著者 伊藤まさこ
発行所 幻冬舎
発行年月日 2017.07.25
価格(税別) 1,400円
● 衣食住をきちんと考えている人の本を読むと,自分もそうしているような錯覚に陥ることがあって。それで安心してしまって,「出来合い&インスタント&レトルト&ファストフード」の道を邁進することをやめない。それこそ俺の生きる道,みたいな。
困ったものだ。と本気で思っていないのが困ったものだ。
● 以下に転載。
物をたくさん持っている人が幸せとか,持っていない人が不幸せとか,もはやそういう感覚はなくなりました。金持ちだろうが貧乏だろうが,楽しみや幸せはそう変わらない。(オオヤミノル p12)
最高の店でも,場末の店でも,そこをどう使うかは本人次第。食べ手が,店のランクに合わせた礼儀とアイデアを知っておくべきだと思うんです。(オオヤミノル p12)
生きていく達人の条件は,ランクにかかわらず“ていねい”かどうかだと思います。物はもちろん,人,時間,ひらめきに対して“ていねい”かどうか。(オオヤミノル p13)
コーヒーを淹れる際,「ていねいに」と言うと,みんな時間をかける。でも時間をかけると,一滴と一滴の間が長くなるだけで結果おいしくならない。ていねいな人はおうおうにして早いもんです。早さには運動神経が要り,運動神経には経験と知恵が必要です。(オオヤミノル p14)
赤い肉は血の味がしますね。いい血の味はいろいろな味がする。(オオヤミノル p20)
高い材料で時間をかけて,勉強した人が作る最低を食べるか,あるいは安い材料でCPで鍛え上げられた人の最高を食べるか。ランクが低いものの最高と,ランクが高いものの最低は一緒ではない。ランクは実は上下関係ではなくて,世界が異なる。高いランクの最低を食べるくらいだったら,低い世界の高いところを食べたい。(オオヤミノル p25)
コンソメ文化はまだまだ根強い。かつて家庭でお母さんが洋食的なものを作る時,何にでも固形コンソメを入れました。(中略)デザインの味はほんとうにはおいしくない。(オオヤミノル p30)
写真を始めた頃,アラーキーが好きで荒木さんみたいな写真を撮りたくて同じペンタックス67というカメラに九十ミリのレンズを付けてポートレートを撮ってました。でも当然荒木さんの写真にはならない。でも同じ機材を使っているから,荒木さんの写真を見ると,どうやって撮っているのかある程度は想像できる。そうやって違いを知り,自分の写真について考えるわけです。(長野陽一 55)
友人知人は皆,食べる速度が速い。料理の仕事に携わる人が多いということもあるけれど,やはり根が食いしん坊だからではないか。早く,速く。おいしい一時を逃してなるものか。そういう意気込みが感じられて頼もしい。(p103)
カウンターは舞台で料理人は役者のようだなと感じる。料理人がかっこいいのは,観客である我々に常に観られているからではないだろうか。(p107)
コトコト煮る,というより,ガーッと火を通すことによって,フルーツの味がぎゅっと詰まったおいしいジャムが出来上がる。(p112)
料理の環境にいると太る傾向があるんですよ。中華料理のコックさんの多くは太り気味です。味見するという理由もありますが,食べなくても,油成分などを吸収している。(陳志清 p123)
食欲は生きようとする本能なので,それを一回ストップすると,逆に生きたい,生きようとする意欲が出てくる。それから比べたら,将来の心配とか悩みは,今生きるのにそう困ることではない。(大沢剛 p148)
人間は毛の生えてない猿なんですね。体毛も皮下脂肪もそう多くない人間は,本来暖かいところで暮らす生き物だと思うんです。だから運動して自力で温めるのが一番いいけれど,それが十分にできないのでせめて外から温めて巡りをよくしようと。(大沢剛 p154)
食事の内容が糖に偏っていると,食べたあとに血糖値が上がって,その後下がりやすいんですね。下がるときに空腹を感じます。(中略)だから血糖値を下げないもの,例えば上質な油やタンパク質を摂るといい。(大沢剛 p155)
使っているところに血液が上がってきますので,頭ばかりを使っていると上のほうに血液が集まりやすくなるんですね。(中略)そういう時は歩くと,上にのぼり過ぎていた血液が下がる。(大沢剛 p156)
お腹が空いた時に,グーグーと鳴っているのが気持ちいいんですよ。お腹が空いてイヤじゃなくて,すごく気持ちのいいほうに向かっていることを実感しました。(p157)
食べたいものを食べるということは,食べたくなくなったら食べるのをやめるということとセットなので。これくらい残すのもなとか,高かったからなっていうのは体の欲求以外のところで無理矢理詰め込むことになるのでそこは潔く食べない。(大沢剛 p159)
私の周りの料理上手たちは,いつも台所をピカピカに磨き上げている。「料理のにおいが残っているのが気になる」これはみんなの共通感覚。(p168)
要は手加減ですね。これがあるからこそ面白いのですが。手加減ってものがおいしさの表現なんです。(河田勝彦 p248)
生地が出来上がることを「乳化した」と言いますが,この乳化が大事なんですよ。その時,ピカッとツヤが見える。それがタイミングなんです。これを見落とすと大変なことになる。(河田勝彦 p250)
例えばクロワッサンも,火が幽霊のように動いていますので,全部を同じ形で仕上げるには,型に入れて焼くしかない。ところが型に入れると味も変わってしまう。好きなように,伸びたいように伸ばしてあげたほうが,味はだんぜんおいしい。(河田勝彦 p257)
(おいしいってなんでしょうね)難しい問題だけど,自分のなかでは答えが出ているような気がしています。結局作る人の雰囲気とかも一緒に食べている。人柄と,あとイメージする力。(吉本ばなな p279)
泡立てた生地に砂糖の半量を混ぜ,全体をさっくりとかき混ぜてよく馴染ませる。それから残りの半量の砂糖を入れ,軽く混ぜたら型に入れる。どうして一度に混ぜないのでしょう,入る分量は同じなのに。そう先生に尋ねるとこんな答えが返ってきた。「生地に砂糖がすべて混ざりこんでいるよりも,ところどころのほうが甘みが感じられるでしょう?」 この時の先生の言葉は,お菓子作りだけでなく,その後の料理作りに大いに役立つこととなった。(中略)ちょっと引き算して,最後に中心となる味をきりりと利かす。料理の味がぼやけなくなったのは,このおかげに他ならない。(p305)
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