書名 赤いモレスキンの女
著者 アントワーヌ・ローラン
訳者 吉田洋之
発行所 新潮社クレスト・ブックス
発行年月日 2020.12.20
価格(税別) 1,800円
● 作者はフランス人。だったら,モレスキンじゃなくても,たとえば『黄色いロディアの女』でもよかったのではないかと思うが,原題は『La femme au carnet rouge』。
carnet はノート,手帳という意味で,rouge は赤だから,そのまま訳せば『赤い手帳の女』でいいはずだ。
● モレスキンという具体的な商品名をタイトルに付けたのは,日本語訳の出版社ということになる。モレスキンとした方が訴求力が上がると考えたのか,それ以外の大人の事情があったのか。
実際,『赤い手帳の女』では愚鈍層が話題にすることもなかったかもしれない。
● 作中の手帳がモレスキンであることが決定的な意味を持つわけでは,もちろんない。作中でモレスキンという言葉は4回しか登場しないし(4回は登場する),モレスキンを使っていることにするのが,主人公の「女」の性格造形に何ごとかの影響を与えることがあるかといえば,それも少々考えづらい。
が,モレスキンを使っていることにするのが無難だとは言えるだろう。モレスキンは世界で一番売れているノートであって,したがって大衆性がある。同じのを自分も使っているという人が最も多くいるはずなのだ。本の販売上も美味しい理由になる。
● 「女」が男のアパートを訪ねるときのシーン。
私はベルを鳴らし,彼の声を聞いた。(中略)不意にもう少し時間が欲しくなり,ごめんなさい,間違えました,と言ってしまった。大丈夫ですよ,よい夜をお過ごしください,その声は言った。(p165)
間違ってインターホンを押した人にこういう対応ができる男ってカッコいいよなぁ。余裕があってね。洒落た恋愛小説の主人公になるには,この程度の余裕はないとね。
日本だとできる人はそんなにいないよ。舌打ちしちゃう人,けっこういるでしょ。

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