2018年3月21日水曜日

2018.03.21 永江 朗 『65歳からの京都歩き』

書名 65歳からの京都歩き
著者 永江 朗
発行所 京阪神エルマガジン社
発行年月日 2017.10.01
価格(税別) 1,380円

● 京都は人を選ぶ。京都に呼ばれる人と呼ばれない人がいる。ぼくは高校の修学旅行以来,都合6度,京都を訪ねたことがあるんだけど,ついに京都に呼ばれることはなかった。
 金沢にも同じものを感じる。奈良はそうじゃないんだが。

● 著者は京都に家を建てたくらいだから,京都に呼ばれた人だ。しかも,東京にずっといた人だから,京都を外から見る視点も当然ある。

● 以下にいくつか転載。
 わたしも行列を見ると,「そんなに素晴らしいのか」「そんなに美味いのか」と,一瞬,並びたくなりますが,冷静に考えてパスします。並ぶ時間がもったいない。体力ももったいない。わたしが並ぶのは[出町ふたば]と大晦日の[花もも]だけです。(p55)
 人気の甘味処などでは,行列がなかなか進みません。なぜかというと,京都の人は店の外に行列ができていても意に介することなく,のんびりとマイペースですごすからです。(中略)お店の人も,「食べ終わったら早く出ていってください」といった態度はチラとも見せません。「どうぞ,ゆっくりしてって!」という気分がありありなのです。(中略)そして気がつきました。これが京都の時間であり,京都の「あたりまえ」なのだと。(p56)
 若者に「お寺と神社の違いはなんだと思う?」と訊ねたら,「お寺は拝観料を取られるけど,神社はただで見られる」と返ってきました。(p62)
 目が覚めたらぜひ,ホテルで朝食をとる前に散歩することをおすすめします。できれば朝食もホテルのレストランではなく,街なかの喫茶店で。(p81)
 わたしは,たまに大阪に行くことがあっても,晩ごはんは京都に戻って食べることが多い。(中略)大阪よりも京都のほうがおいしい,大阪よりも京都のほうがおいしい店が多い,というのがここだけの本音です。(p93)
 料理の味や店の雰囲気,接客など,さまざまは要素を考慮した上で,想定的に高いと感じるのは,観光客を主要客層に想定したお店です。エリアでいうと祇園や四条河原町界隈の店。木屋町や先斗町も高めです。四条烏丸や新町通も。(p96)
 京都は和食以外においしい店がたくさんあります。なかでも中華料理は独特の発展を遂げています。(中略)どの店でも「京都ならではだなぁ」と感心するのが春巻です。(p98)
 年末年始の京都はしっかり休むお店が多いので,この時期に旅をするときは注意が必要です。(中略)この「国際的な観光都市といわれても,盆暮れ正月はしっかり休む」「ビジネスよりも伝統行司が大事」という姿勢こそ京都らしいところです。(p137)
 本が好きな人にとって,京都は天国のような街です。街のあちこちに本屋があり,それぞれが個性的です。(中略)たしかに,新刊本はどこででも手に入るし,どこで買っても同じ。でも,本屋という空間は一つひとつ違います。京都の本屋は京都に行かなければ味わえません。(p142)
 「大は小を兼ねる」という言葉が本屋には当てはまらないということがわかります。わたしはアバンティブックセンターにも大垣書店にもなかった本を,ふたば書房で見つけたことがあります。(p145)
 以前,女優の浜美枝さんから,こんな話をうかがいました。浜さんはデビュー間もないころ,写真家の土門拳から「いいものを見なさい」とアドバイスされたそうです。(p156)
 茶の湯に用いる道具類のなかで,最大のものが茶室です。茶室はお茶を点てて飲む「場所」ではなく,茶道具のひとつなのです--というのは,建築史家の藤森照信さんの受け売りですが。(p174)
 柳が「民藝」ということばを与えた瞬間,それまで誰も鑑賞の対象だと思っていなかった茶碗や水瓶や箪笥などが美しく見えてきました。千利休が数百年前にやったこと-侘び茶の創造-に匹敵する美意識の革命です。(p208)
 木曽義仲が都に攻め入るところでは,義仲の田舎ぶりが嘲笑されます。義仲は粗野で無教養な武士として描かれます。これは『平家物語』が都人,つまり京都の人の視点で描かれているからでしょう。都会人が非都会人を見くだすところが木曽義仲の描き方に反映されています。(p242)

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