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2018年8月24日金曜日

2018.08.24 小山薫堂・佐藤可士和 『SWITCH INTERVIEW 達人達 小山薫堂×佐藤可士和』

書名 SWITCH INTERVIEW 達人達 小山薫堂×佐藤可士和
著者 小山薫堂
   佐藤可士和
発行所 ぴあ
発行年月日 2014.03.15
価格(税別) 800円

● NHKの番組で放送された内容を文字に起こしたもの。読みやすい。二人の仕事観,デザイン観,企画観のエッセンスがわかりやすく語られている。
 もちろん,だからといって,明日から彼らと同じ仕事ができるようになるわけではまったくないが。

● 以下に転載。
 「そもそも観光ってなんだろう?」と考えたときに,僕は,無理に人に来てもらわなくてもいいんじゃないかなと思ったんですよ。それよりも,実際にそこに暮らしている人たちが,まず幸せになるということのほうが先ではないだろうかと。だから,逆に現状で熊本を訪れている観光客の目で現地を見てもらうことによって,実際に住んでいる自分たちでは,もう当たり前すぎてわからないことを,まずは発掘してもらおうと考えました。(小山 p17)
 まずは自分たちが持っているものの素晴らしさを再認識して,それから外に向けて発信することが大事だと思ったんです。(小山 p18)
 目立っているところだけに拍手をするのではなくて,「そこまで気づいてくれたんだ」というところに拍手を送らないと,なかなか組織全体にはメッセージが伝わらないだろうなと思います。(小山 p24)
 企画者ひとりがいくら頑張っても,物事を動かすことなんてできないんですよね。やっぱり,現場にいる一人ひとりがそれぞれ頑張ろうと思わなければ,何も変わらないと思うんです。(小山 p34)
 僕の根底にあるものは,やっぱり「慮る(おもんぱかる)」ことですね。そうです。「慮る」-つまり「思いを量る」ということですね。自分ではない,いろんな人のことを思い量るということが,すべての原点だと思っています。(小山 p37)
 人に生まれ持った使命があるように,「もの」にも,あるいは「場所」にも使命がある。それぞれ何らかの使命があるにもかかわらず,それを100%まっとうしないまま,消えていってしまうのはもったいない,と思うんですよね。(小山 p43)
 「ブランド」とは「感情移入」だと思っています。つまり,自分のものになるというか,自分の身内になるという感覚が大事だと。(小山 p49)
 人が喜ぶことをしてあげて,自分が不幸になる人っていないじゃないですか。やっぱり誰かが喜んでいる姿を見るのはうれしいし,それはなぜかと考えると,自分が存在する意味を見つけた証なんじゃないかと思うんですよね。(小山 p43)
 やっぱり信者こそが最高の宣伝マンなわけじゃないですか。自分で「俺,いいでしょ? 俺の企画,よくない?」って言っても誰も聞いてくれないけれど,「あの人,いいよ。あの人の企画,いいよ」って他の人にほめてもらうことによって,そう思ってくれる人が増えていくっていう。そこがポイントなのかと思いますね。(小山 p55)
