2018年3月20日火曜日

2018.03.20 茂木健一郎 『続ける脳』

書名 続ける脳
著者 茂木健一郎
発行所 SB新書
発行年月日 2018.01.15
価格(税別) 800円

● 本書の要諦は「はじめに」にある次の一文。
 私たちは,成功した人の功績を見るとつい「才能があったから」と思い込んでしまいます。しかし,それは既に達成された偉業に注目するからで,その過程には私たちとまったく同じ困難や挫折があるはずです。彼らはただそれを乗り越えて,続けられただけなのです。(p6)
 つまり,継続することの重要性が説かれている。継続するためには何に注意すればいいか。右から左から上から下から,いろいろと解かれている。

● 以下に転載。
 ダメだといわれても,けなされても,とにかく続ける。才能に恵まれていようがいまいが,とにかく粘り強く継続する。それこそが,最終的には結果につながるのです。(p20)
 根性論は,「正解は一つ」というモノカルチャー的な考え方に陥りがちなのです。(p29)
 宿題をやらなければならないとき,それ以外をゼロにする必要はありません。それこそが「モノカルチャー(単一的)」思考。これは理想的なようでいて,他者に従っているだけの指示待ち常態です。まずは,「何をどれだけやるか,いつ初めていつやめるか」を自分で決めてみる。(p35)
 やっかいなもの,無駄に見えるものでも,どんな役割があるかわからないのです。(p41)
 「ハーバード大学がいい」というのは,誰もが知っている名門大学なわけですから当たり前で,他人の決めた価値観に従っているだけです。(p42)
 最後までやり続ける力と聞くと,一つだけに集中するイメージをもつ人もいるでしょう。集中できる環境を整えようと,「他に手を出すのはやめておこう」「しばらく飲み会の誘いは断ろう」などと考えがち。しかし,続けるためには逆効果です。なぜなら条件を整えて,一つだけをやろうとすると,条件が整わなかったら,続けられなくなってしまうからです。(p46)
 長く何かを続けようというとき,「完璧主義」は大敵です。(中略)なぜなら,継続が途絶えるのは,当たり前だからです。どんな人間でも,一日も休まず,一つのことを続けるなんて,まず無理です。(p48)
 実は目標とは,他人に言うと叶いづらくなると研究で明らかにされているのです。(中略)目標を他人に宣言すると,「目標に近づいた気分」になってしまうと考えられるのです。(p58)
 村上(春樹)さんは,作品を最後まで書いてから,いきなり人に渡すのです。小説を書くには長い時間がかかります。作品を書く長い時間の中で,村上さんはひたすら書いているだけで,周囲から反応をもらうという満足を得ていないのです。(p60)
 新しい英語の本を読んで,いままで知らなかった物語に出会うとうれしい。知らなかった単語に出会うとうれしい。「知らない」に出会うとは,何かをしるチャンスの前触れだからです。しかし,テストで満点を目指している人は,知らないことに出会うと,おびえてしまいます。満点を妨げられるからです。(p65)
 一生かけて追いかける目標とは,「これだ」と運命的に出会うイメージがありますが,そうではありません。むしろ最初はなにがなんだかわからなくても,続けているうちに見えてくるものなのです。(中略)つまり,夢は「育てる」ことが必要なのです。(p70)
 一万時間の法則とは,どんなことでも,一万時間続けるとエキスパートになれるという法則です。(中略)一万時間の継続が,才能や素質よりも重要なパラメーターになる(p75)
 他人の評価が報酬ではなく,行為自体が楽しいから,続けられる。行為自体が楽しいと思える人は,周りがどんな状況であれ,幸福でいられる。(p87)
 柴(那典)さんは,意外にもかつてより今のほうが,ミュージシャンの寿命が長くなっていると指摘します。収入は主に,コンサートやフェス。(中略)かつては,大ヒットしては消えていく「一発屋」が問題になっていましたが,今やたった100人のファンがついてくれれば,十分キャリアを積んでいけます。(p88)
