2022年3月26日土曜日

2022.03.26 立野井一恵 『東京の美しい図書館』

書名 東京の美しい図書館
著者 立野井一恵
発行所 エクスナレッジ
発行年月日 2021.10.04
価格(税別) 1,600円

● 公立図書館と大学図書館。紹介されているのは次の21館。
 国立国会図書館 国際子ども図書館
 神奈川県立図書館
 千代田区立日比谷図書文化館
 国立国会図書館
 東京都立中央図書館
 北区立図書館
 武蔵野プレイス
 飯能市立図書館
 太田市美術館・図書館

 東京大学総合図書館
 津田塾大学 星野あい記念図書館
 学習院大学図書館
 東京藝術大学附属図書館
 自由学園羽仁両先生記念図書館
 成蹊大学情報図書館
 多摩美術大学 八王子図書館
 武蔵野美術大学 美術館・図書館
 日本女子大学図書館

 慶應義塾大学図書館旧館
 立教大学メーザーライブラリー記念館
 東京経済大学旧図書館

● 以上のうち,神奈川県立図書館,千代田区立日比谷図書文化館,東京都立中央図書館の3つは,中に入ったことがある。千代田区立日比谷図書文化館はまだ都立日比谷図書館だった頃だけど。
 飯能市立図書館と太田市美術館・図書館は東京ではない。埼玉と群馬。が,外すのは忍びなかったのだろう。
 自由学園羽仁両先生記念図書館は一般利用は不可。場所は自由学園のある東久留米市。自由学園明日館のある池袋とは違うので注意(開校した1921年から1934年まで自由学園は池袋にあった)。

● 前川國男という名前が複数回,出てくる。神奈川県立図書館,国立国会図書館,学習院大学図書館は,コルビュジェの弟子でもあった前川氏が設計したらしい。
 その時代時代でフロントの多くを占める設計者は出てくるものだ。

2022年3月20日日曜日

2022.03.20 出口治明 『僕が大切にしてきた仕事の超基本50』

書名 僕が大切にしてきた仕事の超基本50
著者 出口治明
発行所 朝日新聞出版
発行年月日 2019.05.30
価格(税別) 1,400円

● 2012年に刊行された『仕事は “6勝4敗” でいい』のりライト版。定年になって仕事は辞めたのに,どうして仕事の本なんか読んでいるのか。
 ひとつには,出口さんが書いたものは全部読むと決めているからだが。

