2018年3月25日日曜日

2018.03.25 郷ひろみ 『NEXT 明日の僕がいちばん!』

書名 NEXT 明日の僕がいちばん!
著者 郷ひろみ
発行所 講談社
発行年月日 2009.05.25
価格(税別) 1,200円

● もちろん,ライターが書いている。当然だ。本人に自分で書くほどの暇があるわけがない。郷ひろみは雑誌『GOETHE』でもエッセイを連載している。この連載エッセイ,ぼくはわりと好きなのだ。
 『GOETHE』を買うと(毎月買っているわけではないのだが),まず読むのはこれだ。

● 戦後の大歌手といえば,ぼくはこの人だろうと思っている。美空ひばりとか北島三郎とかじゃなくて,郷ひろみ。
 ジャニーズを袖にして独立した草分け的な存在。二谷友里恵との離婚。その他,色々と話題を作ってきた人だけれども,今から振り返ってみれば,ジャニーズも二谷友里恵も松田聖子も後藤久美子も野口五郎も西城秀樹も彼の脇役にすぎない。郷ひろみという骨太の主人公がいて,彼に関わった人すべてが彼の盛り立て役のように思えてくる。

● それほどに彼の生き方は際立っている。NHKの大河ドラマにも登場したし,バラエティーもやってきているけれども,歌手という軸にブレはなく,その歌手という自らの役割に対する忠誠心がハンパない。
 ぼくは木村拓哉がかなり好きで,彼は俳優として戦後を代表できる人だと思っているのだが(SMAP解散の逆風などいずれ乗り越えていくだろう),その木村拓哉にして郷ひろみに匹敵できるかどうかは,少しく曖昧だ。