 プロジェクトにとっては,まずは「結果」を出すことがもっとも大切だと思います。(中略)プロジェクトの成否にかかわるところで生計を立てている人がいる以上,まずは結果に対して責任を取らなければいけないでしょう。(小山 p59)
 よっぽどじゃないと,メモをとらないですね。メモをとっても,あとで見返した覚えがないので。(佐藤 p73)
 僕はメモはとらないけど,妄想するのは好きなわけですよ。だから,アイデア帳というか,ネタ帳みたいなものはつけていますね。(中略)何かをやろうとするとき,僕はまずノートを買うんですよ。形から入るタイプなので。(小山 p73)
 こういうノートを用意すると,それを埋めなきゃっていうふうになっていきませんか? で,だんだん内容が薄くなっていく・・・・・・。(中略)僕も何度かそういうことをやってみて・・・・・・なんかそのプロセスみたいなものが,素敵な感じで残るんじゃないかと思うじゃないですか? で,残った試しがない。(佐藤 p75)
 空間の整理というのは,そのまま情報の整理とつながってくる話なので。(中略)多くの仕事を抱えていても,こうやっていつも仕事場をシンプルな状態に保っておくことで,頭がこちゃごちゃにならない。頭のなかをスッキリとした状態に保つには,まずは空間から整備するほうがいいと思うんです。(佐藤 p80)
 基本的には決定権のある人-それは必ずしも社長とか会長じゃなくてもいいんですけど,そのプロジェクトのジャッジをできる人と仕事をする,ということを基本方針にしています。(中略)「そもそも誰のために何をしているか」ということがわからなくなっちゃうじゃないですか。(中略)SAMURAIは少数精鋭でやっている事務所だから,そういう調整に追われてしまうと,まったくクリエイティブな仕事ができなくなっちゃうんですよね。(佐藤 p87)
 例えばティッシュなんかは,一般的なナショナルブランドの商品だと,ロゴが大きく目立つデザインになっていますよね。(中略)しかしそうすると,パッケージがどんどん広告化していく。でも,家の中に入ったら,そういうものは必要ないんじゃないかと。(佐藤 p91)
 答えは最初から,相手のなかにあると思っているんです。(中略)その本質をつかんで,バシッと取り出す。それがブランドをよりよくするアイデアにつながると考えているんです。(佐藤 p104)
 「答えは相手のなかにある」というのは,すごくうまい言い方ですね。「あなたのなかに答えがあるんです」っていうのは,経営者にとっても印象のいい言葉だし,実際に刺さるだろうなって思います。(小山 p105)
 経営者の方々って,みなさんすごく面白いことを考えているんですよね。一般的な人の見方ではなく,ずば抜けておもしろいっていうか,ちょっと独特な視点をみなさん持っているんです。(佐藤 p106)
 答えは相手のなかにあると思っているから,アイデアがでてこないんじゃないか,という不安は全然ないんです。(佐藤 p106)
 日本の強みというものを考えると,すごくデリケートな感性というのが挙げられると思います。言い方を換えると日本人は「感性の解像度」が,すごく高い。例えば,料理の味ひとつとってもそうでしょう。(佐藤 p121)
 アイデアというのは,つまり化学反応だと思うんです。(中略)すでにある知識と知識を掛け合わせることで,きちんと新しいものが生まれるんです。(小山 p123)

