2023年6月17日土曜日

2023.06.17 増田俊雄 『とちぎ「里・山」歩きⅡ』

書名 とちぎ「里・山」歩きⅡ
著者 増田俊雄
発行所 随想舎
発行年月日 2018.03.31
価格(税別) 1,500円

● 福祉系団体の機関誌に連載したものを1冊にした。ゆえに(と繋いでいいと思うのだが),年寄りでも歩けるコースが選ばれている。男体山だの女峰山だのは出て来ない(ただし,白根山や茶臼岳は出てくる)。
 自然の中を歩きたい人や高山植物が好きな人(特に年寄り)には親切なガイドブックになっている。この分野にまったく疎いぼくが言うのも何だけれども,豊富な実地の経験から選び出されたものだと思える。

● ぼくも今年になって日光を訪れるようになり,外山,銭沢不動尊,鳴虫山には登ったので,少し山歩きというものに興味が出てきている。
 といって,年齢が年齢だから,本格的な格好をして登るのは御免被りたいと思っている。気軽にヒョイヒョイと行けるところがいい。遭難の危険があるとか,おっかなびっくり登らなきゃいけない箇所があるところとか,そういうのはそういうことが好きなヤツに任せておけばいい。

● というわけで,とりあえず行ってみようかと思ったのは,日光の「稲荷川砂防堰堤群」と「神橋から憾満ヶ淵」の2つ。憾満ヶ淵には二度行っているのだけど,憾満ヶ淵までしか行かずに戻っている。憾満ヶ淵の先に大日堂跡があるらしい。それを見てみようかな,と。

● 本書には著者が撮った写真が多く掲載されており(むしろ写真がメイン),文章は全部飛ばして写真だけを見ていった。文章を読むのは,実際に出かける前でいいと思ってね。

2023年6月12日月曜日

2023.06.12 松浦弥太郎 『松浦弥太郎の「いつも」』

書名 松浦弥太郎の「いつも」
著者 松浦弥太郎
発行所 CCCメディアハウス
発行年月日 2023.02.07
価格(税別) 1,400円

● 副題は「安心をつくる55の習慣」。
 著者に,生き方,暮らし方,仕事の仕方を説いた著書は多いが,本書もその系譜に連なるもの。こうした “論” が説得力を持つか否かは,書き手が実際に歩んできた人生行路や世に出してきた仕事の実績によって,自ずと左右されるものだろう。その点で言うと,高校を中退して単身アメリカに渡って,世情を裏から眺める(眺めざるを得ない)ところから出発して,現在に至っている著者は,説得力のある “論” を展開できる書き手のひとりとなるだろう。
 「松浦弥太郎か,おまえは」という揶揄の言い方もあるらしいが,そこまでの認知を獲得するのは生半なことではない。

● ぼく一個は『本業失格』や『くちぶえサンドイッチ』『最低で最高の本屋』といった,若い頃の体験を綴った作品に今でも惹かれるけれども,著者の “論” を読むのも嫌いじゃなくて,全部ではないけれど,かなり読んでいる。
 それで自分が変われると思うほど読書の効用を高く見積もってはいけないが,活字の文章の没頭できる数時間を得ることは,幸せのひとつに数えていいと思っている。