● 以下に多すぎる転載。
 僕が最初にお伝えしたいのは「人生を慌てない」ということです。(p1)
 人生とは “凧あげ” と似た意地悪なものです。自分がいくら凧をあげたいと願っても,風が吹かなければ凧はあがりません。そして,いつ風が吹くのか。それは誰にもわからない。(p3)
 大きな決断ほど,直観や好奇心が重要になります。一回限りの人生ですから,心が動く方向へ行ってみる。そして,引き受けた以上はもうやるしかありません。それは責任感や義務感からではなく,人生は偶然の連続であり,後戻りのできないものだからです。(p15)
 待っていても,自分を取り巻く世界は変わりません。行動しなければ世界は変わらない。(p16)
 過去も現在も世の中の99%の人が,自分の本当にやりたいことなど,わからないまま懸命に生きてきたことがわかります。(p17)
 仕事を楽しめない人は,小さなピンチにも屈しやすくなり,チャンスを見極める目を養うこともままならず,凧をあげるための風が吹いたことにも気づけなくなっていくことでしょう。(p28)
 スタート地点を「仕事は楽しくないもの」というところに置き,おもしろくない仕事の中に,いかに楽しめる切り口を見つけ出すことができるか。どうしたら楽しめるのかを常に自分へ問いかけること。(p32)
 どれだけ残業をしたとしても人生において仕事に携わる時間は2,3割。人生に起きるドラマの大半は,仕事から離れたところにあるのです。(中略)すると,2,3割のどうでもいいことにクヨクヨすることも,おもしろくないと腹を立てることも,上司の顔色をうかがうことも,時間のムダだと思えるはずです。(p34)
 聞くことを恥じる必要はありません。なぜなら,会社などの組織は上からの指示で動くように作られているからです。副社長だろうが,常務だろうが,代表権を持つ社長以外の人は,判断に迷った時,必ず上に指示を仰ぎます。(p38)
 スピードを何よりも重要視していること。これは楽しく仕事をしている人に共通する感覚です。(中略)これまでの日本の会社では,ともすれば,時間をかけてもミスのない完璧なものを作ることが重要だと考えられてきました。しかし,それは時間も経営資源も無限だという誤解から生じたムダのひとつです。(p44)
 判断に迷ってしまった時は「仮決め」でいいから,とにかく結論を出すことです。(中略)ひとりで悩み,立ち止まっていては,周囲も意見を述べることができません。何もしないでぐずぐずしているよりは,手元にある材料で即断していく。その方が,物事は良い方向に進みます。(p45)
 こちらが苦手だという感情を露わにして仕事をすると,相手も敏感に反応し,余計なトラブルが増えるだけ。苦手な相手とは淡々と付き合う(p58)
 何かを選ぶということは何かを捨てるということです。いいとこ取りを望むような指示は,実行時に必ず矛盾が生じます。(p66)
 同じ量の仕事ならば,仕上げるスピードが速ければ速いほど,相手に与えるインパクトは強くなります。(中略)仕事をする者として相手に与える衝撃は,ないよりもあった方がいい。どんな仕事でも衝撃や爪あとは残したいものです。(p77)
 目的を達成すればいいのですから,勝ちすぎないこと。(p85)
 働き続けても楽しくない場所にいても,人は成長しません。(p88)
 たしかに,ものすごく不得手なことも,がんばりによってそれなりの水準になると思います。その苦労談は美しいかもしれませんが,ビジネスとして考えた場合,時間のムダだと思います。(p89)
 「苦手を克服しようとしない」
 結果的には,一人ひとりの得意なことを伸ばす方が職場も良くなるのです。(p90)
 自分の行動に自信があれば,いわせておけばいいのです。変なことを話す相手に反論しても,相手は余計におもしろがるだけ。(p92)
 僕は「人生をムダにしたいならこの3つをどうぞ」と常々話していることがあります。1つ目は「済んだことを愚痴る」,2つ目は「人を羨む」,3つ目は「人によく思われたいと思う」です。必要以上に他人の目を気にしていても仕方がありません。(p92)
 裏通りを覗いた方がおもしろい。どの店も玄関はきれいなものですが,裏を見なければ実態はわかりません。(p125)
 その国や地域の発展の様子を知るには,流行に敏感な若い女性を観察するのが一番です。(p125)
