著者 養老孟司・近藤 誠
発行所 小学館
発行年月日 2015.04.21
価格(税別) 1,100円
● 養老さんは猫を,近藤さんは犬を飼っている。それを媒介にした対談なんだけども,二人とも医者だ。しかも,かなりとんがった主張をしている。養老さんは,喫煙とガンは無関係だというし,近藤さんはガンになっても治療なんか受けるなという。
● そういったことの真偽を判断できる情報は,ぼくにあるはずもない。が,そういう二人の対談なのだから,面白くないわけがない。
● 以下にいくつか転載しておく。
僕は,わが子にも「アドバイス」ってしたことないの。あれこれ口を出すと,その子が持ち合わせていないものを,外側からつけ加えることになるから。余計なことをしなくたって,子どもも動物も,自分の能力の範囲でちゃんと生きていきますよ。(養老 p29)
近藤 「ペットに言葉がいらない」っていうのは,本当にありがたい。 養老 こりゃラクです。現代社会で疲れることのひとつは「常に人の言葉に反応しなきゃいけない。人の言い分をいちいち聞いて,こちらもくだくだしく,言葉で説明しなきゃいけない」ことでしょ。(p59)
生きものの体は,原因と結果の関係が,「ああすればこうなる」みたいな単純なものじゃないからね。体は理論どおりに動かないから。(養老 p62)
結婚なんて考えてするものじゃなくて,はずみだし,だれと結婚しても変わらないんだから。(養老 p78)
人生の目的はオーバーに言えば,世のため人のためでね,ひとりでいても,おもしろくもおかしくもない。(養老 p79)
犬たちの体温や心拍なんかを測ったことも,一度もありません。そもそも僕は,人に対しても,犬猫に対しても,医療行為の価値をあまり認めていないから。元気かどうかは見ればわかるし,ふだんの測定値はそれぞれ違うから,急場に測っても意味がない。ふだん測定しているヒマがあるなら,抱っこして撫でてあげた方がずっといいと思っています。(近藤 p98)
口もきけなくて,自分で口をあけてるかどうかもわからなくなってる人に食べさせるのは,本人の尊厳を傷つける。本人のことを考えたら,そんなことできないはずなんです。(近藤 p103)
自然に任せておけば,治るものは治るし,治らないのは運命で,穏やかに死ぬるんですよね。(中略)人間は治療するから,のたうち回って死ななきゃいけない。(近藤 p107)
最近はペットの医療もサギ的になっていて,人間の医療と同じで,「愛するこの子のために,できることはなんでもしてやりたい」という,飼い主の気持ちにつけこんでいます。抗がん剤とか免疫療法とか,なんの効果もないのに,100万円ぐらいすぐ飛んじゃう。無意味な代替療法やサプリがはびこっているのも,人間と全く同じです。(近藤 p112)
最近は医者が内視鏡を持って,施設にわざわざ胃がんの検診に出向いたりする。寝たきり老人に内視鏡を突っこむと,おもしろいようにがんが見つかって「即治療」という話になります。そして胃を切除されたりすると,手術に耐える体力がないから,バタバタと亡くなっていく。(近藤 p116)
ボケや寝たきりのかなりの部分は薬害と,僕はみています。病院通いが日課になっているお年寄りは,薬を山ほど飲まされて,その副作用で無気力や食欲不振になったり,ふらついて倒れて寝たきりになったりしています。特に,80才,90才を超えてからうっかり医者にかかると,たいていなにか病気を見つけられて,治療されて,早く死んじゃう。(近藤 p116)
多くの人が,安楽死させる側のことを考えないんですよ。死刑もそうで,死刑を執行する人には非常に病む人が多いの。(養老 p120)
僕は昔っから健診には行ってません。医者たちは,あんなもの役に立たないって,わかってるんだよね。だって,僕が現役だったころは,東大の医者たちだって受診率4割だったもの。(養老 p126)
人間60才を過ぎたら,手術も薬も寿命を縮めるだけなんですけどね。(近藤 p126)
もう60年近く,日本では狂犬病はまったく発生していないんですよ。イギリスやニュージーランドなどでは予防接種をやってなくて,日本でも必要ないのに,獣医と製薬会社のためにやってるような感じです。(近藤 p131)
近藤 いくら早期発見・早期治療しても,がんで死ぬ人は減らない。5年生存率が向上したというけど,無害なものを見つけ出して治療をして「治った治った」って言ってるだけですから。 養老 まともに考えたら,すぐわかるよね。がんか,がんじゃないかってイエスかノーかの話になってるけど,生きものって「中間」があるんですよ。(p140)
結核研究の権威が「日本の結核患者の激減はストレプトマイシンでも予防接種でもない。栄養の改善だ」と語っています。やっぱり「大気,安静,栄養」がいちばん大事です。(養老 p143)
昔の親は「ひとの一生ってなんだろう」って,今よりずっと真剣に考えていたと思います。「あんなに元気だったあの子が,あっけなく死んでしまった。この子だってあしたはわからないから,いまこの時を存分に生きさせてやろう。遊ばせてやろう」って。そうしないと,急に死んでしまった時,悔いが残ってしょうがない。だから「子どもは子どもらしく」ということが尊ばれたんです。(養老 p146)
いろんな場面で,「どうやればいいんですか?」っていう質問を受けますよ。そのたびに「バカ!」って言ってやるんだけど。やりかたなんて,自分で見つけるものですよ。(養老 p150)
たまにカゴから逃げ出すヤツがいて,研究室の中に1週間いると,野性に返って,ものすごく敏捷な「つかまらないネズミ」になってるんです。だから僕も,人間のこと心配してないの。人間もおそらく同じだろうと思うから。脊椎ができてから何億年も生きているんだからね。頭で考えてヘンにしてるだけですから。(養老 p151)
0 件のコメント:
コメントを投稿