● 以下に多すぎる転載。
 僕らが人生を使って追い求めているのは,決して,成功とか勝負で勝つとか,成果が出るとか,他人から認められるとかではないんです。そろそろ,その無限ループから抜け出しましょう。ここから抜け出さない限り,うかめるものもつかめないと思うのです。(p3)
 僕らに必要なのはしあわせではなくて安心なんです。(中略)安心とは,日々,喜びを見つけ,どんなことにも感謝をすること。夜になればぐっすりと眠れて,明日もきっと大丈夫と思える気分のことです。(p3)
 「つまらない。めんどうくさい」「意味がない。関係ない」と思ってしまうのはよくわかります。日々というのはそんなことだらけです。けれども,それを避けたり,適当に向き合ったりしていたら,日々がとても残念なものになっていきます。とにかくつまらなくなります。(p14)
 どんなことでも楽しむとは,楽しくないことが起きても,楽しむということです。かんたんなことではありません。(中略)どうであっても,すべてラッキーと思えばいいのです。(中略)楽しむことに条件をもうけないで,どんなことでも楽しもうと決めてしまいましょう。(p14)
 自分のすることすべてが否定されるような出来事が,人生にはたびたび起こります。しかし,それですら学びととらえれば,その後の自分の成長を思い,感謝して受け入れることができます。(中略)いつも感謝する。全肯定で,どんな物事もすべて受け止める。力を振り絞らなくてもそうするだけで,自然とぐんぐん前に進めます。(p16)
 予定を詰め込んで,それをこなすことが優れているのではありません。計画は,慌てたくないから立てるのです。(p24)
 喉が乾いていればいるほど一気に飲みたくなります。ゴクリ,ゴクリと飲むのは気持ちがいい。だけど喉の乾きはそれほど癒やされません。喉を通るのが一瞬だからです。(中略)ゆっくり飲んだほうがからだにもいいし,喉の乾きもやわらぐのです。(p28)
 いかに自分が毎日新しくいられるか。(p30)
 リラックスするためにもっともかんたんで有効な方法は,深呼吸することです。(中略)緊張している時は深呼吸。悲しくなった時も興奮した時も深呼吸。(p32)
 何かを成し遂げた人間に共通する点をひとつ挙げるとしたら,それは限りなく素直であることではないでしょうか。(中略)アドバイスをするとすぐにメモをして,「ありがとうございます」「やってみます」と反応する人には,誰もがサポートしたくなります。(p39)
 素直さの鍵になるのは,自分との向き合い方です。プライドや経験に足を引っ張られてしまうと,何かいわれてもすぐに「そうなんですか?」「いえ,私はこう思いますけど・・・・・・」と悪気なく反応します。何事も一度は受け止めて,自分の考えや意識よりそちらが正しいのではないかと信じてみることが必要なのです。(p40)
 歳をとっても素直な人に共通しているのは,謙虚だということ。どんなに年齢や立場が上であっても,あるいはどんなに財産があったとしても,人より自分が長けているとは思っていません。(中略)環境に恵まれたり,運や巡り合わせがよかったりしたからなど,自分以外の力があったからだと考えています。(p41)
 いつも笑顔でいれば,一日一日必ず前進します。僕は毎日そう思っています。(中略)笑顔のもとはあなたと関われてうれしいという感謝です。(p42)
 気をつけたいのは,あいさつは,できるだけ相手より先にするということです。(中略)僕自身は,人よりも先にあいさつをしようと心がけています。どんなに年下の人であっても,「あなたのことを認めています」「あなたのことを必要としています」と伝えたいからです。(p49)
 僕たちは評論家ではないので,一つひとつに同意したり反論したりしなくていい。世の中で起きていることを,ユニークは人間劇としてとらえると見え方が違ってきます。(中略)とにかくおもしろがること。(p52)
 僕は,この世界は人々だけでなく,自然も含めたすべての助け合いで成り立っていると思っています。(中略)昔も今も,私たちはあらゆる活動を通じて,互いが助け合うためにはどうすればいいのかを学んでいます。ある意味,人生はそのためにあると言ってもいいでしょう。(p53)
 もし誰も自分を助けてくれないとしたら,まだ向き合う力が弱いということです。自分によからぬ野心があったり,どこかで力を出し惜しんでいたりしているかもしれません。(p55)
 人づきあいの中で一番価値あることが信用です。信用とはどうやってつくるのか。それはつまり約束を果たすこと,果たし続けることです。(p63)
