2020年9月19日土曜日

2020.09.19 伊藤まさこ 『美術館へ行こう』

書名 美術館へ行こう
著者 伊藤まさこ
発行所 新潮社
発行年月日 2019.04.25
価格(税別) 1,500円

● 国や自治体や大企業が運営する美術館ではなくて,もっと小体な美術館が取り上げられている。本書を出すために取材に行ったと思われるところもなくはないが,多くは何度も行っている著者のお気に入り。たとえば,日本民藝館や岡本太郎記念館,鎌倉文学館など。
 したがって,それらお気に入りが何故にお気に入りなのかを,著者が語る。そこが本書が提供する読みごたえ。
 数日,東京にいるので,岡本太郎記念館には行ってみようと思っている。

● いくつか転載。
 高い吹き抜けのアトリエを覗き込む用に見ている時など,奥からご本人が飛び出してくるのでは?と思うほど。ひとりの人間の中にいったいどれくらいのエネルギーが潜んでいるのだおう? ここに来るたび,そう思わずにはいられなくなるのです。(岡本太郎記念館 p64)
 元来せっかちな性格だったという太郎先生。すごい勢いで絵を描いているかと思ったら庭に出て彫刻に向かい,かと思えば今度は口述筆記・・・・・・と,家の中をぐるぐると歩き回り,わき上がるイメージを形にしていったのだとか。(岡本太郎記念館 p64)
 岡本太郎もまたADHDだったのかと思いたくなるんだけども,たぶんそうじゃないんでしょうね。だって,ここには注意欠陥はないからね。
 民藝館に来るといつも頭の中でひとり,「ごっこ遊び」をしています。このやきものの壺には来る途中で見かけた小さな白い花を活けたらいいな,大ぶりな漆の椀は,ころりとした根菜たっぷりのみそ汁がきっとお似合い・・・・・・(日本民藝館 西館 p70)
 展示するために作られた場所(本館)と住んでいた場所(西館),もちろんどちらに置いてあるものも柳の目の行き届いたものであることに変わりはないけれど,住んでいたというだけでこんなにもひとつひとつの物のありかや役どころがはっきりと伝わるのかと目からウロコなのでした。(日本民藝館 西館 p71)
 やさしげだったり,はかなげに見えるちひろの絵ですが,ご本人は案外思い切りのよい人だったとか。(ちひろ美術館 p84)
 はじめてここにものを置いた時に,美しいってこんなに簡単なことだったんだなって思った。ものの美しさは,空間との取り合わせにあるということを痛感しました。(museum as it is p103)
 それまで見知っていた色糸を使った日本の刺繍ではなく,白地に白の糸で密に刺繍された洗礼服。ユキさんは,その陰影の美しさにただただ驚いたのだそう。「人ってなんてすごいのだろう」と。(ユキ・パリスコレクション p134)
 美しいものが分かる人というのは,人の気持ちが分かる人。(猪熊弦一郎現代美術館 p149)

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