著者 松浦弥太郎
発行所 中央公論新社
発行年月日 2017.02.25
価格(税別) 1,300円
● 『暮しの手帖』からクックパッドに移り,「くらしのきほん」をスタートさせた。環境が大きく変わったろう。松浦さんって,もともとITに対してのめり込んでいた方ではなかったと思うんだが。どちらかといえば,アナログ派というイメージだった。情報カードにペンシルで手書きというイメージ。
● その松浦さんがクックパッドに移ったんだから,文字どおりの新人の気分だったろう。が,機器の使い方だの,ネットの取り扱いなんぞというのは,すぐに慣れる。
大切なのはやはりコンテンツ。あとは,本人も言っているけれども,のめり込む度合い。たとえば,更新頻度や間違いの修正に要する時間の短縮など。そういうところで,松浦さんに手抜きはないのだろう。
● といって,本書でクックパッドでのとまどいを詳しく語っているわけではない。松浦流の仕事論,生活論,人生論を本書でも語っている。
● 以下にいくつか転載。
どんなに立派といわれる仕事や学びよりも,料理や掃除,洗濯という,日々繰り返される家事全般の仕事こそがもっとも尊い行為であり,そこにこそ真実があり,本当の学びや楽しみがある。(p11)
本来のおいしい味とは,食べながら自分で探して見つけるもので,ひと口食べてすぐにわかるようなものではないのだ。(p15)
勝負において,圧勝というのは一時は心踊るものである。しかし,圧勝の恐さを忘れてはいけない。というのは,その後に必ず大きな負けも作用するということだ。作用には常に反作用が働くのも自然の摂理。なので,勝ち続けたいなら,たまに負けるのが良い。(p19)
優れた人は,きっと自分が真似をしたい型を見つけることが得意であるということだ。実はそこに独自性があらわれる。もっと言うと,型を見つけることができたら,目的のほとんどは済んでしまっているようなものである。(p24)
行き詰ったときは,まわりの人に助けを求めるのが一番いい。もうダメだと思ったら早いほうがいい。(p50)
英国の老舗靴店で靴を注文したことがある。その店の主人に靴の手入れで大切なのは何かと聞いたら,見えるところではなく見えにくいところの手入れをすることだと言った。とくにヒールだという。(p71)
おもてなしはしてもらうのが当たり前ではなく,お客としての協力があってのこと。客ぶりの良い自分であれば,いつでもどこでも,すてきなおもてなしを受けることができるだろう。(p73)
「ありがとうを一〇〇回言うことが,夢や希望を叶える最高の秘訣なんだよ」 知人は実業家として大きく成功している人だから,言葉に説得力があった。(中略)「いや違うんだ。ありがとうを言うのは人だけでなく,モノや植物,空や太陽というような,どんなものにも,ありがとうと言葉をかけるんだよ。そうすれば一日に一〇〇回言うのはむつかしくはない」(p88)この知人っていうのは,斎藤一人さんではないかと思った。
女性が強くなっていくと,さらにわがまま坊やな男性が増えるに違いないのだ。(中略)世の女性たちよ。男を甘やかさないでほしい。(p93)
自宅であっても退屈したらパソコンを開くのではなく,靴を履いてぶらっと外に出るほうが,どれほど豊かな時間の使い方なのかと思う。(p211)
餃子は,餡に味つけをして,できればタレを使わないほうがおいしいのだ。(p231)
蕎麦はわざわざ音を出してすすって食べるのがよいとされているけれど,それは違う。(中略)すする音が出てしまっても許される料理とされてきただけ。(p233)
「料理は結局,材料である。材料を選ぶことである」という,芸術家の北大路魯山人の言葉がある。(中略)豊かな暮らしとか,心地良い暮らしとか,確かな仕事,価値のある仕事というのは,いかにして良い材料を知り,選ぶかということなのだろう。(p250)
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