 だけど何があっても許す。何をされても許す。そうしないと前に進めないのです。(p67)
 「許す」というのは,相手の態度にこだわることではありません。むしろ相手に執着しないということ。自分の中でその経験をくるくると丸めてゴミ箱にポイと捨ててしまえばいいのです。(p69)
 最初から,どうやって裏切ってやろうかと考えている人なんてほとんどいないのです。(中略)だから裏切ったのではなく,そこに至るストーリーがあったということ。「よほどの理由」があったのです。(p70)
 人は矛盾していて当たり前ですので。(p83)
 (豊かさとは)お金で買えないものをどれだけ持っているかということですね。(p88)
 欲望は持てば持つほど膨らんでいくのです。(p88)
 豊かさとは持たないこと。僕はそんなふうに思います。(中略)この世にあるものはすべて,決して自分のものにはならないという考えを持つのはいかがでしょう。(中略)あらゆるものは世の中からの預かりものだと考えるのです。ですので,責任を伴います。世の中から一時的に預かっているのだから,大切に扱わなければいけないのです。(中略)僕は身の回りにあるものを大切に扱うことは,とても豊かなことだと思うのです。そこに活き方が現れるからです。(p90)
 本当の豊かさとはものに執着せずに,自分の心が自由であることだと思います。本当の資産家の多くは,どなたも服装も持ち物もとても質素です。物質的な豊かさを求めていないから。(中略)おそらく,所有することには意味がないと知っているのです。(p92)
 手に入れたものは存分に味わうことがものに対する礼儀です。(p95)
 ものが増えると選ぶという行為が生じます。(中略)実はそれもストレスなのです。少しの使えるものをずっと使う。それでいいのです。(p99)
 世の中は「買い物は楽しい」という訴求にあふれています。(中略)私たちはその欲望と戦うことになります。(p99)
 喜びも,楽しみも,悲しみも,苦しみも誰かと分かち合うことで,お互いの心に安心を与えます。(p102)
 学歴や職業,年齢,勤務先などよりも,その人がどんなライフスタイルを持っているのかが重要になってくると思っています。(中略)「どんな人なのか」を判断するのにもう肩書きは役に立ちません。(p106)
 お腹が空いていることは,つらいとは思いません。(中略)実は快適なのです。(p110)
 僕はいつ頃からか服装で主張しなくてもいいと思うようになりました。主役は服装ではなく自分なのです。(p111)
 僕が目指すのは,清潔感があり,印象に残らない装いです。(p113)
 もっとも心がけているのは,玄関と水回りをきれいにしておくこと。(p114)
 遊びは,あらゆることの原点です。太古から人は遊ぶことで学んできました。(p117)
 床屋へは一〇日に一回通い,髪を切っています。歯は三ヶ月に一度のクリーニング,整体には月に二回ほど行ってからだを整えています。(中略)この習慣は何があろうと守っています。なぜなら,これが僕にとっての精一杯の身だしなみの基本だから。(中略)健やかさは,もっとも信用と信頼を感じさせるものだと思います。(中略)気を抜くとすぐに乱れます。そのことに先に気がつくのは,自分ではなく他人なのです。(p118)
 自分が自分であるためには守るべきものがあります。それは自分です。自分を大切にすることが,安心につながります。自分のアイデンティティを守れるかどうかは,優秀であるかや,世の中の役に立つかではなく,最後まで自分を信じ切れるかどうかにかかっています。(p140)
 まずは信じることです。何事も疑ってかかるとなかなか軌道に乗りません。(p145)
 おそらく相手は気がついています。感謝していないわけではないのです。十分わかっている。感謝しているし,うれしいと感じています。それでも態度に示したり,言葉にできたりする人が少ないのです。(p148)
 何が起きてもそこで感情的になったり,あるいは落ち込んだりせずに,とにかく状況を把握する。そうすれば,不安で何も手につかないということはなくなります。(p150)
 私たちは,知らず知らずのうちに日常が答え合わせのようになっています。こうすればこうなるという,おおよそ結果がわかっていることを繰り返すのです。(中略)しかし,そこに学びはあるでしょうか。(p146)
 急いで学ぶことで,時間を無駄にします。じっくり学んだほうが,効率がいい。(中略)投資でも同じです。急ぎすぎると稼ぐことはむつかしい。(p158)