2017年7月29日土曜日

2017.07.29 小山薫堂 『人生食堂100軒』

書名 人生食堂100軒
著者 小山薫堂
発行所 プレジデント社
発行年月日 2009.11.16
価格(税別) 1,429円

● 小山さんが当代のグルメの一人であることには,どなたにも異論がないと思う。しかも,高見に昇って食を語るという感じではない。
 本書にもセブンイレブンや吉野家の話が出てくるけれども,旨さや食の快楽を幅広く拾える人っていう印象。

● 調理人に対する目線にも優しさが満ちている。もっとも,優しさを籠められないようなところは取りあげないだろうけどね。
 食もまた,自身との関わりを通して語るしかない。したがって,食を語ることは自分を語ることになる。その面でも,本書は面白い。つまり,小山さんは魅力的な人であると思える。

● 以下に転載。
 味覚を磨いてうまいものに辿り着く人生も幸せですが,それ以上に,何を食べてもうまいと思える人生のほうがもっと幸せだと思います。(p3)
 ソースはフランス料理の命と言ってもいいが,ソースが主役になることはない。しかし,日本のカレーライスの主役はソース。これほど素晴らしいソース料理はない。(ポール・ボキューズ p16)
 メニューを開発している時点でたとえ「100点満点の味」ができたとしても,それを実際の営業でそのまま再現することがこんなに難しいとは思わなかった。(中略)毎日同じ味をつくり上げる・・・・・・この最も単純で,最も大切なことが難しい。(p17)
 食事と人生にユーモアは欠かせない。(p19)
 吉野家は一人でふらりと入ってかき込むように食べるのが正しく,楽しい。さらに最近は牛丼以外のメニューもどんどんおいしくなっている。うますぎてずるいと思うくらいだ。(p20)
 青春の食欲に吉野家の牛丼は欠かせない。大人になり,人間として余裕ができたときに吉野家をどう楽しめるか,あるいはどう遊べるか。人生の幅は案外こんなところで広がるのかもしれない。(p21)
 レストランはおいしいだけでは感動はない。人をもてなすこともできない。心から楽しくなれるような空気感が大切なのだ。(p33)
 そこそこうまくて,毎日通っても疲れない,居心地のいいワイン居酒屋。うますぎて疲れるレストランが増えている今,こういう店は貴重だ。(p44)
 いつの間にか僕たちは(セブンイレブンの)店内で宴会を始めていた。飲み物とつまみは無限にある。ビールを買って飲み,レジの横でおでんを買ってつまむ。最後にはカップラーメンを食べた。こうしておよそ2時間,店員さんの身の上話なども聞きつつ,僕たちは店内で最高に楽しい時間を過ごしたのである。(p50)
 帰り際,客に「あぁ,おいしかった」と言わせる店は名店だと思う。「あぁ,楽しかった」と言わせる店は完璧なる名店だと思う。(p51)
 食べ手も楽しく食べるために努力しなければいけないのである。(p69)
 すっかり童心にかえった僕たちに徳岡さんが出してくれたのは,究極の卵かけご飯。吉兆が特別に取り寄せている卵,特別な醤油,削りたての鰹節,そして海苔をかけて食べる。世の中にこんなご馳走があったのかと驚くほど,それは贅沢で深かった。(p78)
 生きるとは,別の命を犠牲にすることであり,食べるとは,命のバトンタッチなのである。(p119)
 普通,旅館の食事はいかに見栄えをよくするか,足し算の論理が働く。しかし,井雪の朝食はまさに引き算の美。余計なものがない,不足がない,野心がない。簡潔にしてキレがある。(p164)

