわかるのだろう。ぼくには区別がつかないが。
 相方が差配するので,まだ救われている部分があるかもしれない。自分ひとりになったら,ほんとに生活というものにかまわなくなりそうだ。

2017年6月17日土曜日

2017.06.17 伊藤まさこ 『京都てくてくちょっと大人のはんなり散歩』

書名 京都てくてくちょっと大人のはんなり散歩
著者 伊藤まさこ
発行所 文藝春秋
発行年月日 2013.11.15
価格(税別) 1,300円

● 『京都てくてくはんなり散歩』(文藝春秋 2008.10)の続編。つまりはガイドブックといっていいんだと思うんだけど,そこに伊藤さんの味付けがしてある。
 誰もが行くとか人気があるとか,そういう普通のガイドブックではないわけだ。

● Tipsをいくつか転載。
 きなこ,こし,つぶ,色の薄いものから,どうぞ(今西軒の今西正蔵さん p25)
 手をかけ皮をこすから「こしあん」(p27)
 庖丁は使う人が研ぐもん。心得て手入れすると道具は活きてくる(有次の寺久保進一朗さん p63)
 おいしいコーヒーってなんだろう。(中略)よくコツを聞かれるんですけどね,もちろん言い出せばキリないけど,「たっぷりの粉でちょっぴりのコーヒーを淹れること」って答えるようにしてるんです(p74)
 面倒な時は,コーヒーとお湯を入れたマグカップをガーッと混ぜて3分おいといて,あとでフィルターで漉したら味がととのいますよ。(p75)
 山にあるものは無理矢理育てられたわけではない。だから嘘がないんです(美山荘の中東久人さん p133)

2016年3月31日木曜日

2016.03.19 伊藤まさこ 『あした,金沢へ行く』

書名 あした,金沢へ行く
著者 伊藤まさこ
発行所 宝島社
発行年月日 2015.03.11
価格(税別) 1,300円

● どういう切り口で金沢を紹介するか。結局,お店(寿司屋,甘味処,そば屋など)と人。人というのは,伊藤さんの知り合い。
 こういうふうにならざるを得ないものでしょうね。

● ただ,こうなると,金沢ならではというのがなかなか浮きでてこない憾みが残る。こういうお店は京都にもありそうだし,東京にもありそうだ。ホントにどこにもないよ,ここだけだよ,なんてお店はちょっと想定しにくいわけだから。
 登場する人たちも皆すばらしい人たちなんだけど,すばらしい人って,やはりそちこちにいるんだと思うんだよね。

● 結局,金沢にしかないものは金沢の風土である,ってことになるんだろうか。あとは兼六園とかそいういうものになってしまう。
 それだけでは1冊にならないだろうし,なったとしても読者がつかない。

● 金沢の酒蔵で仕込み水を飲ませたもらって,その柔らかさとまろやかさにびっくりした,という話が出てくる。
 これは栃木でも体験できるよ。山あげ祭(7月)のときに,烏山に来ればね。島崎酒造が仕込み水を飲ませてくれるよ。真夏なのにひんやり冷たくて,トロッとした濃くがある感じの水。酒にしないでこのまま売ればいいのにと思ったり。

2015年11月30日月曜日

2015.11.29 伊藤まさこ 『東京てくてくすたこら散歩』

書名 東京てくてくすたこら散歩
著者 伊藤まさこ
発行所 文藝春秋
発行年月日 2007.05.10
価格(税別) 1,143円

● 京都編に続いて,東京編を。こちらの方が先に刊行されているんだけど。
 東京は日本最大の観光地でもあって,見どころにはことかかない。その中から,吉祥寺,根津・谷中,二子玉川,田園調布・等々力,浅草,西荻窪,青山,本郷,築地,代々木上原,神楽坂が紹介されている。
 銀座や新宿,渋谷は出てこない。こうして並べてみると,東京の中でもしっとりしたところが選ばれていることがわかる。伊藤さんの好みなのか,版元の意向なのか。

● ぼくの好みはというと,名所旧跡や歴史的建造物よりも,近過去(?)の残存物-当時の人たちの生活の残り香が感じられるようなところ-か,思いっきり現代的な建物や施設に惹かれる。
 といって,具体的にここに行きたいというのはないのが困る。

● 京葉線の新木場で降りて,錦糸町まで歩いてみたいとか,上野を起点に谷根千あたりまでやはり歩いてみたいと思ったりはするんだけど。
 してみると,下町に惹かれているのかねぇ。

2015年11月16日月曜日

2015.11.12 伊藤まさこ 『京都てくてくはんなり散歩』

書名 京都てくてくはんなり散歩
著者 伊藤まさこ
発行所 文藝春秋
発行年月日 2008.10.30
価格(税別) 1,238円

● 伊藤さんは著者というよりモデルの立ち位置。それが可能になるルックスの持ち主だということ。ルックス以外の要素も多々ありそうに思えるんだけど。

● 京都の甘味処や喫茶店,布地や小物を扱うお店を紹介。もちろん,名所旧跡のいくつかも。

● 前回,京都に出かけたのは何年前になるだろう。15年前か。いや,もっと前か。行くんだったら海外だと思っていた時期もあったし,ディズニーランドの時期もあった。
 で,今はどこにも出かけないようになった。せいぜいが東京に出る程度。あとは自転車に乗って近場をサイクリングするだけになっている。