 疑うことと信じることは共存しています。疑うと同時に信じることで人は強い意思を持つことができます。(p165)
 仕事や暮らしにおいて,どうしてこんなに自分はダメなんだろうと思ってしまうことは,誰にとっても茶飯事です。けれども,何があろうと,最後の最後まで,自分を信じることです。皆が皆,もはやこれまで,と思ったとしても,自分は絶対大丈夫だと思うことです。(p168)
 仕事の成り立ちは,困っている人を助けるための行動です。それを覚えておくと,仕事の目的を見失わずにすみます。「何のために」と思い悩むことがあったら,助かる人の顔を思い浮かべてください。(p174)
 これはおそらく僕だけではなく,動画配信やインスタライブなど突発的にやっているように見えるものでも,多くの人が入念に準備して臨んでいるはずです。期待値を超えるようなクオリティの高いものは,しっかりと準備に時間をかけているのです。仕事で問われるのは成果ですから。(p178)
 手ぶらでは会わない。これは僕の信条です。相手が喜ぶ何かを準備する。(p179)
 原稿を執筆する時も,実際に描いている時間はどんなに長くても二時間くらい。けれども,その三,四倍の時間は何を書くかを考えています。(p181)
 人の心を動かすのは,企画内容よりも情熱だということです。(p187)
 みんなが見ているのは,その人のその場における当事者意識と態度です。つまり仕事への情熱があるかどうかなのです。(p190)
 ではどうすれば,情熱を持てるのか。自分を鼓舞できるのか。もとになるのは,物事すべてに対する好奇心,そしてお客様に対するサービス精神ではないでしょうか。(p192)
 成長する,成長したい,そのためには楽しむこと。仕事でも暮らしにおいても,意識的に楽しむことです。(p196)
 僕にも成長するための心がけがあります。逃げない。避けない。否定しない。この三つです。つまり,どんな無理難題にも逃げないで対処して,どんなに苦手なことでも避けないで受け止める。そして起きたことを否定しない。(p197)
 仕事で疲れるのは,自分のコミットメントが浅いからではないか(中略)どこか冷めた気持ちでその仕事に向き合っているから,疲れを感じるのではないかなと。すなわち,楽しめていないから疲れる。(p199)
 「世の中のどこかには,自分が夢中になれる仕事があるはずだ。いつかきっと出会える」と思っているのではないでしょうか。それは幻想です。厳しい言い方になりますが,そう考えるあなたはすでに思考停止しています。仕事の楽しさやおもしろさは,誰かに与えられるものではないのです。自分で工夫し,自分でつくり出すものです。(中略)覚悟を決めてコミットメントして,自分事にしてしまえばいい。そうすれば,夢中になれるはず。ちなみに「夢中」はラッキーを呼び込むための最高の魔法です。(p200)
 約束とは与えられると,苦しくなりやすいのです。約束は常に先手を打つ。(p206)
 自分から手を挙げることです。(中略)多少の見切り発車でもいいでしょう。経験を待っていたら,いつまでたってもやりたい仕事には就けません。(p208)
 いつか誰かが自分を認めてくれる,ということはありません。(中略)受け身の姿勢でいる間は,チャンスは巡ってこないし,なりたいものにはなれないのです。(p209)
 両手に持てるものは限られています。ものだけではなく,情報や知識,そして人間関係もそうです。(中略)いろいろなものを持ちすぎていませんか?(p217)
 時には思い出すら,足かせになることがあります。(中略)忘れてもいい思い出もあるはずです。(p218)
 自分に必要な物量を見極める。余計なものを持ち続けない。「いつか使う」「いつか使えるかも」とは考えない。捨てることが失敗とか損だと思わない。(p220)
 僕のポリシーはシンプルです。お金も時間も,感動することに使う。ここで大事なのは,欲しいものではなく,感動すると思えることに使うこと。たったこれだけです。(p222)
 心もからだも,人間関係もキャリアも,植物に水をやるように,すべて自分で育てるものです。(中略)自分のことは自分でしか育てることはできないのです。(p223)
 自分だけでなく,他人や社会にも同じように,「育てる」という意識を持つと,物事の見方が変わり,不思議と心が寛容になるのがわかります。(p224)
 言葉を探します。(中略)誰かが行った言葉ではなく,本に書いてあった言葉でもなく,自分の内面から湧き上がってきた言葉でないと心は動きません。(p230)

