2018年7月29日日曜日

2018.07.29 松浦弥太郎 『ご機嫌な習慣』

書名 ご機嫌な習慣
著者 松浦弥太郎
発行所 中央公論新社
発行年月日 2018.02.25
価格(税別) 1,300円

● 松浦弥太郎さんのエッセイ集。自分の「あるくみるきく」を集めてみたとのこと。
 『暮しの手帖』から新天地に移って,めまぐるしい変化を体験し,それも一段落したあたりのものだろうか。落ち着きというか安定を感じさせる。書くことによって自分を支えるというような,切羽詰まった感はないようだ。 

● 以下にいくつか転載。
 一日が終わり,ふうと一息つき,ベッドに入ったとき,自然としていることがある。あらゆるものやこと,人,家族,社会など,そういう自分に関わるすべてのことに,手を合わせ,感謝をすることだ。「今日も一日ありがとうございました」と必ず言葉にする。(p20)
 彼と一緒にいると,一分間に一〇回を超えているのではと思うほど頻繁に「すげー!」と言われるので,なんだか自身が湧いてきて元気にもなる。だから,彼のまわりはいつもたくさんの人が集まっていて,わいわいがやがやと笑顔でいっぱいなのだ。(p27)
 ふたつめの習慣は,「はじめてのこころ」。これも僕にとってのスタンダードでありベーシックだ。とにかく大事なのは,毎日,何事に対しても,うきうき,わくわく,どきどき,一生懸命な,初心者でいることです。(p37)
 成長とは,当たり前のことの精度を高めることであり,当たり前のことができた上での,新しい気づきや,新しいチャレンジなのだろう。(p45)
 おおよその人は,失敗の本質を見極めようとしないから,失敗した段階で,あきらめるか,否定するかで中絶させてしまう。せっかく物事を動かしたのに,ひとつやふたつの結果だけで止めてしまうという,これこそ,もったいないこと,をしている場合が多い。(p50)
 僕の知るところ,何かしらで成功という結果を出している人ほど,話を聞くと,その失敗の数は尋常ではなくて驚かされる。(p52)
 そんなふうに,壊れたら直すことを繰り返していくうちに,ものとの関係がだんだんと深まっていく。絆という,しあわせがある。(中略)壊れたら捨てるとか,壊れたらそのままにするとかは,もってのほか。自分自身も含めて,あらゆるものすべてが壊れるのは当然だから,その都度しっかり修復に励むというのが,大げさなようだが,僕らの人生そのものではなかろうか。(p56)
 最近になって僕は,本が好きということは,人が好きということ。そして,読書というのは,人の話に耳を傾けることであるとわかった。(中略)友だちと呼べる本があるということは,なんてすてきなことだろうと思っている。(p59)
 ある種の仕事の給料の額は,感動の量と比例するのではないかと思いついた。たとえば,お笑い芸人がテレビ番組を通じて,笑いという感動をたくさんの人に与えた場合,テレビの特性として,その数の多さは尋常ではないだろう。だからこそ,人気のお笑い芸人の給料が多いのは納得できる。(p62)
 文章を書くときにいつも意識しているのは,読んだ人が,その文章を読みながら,いかに書かれたものをビジュアル化できるかである。要するに,言葉と文章を使って,どれだけ具体的に映像を浮かばせられるかである。(p70)
 自分が言葉で伝えたいことがあるなら,A4サイズの紙でよいので紙芝居を作ってみて,それをまずは自分で眺めてみる。そして本当に面白いかどうかをよく考える。(p71)
 言葉とは,そして文章とは。いかに賢くならず,いかに上手にならないようにと心掛けることが,僕にとって最も大切なことである。文章を書いた後に,必ず確認することがある。それは文章を声に出して読んでみることだ。(p72)
 僕が書いているものも,すべて僕だけのものではない。僕が誰かの真似をしたり,それによって経験したり,何かから影響を受け,学んだことばかりだ。一言だけ言えるとしたら,決してどこかから盗んできたものではないということだ。自分のちからで見つけ,誰かに与えられたものなのだ。(p77)
 味とは与えられるものではなく,自分から探して見つけるもの。だから,おいしくないのは自分のせい,他人のせいにはしない,と,よく言われて僕は育った。(p112)
 よい道具とは,人が人を助けようという精いっぱいの真心と工夫によって作られたもの。それはすなわち手仕事の美しさを放ち,使えば使うほどに,深いきずなが生まれ,日々の暮らしを支えてくれるもの。よって,大切にし感謝し,よき使い手になるべし。(p120)
 日々の暮らしに,しあわせを増やすことは,そう簡単ではありません。でもそれは,料理をすることで手に入れることができるのです。健康もそうですし,いろいろなことへの意思決定や,対応力,観察力,ものを選ぶちからなど,たくさんの知恵と工夫が,料理という学びによって,しあわせを生む小さな種になるのです。(p127)
 髪は伸びる前に切る。理容店は,一番客になれというのは父の教えだ。(中略)おいしいものに出合ったら,とことん食べ続けるというのも父の流儀だ。食べ続けると,その味のおいしい理由が必ずわかる。理由がわかると,もっとおいしくなると父は言った。(p136)
 父は僕に「ここ(「ウエスト」)で働いている人たちの言葉遣いをよく聞いておきなさい。姿勢と歩き方をよく見ておきなさい」と言った。「どうして?」と僕が聞くと,「きれいなんだ」と父は答えた。(p138)

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