 生物として唯一意味のある継続性とは,生き延びること。生き延びるための居場所(ニッチ)さえ見つかれば,生きる場所の優劣はないはずです。(p91)
 マイノリティの権利に対する意識の高まりも,それぞれの生き方を大事にするという個人の問題だけでなく,社会全体としてもそのほうが進歩し,イノベーションが起きやすいという認識が共有された結果でしょう。(p92)
 単一知性が重視される時代は終わりました。現代では,「何かができない人は,何かができる」ということが常識になっています。(p93)
 エリートという考えは,社会の限られた資源を奪い合うときに現れるものです。一つの椅子を100人で争い,得た一人がエリートと呼ばれる。これは,100人中99人が幸せになれないゲームです。(p96)
 チクセントミハイのフローの概念の中で大事なのは,「その課題に意義があるかは関係ない」ということです。意味がないように見える仕事も,フローに入れば楽しくなります。(p105)
 邪魔だと感じる仕事の中にも本質的な仕事のヒントがあるのです。邪魔な仕事からもヒントを見つけるには,その仕事に打ち込んでいる必要があります。(中略)「今,ここ」の仕事がどんなものであれ,大事なのだという感覚は大切です。その人が伸びるかどうかの分かれ道になるからです。(p106)
 モーツァルトは,ばかばかしいほどに遊んでいました。作品をつくるときも,友人と酒を飲むときも,同じ「集中した1分」を続けていたのです。(p108)
 持続可能なグリットは多様性の中にこそあるのです。私たちが多様性を身につけるために,「今ここにあるすべてのものに,一切の判断を挟まずに目を向ける」という姿勢は,助けになります。(中略)「好きなものは取り込む」「嫌いなものは避ける」とう単純な判断では,多様性を身につけられません。(p109)
 世界とは,すぐに判断できるものだけで構成されているわけではありません。むしろ言葉にしないほうが,存在している物事を丸ごと保持できるのです。言葉以前の形で,自分の中に取り入れることが,多様性を蓄えるコツといえるでしょう。(p116)
 AIは定義した問題を解き続けることは得意だけれども,そもそも問題を定義することが苦手であると考えることができます。(中略)つまり,それをやるのが人間だということになります。(p118)
 頻繁に会う人たちよりも,年に一回程度しか会わない関係性が薄い人たちのほうが,自分が危機におかれたときに助けになる傾向があるのです。なぜでしょうか。頻繁に会う人物は趣味が似ていたり,持っている情報が似通ったり(するからです)。(p127)
 もしかすると夢の実現とは,すべての期待が消えてからが本番なのかもしれません。過度な期待を持たずに,具体的な努力の仕方が見えるところまできたなら,夢の実現まではもう少しといえるでしょう。(p131)
 「基準を知る」ことは助けになります。目指す分野で最高のものに,なるべく早くふれてしまうのです。(中略)まず「無理だな」とわかる。それこそ,基準を知ることです。「無理だな」はプロの基準を身につけたことなので,それから具体的な努力ができるようになるのです。(p132)
 本質を見抜く力をつけるためには,次の二つが必要です。 1 サンプルをたくさん見せる 2 体を動かして,実際にやってみる (中略)とにかくたくさん見ると,法則と型が見えてくるのです。さらに,自分の体を動かしてやってみると,「できる・できない」がはっきりします。すると,ものごとがより具体的に見えるようになります。(p163)
 なぜ本物を見るのがよいのかといえば,必ず手間がかかっているからです。(p171)
 「茂木さん,女性のナチュラルに見えるメイクには,手間がかかるんですよ」 いかにもメイクしていますというメイクはすぐにできるけれど,一見化粧していないように見えるメイクは,細かい作業が必要で時間がかかる。たしかに,レオナルド・ダビンチの『モナリザ』は,ただの薄化粧に見えるけれど,あの肌をつくるために,ダビンチが加えた工数は膨大だったに違いありません。(p175)

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