2016年10月25日火曜日

2016.10.24 小山薫堂 『幸せの仕事術』

書名 幸せの仕事術
著者 小山薫堂
発行所 NHK出版
発行年月日 2012.08.30
価格(税別) 1,200円

● 副題は「つまらない日常を特別な記念日に変える発想法」。読了したあと,何がなし元気になっている。それだけで読む価値があるといえるだろう。

● 小山さんによれば,企画とはサービスであり思いやりである。
 突き詰めていくと,企画とは「サービス」だと思うんです。どれだけ人を楽しませてあげられるか,幸せにしてあげられるか。(p21)
 同じ商品であっても,その背景にどういうストーリーがあるか,どういう思いでその商品が生まれているのかを知ることによって人の心は大きく変わる(p27)
 その例として,イチローの母親が作ったカレーをあげる。大学の授業にイチローの母親に来てもらって,カレーを作ってもらう。午後の講義で学生に「このカレーを食べたい人」と訊いても,昼食を食べたばかりなので,ほとんど手があがらない。
 しかるのちに,種明かしをして,再度「このカレーを食べたい人」と訊くと,ほぼ全員の手があがる。そこにあるカレーは変わらないのに,背景がわかると,評価が一変する。
 僕のベースには,「誰かを喜ばせたい」という気持ちがあります。ユアハピネス・イズ・マイハピネス=「あなたの幸せが,私の幸せ」。これは僕が企画を発想する時の原点です。いつも,どうやって人を喜ばせようかと考えているんです。(p36)
 ものの価値というのは,そこにいかに感情移入できるか,どれだけ好きになれるかで決まるんですね。(p149)
 「究極の企画とは何か?」と訊かれたら,僕はこう答えます。「それは,自分の人生を楽しくすること」「それは,自分が幸せな気分で生きること」(中略)別の言い方をすると,究極の企画とは「自分の中の不安を軽くすること」でもあるでしょう。自分の思いひとつで人生が変わるわけですから,企画とは,実は信仰に近いのかもしれません。(p162)
● その他,いくつか転載。
 本来希望していた現場ではないこともあって仕事がおもしろくないらしいのです。ただ,そこで彼はどうしたかというと,その部署にいる,普段まったく笑わないおばちゃんを笑わせる,ということをひとつの目標として自分に課したそうです。その人がちょっとでもニヤッとした時に「よし,勝った」と思う。これも立派な企画ですよね。(p30)
 僕は「芸術家」ではないので,自分の中からわき出してくる何かを表現したいとか,自分の魂を外に発散したいといった欲求はまったくないんですよ。(p58)
 アイデアのタネは,植物のタネのように,いつか発芽して何かの役に立つかもしれない,というもの。それは単なる「情報」ではなく,自分の体験や見聞からつかんだ内容や考え方です。目の前の仕事にすぐに活かすことはできないかもしれないけれども,そうしたタネをいかにたくさん集めておけるかが重要なわけです。(p67)
 僕は,仕事だけのために人脈をつくろうと思うこと自体,浅ましいと思ってしまう。(中略)いかに利害関係のないところで人と出会い,つながっておけるかが大切なのだと思います。(p78)
 そもそも,人は環境に慣れてしまうと,なかなか目の前にある価値に気づかないものなんですよね。けれども,やはりアイデアのタネは日常の中に落ちているものなのです。(p85)
 僕の場合,日常でアンテナに引っかかったものを逐一メモすることはせず,あえて心の中にしまっておくんです。メモを取ると,その時点で安心してしまうんですよ。それよりも,心の中で思い続けていれば,ある時,具体的なアイデアとなって発芽するものなのだと思います。(p99)
 必要なものにしか目を向けないということは,不要なことはしなくなる,ということ。それでは,可能性は広がらないと思うのです。(p105)
 一見無駄だと思うものの中にこそ,実は人生を豊かにするヒントが隠されているような気がするんですよね。(中略)お肉でも脂身が多い肉って,うまいじゃないですか。なくてもいいけれど,脂身があるから味わい深くなる。(p107)
 僕は最近,観光客誘致というものにやや懐疑的なんですよ。あらゆる地域が,とにかく外から人を呼べば幸せになるだろうと「うちはいいところだから,おいでおいで」と言っている。その割に,地元の人たちは,その「いいもの」をさほど満喫していないような印象を受けます。(p129)
 何をするにも,デザインというのは大事だと思いますね。中途半端というのが一番ダメで,徹底的にやらないと人の共感はなかなか得られません。(p157)
 「こうしなければいけない」という規則なんて,本当はもとからないんですよ。自分の人生は自分で決めるものなのです。ですから,八方塞がりになった時にも,それくらいのことでつぶされるのだから,その道はその程度だったんだと思えばいい。同時に,それよりも別のところに,自分にとってもっと確かなものがあるはずだと考えれば,意外に楽になると思うんです。(p172)

2016年3月10日木曜日

2016.03.04 小山薫堂 『明日は心でできている』

書名 明日は心でできている
著者 小山薫堂
発行所 PHP文庫
発行年月日 2016.02.15(単行本:2009.01)
価格(税別) 640円

● 箴言集ではないけれども,それに近い短文集。サラッと読めるし,読み終えると自分が賢くなったような気分になれるというお得な本。
 その気分というのはもちろん錯覚に決まっている。でも,ここは考えようで,学者が自分の専門分野の論文を読むとか,ビジネスマンが自分が担当している仕事の参考書を読むのはべつとして,たいていの読書って,錯覚抜きには成り立たないのではあるまいか。
 上手に錯覚させてくれる本がいい本だ,という命題が成立しそうな気もする。