● 以下に転載。
 何かを目指して努力する過程は大切なんだけど,「僕を観て!」という意識があるうちは,周囲は評価してくれない。(p15)
 「若さ」なんて,どんだけ必死にしがみついたとしても,一瞬でしょ。永遠はありえない。そもそも僕はそういう土俵で勝負する気もないし,外見に関しは本当にもう,あるがままでいいって感じ。(p21)
 周囲からはマニアックとも思われるほどの運動をすることは,朝晩の食事をするのと同じくらい,僕にとっては自然な行為だ。もしも体を動かさない期間が一週間も続いたら,逆に体がだるくて,不快感に耐えられないと思う。(p21)
 体は楽器そのものだからね。フィジカル・トレーニングを続けるのは,歌うためでもあるんだよね。ベースとなる体がきちんと整っていなければ,喉だけ鍛えても効果は半減してしまうだろうね。(p25)
 トレーニングの前提として,腹筋以外の筋肉は,基本的には集中して使った後,48時間は休ませることが必要なんだそうです。つまり,1日おきにしないとよくない,ということ。その理由は疲労を蓄積させないためと,運動によってこわれた筋肉を修復させるため。休ませて,修復するときに筋肉は前より強くなる。それが大切。(p27)
 僕の場合,ゴルフもそうだし,英語も英文タイプも泳ぎも,もちろん歌も,とにかく全部同じなんだけど,できなかったことを人から習うことによって,違うステージを見つけてきたんだよね。これはもう,実感している。つまり,「習うことは自分の限界を超えていくこと」。逆に言えば「我流には限界がある」ことを,いろんなジャンルで経験しているんだよね。(p33)
 僕はそもそも,“ネガティブな要素”を,見るのも聞くのも,ましてや体に取り込むこと自体が,嫌いなんですよね。ほら,ネガティブな発想の人って,必ずそれが顔に出て,いかにもといった風情を醸し出すことが多いでしょ?(p33)
 僕自身が体力的な衰えを感じていないのに,自分がやりたいことや,精神的な年齢までを,実年齢に合わせる必要などないよね。(p36)
 何年もエクササイズを続けているうちに,「健全なる精神は健全なる身体に宿る」という言葉の意味を,体で理解する瞬間がやってきた。それもう本当に,「あっ,なるほど」と,「体を鍛えるということは,心を鍛えるということなんだ」と,一気に腑に落ちる瞬間だった。(p39)
 20代前半の頃だったか,ユダヤの格言集を読んだことがある。曰く,「神は越えられない試練を人に与えない」 僕流に解釈すると,「できるまでするのが努力」ということ。つまり,「物凄く努力したけれど,できなかった」というのは単なる言い訳で,実際には努力したうちに入らないということ。(p43)
 嬉しかった。40代になっても,年齢に関係なく,限界を超えたいと渇望する自分を発見できたことが。(p64)
 そもそも僕は,自分のポジションとか人気とか,守りたいものをじっと眺めているタイプじゃない。むしろ「次の山に登るために」,今いる山からは早く下りてしまいたいと考えるほうだ。(中略)このまま何もしないで「郷ひろみ」を続けていれば,いずれ「先」には進めなくなる日が,多分くるだろう。何もしないで後悔するよりも,渡米した結果,駄目になったほうがずっとマシ。(p65)
 あのとき,なぜ彼が「次」と言ってくれたのか,僕にもわからない。ただひとつ,言えるのは,僕にやる気を感じなければ「次」のレッスンなどしてくれるはずがないし,やはり,僕のただならぬ真剣な気持ちが,彼に通じたに違いない。(p68)
 彼とのトレーニングを始めて3年近くになる頃だった。歌を真剣にやっている人以外にはわかりにくいかもしれないけど,「その瞬間」,僕には「自分の声が見えた」。目の前できれいに共鳴し,みごとに渦巻いている声が。「うわ~,これが僕が探していた本当の声なんだ!」という衝撃。(p68)
 神様はやはり,僕らをどこかで見ている。そして,大きな代償を払う覚悟を持った人だけに,「望んだ運命を手繰り寄せる」チャンスを与えてくれるのだ。今は素直にそう信じられる。(p69)
 その目標を達成するためには,「思考」と「行動」,そして「継続」が必要不可欠だと思う。僕の中には,常にこの3つしかないと言ってもいい。(中略)「思考」に「行動」が伴ったら,最後はもう「継続」しかない。これがもっとも大切なことだ。(中略)ところが現実には,ほとんどの人が,「思考,行動,継続」の中で,「継続」の段階に入ったところで,我慢できなくなったり,自分のやっていることを疑ってしまったりして,挫折してしまう。結果,潜在能力は「潜在」したまま,埋もれていってしまう。(p70)
 「やらなきゃよかった」という結果のみに囚われる「後悔」には,問題の抽出や分析がない分,学びも少ない。(中略)こう考えているせいか,僕は失敗してもあまりくよくよしないし,「起こってしまったことは仕方ない」「こんなこともある」という程度に,さらっとやり過ごせる。大切なのは,常に「次」のステップ。前に進んでいくことだと思う。(p76)
 僕はいつも思う。人の幸せと,その人が背負わなければならない「負」の部分は,常に同等であると。だから周りから見て,とてつもなく成功しているように見える人は,確かに幸せも大きいのだろうけど,彼らが背負っている負の部分もまた,大きいものなのだ。(中略)大きな幸せを享受しながら,小さな負ですますことは,多分,神様は許さない。(p81)
 男性諸君には是非,今まで「来年あたりから始めよう」と先延ばしにしていた体のメンテナンスを,今日から始めてほしい。取り返しがつかないような状況になる前に。僕自身は,体を健康に保つことが自分の内面を活性化させ,充実させることに繋がると感じている。(p88)
 少なくとも,心は閉じずに「友達」との出会を待ちたいものだ。(p92)
 芸能界でも実業界でも,男社会で頑張っている女性には,筋がビシッと通っていて,さばさばと男っぽい人が多いものだ。(p99)
 今まで数々のスキャンダルで世間を賑わせてきた僕だけど,どんな噂が飛び交っても,言い訳はしない。最終的には「沈黙」が一番強いと知っている。(p101)
 そもそも僕の仕事は,尋常じゃない集中力が求められる。生半可なものでは,とても通用しない。多分,恋愛のせいで僕が集中力を欠くようだったら,プロとしては間違いなく失格だ。その程度の自覚なら,10代の頃から持っていた。(p137)
 今でも,「他人と自分の比較ほど無駄なことはない」と断固として思っている。なぜならば,そこには無駄な優越感と劣等感しか,生まれないから。他人と自分を比較して,もしも自分のほうが勝っていたとしても,それが一体何になるのだろう。(p147)
 誓って言える。僕は人のことを悪く言ったことはないし,裏切ったこともない。神様の視線を怖れる僕の人生には,嘘がないのだ。そして,そういう自分でない限り,運やツキが巡ってくることはなかったと信じている。(p153)
 素晴らしい人と出会うには,どうしたらいいのか。それは,自分自身がピュアでいる以外にない。(p155)
 ゴルフに行ったときには,厚手の長袖ウェアを着て,日焼け止めを顔に塗って,日傘をさして。それが僕が「郷ひろみ」として人前に出ていくために必要なことだと思えば,僕自身はまったく苦にはならない。皆さんにできるだけ「完成度の高い郷ひろみ」を見ていただくために,自分ができる努力は,常に惜しまないつもりだ。(中略)コンサートにきてくれた人,CDを買ってくれた人に対する,プロとしての礼儀,僕なりのマナーであると思っているから。こういった,ファンをリスペクトする気持ちがなくなってしまったら,やはり歌を聴いてくれる人たちを引き込むことなど,不可能だ。(p159)
 僕が生きていくのはショービジネスの世界しかない。そもそも僕は,歌手という職業に対する自分の適性を,疑ってみたことすらない。(p168)

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