編者 日経デザイン
発行所 日経BP社
発行年月日 2015.05.25
価格(税別) 2,200円
● 無印良品を甘く見ていた。包装を排して,商品に商品名やブランド名を入れないだけじゃん的に思ったら大間違いだった。
無印の世界を体感するなら,銀座にできるMUJIホテルに泊まってみるのが良さそうだ。一度泊まってエデュケイトされてみたい。
● 以下にいくつか転載。
これらの家電は,国ごとのローカライゼーションはせず,世界同一仕様で販売する。押しつけではなく,控えめに,しかし力強く「無印良品は,家電を,それを通した豊かな生活とは何かを,このように考えています」というコミュニケーションツールでもあるのだ。(p25)
例えば食パンのように,ずっと大きさが一定のものを扱うトースターなどは,決して小さくなることはありません。必ず食パンと同じだけの大きさが必要になるので変わることはありません。こうした家電こそ,無印良品が開発すべきものです。(深澤直人 p31)
家電量販店で目立つようにするには,外観を派手にする必要がありますが,それを自宅のキッチンに置くと各メーカーのデザインが異なるので,ごちゃごちゃした感じがします。(深澤直人 p31)
創造性の省略は優れた商品につながらないことを学びました。(p55)
無印良品の最も強い力は説得力ではなく,「感化力」だということです。商品を手に取った瞬間に「ああ,こういう世界があったんだ」「これでいいんだ」と気付かせる力です。(原研哉 p64)
無印良品の商品は今,7000アイテム以上ありますが,特定の商品を見て「すごい」と思うのではなく,膨大な商品が集積しているお店に入った瞬間に,全体として無印良品の考え方が響き渡っている--そういう感じが理想です。突出したものがあってはいけないのです。(原研哉 p66)
ミーティングで否定的な話はあまりしないようにしています。重箱の隅をつつくようなことをやり始めると無限にある。(原研哉 p66)
無印良品は,単に装飾を削ぎ落としてきれいにしていくとか,モダンにしていくとかではなく,究極のエンプティを作っていくことにあります。用い方やイメージを限定しないで受け入れられる余白が多い方がいいのです。(原研哉 p67)
流行から距離を置くということがとても大事ですね,エンプティであるためには。古臭くなってもいけないし,流行になってもいけないという,一番難しいポジションです。(原研哉 p69)
生活者の希求の水準,こうなりたいなと思う欲望のレベルを上げていくことが必要だと思っています。そこに影響力を持てれば素晴らしいと思うのです。やはり無印良品のレベルというのは,顧客のレベルなんですね。顧客の生活リテラシーやマインドが上がってくると,無印良品に対する欲求も要求も高まってくる。顧客の欲求の水準が高い,ということが何よりも大切なんです。(原研哉 p69)
時代の流れに棹を差してやれ,という意識がありました。「消費者」ではなく「生活社」の視点でどうありたいか,どう生きたいか・・・。人はいろいろな願望を持つわけですが,それとモノの関わりはどうあるべきか・・・。そんな話をしょっちゅうしていたんです。田中一光さんや堤清二さんたちと。(小池一子 p84)
やっぱりインハウスのデザイナーだけだと,得てしてその企業のオーダーがデザインのオーダーになっちゃうじゃないですか。(小池一子 p89)
さまざまな国や地域に進出してコンセンサスを得るということは,逆に言えば個性的でない商品ばかりになってしまう危険もあるということ。もし無印に危険があるとしたら,そこじゃないでしょうか。(小池一子 p91)
スタートした頃は「わけあって,安い」というキャッチフレーズがあって,割れたせんべいとか,折れたうどんとか,分かりやすい商品が多かった。(杉本貴志 p115)
みんなある程度は分かっているんだけど,そうやっていつも議論していかなきゃ駄目なんです。(杉本貴志 p117)
デザインも,欧米人がやると何かを作ろうとするんですね。でも,僕らが無印良品で使う古鉄とか廃材はそうじゃない。もう廃棄されている素材だから,価値はない。花を持ってくるとか,そんなことをしなくても,僕らはその廃材を自然の1つの代弁者として置いているだけ。それで十分に出せる情感というものがあって,そこを狙ったんですね。(杉本貴志 p119)
大型店改革のキーワードは2つある。『発見とヒント』のある売り場,そして土着化だ。(p126)
世界旗艦店と言っても,デザインの基本は今までと変わりません。顧客が日本人だとか中国人だとか,国民性の違いや好みなどもほとんど考えていないんです。あえて意識しないようにしている,と言った方がいい。(p158)
長い間には紆余曲折があって,一時,アドバイザリーボードとの関係が形骸化した時期もあるんです。その結果として資本の論理に向かったときは,必ず業績が落ちる。(金井政明 p180)
中小企業じゃないと,「売るためのモノなんか作るなよ」などと本気で言い続けられません。結果的に大きくなろうが,現場との距離感も含めて精神は中小企業じゃないと。(金井政明 p180)
もともと無印良品は狭い意味でのデザインというものに対するアンチテーゼとして生まれました。モノを売るためのデザインやデザイナーの個性を発信するためのデザインに対して,1980年「本来のデザインは違うでしょう」と言ってスタートしたわけです。(金井政明 p183)
田中さんたちの時代は,ある意味でデザインを省く,素なものにするというデザイン活動でした。「途中下車の商品開発」と言って,ごみ箱を作る15の工程のうち,最後にキャラクターを印刷する3工程を省いて商品化するというやり方です。ところが(中略)工程を省くとむしろコストが高くなるようなことも出てきたんですね。もう省くだけじゃ通用しなくなってきた。(金井政明 p183)
著名なデザイナーの名前が前面に出ることは,無印良品にとってはリスクだったんです。とがったデザインが店頭で目に付き過ぎることにも恐怖を感じていました。洗練され過ぎた,格好いいものが売り場に増えたら嫌だな,と。(金井政明 p184)
良品計画側のボードにピュアな思想,強い軸がないといけません。「先生,お願いします」という構造になってしまったら駄目ですね。(金井政明 p185)
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