● ともあれ,そういう本から引用するのも何だかなと思いながらも,いくつかを以下に転載。
 「得意じゃないな」と思ったものには,手を出さない。得意じゃないことで悩むのは意味がないから。(p25)
 人をどう喜ばせるか,感動させるか,ハッピーにするか・・・・・・。それが仕事の原点。つまり仕事とは相手を幸せにするためのサービスなんだと思います。(p33)
 そんなふうに「あ,自分って優しい人だな」って思える瞬間を意識的に作る。そのうち本当にいい人になって神様が味方してくれるようになる気がします。つまり運がよくなるんです。(p39)
 最初のアイデアといのはやっぱり,絞り出すものよりも降りてくるものだと思います。ただ,それを形にする,そのアイデアを商品にするには,悶絶しながら考えなきゃけないと思うんですけど。(p45)
 サプライズにコツがあるとすれば,自分をプレゼント体質にすることから始まると思います。僕は日々,無意識のうちに誰かへのプレゼントを探しています。(p78)
 なにか新しいものを産み出そうというときは,逆にさまざまな情報を遮断した状態で発想するようにしています。最新からは最新のものは創れない。(p89)
 恥なんて,かいたとしても一瞬です。「今日はどんな恥をかいてやろうか」 それくらいの気持ちで毎日を過ごしていたら,いまよりもずっと面白いことが起きるようになると思います。(p103)
 「いろんなエピソードであふれたものにしよう」 そう決めたときから,僕の人生が変わり始めたような気がします。なにかしようとするとき,僕は自分に問いかけます。それって後々エピソードになる? 別に大きなことじゃなくていいんです。(p135)
 最近出会ってハッとした名言があります。日本最高峰のセレクトショップ「ビームス」の設楽社長の言葉です。努力は夢中に勝てない。(p154)

2015年7月15日水曜日

2015.07.12 小山薫堂編 『小山薫堂が90歳のおばあちゃんに学んだ大切なこと』

書名 小山薫堂が90歳のおばあちゃんに学んだ大切なこと
編者 小山薫堂
発行所 PHP
発行年月日 2014.01.06
価格(税別) 1,100円

● 京都の清滝に暮らす秋山夙子さんが若い人に語って聞かせる,人生訓というか生活の戒めというか。語り口を活かして文章化している。

● 語られていることはしごくあたりまえのことで,何だよ,言われなくても知ってるよ,っていうことになる。
 が,同じことでも誰が語るか,どう語るか,どんな状況で語るか,によって説得力が違ってくる。

2015年4月19日日曜日

2015.04.17 小山薫堂 『もったいない主義』

書名 もったいない主義
著者 小山薫堂
発行所 幻冬舎新書
発行年月日 2009.03.30
価格(税別) 740円

● 企画について,映画「おくりびと」について,人生観や仕事観について,思いのままに語ったもの。
 いろんな読み方ができると思うけれども,つまりは一夕の歓を尽くすための読みものとしてとても面白かった。

