2021年3月8日月曜日

2021.03.08 弘兼憲史 『弘兼流 「老春時代」を愉快に生きる』

書名 弘兼流 「老春時代」を愉快に生きる
著者 弘兼憲史
発行所 海竜社
発行年月日 2020.08.29
価格(税別) 1,000円

● 老いをどう生きるかをテーマにした本をずいぶん読んだ。自分がそういう年齢になっているからだが,その年齢になったからといってその種の本を読むのは,最もつまらない人間かもしれない。
 かつて,「中1コース」や「高1時代」という特定の年齢層に向けた雑誌が学研や旺文社から出ていたが,「中1コース」を読む中学1年生や「高1時代」を読んでいる高校1年生は,基本,つまらない人種ではないか。
 かつての自分がそうだった。老いてもなお変わっていないということだ。

● この本もそうだけれども,特に尖ったことが書いてあるわけではない。内容からして尖りようがないはずだ。
 この本で特に熱心に著者が説いているのは,人間関係の断捨離だ。嫌な人から離れろということだ。大事なことだが,老年期になれば自ずとそうなっている人が多いのではないか。
 ぼくは元々,人間関係の構築や維持に熱心ではなかったから,切らなければならないような人間関係は引きずっていない。それでも自らフラッシュバックを招来するようなことをしてしまっているが。

● 老後をどう生きるかくらいは,人の知恵を借りずに,自分で考えて自分で決めたいものだ。
 と言いながら,以下に転載。
 私はこう考えます。「悠々自適が幸福とは限らない」「死ぬまで働くことは悲劇的なことではない」「死ぬまで愉しくチャレンジ」(p4)
 ヘタにお利口になるよりも,バカでも好奇心が健在であるほうが,人生は愉快なはずです。(p18)
 重い罪を犯し実刑判決が確定した人間は,移動の自由を奪われます。それが,罪を犯した人間に対する罰として,もっとも効果的だからにほかなりません。(p24)
 なぜ若い人に「教えてください」と言えないのでしょうか。それができない高齢者は悲しい存在です。(p43)
 自分が利口だと思っているからダメなんだよ。自分がバカだと思っていれば,いろいろなことを教えてもらえるし,発見もあるんだよ。(p48)
 二度目の現役人生で健康寿命を延ばすために大切なのは「食」と「運動」です。神経質になる必要はありません。私流のポイントは「無理をしない」につきます。(p52)
 忘れてはならないのは,いくつになっても,自分ができることがあるということ。それを実行することで「重宝される」生き方があるということです。(p60)
 私たちは今回,外出自粛,三密回避など行動が制約される中で,これまで常識とされてきたライフスタイル以外のライフスタイルがあることを知りました。(中略)また,多くの人が「誰かと会わなくてもそんなに困らない」ということにも気づきました。(p79)
 妻が夫に求めているのは「聞いてもらう」と「共感してもらう」であって,論理や解決策の提示などまったく求めていないというわけです。(中略)男性と女性,その諍いの原因は,どちらが正しいかではないのです。ただ「違う」ということなのです。(p84)
 人は得てして,土俵が前にあると,つい上がりたくなる。土俵に上がれば戦いたくもなってしまう。だから,相手が土俵に上がりそうなら,自分は静かにその場から去る。(p91)
 人類は,体が動かなくなって亡くなる直前まで,なんらかの形で働いてきた時代のほうが圧倒的に長いわけです。(p103)
 「禍福はあざなえる縄のごとし」という言葉もあります。(中略)先に出世したからといって,人生の勝ち負けが決まるわけではないのです。(p108)
 私の知るかぎり,はじめから社長になることを目的としている人は社長にはなれません。(p108)
 過去に決めた選択が正解だったか誤りだったかを,現在の状態で判断してはいけないように思います。選択が正しいかどうか,その答えはその人が人生を終えたとき,初めて見えてきます。(p111)
 結局,日々をどのように生きていくか,そのプロセスを大事にいていくことこそ,人生の醍醐味なのではないでしょうか。(p111)
 「自分の仕事に対してどのような感情を抱きながら臨むか」
結局,仕事における一流と二流,三流の違いは,そこに尽きるような気がします。(p113)
 恵まれたセカンドステージを得る人は,そのためにファーストステージでがんばってきた人だからです。(p127)
 『トム・ソーヤの冒険』に出てくる,ペンキ塗りの話を思い出してください。(中略)同じ仕事でも嫌々やるのでなく愉しんでやっていれば,新しい展開,新しい発見があるということを教えてくれます。はじめから好きな仕事など滅多にありません。続けることで好きになるものなのです。(p136)
 人生の終盤を「老春時代」にするためには,とにかくマイナスの感情とつきあう時間を少なくすることです。(中略)しつこいマイナスの感情を無菌化するためにはどうすればいいか。方法はじつにシンプルです。とにかく,そのきっかけとなった人間,場所から遠ざかるのです。(p154)
 人生の後半期は悪人になったほうが間違いなく快適です。(中略)プライベートの関係なら,最大限「離」を心がけるべきです。(中略)「老春」のためには不快な距離感,ギクシャク感を感じさせる人間関係からは離れることです。(p155)
 「暗いお客さんはイヤですね」
 銀座で長くクラブを経営しているママがそんなことをいっていました。その理由を尋ねるとこういいました。「ほかのお客さんまで暗くなっちゃう。営業妨害ね」(p157)
 人生の残り時間は限られています。余計な人との余計なつきあいは時間の無駄づかいといってもいいでしょう。(p161)
 「その歳で,なんてパワフルなんだ」
 そう感心してしまう人がいます。たとえば,江戸時代,文化・芸術の分野で赫々たる業績を残した葛飾北斎,貝原益軒,伊能忠敬の3人はその代表格かもしれません。(中略)3人に共通しているのは高齢になってからも精力的に仕事を続けたことです。(p164)
 壮年も老年もできるだけ外に出るべきです。歩いて,キョロキョロしているだけでも,なにかしらの発見があります。(p166)
 どんなシーンでも,まず相手を褒めることを心がけます。(中略)新たな人間関係で他人の心を開くカギです。(p176)
 私のポリシーは「年齢やポジションに関係なく,ふだんから敬語を使う」です。(中略)成功している経営者はとても魅力的な人たちなのですが,共通しているのは言葉遣いがとても謙虚だということです。(p183)
 言葉というものは不思議なもので,いったん口に出してしまうと自分を縛ってしまう力があります。(p196)

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