 僕のインプットの方法は,自分の好き嫌いで選ばず,とにかく何事でも大量に取り込むという形で昔から少しも変わっていません。(中略)時には「毒」になるようなインプットもあるかもしれませんが,多少の痛い目にあわなければ何が真実で,何が偽物かを見分ける目も養われません。(p126)
 人間は元来,怠け者で易きに流れる動物です。(中略)意欲次第でなんとかなるという考え方が,そもそも間違いです。(中略)可能な限り,やらざるを得ない仕組みを日常生活の中に組み込んでしまうことが大切です。(p131)
 情報を集めたい時には,まず,自分から情報を発信してしまえばいいのです。(中略)つまり,情報を集めるためには,詳しい人を必死に探して情報を聞きにいくのではなく,まず,発信すべきだということです。(p135)
 小説やドラマの世界では情熱的な言葉が相手の心を動かすという描写がありますが,本当の交渉の場でものをいうのは数字とファクトを積み重ねた数字です。なぜなら,そこには嘘の入り込む余地がないからです。(p142)
 数字をファクトを積み重ねたように装った嘘はある。いろんな場面でありそうだ。「嘘の入り込む余地がない」状態であるためには,その事項に関する認識のレベルが当事者双方が拮抗している場合に限られそうだ。そうした交渉の場というのは,意外に少ないものではないか。B2Bの交渉であっても。
 どうすれば数字に強くなれるのか。コツとなるのは,日頃から辞書を引くことです。グーグルなどの検索エンジンで調べるのでもかまいません。(p144)
 たった1冊の資料や本を読んで,「これが絶対の事実である」と思い込むことは,非常に危険なことで,それは「数字,ファクト,ロジックで勝負する」ことにはなりません。(p147)
 残念ながら,「数字,ファクト,ロジック」だけで常に人を説得できるわけではありません。なぜなら,人間は感情の動物だからです。(中略)ある種の人懐っこさや明るさは,それだけで本人の財産といえます。(p155)
 僕は説得の可否は,オール・オア・ナッシングだと思っています。中途半端では意味がない。やるからには全力を尽くすこと。準備不足で自信がないのであれば,そんな機会は捨てればいい。(中略)用意ができてないのにボールを蹴っても,みんなが迷惑するだけです。(p163)
 部下を持った時,欠かせない能力のひとつが,「失敗や逸脱が人間を大きくさせる」という視点を持つことです。(中略)部下や後輩が同じ失敗を繰り返したとしても,決して,感情的に叱りつけるようなことをしてはいけません。(p166)
 上司の顔色をうかがい,上意下達に徹するような仕事の仕方は,正しい姿勢とは思えません。ある時は上司の指示を聞き流し,ある時は2倍に拡大し,ある時はわかりやすく噛み砕いて,部下のやる気を引き出すように伝えることができる人が必要だからこそ,中間管理職が存在するのです。(p183)
 人とのつながりは結果的に得られるもので,自分の意思で作ったり広げたりすることは不可能だと,僕は考えています。(中略)人との出会いはすべて偶然であり,ご縁です。「去る者は追わず,来る者は拒まず」で臨むしかありません。(p209)
 「ノー」とはいつでもいえるのだから,基本的には「イエス」としか言わない。誘われたら,必ず行く。(中略)ひとつだけ確実にいえることは,自分から出向かなければ何も起きないということです。(p210)
 僕には英語がうまく話せないという躊躇はありませんでした。2年で日本に呼び戻されるかもしれないのに,しゃべれるまで待っていたら時間がなくなるだけです。有限な資源である時間の有効活用は何にも増して優先すべきことで,「英語が話せない」ともじもじする暇はなく,飛び込むだけでした。(中略)部屋に閉じ込もっていては,人との出会いなど訪れません。そして,人との交流なくして,賢くなることも,何らかの技術が身につくこともないのです。(p214)
 英語を学び,語学力を高めることも必要ですが,外国人との付き合いで最も重要なのは,相手へのリスペクトです。人間には自尊心がありますから,まずは相手を尊敬すること。次は相手の文化を広く理解することです。(中略)人間は,自分たちの文化や価値観が理解されることに喜びを感じるようにできています。(p216)
 仕事というものは人間と人間で作り上げるものであり,誰もが同じ人間で「外国人」という人間はいないということ。(p218)