● 面白かったというときに,なぜ面白かったと感じるのか。ひっきょう,元気をもらえたと思うからでしょうね。

● 「もったいない主義」というタイトルの所以は次のようなこと。
 僕がこれまで関わったプロジェクトの共通点は,宣伝費にお金をかけないで最大の宣伝効果を上げるというところかもしれません。いってみれば,きっかけをつくるためにお金を使う。ものごとには,そこへ力を入れれば何倍もの効果を上げられるポイントがあると思います。それに気づかずに,力を薄く分散させてしまうのはもったいないことです。(p178)
● 企画について語っているところから転載。
 企画という仕事はやはりすごく面白い。人々が何にワクワクするか,何を求めているか,どうすれば喜んでくれるかを考えるのは,すごく楽しい作業だと常々思っています。(中略)企画とは人のことを思いやったり,慮ったりすることでもあるのです。(p30)
 米沢牛だと聞いてから食べると「おいしいに違いない」と思ってしまうのは,米沢牛のブランドの力です。(中略)つまりブランドとはあらかじめ刷り込まれた価値への感情移入なのです。(p38)
 どれだけ事前に価値を刷り込むかによって,ものの価値は変わってきます。自分たちが世の中に送り出すものに対して,どれだけ価値を刷り込んで,どれだけ感情移入してもらうか。その方法を考えることが「企画」なのです。(p41)
● 仕事について語っているところから。
 映画のような創作物に,絶対的な正解は最初から存在しないと思うのです。先輩にアドバイスを求めるのは,「この場合の正解は何ですか」と聞くのと同じような気がする。誰かに聞いたら,その瞬間,その人の真似になるような気がしてしまう。生意気かもしれませんが,その結果としてできあがったものも,その人を超えられない感じがするのです。(p83)
 どうしてこんなにいろいろな仕事ができるのかとよく聞かれるのですが,おそらくそれは初めての仕事でも,あまり不安に思わないからかもしれません。 自分にとっては,パン屋をやるのも,映画の脚本を書くのも,あまり変わらない。どの仕事も,人をワクワクさせたり楽しませたりするという目的は同じで,ただ手段が違うだけ。いってみれば新しい道具を持つような感覚です。(p87)
 僕が初めてのジャンルに挑戦するときも,あまり緊張したり不安になったりしないもう一つの理由は,自分にとても甘いからだと思います。要するに失敗してはいけないと思っていない。失敗したら失敗したで,「これでよかったんだ」と思うクセがあります。(中略)僕はいつでもベストの道に進んでいると思うことにしています。(中略)何か新しいことを初めて失敗したら,「神様がこの世界には行くなと言っているんだな」と解釈します。(p88)
 冬のニューヨークには,一番,僕は刺激されます。寒くて,でも街は刺激的で,というときに「よし,何か書こう」という気になる。 これがハワイなんかに行ってしまうと快適すぎて,「もういまのままでいいや。お金なんかいらないよな」という気になって,勤労意欲が芽生えない。(p173)
 深澤(直人)さんのオフィスに行ったとき驚いたのは,すべての家具が壁にくっついてないことです。普通はスペースを広く使うためにも,壁に沿って置きたくなるものです。しかし彼に言わせると,それを始めると,どんどん部屋が汚れていく。隠れる部分が多いがゆえに,どんどんそこに押し込んでいってしまう。だから家具はなるべく壁につけないほうがいいと言うのです。そんなふうにモノのあり方が,人のライフスタイルや,人の行動様式を変えてしまうことは,確かにあると思います。(p182)
● その他,いくつか転載。
 一般的に言って,受付嬢のようなポジションの女性がひとりいてくれることで,社内がいい雰囲気になるという効果があります。たとえばガソリンスタンドの女性店員は,男性客のためというより,内部の男性スタッフのために雇っているそうです。(p15)
 自分が何か失敗をしたときは,逆にチャンスだと思おう。狼狽して「どうしよう,どうしよう」ではなく,「あ,これはチャンスだ」と思いなさい。その失敗をどうフォローするかによって,逆に相手にすごく好印象を与えることができる。(p63)
 不毛な,ネガティブな感情に時間を奪われているのは「もったいない」。 たとえば,イヤな気分にとらわれることによって,ご飯がおいしくなくなったら,こんなにもったいないことはない。(中略) 人生は有限です。ご飯だってあと何回食べられるかわからない。そのことだけ考えても,ネガティブな感情に駆られている暇なんてないと思うのです。(p69)
 映画とテレビはどこが違うのかというと,一つは明らかにお客さんが違います。たとえ同じ人であっても,テレビを観るときと,映画館に行くときとでは,明らかに違う人になる。(p80)
 自分が誰かの人生に登場できたかもしれないと思えるのは,すごく名誉なことです。そういう思い出が一カ月にに一つでもつくれたら,人生はとても幸せなものになるのではないかと思います。(p108)
 この間,高級外車をたくさん所有している友人が,ポロッと,「最近,何を買っても満たされないんだよなあ」と言っていました。ほしいものはすぐ買えるけれど,買ってもうれしくない。この話を聞いたときに,それが実は一番不幸なのかもしれないと思いました。(p171)
 上質な日常品を使うのは,確実に幸せになるコツです。(中略)よくできたものは,使う人を確実に幸せな気分にしてくれます。(中略) 髪を洗うたびに「いいな,このシャンプー」と思うものを使っていれば,こんなに幸せなことはない。仮にそれが市販品の一〇倍,三五〇〇円のシャンプーだったとしましょう。三五〇〇円はシャンプーの値段としては安くないけれど,それによって得られる満足度を考えたら,コストパフォーマンスはすごくいいと思う。そういうものを集められたら,幸せな暮らしだと思います。(p187)
● おそらく著者は,陽性で明るく,クヨクヨしないタイプなのだろう。ひとかどの人物の共通項はこのあたりになるかと思う。
 で,そこのところは,たとえば斎藤一人さんが説いているところと軌を一にするっていうか,結果において重なっていると思える。

