著者 増田宗昭
発行所 CCCメディアハウス
発行年月日 2017.04.11
価格(税別) 2,500円
● 副題は「CCCの社長が,社員だけに語った言葉」。
● たんに活字を組んだだけの本ではない。二つ,工夫が施されている。
ひとつは綴じ方。折丁を細かくしているんだろうか。パタンと開く。真ん中だけじゃなくて,最初の方や終わりの方を開いても,パタンと開いたままになってくれる。
もうひとつは,豊富な写真の挿入。CCCの事務室(?)の写真,蔦屋書店の写真,風景の写真。増田さんが写っているものも多数。
● この写真がヘタウマっぽいんですよ。自分にも撮れるんじゃないかと思わせるんだけど,実際は・・・・・・っていう。
しかも,気持ちを落ち着かせてくれる写真が多い。写真集としてパラパラと眺めてもいいだろう。あるいは,その中の1枚をジーッと見て,湧きでてくる妄想に遊んでみるのもいいだろう。
● 以下にいくつか転載。
相互に矛盾する文章があるようにも思うんだけど,企画というのは数えきれないほどの多面で構成されているもので,そもそも矛盾を内包するものなのだろうと考えておく。
お客さんが,「それ欲しい」と思うことを提案すれば,成約出来る。答がわかれば,企画は百発百中当たるのに,みんな「答え」を探そうとしない。答を探すことをしないで,鉄砲の玉を打つことばかり考えている。商売で,その「答え」を見つける方法は簡単。お客さんの立場で考えればいい。あるいは,お客さんの気分で考えればいい。(p21)
できないことにチャレンジした人は時間が経つとできるようになって成長するけど,できることばかりをやっている人は年を重ねても,できる範囲が広がらない。(p26)
活躍している経営者には,ある共通点があることに気づいた。彼らの多くは,他者(お客さんも含め)がどう思うかではなく,自分が欲しいと思ったり,自分が正しいと思ったことを実践している。周りをキョロキョロ見ないで,ひたすら,自分が感動することを探している。(p32)
執念なきものは,問題点を指摘し,執念あるものは,可能性を議論する(p44)
役割分担が進むと,情報が分断され,全体的な情報が共有されなくなる(p87)
情報は,血液と一緒で,滞ると体にとって良くない。(p137)
人数が増えると,仕事の分担が進み,誰に何を伝え,誰に何を相談したらいいかが見えにくくなる。だから,少人数にするか,単純な組織にする必要がある。(p137)
企画力の源泉はできないことを引き受ける勇気かもしれない。(p164)
一生懸命考えたり,報告までの時間を長く確保しても,結局アウトプットは変わらない。だからとりあえず,「すぐに」,アウトプットしろと要求。(p167)
企画の質は,いかにみんなから情報をもらうことを知っているかに比例する。自分のデータや,自分のプログラムなんてたかがしれている(p167)
先日,Tカードの営業で会った人から質問された。「生活提案,って一言でいうと,どういうことですか? いろんな人に聞いているけれど,わからないので,教えて欲しい」と。増田は即座に「元気のでる生活イメージを見せることです」と答えた。(p169)
コンセプトをカタチにするのに,一番必要なのは「執念」。執念の強さが企画をカタチにする。執念のない人が,お金を持とうが,部下を持とうが,経験を持とうが,いい企画は,決して生まれない。(p216)
生活提案というのは,これがいいとか悪いとか,頭で考えることではなく,自分がいいと思って,あるいは体験したことを他の人に「これいいでしょ」と提案することに他ならないと思う。(p225)
人間は,風景の中に,無意識に意味を探している。その人にとって意味のある風景があれば,記憶に残るし,意味がなければ,記憶に残らない。(p229)
来ないと損をするくらいの企画を,1センチ単位で積み上げないと,わざわざ来てもらえる空間にはならない。(p241)
1500兆円と言われる日本の個人資産は,その7割を60才以上の人が持っていること。働いている人の7割弱(おおよそ3600万人)が年収400万円以下であること。(中略)だから,企画会社,あるいは企画マンとしては,昔のようにお客さんを一括りにしてはいけないと思う。(p244)年収が400万円以下である7割弱の人たちに申しあげたい。
臆することはない。生活を楽しむのにお金は必須ではない。最近は特にその色合いが濃くなってきたと思う。
だいたい,お金を使って得られる楽しみなんて,すぐに飽きてしまうものだ(たぶん)。
本は蔦屋書店で買うことはない。たいていのものは図書館にある。借りて読めばよいのだ。今どき,所有にこだわるのはド真ん中のバカだろう。
文字を書くのに10万円の万年筆は必要ない。千円ので充分すぎる。ぼくは愚かにも,若い頃に前者を使ってしまったことがあるのだが,かえって千円の万年筆の方が使い勝手が良かったりする。