2023年6月10日土曜日

2023.06.10 小林紀晴 『まばゆい残像 そこに金子光晴がいた』

書名 まばゆい残像 そこに金子光晴がいた
著者 小林紀晴
発行所 産業情報センター
発行年月日 2019.11.27
価格(税別) 1,000円

● 金子光晴の旅の跡を追いながら,自分の越し方を振り返る。著者もその折々の旅や出会った人のことを綴った紀行文をいくつも出している。
 その多くを,ぼくは購入していた。たぶん,写真に惹かれて買ったのだと思うが,読んだのはその中の一部に過ぎない。書棚を探して,未読のものを引っ張り出して読んでみよう。

● 金子光晴の作品も中公文庫になっているのは全部持っていたはずだ。それらも読まなくちゃな。
 本書では金子の詩のいくつかが引用されている。巻末に参考文献がまとめられているが,それによると岩波文庫と集英社文のから詩集が出ているようだ。それも書店で探してみよう。

● 以下に転載。
 金子はすでに存在せず,新たな創作物はない。だというのに,常に新鮮に感じてきた。おそらくこの先においても変わらないだろう。自分が常に変わってゆくからだ。(p5)
 刺激的なもの,旅先に好奇心を抱かせてくれるものを求めていたのだ。それでいて実際の私の旅はおどおどしたものだった。尻込みしながら,仕方なく前に進んでいたという感じだった。地味で静かなものだった。(p19)
 私は長いあいだ甲板に出て海を見ていた。帰国するための数人の中国人も同じように甲板に出て遠くを見ていた。彼らの多くは双眼鏡を持っていて,じっと遠くを見つめていた。真剣に見続けるものなど,どこにも存在しないはずなのに。(p30)
 それまでの旅はいってみれば出会い頭や刺激を求めていた。目的など必要なかった。初めての場所,初めて口にするもの,初めての風景に触れることで起きる摩擦熱のようなものだけで十分だった。しかしそれらを求める過程をすでに通過していた。(p47)
 旅とは常に心もとなく,寄る辺ないものである。そこに先人の痕跡などが見えると,急に頼もしくなる。ただし,二〇代の頃の私はそれをたいして求めていなかった。(p75)
 旅人は異質な存在だ。昨日までその地におらず,なんの関わりもなく,またふらりと明日いなくなる。責任というものがほとんど介在しない。同じ場所で少しずつ関係を構築したり深めていくこともたいしてない。(中略)私はあるときから,それにある種の寂しさや物足りなさを感じるようになった。(p86)
 金子の詩に限らず,詩にはそんなところがある。ある年齢,ある状況,ある環境になったとき急に自分に響いてくることが。それは写真に似ていると感じる。観る側の力に委ねる部分が大きいからだ。(p109)
 私もかつての旅のことを時々考える。正確にはふとした瞬間に脈絡もなく,ある情景が甦るといった方が正しい。(中略)そんなふうに頭に浮かんでくる情景は,不安だったり心細かったりする場面ばかりだと気がつく。(中略)そんなふうに頭に浮かんでくることの多くは,写真に撮ることができなかったことに気がつく。たとえ撮れたとしても面白みにかけるということにも。(p112)
 最後に残るものは記憶だ。それもかなり偏ったそれだ。それを反芻することが新たな旅,あるいは旅の成熟といえるのではないか。(p113)