2022年3月19日土曜日

2022.03.19 堀江貴文 『捨て本』

書名 捨て本
著者 堀江貴文
発行所 徳間書店
発行年月日 2019.07.31
価格(税別) 1,380円

● 堀江さんの著書はもうだいぶ読んでいる。だいたい,これはどこかで読んだなと思うことになる。これだけ書いていればそうなるしかないだろう。
 今回も同様だ。というか,これと同じ本を読んだことがあるような気がした。『ゼロ』だろうか。

● にもかかわらず読んでいるのは,本が説いているようなやり方をやっていないからだ。だから何度でも読める。
 英会話学校の初級コースに通い初めて,途中で挫折して,また初級コースに入り直すというのを,性懲りもなく何度も繰り返しているようなものだ。

● 今月6日に宇都宮(栃木県総合文化センター)で堀江さんの講演会があった。「地方で稼げ!これからのビジネス 堀江貴文(ホリエモン)特別講演会 in 栃木」というタイトル。主催者がどこだったのかは知らない。
 限定3席でVVIP席というのがあったらしい。「ホリエモンとツーショット写真が撮れる権利付,最前列1列目でホリエモンの熱量を余すことなく聞けるシート,ホリエモン&パソコン太郎サイン入り絵本付,講演前に使用できるお部屋を楽屋側にご用意いたします」というもので,チケットは150,000円。もちろん,売れた。
 一般席は3,000円。ネット配信もしており,そちらも同じく3,000円。
 しかし,堀江さんは著書で何度か,講演会に行くなど時間のムダと書いている。自身の講演会を聞きに来る人に対しても,本を読んでもらった方が早いと言っている。
 まして,今はネットでの動画もある。わざわざこういうものに出向くのは暇人に決まっている。