2014年8月29日金曜日

2014.08.29 小山薫堂監修 『日光100年洋食の旅』

書名 日光100年洋食の旅
監修者 小山薫堂
発行所 エフジー武蔵
発行年月日 2014.06.20
価格(税別) 1,400円

● 偉そうなもの言いになってしまうんだけど,栃木の空気を吸い,栃木の水を飲んでいる人間としては,金谷ホテルをつぶすわけにはいかないと思う。
 といって,泊まったことはない。金谷のみならず,日光に泊まったことがない。近いんだから日帰りできる。
 ところが,那須には何度も泊まってるんだよなぁ。日光には泊まる気にならない。この違いはどこから来るのか。

● たぶん,日光は昼の街なんだと思う。東照宮や輪王寺など,昼に見るべきものはたくさんある。
 那須も事情は同じなんだけど,夜は夜で温泉に浸かり,食事や酒を楽しむことができる。昔のオヤジ宴会ではないくつろぎ方を提供してもらえる。日光でそれができるかというと,少々難しい印象がある(できるのかもしれないけれども)。
 食事や酒を楽しむことはできるだろう。でも,温泉はいろは坂を登っていかないとないんじゃないか。

● 那須湯本の温泉は古くからの歴史があるものの,多くのホテルや飲食店は戦後にできたものだろう。いうなら新参者だ。
 日光はそうではない。伝統と格式がある。その代表が金谷。そうした格式に臆するところがある。自分が金谷に行っちゃいけないだろうという気後れ。

● 先代の金谷太郎さん,名士きどりの道楽が過ぎたのではあるまいか。県教育委員会の委員長なんぞ,やったってしょうがなかったろうに。
 しかし,バブルのあの時期に経営に集中していたら,もっと傷口を大きくしたかも。あの時代は異様だったもんな。
 って,過ぎてから振り返れば異様だったってことであって,渦中にいるときにそのように感じられた人はほとんどいなかったでしょ。

● いろいろ漏れ聞こえてくるところを総合すれば,当時の足利銀行のやり方に憤りを感じる。登りたくもない人に無理やり梯子に登らせ,先端に辿りついたところでその梯子を放り投げるようなマネをしてるもんね。
 といって,結局は,言われて登ったやつがバカだってことになってしまうんだろうけど。

● 結局,足銀も倒産。県内企業の多くはざまぁみろと思ったんじゃないか。
 新生足銀も金谷に対する債権のうち40億円は放棄。口に出してはいわないだろうけど,金谷サイドとしては,その程度の債権放棄は当然だと思っているだろう。
 以上は,下衆の勘ぐり。

● 本書は,金谷ホテルの歴史を,食を切り口にまとめたムック。種々の料理を写真をメインに紹介。
 こうして,金谷の歴史を見せられると,長い時間をかけて培ってきた底力のようなものを感じることができる。だまって頭を垂れて跪くしかないという気分にさせられる。

● 監修者の小山さんは,そこのところを「凝縮しない味」と表現する。「変わらないことに価値がある料理」だという。
 故池波正太郎さんは,以前のままで存在する金谷を「奇跡」と言ったらしい。それからさらに幾星霜を経ているわけだけれども,その「奇跡」が継続しているわけだろう。

● となれば,あれこれご託を並べていないで,泊まりに行かなきゃいけないなぁ。日光に行くんじゃなくて,金谷に行く。気後れを克服して。