著者 松浦弥太郎
発行所 小学館
発行年月日 2015.12.06
価格(税別) 1,300円
● 仕事に対する構え,暮らしに対する構え。これを話材にして,松浦さんはかなりの数の著書を出している。当然,内容は重複するはずだけれども,そのことをあまり感じさせないのは不思議だ。
ひょっとすると,重複はないのか。って,そんなことはないだろう。読む側の忘却効果もあるんだろうけど。
● 本書も新鮮な気分で読めた。以下にいくつか転載。
手紙の目的とは,相手に喜んでもらうこと。嬉しくなってもらうこと。(p10)
「料理で覚えるべきことは,技や知識ではなく,愛情の表現です」と教えてくれたのは,料理家のウー・ウェンさんだ。(p23)
ロンドンにいれば素晴らしいアイデアが生まれるのか,ニューヨークにいれば斬新なアイデアが生まれるのか,それは迷信のようなことで,どこで何をしていようとも,アイデアとは,過去の記憶から発掘するようなもの。(中略)すなわち,アイデアとは思い出すものである。となると,人生において,どれだけ多くの実体験と経験を記憶しているのかが大切と言えよう。(p38)
僕は彼女にこう言った。二年間も暮らしていれば,あなたしか知らない真実や物語が,きっとたくさんあるはず。なぜそれを書かないのかと。一線を超えて,あなたが心を開かない限り、何を書いても僕は信用できないとも。そう,文章を書くという行為はつらいこと。つらいけれど,書きたいことがあるというのが物書きなのだ。(p41)
旅をしているのに,一人きりの時間をいつもと同じように過ごしているだけ。こういう旅が僕は好き。(p51)
僕にとって旅先の朝食くらい楽しみなことはない。(p53)
その朝食屋には毎日通う。浮気はしない。これが大事。(中略)毎朝,通える朝食屋が見つかると,旅に暮らしが加わる。旅に暮らしが加わると友だちができる。(p54)
コミュニケーションにおいて,人は皆,常に自分との同意見を他人に求めている(p80)
料理は,味や見た目よりも,食べやすさがもっと大切なんです(p83)
何かを変えたければ,まずは先に自分を変えること。賢者の言葉だ。(p113)
自分のからだが,不摂生のためにだらしなく太っていたりしていたら,勝負服も生かされないと思うのです。(中略)すてきな服というのは,すてきなからだでなければ,すてきに感じられないからです。(p119)
見た目の勝負というのは,いざという時,裸になって立ち姿で勝てるかというのがほんとうのような気がする。(p120)
ぱっと見では見えない,かくれているきらきらした輝きを,いかによく見て発見するかである。すてきなことや美しいことはそうやって見つけるものだと思っている。(p125)
幸運とは,いつも誰かという人が運んできてくれるもので,自分一人で手にできるものではないということだ。幸運とは,拾うものではなく,必ず誰かが手渡してくれるもの。(p131)
時たま練習するのは足し算にしかならないが,ちょっとでもいいから毎日続けていると成長は掛け算になるという言葉を僕は信じ続けた。(p141)
「私には人より優れているところなんて何もありませんよ」と言う人であっても,少し一緒にいれば,すぐに「ここですよ」と見つけることができる自信が,僕にはある。(p148)
本来,どんなことにも,それなりに要する「ちょうどいい時間」があり,「ちょうどいい時間」から生まれる,喜びや楽しさ,美しさ,クオリティというものを,忙しさを理由に手離してしまってはいけないと僕は思うんだ。絶対に。(p153)
人は人を愛することによって,ほんとうの意味で自分を愛することができる。そんな仕事であってもその先には必ず人がいる。その人が,人に愛される人になるために,自分に何ができるのか。(p159)
落ち込んだ時は,行けるところまで,とことん落ち込めばいい。そこに次のステップへの扉の発見があるのだから。我慢した中途半端な落ち込みよりも,どこかをつかんでいる手をぱっと離して,とことん落ち込んでみる。(p174)
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