● ぼくも暇人の最右翼にいるのだが,堀江さんがそう書いているのを読んでいたので,講演会に行くような愚行は犯さなかった。
 年齢的な理由もあるけどね。今さら何したって手遅れじゃね? っていう。だったら,本を読むのももう止めたらどうかってことになりそうだが,読み物としても面白いのでね。なぜ読むのをやめないのかという理由は,そこのところにある。

● 以下に多すぎる転載。
 ほとんどのモノは,「大切」という幻想のパッケージにくるまれた不要品だ。(中略)逆に,持ち主の決断や行動を縛りつけていることもある。(p6)
 モノがなくなり,身軽になるほど,行動のスピードは上がり,アクセスする情報や世界のステージは高まっていった。大切なモノを捨てたことで,もっと大切なものが,自分のなかで明確になっていったような感覚だ。(p7)
 いま僕には家がない。いわゆるノマドな生活をしている。東京にいるときは,あるホテルが定宿だ。私物は,スーツケースに4つほどで収まっており,そのホテルに保管している。(中略)移動のときはスマホを持つくらいで,基本的には手ぶらだ。(中略)ノートパソコンも使わなくなった。(中略)この程度の持ち物で,大概の人よりも多くの仕事をこなし,楽しく,刺激いっぱいの人生を過ごせている。(p8)
 お金やモノがなくても,昭和や平成の最初の頃の「お金持ち」と同じような暮らしが享受できる社会になりつつある。(p12)
 諸行無常は「捨てること」に通じる。すべてのものは移り変わる。だから,いつまでも同じモノを持ち続けることはできない。持ち続けようとこだわると,矛盾と軋轢を生むのだ。(p14)
 「所有」という概念はだんだんと溶けていき,やがては遺物になっていく。(中略)価値(値段)の高いモノを「どれだけ持つか」よりも,「どんな価値観を持つべきなのか」が,真剣に問われる時代になっていく。(p15)
 これから世界は,加速度的にグロスからネットの社会に変わっていくでしょう(中略)それは,バカ高いブランドものより,自分にとって本当に必要なものが優先されることを意味します。自分が求める「質」を大切にしていれば,たとえ低いとされる年収であっても豊かな生活が送れるようになります。(p16)
 どんなに貴重なモノでも,値段がついていれば,お金で買える。所有は「それを買えるチャンスと経済力があった」という事実を可視化しているだけ。持っていること自体には,何の意味もない。(中略)「金で満たされるものに時間と出費を投じるのは,無意味である」(p35)
 好きなことをやり続けていると,特につくろうと努力しなくても,勝手に友だちはできるのだ。(中略)孤独に悩んでいる人は,きっと性格の問題ではなく,やりたいこと不足なのだと思う。(p46)
 僕は1日に数本の仕事と数本の移動,数本の飲み会を詰めこんでいるのが普通だ。東京にいるのは月の3分の1程度で,仕事も遊びも垣根なく,日本全国,海外への移動も日常となっている。毎日がそんなスケジュールで,のんびり寝て過ごす・・・・・・なんていう日はゼロだ。(p47)
 苦しいときというのは,往々にしてプライドを捨てない」状態を,自ら選んでしまっている場合が多いのだ。(中略)プライドを大事にして,いいことは,これっぽっちもない。(中略)僕は数多くの人の成功と失敗,そして復活を間近で見てきたが,プライドでトラブルを解決した人は,皆無と言える。むしろ解決策はあったのに,捨てられないプライドのせいで,転落から復活できなかった人の方が,数えきれないほどだ。プライドは所有欲と同じぐらい,人生で最初に捨ててもいいモノだ。(p53)
 辛いときに,人はゼロイチ思考になってしまうことが多い。(中略)でも,変化は,グラデーションで起きていくものだと思う。(中略)気づきは,突然天啓が降りるのではなく,グラデーションのトーンで僕たちに訪れる。本当のことがわかったり,逆に本当の自分を周りにわかってもらうのには,時間がかかる。(p57)
 本音を隠す必要は,一切ない。気配りなんか,ばっさり捨てて,言いたいことを言っていい。(中略)本音を言える側の方が,圧倒的に強い。(p59)
 気配りを捨てろと言ったが,本当に捨てるべきは「恐れ」だ。人間関係が気まずくなる恐れ。自分の立場が悪くなる恐れ。(中略)恐れを捨てるには,本音で生きるしかないのだ。(p62)
 人間関係において,「お互いの価値観が異なっていることがわかる」のは,思考の質を高めるうえで,非常に大事なのだ。同意の真綿にくるまれて,気持ちいい時間を過ごしたいだけなら,金を払ってキャバクラやホストクラブに行けばいい。会社では,せっかくお金をもらって,いろいろな技術を持った人たちと仕事ができる,刺激的な環境を与えられている。意見のぶつかり合い程度のストレスから逃げて,どうするのだと言いたい。(p65)
 閉鎖された環境で仕事をしていると,勘違いしやすくなってしまうが,「価値観や意見が同じである」ことは,実は異常なのだ。「価値観や意見がバラバラである」ことが普通。それは社会全体の正しい姿でもある。人間関係は,デジタルの数値で区切られたりしていない。色彩が混ざり合った,グラデーションで構成されている。(中略)グラデーションで重なり合っている関係の方が,つながりは広く,柔軟で強いものになるだろう。全部同じ色の関係など,薄気味悪い。(p66)