ノートは百円ショップにいいものがある。
何と言っても,インターネットという無料で使える膨大な情報バンクがあるのだ。音楽の音源もたいていのものはネットに落ちている。落語を聴くのも,語学の勉強をするのも,ネットでタダでできるのだ(やろうと思えば)。コミュニケーションもタダだ。SNSは暇つぶしにも絶好の手段だ。
そのためにも(スマホだけではなく)パソコンは買った方がよいと思う。中古で充分。2万円も出せば立派なのが手に入る。
ちなみに,スマホも3大キャリアで使うのは,お金をドブに捨てるようなものだ。MVNOに限ることは言うまでもない。
運動するのにお金を払ってジムに行くバカがどこにいる? 自転車を買えばいい。初期投資は10万円を超えるけれども,あとの維持費はタダ同然。
できれば通勤も自転車にすれば,運動しながら実用になって,電車賃やガソリン代も浮かすことができるのだ。運動するのにお金は要らんのだよ。
グルメはB級に限る。高級レストランに通って食味評論を語っていたやつが,じつは肉と形成肉の区別もつかないほどお粗末だったというのが,数年前の阪急ホテル事件で明らかになったではないか。
そういう輩が,普段からいいものに接していないと一流はわかりませんよ,なんぞと言うのは笑止千万である。
無農薬だの有機農法の米や野菜にこだわるのも,知性の欠如(あるいは,エビデンスの確認を怠る横着さ)に由来する。
旨いものを安く食わせてくれる大衆食堂があなたの街にもあるはずだ。隣町まで視野に入れれば,必ずあると断言する。そういうところで食べればよいのだ。グルメにもお金はさほど要らないのだ。
あとは見栄と横並び発想を捨てることだね。本人が望みもしないのに,子供をお稽古ごとや学習塾に行かせるなんてのは,自分の見栄から発するものだから,そういうことをやめること。もともと,何の効果もないんだから,そんなものに。
自分のお金をドブに捨てるならまだしも,子供の時間をドブに捨てさせるのは,親といえども犯罪行為に近いのではないか。
というわけで,年収は400万円もあれば充分だ。楽しい人生を謳歌できるはずだ。年収を増やすことよりも,方法論の改善が先ではないかと思うがいかがか。
そして,最後に言う。年に400万円しかもらっていないのだから,仕事に身を捧げるのはほどほどにしておくこと。
ぼくはそうしてきた(そうしてきてしまった)。
人間には向上心がある。努力することも日本人は好き。だけど,戦略的に,自分の成長を仕掛ける工夫に欠ける。(p285)
オフィスの整理は,アルバイトや,一般社員にはなかなか出来ない。大事かどうかの判断ができないから。(p293)
もらった情報を自分なりに咀嚼したり,理解できるまで自分の手元に置きたがる社員がいたら,その間,周りの人は考える時間を奪われる。(p305)
結果は原因によって生まれる。結果を求めても,結果は生まれない。(p306)
今日も,たくさんの会議に出ていると,儲かるとか,会社のイメージをあげるとか,人が育つ,とか,何かを計算して決めていることが多いけれど,本当の決断というのは,答がないし,計算もない。えいや,の世界。(p312)
新入社員の面接とは,会社に入りたい,と思う人を,偉い人が選ぶ,と思いがちだけれど,実は逆。新入社員は,いろんな会社を訪問し,自分の人生を賭ける会社を選んでいる。だから,会社が選んでいるようだけれど,実は選ばれている。(p314)
結局、希望っていうやつは,そういう絶望の淵に立った人にだけ,見えるものかもしれない。恵まれた生活や,能力以上のことにチャレンジしていない人にとって,希望っていうのはあるんだろうか?(p368)
親切にしなさい。あなたが会う人,全ては,厳しい戦いを戦っているのだから(p371)
新しいことには,常に違和感を覚える。逆に,違和感を覚えないような生活や仕事は,進歩がない,ということかもしれない。(p375)
企画するということは,違和感を受け入れることかもしれない。一生懸命,理解しようとすればするほど時間がかかり,いいものはできない。(p376)
人や会社という主体は,存在そのものがメディアであり,メッセージを内包する時代になっていると思う。(p379)
この鬱陶しさや,この行き場のない閉塞感こそが,新しい光の源泉だ(p383)
音楽を楽しんでいるひとはうつ病になりにくいらしい。(中略)しかし,大人になって,自分で問題を解決できるようになると,音楽の価値は相対的に低くなるらしい。(p386)
人は,自分のことがわからないことが多い。人を傷つけている人も,自分が人を傷つけている,とは思わない。(p399)
「悲観は気分に属するが,楽観は,意思である」という言葉。(p408)
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