著者 吉田友和
発行所 朝日新書
発行年月日 2016.03.30
価格(税別) 880円
● 絶景本を集めて人気スポットの集計表を作り,自身の体験からこれは絶景だと思ったものにランキングを付けて紹介し,最後は実際の絶景を見に行く。
行ったのは中国の九寨溝。で,やはり実際に行って書いた部分が一番面白い。
● 平明な文章だからササッと読める。書く方はササッとは書いていないんだろうけどね。
● 以下にいくつか転載。
バーベキューの火起こしをするのに,アメリカ人は着火剤のようなセコイものは使わない。ドバドバとオイルをかけて点火すると,漫画のようにボワッと大きな火が生まれた。アメリカ人のあの大胆さは,超絶スケールの自然に囲まれる中で育まれたものなのだろうと,僕は身をもって知らしめられたのだった。(p55)
辺境の地になればなるほど,交通手段のオンリーワン現象が起きやすくなる。(中略)需要が供給を上回っており,なかなか思うように座席が取れない。結果,料金も高くなってしまう。(p130)
僕にとって機内での時間は,漫画喫茶にいるような感覚に近い。本を読んだり,映画を観たり,ゲームをしたり。思う存分,自分の趣味の世界に浸れる。(p153)
今回は行き先が行き先であるだけにある程度はネットで情報を集めてある。ガイドブックは情報ツールというよりは,旅気分を盛り上げる読み物としての役割が大きい。(p153)
僕は意を決して人波の中に突入した。周囲の動きに倣い,近くに空きスペースができたら果敢に詰めていく。郷に入っては郷に従え,である。横入りなんて当たり前という価値観の人たちなのだ。のほほんと構えていたら,永遠に自分の番はやってこないだろう。(p161)
冒険者と呼ばれるような人たちは,電気が通っておらず,水道もないような場所へ,ときには単独で足を踏み入れる。そういう話を聞くたびに,すごいなあと感心させられる。けれど,感心させられるだけだ。自分も真似してみたいとはまったく思わない。(p179)
絶景とはパノラマである(中略)仮に同じレベルの美しさだとしても,こぢんまりとまとまった景色よりも,ガツンとした迫力のある景色の方が見る者の心に強く訴えかける。(p186)
すさまじいまでの絶景を前にすると,一人で独占したい欲よりも,一緒に見る仲間を欲する気持ちが勝る(p188)
アジアの旅はなんとかなる。多少の紆余曲折があったとしても,どういうわけか最終的には結果オーライとなるパターンが多いのだ。(p192)
絶景とは,テーマパークの一種と言えるのかもしれない。(中略)世界に広く知られ,観光地化されているようなところでは,これはもはや避けられない運命なのだろう。(p206)
被写体は美麗な九寨溝の湖-ではなく,それをバックに笑顔でポーズを決める自分自身だ。(中略)彼らのお目当ては,あくまでも自分入りの記念写真なのである。この点,我々とは意識がいささか異なるような気がしてならない。(中略)同じ絶景を前にしたときに,中国人にとっては主役は自分自身であるのに対し,日本人にとってはその絶景が主役なのだ。(p218)
そもそも,(中国人は)他人に対する関心がなさそうな人たちだし。(p222)
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