 一緒にいて楽しくない人たちに好かれようと努力すると,自分を見失ってしまう。人生において,自分を捨ててはいけない。絶対に,いけない。「はじき出してやろう」としてくる人など,遠慮なく捨ててほしいと思う。(p68)
 自己否定は辛い。辛いけれど,ある一定の否定は己に課していくこと。そうすることで,本当の自信が,強いアイデンティティが,育つのだ。まず,「他人のせいにする」クセを,捨ててしまおう。他人のせいにして,あなたの思う未来が開かれるならいいが,そんなことは絶対にない。(p74)
 借金は悪いことではない。前向きな借金は,すすんでしてもいい(中略)やりたいことを先延ばしにする時間の浪費の方が,もったいない。(中略)人生は短く,新しく思いついたビジネスの旬もあっという間だ。(p77)
 どんな親でも,子どもが旅立つときは,寂しさをこらえているものだろう。その寂しさを引き受けるのは,親の役目だと思う。逆に言うと子どもの成長において,「見送る側」の寂しさを耐えるぐらいしか,親にできることはないのだ。(p84)
 寂しさを避けるために,捨てる決断をやめて,現状維持を選ぶ人もいるだろうそれは絶対に,間違っている。ノスタルジーな感情に流されてはダメだ。(中略)まとわりついたものを切り捨て,堂々と「見送られる側」の人生を行こう。(p86)
 入学式直後のクラスコンパのときから,「東大にも面白いやつはいない」という事実が,わかってしまった。同期の新入生を見渡すと,真面目な勉強家タイプばかり。自分で何かをやり始めようとか,勉強以外に楽しいものを見つけようとか,能動的に動きだす感じのやつが,まったくいない。(中略)彼らはほとんど,大学でこつこつ学んで卒業して,名の通った一流企業に就職する将来を望んでいるらしかった。バカらしくて,付き合っていられない。(中略)頑張って日本で一番レベルの高い大学に入学したのに,就職で他の大学を出た学生と一緒のスタートラインに並ぼうなんて・・・・・・バカでしかないでしょ?(p98)
 18歳の僕は,自信がなかったというのもあるが,「女子い冷たくされて傷つく」ことから,自分を守りたかっただけなのだ。(p101)
 僕には人生の指針などないのだけれど,大事にしている考え方は,いくつかある。ひとつは「水が低きに流れるように,自然に身を任せる」ことだ。(中略)例えば,水に飲まれ,滝から落ちそうになってしまったら。そうならないよう努力はすべきだけれど,滝が間近に迫ったときは,どうしようもないのだ。(p111)
 未来は,不確定性に満ちている。逆に言うと,まったく確実ではないから,未来は未来なのだと言える。予測しようと思っても,土台から無理なのだ。(p113)
 流れのなかで,僕が何か自分なりに意識していたとしたら,「執着」をしないことだ。得たモノを何のためらいもなく,捨てていった。だから順調に,転がり続けられたのだと思う。(p115)
 ウェブの世界はスマートだった。全世界の情報がひとつの画面に集まる。(中略)知の集積にアクセスできるだけではない。コミュニケーション,ショッピング,金融などあらゆるシステムと深くつながり,リアルの社会の景色を変えていくのだと思った。(p115)
 日本社会においては東大は卒業してもしなくても,特に差はない。東大に入ったことが,大きな信用とブランドになる。(p119)
 せっかく4年生まで通ってもったいない・・・・・・卒業ぐらいしておけばいいのに,と言われる。その「もったいない」という感覚が,僕には全然,理解できない。面白そうなことを始められるチャンスを先送りにして,行きたくもない大学に通い,学びたくもない勉強を修めなくちゃいけない時間の方が,僕には何十倍も,もったいなく感じられる。(p119)
 会社が大きくなっていくにつれて,創業メンバーとの溝が,開いていった。(中略)いろんなことがあって結局,創業メンバーはみんな会社を去った。創業直後に入社した社員の大量離脱という憂き目にも遭った。(p122)
 社員を一枚岩にして,会社に求心力を持たせ,疑似家族風の組織を構築する--僕から言わせれば,最悪な経営術だ。(p124)
 口でいちいち言わないでもわかる勘のいい人とだけ,一緒に働いていたい。(p126)
 話が合っていた友だちなのに,だんだん合わなくなって気まずい・・・・・・という状況は,誰しも経験すると思う。その場合,僕は,迷わず捨てる。(p131)
 「捨てる」痛みは,ゼロにはできない。しかし,痛みを感じないくらい忙しく,やりたいことに熱中していればいい。痛みがあるというのは,ヒマな証拠なのだ。(p135)
 モノを捨てて,体験を重ねる。体験に,お金を惜しみなく投じる。ビジネスで成功への道を駆け上がりだし,何でも買えるようになってきた頃から,そのように変わっていったというわけではないだろう。僕はもともと,モノより体験重視の性分だったのだ。(p141)
