書名 ミッテランの帽子
著者 アントワーヌ・ローラン
訳者 吉田洋之
発行所 新潮社クレスト・ブックス
発行年月日 2018.12.25
価格(税別) 1,900円
こういう話は探せばけっこうあるんだろうね。昔話も含めて。
● 著者も訳者もリベラルな思想の持ち主なんだろうか。思考を停めるとリベラルに流れるとぼくは思っている。政治なんてのはどうやっても必ず不満は残る。その不満が視界の大半を占めることになる。そのまま放っておけば,だいたいはリベラルに向かう。
エラーは誰にでもわかるのと同じだ。ファインプレーに見せないファインプレーには,大半の人が気づけない。
● 「訳者あとがき」にはミッテランを “文人政治家” と評する一文がある。政治家は文人政治家であるべしと考えているようだ。文人政治家を良しとしているというか。
政治家は他の職業とは違う特別なものだと見ているのだろう。あるいは支配者だと見ているのか。支配者なんだから,被支配者と同じ知的水準では困る,文化・教養・芸術といったものにも通暁しておいてもらいたい,と要求しているのだろう。
だとすると,この熟度の低さは何事かと言いたくなる。それ以前にいつの時代を生きているのか。
● 政治家というのも職能のひとつであって,政治家は政治家として優秀であればいい。他国の政治家と渡り合うのに人文系や社会系の知識が必要ならば,その限りで身につけておく必要があるのは当然だけれども,文人であることは政治家であるための必要条件ではない。
人として優れているとか人格者であるとか清廉であるとか,そういう必要もない。政治家という職能に秀でていればそれでよい。


