2014年8月29日金曜日

2014.08.29 小山薫堂監修 『日光100年洋食の旅』

書名 日光100年洋食の旅
監修者 小山薫堂
発行所 エフジー武蔵
発行年月日 2014.06.20
価格(税別) 1,400円

● 偉そうなもの言いになってしまうんだけど,栃木の空気を吸い,栃木の水を飲んでいる人間としては,金谷ホテルをつぶすわけにはいかないと思う。
 といって,泊まったことはない。金谷のみならず,日光に泊まったことがない。近いんだから日帰りできる。
 ところが,那須には何度も泊まってるんだよなぁ。日光には泊まる気にならない。この違いはどこから来るのか。

● たぶん,日光は昼の街なんだと思う。東照宮や輪王寺など,昼に見るべきものはたくさんある。
 那須も事情は同じなんだけど,夜は夜で温泉に浸かり,食事や酒を楽しむことができる。昔のオヤジ宴会ではないくつろぎ方を提供してもらえる。日光でそれができるかというと,少々難しい印象がある(できるのかもしれないけれども)。
 食事や酒を楽しむことはできるだろう。でも,温泉はいろは坂を登っていかないとないんじゃないか。

● 那須湯本の温泉は古くからの歴史があるものの,多くのホテルや飲食店は戦後にできたものだろう。いうなら新参者だ。
 日光はそうではない。伝統と格式がある。その代表が金谷。そうした格式に臆するところがある。自分が金谷に行っちゃいけないだろうという気後れ。

● 先代の金谷太郎さん,名士きどりの道楽が過ぎたのではあるまいか。県教育委員会の委員長なんぞ,やったってしょうがなかったろうに。
 しかし,バブルのあの時期に経営に集中していたら,もっと傷口を大きくしたかも。あの時代は異様だったもんな。
 って,過ぎてから振り返れば異様だったってことであって,渦中にいるときにそのように感じられた人はほとんどいなかったでしょ。

● いろいろ漏れ聞こえてくるところを総合すれば,当時の足利銀行のやり方に憤りを感じる。登りたくもない人に無理やり梯子に登らせ,先端に辿りついたところでその梯子を放り投げるようなマネをしてるもんね。
 といって,結局は,言われて登ったやつがバカだってことになってしまうんだろうけど。

● 結局,足銀も倒産。県内企業の多くはざまぁみろと思ったんじゃないか。
 新生足銀も金谷に対する債権のうち40億円は放棄。口に出してはいわないだろうけど,金谷サイドとしては,その程度の債権放棄は当然だと思っているだろう。
 以上は,下衆の勘ぐり。

● 本書は,金谷ホテルの歴史を,食を切り口にまとめたムック。種々の料理を写真をメインに紹介。
 こうして,金谷の歴史を見せられると,長い時間をかけて培ってきた底力のようなものを感じることができる。だまって頭を垂れて跪くしかないという気分にさせられる。

● 監修者の小山さんは,そこのところを「凝縮しない味」と表現する。「変わらないことに価値がある料理」だという。
 故池波正太郎さんは,以前のままで存在する金谷を「奇跡」と言ったらしい。それからさらに幾星霜を経ているわけだけれども,その「奇跡」が継続しているわけだろう。

● となれば,あれこれご託を並べていないで,泊まりに行かなきゃいけないなぁ。日光に行くんじゃなくて,金谷に行く。気後れを克服して。

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