 元ライブドアの社員で,僕のことを悪く言っている人の話は,あまり聞いたことがない。(中略)僕はナチュラルに「勝手について来たければどうぞ」「つまんなくなったら,いつでもいなくなっていい」というスタンスで,接していただけだ。(中略)部下や同僚から恨みを買いまくっている人は,自分のやり方を省みるといい。きっと部下や同僚に対して,情緒とか期待とか功名心とか,いろんなものを捨てるのが,下手だったのだ。(p150)
 頑張ってうまくいく人は,誰が上司だろうと,必ず頑張るのだ。僕なんかいなくてもきっとS君は,活躍していただろう。(p154)
 モテるかモテないかは,自信と経験値が左右する。というより自信と経験しかないと言ってもいい。(中略)容姿とか経済力は,正直そんなに関係ないと,多くの恋愛を経て学んだ。(p156)
 どれだけ成功しようと,年齢にいくつになっても,アウェイにチャレンジできなくなると,人は老いて退化していくと思う。(中略)多くの人は,安定した,傷つかない場所に居続けようと願うものだが,そんな場所は,どこにもない。(p159)
 ライフスタイルは必ず変わるのに,借金してまで自由度の極めて低い不動産を所有しようという理由は,何なのだろう?(中略)ほとんどの場合「家を買うのが立派な大人」だという刷りこみに,屈したのだと思う。そんな刷りこみは,捨てていこう!(p175)
 流れていった跡を「こうしたらよかった」と振り返っても,仕方ない。それまでの経路は無にできない。流れを遡ることも,無理なのだ。先のことも,終わったことも,考えないようにする。これしか正解はないのだ。(p191)
 有罪確定は受け入れる。裁判の結果,そのように判断が確定されたのなら仕方ない。しかし執行猶予を得るために,まったく見に覚えのない悪行や,大きな詐欺行為を意図的に行った・・・・・・という自覚を「ねつ造」つるのだけは,したくなかった。僕が僕自身に嘘をつき,肌感覚で「嫌だ!」ということを許してしまったら,激しく後悔するとわかっていた。当面の自由な時間を捨てることになったとしても,僕は僕であることを,捨てたくなかったのだ。(p194)
 気持ちの整理と,状況の受け入れが下手な人は,おおむね心を病んだり,いらないストレスを抱えるようだ。僕はそんな苦しみを,わざわざ味わいたくない。無駄なエネルギーをネガティブな方向に奪われないよう,「しゃーない」んだからと,修行のつもりで刑務所暮らしを過ごしていた。(p206)
 (収監中は)読書量が増えた。自由時間は暇でしょうがないから本を読むしかないという事情もあったけれど,会社経営で飛び回っていた頃から久しく忘れていた,本を読む楽しみを取り戻していた。航空工学の勉強も始めた。刑務所では指導してくれる先生がいなくても進められる勉強に取り組もうと決めたのだ。(p208)
 毎週発行のメールマガジンの執筆も,普段のルーティンをキープしていく,いい目標になった。メールマガジンのために毎週,“官” の決める映画を観た。(中略)刑務所でしかやれないことを,すすんでやっていこう。そういう方向に気持ちを切り替えると,やりたいことは意外と増えた。経営者時代と変わらず,新しい情報や発見で,思考を埋めつくすことができた。(p208)
 もうおしまいだ・・・・・・なんていう状況は,存在しない。あるのは,もうおしまいと決めつける,自分の諦めだ。どんな場面だろうと,対処する方法は残っている。(p210)
 怒ったぶん状況が変わるならいいけど,そんなことは決してない。切り替えて,最適解を考えるようにしよう。大事なのは「はい次!」の精神だ。過ぎる時間は待ってくれない。怒るエネルギーを浪費する時間より,次の対処策の実行に時間を使ってほしい。(p212)
 ライブドア事件では,僕は元の部下だった人たちに裏切られた。あまりにも理不尽な手のひら返しの裏切りで,普通なら人間不信に陥ってもおかしくなかっただろう。けれど,彼らに対しては,怒りの感情は持っていない。本当だ。逆に,裏切りに遭った以降の,組織間の無数のトラブルによって,会社組織はもういらないと考えられるようになった。(中略)これは僕にとっての「はい次!」なのだ。(p214)
 白い部分と黒い部分が混在して,グラデーションになっている。それが人間だ。(中略)僕を裏切った人たちは,きっと黒い部分が僕に対して,現れ出たのだろう。一度は僕と苦楽を共にしたのだから,彼らが白い部分を持ち合わせていることも知っている。(p216)
 人間付き合いの基本は,是々非々であるべきだ。信用できる,できないと縦割りで付き合いを振り分けするのは,おかしい。「こいつだけは俺を裏切らない」とか「この人は100%善人だ」と決めつけて,信用を預けきるのは,根本的に間違っている。100%の信用が保証された人なんて,肉親でも存在するわけがないのだ。いると信じているとしたら,人間観がおこがましいと言わざるを得ない。人は,どれほど複雑で多面的か,という想像力が欠けている。(p218)
 僕は他人の嘘は,いくら経験を積んだところで,見抜けないと考えている。(中略)できることは,許す。それだけだ。(p218)
 罰ゲームは,必ず終わる。それは揺るぎない事実だ。終わるときを信じて,自分で楽しみを創出しよう。幸せのしきい値の固定を捨てよう。厳しい環境でも幸せを見いだす。それが人の知恵の発揮のしどころではないか。落ちこみに沈んでいるだけの選択は,知恵と想像力の放棄だ。(p228)