● どこに行こうが,行った先でいつもと同じことをすることになるわけで,これじゃ出かけなくてもいいかなぁと思っている。
 あともうひとつ。ルーティンから外れると,元に戻すのが大変になったというか,受ける打撃が大きくなった。元に戻すのにかかる諸々の面倒を考えると,出かけなくてもいいかと思ってしまう。これを加齢現象というのだということもわかってるんだけどね。

● それよりも何よりも。鈍行列車で2時間もかからないで行けるところに東京がある。東京の存在というのは,ぼく的には圧倒的なものがあって,せっかく東京があるのに,なんでそこを通過して京都まで行かなければならないのか。
 沖縄でも北海道でも同じなんだけど,そこまで交通費をかけて行くんだったら,その交通費分も東京で使いたいと思う。そのほうがよほど楽しいじゃないか。

● というわけで,京都に行きたいという思いは,今のところ,ぼくの中にはない。その分,こうした本を読んで,空想旅行をすればいいかな,と。

2015年1月31日土曜日

2015.01.31 伊藤まさこ 『わたしの布のほん』

書名 わたしの布のほん
著者 伊藤まさこ
発行所 集英社
発行年月日 2004.07.30
価格(税別) 1,400円

● 布を使わないで暮らす日は1日とてないわけで。早い話,下着を着けないで,外を出歩く人はいないだろうから。

● 著者は,料理と布をどう合わせれば写真写りが良くなるか,といったことを考えるのを仕事にしてきた人なのだろう。
 テーブルクロスとかナプキン,ふきんのような台所や食卓で使う布から,服やシーツに及ぶ,生活にまつわる布の話が収められている。

● 男性の多くが,あまり(ほとんど)関心を向けない分野だ。けど,生活の基礎的なところ。同時に,彩りをいかようにでも受け容れる深い懐を持った分野でもあるようだ。
 衣食住というのはじつに言い得て妙で,ここが整っていれば,他のことはたいていどうでもいいのかもしれない。
 巣作りってことなんだけど,その重要な作業はずっと女性が担ってきた。

● 今は,女性も働くのが普通になって,男性の家事参画が喧ましく言われるようになっているんだけど,本格的に参入しちゃって大丈夫なのかな。
 それはあれだよね,自分が指揮官になるから,あなたは私が言うとおりに動いてねってことだよね。
 たぶん,全部自分でやっちゃった方が速いよ。疲労度も少なくてすむと思う。本格的に参入されるより。
 だってさ,ほとんどの男性は戦力にならないよ。戦力になりそうな男性は,自分が指揮官になりたがるよ。

● 伊藤さんによると,「男の人は柔軟剤を入れて柔らかくしたタオルが好きで,女の人は太陽にさらされた感じのごわっとしたタオルを好む人が多い」。
 男は女性的な柔らかいのが好きで,女は男性的なごわっとしたのが好き。わりと理にかなっているようでもあるね。

2014年10月5日日曜日

2014.10.03 伊藤まさこ 『ならいごとノート』

書名 ならいごとノート
著者 伊藤まさこ
発行所 ソニー・マガジンズ
発行年月日 2010.02.20
価格(税別) 1,500円

● 10個の「ならいごと」のうち7つは料理。あとの3つは,銅板を叩いて鍋作り,かご編み,クリスマス・リース作り。好きこそものの上手なれ。

● 自分は手先が不器用で,こういうことが苦手だ。小学校の図工や中学校の技術・家庭の時間は苦痛だったな。
 だから,できる人はすごいなと思う。

● ひょっとすると,小中学校では苦手だと思っていたのは,器用不器用ってこと以外に理由があって,今やってみるとけっこう面白いじゃないかと思ったりするのかもしれないんだけど。

2014年10月3日金曜日

2014.10.02 伊藤まさこ 『伊藤まさこの食材えらび』

書名 伊藤まさこの食材えらび
著者 伊藤まさこ
発行所 PHP
発行年月日 2013.05.27
価格(税別) 1,500円

● この食材ならこの料理という,レシピ集のようなもの。ぼくでもいくつか作ってみたくなるようなっていうか,ぼくにも何とか作れそうな簡単な料理もある。ソーメンのごま油炒めとか。素うどんとか。

● 「今まで市販のぽん酢にどうもピンとくるものがなく,自分で作っていたのですが」(p88)とか,「じゃがいもに染み込む牛肉の味は,おいしいものでないといけない。せっかく手をかけて作ったのに,すべてが台無しになってしまいますからね」(p120)とか,なかなかできないことだし,言えないことだと思う。
 構えが違うな。料理のアマチュアエキスパートというんだろうか。

● そういうものに自分もなりたい。けど,そういう構えはとれっこないとどこかで諦めている。