 こうした楽しみを独占するのは,嫌なのだ。飲みの席でみんなに伝えたり,本やSNSで発表したり,多くの人たちと共有したい。見せびらかして,「いいね!」と言ってもらえることは,やっぱり気持ちがいい。そして共有することで,また知らない楽しみや,面白いアイデアが集まってくるようになる。楽しみは,共有すれば,さらに楽しみが膨らむ好循環が生まれるのだ。(p231)
 昔からそうだったが,車でも,自家用機でも,自分のモノを知り合いに貸すことには抵抗はなかった。みんな乗りたいんなら自由にどうぞと思う。さすがにスマホとか共有できない道具は無理だが,共有することでみんなが楽しんでくれるなら,すすんで差し出そう。(p231)
 持つことへの執着は,昭和から平成の旧時代のスタイルでしかなく,逆に共有の恩恵を得られないリスクを背負うことになるだろう。(p234)
 所有の目的とは,何だろう? 本来は,持っているモノを使うことで得られる利便性や娯楽性が,目的ではないだろうか? 美術品や装飾品のように,「持つこと」自体に目的がある場合も考えられるが,それも誰かに見せたいとか,心が満たされるとか,所有する行為の先の反応に,目的が置かれている。モノそのものには,目的はまったく付随しない。(p235)
 お金はいらない。大事なのは,体験を取りに行く行動力だ。(中略)本当に求められるのは,何をしたか? 誰と出会ったか? どんな面白い意見を語れるか? という個人の経験値だ。シェアの市場に置き換えられない,行動力に裏打ちされた経験値が高値で取引される社会になっていくだろう。何かを持っていても意味がない。「何をしていたか?」が経済評価に置き換えられていく。(p236)
 モノを売るためには,営業しなければならない。これはビジネスの不変のシンプルなルールだ。(中略)待ちの姿勢というか,店先に良品を並べているだけではダメで「いいモノを売りこむ営業力」が,何よりも大切だ。(p252)
 思い出の品を捨てられないという人は結局,ヒマなのだ。いまという時間に集中して,熱中できるものに取り組んでいたら,過去を思い出すことなんか,ないはずだ。(p258)
 ぼんやりしているだけで過ぎ去り,死へのゴールが,着実に近づいていく。無為に時間を過ごすことは,最も愚かしい「ポイ捨て」作業だ。(中略)時間とはすなわち,命である。(p262)
 迷ったら時間の早い方を選ぶ。これが鉄則だ。(p263)
 時間をかければ成果が高まるという考え方は,そもそも時代に合っていない。(中略)何をしたいのかが定まれば,すぐ行動だ。動きだしが早ければ,きっと回り道よりも効果の高い,近道が見つかる。(p264)
 寿司屋の修行はまず,閉鎖的すぎる。師匠は,弟子になった者にだけ味の秘密を伝え,ときには「盗むもの」だと,教えることもしない。肝心の秘密とは,包丁の角度を変えるとか,味つけに何かの調味料を決まった量だけ足すとか,はっきりいって “コツ” レベルの知識。そんなもの,数秒で教えてやればいいのに! と思う。(p266)
 何年も時間をかけないと得られないスキルなんて,世の中にほとんど存在しない。要は,苦労した上の世代が,「時間をかけないと上達しない」というポジショントークで,既得権を守るための勝手な “修行” なのだ。(p267)
 借金トラブルは,僕はほとんど経験したことがない。貸したお金や投資金も,出した時点で,「あげたもの」と割り切ってしまう。なんなら忘れてしまうのだ。(p278)
 堀江さんのような密度の高い仕事がしたい! 堀江さんのようになりたい! と言ってくれる人は多いが,たぶん無理だと思う。(中略)思考の時間を奪うプライドなんか平気で捨てられるし,持ち運ぶ時間を取られるような,モノにとらわれない。(中略)僕と同じぐらい,時間の貴重性を意識して生きている人は,あまり見たことがない。(p280)
 邪魔なものが片づけられないまま,散らかっている。それもまた多様性の視点では豊かな状態だ。何かのエネルギーを生み出す出発点となるかもしれない。ただそれは広い観点の話。個人で見るなら,不要物は「捨てる」の一択に尽きる。(p289)
 人生においてはゲノムより,ミームの方が大事だ。(中略)ゲノムはランダムの要素が多い。だから継承には適さない。概念を記録したデータ,すなわちミームを残していくことに,力を注いでいたい。選び取るべきは “実在よりも概念” だ。(p290)
 モノが捨てられないのは,欲しいモノが明確ではないからだ。大して欲しくもないモノに囲まれていることで,欲しいモノをわかっていない自分の不充足感から逃げている。モノをたくさん持ち,偽物の安心を得ている。(p291)
 ランニングのように半ばやりたくない運動もあるが,継続させるコツは「それを習慣化させ,いちいち考えない」こと。最初に行動の目的を考えることは大事だが,その後は作業を自動化させるのだ。(p296)
 僕は,人間関係は,意外とかさばらないと考えている。(中略)一昔前とちがって格段にケアは楽になった。これは紛れもなくSNSの恩恵で,Twitter,Facebook,LINEなどのツールで,その時々の距離感に応じた「付き合い分け」が可能になったからだ。(p300)