著者 岡田斗司夫
発行所 文藝春秋
発行年月日 2011.02.25
価格(税別) 1,500円
● 買ってからけっこう寝かせておいたんだけど,そのことを後悔させられた。少しでも早く読んでおけばよかったよ,と。
梅棹忠夫『知的生産の技術』以来,アウトプットを高める技法の紹介は,数え切れないほど提唱されてきた(と思う)けれども,本書はその底流をゆさぶるもの。この分野でひとつの画期をなすんじゃなかろうか。
● 言っていることは単純。「ノートを相手に考え続ける」ことだ。
著者によれば,能力には発想力と表現力と論理力がある,と。その3つを兼ね備えている人は,じつはあんまりいない,と。
本書のメインは,ノートの見開き2ページを毎日使おうよ,それで「論理訓練」をしましょうよ,というもの。
● 右ページから書き始める。あることがらについて,まずは下方向に「なぜ?」と掘りさげる。これをしないでいきなり解決策を考えるのはNG。
上方向に「ということは?」「じゃあ,どうする?」と考える。左方向に,過去の類似の経験を探る。右方向に似たもの探しをしていく。
そうしてできあがった論理に,最後に「自分の感情をいれる」。
● 左ページには,極端,ムチャ,ギャグを書く。そうすることによって,自分オリジナルができあがる。しかし,書くことがなければ,無理に書かなくていい。白紙のままでもよし。
これをずっと繰り返していくと,個々バラバラなものがリンクしてくる。
でも,これ,左右逆じゃダメかね。右を書いてから左を書くと,書いている右手が汚れるんだよなぁ。左利きの人にはいいだろうけど。
● で,次のようなことが諄々と説かれていく。
ITツールではなくてノートを使った方がいい理由。
自分の日記やノートをデジタル化してデータベースにすることの無意味さ。
ノートに書くことによって悩みが軽減(もしくは消滅)するわけ。
解決法を考える前に,「なぜ?」を充分に考え抜くことの大切さ。
「面白くなることが人生で幸せになる一番効率のいい方法」で,そのためには自分が組みあげた論理にツッコミを入れてみることが重要だということ。
人間の脳は工業ではなく農業でとらえるべきで,効率的にアウトプットを最大化しようとすると枯れてしまう,ムダな書きこみという腐葉土が必要だ,ということ。
『7つの習慣』的な目標管理がダメなわけ。
● 最後の,『7つの習慣』的な目標管理に漂う胡散臭さは,多くの人が感じていると思う。実際にやった人は,やりながらこれってムダなんじゃないと思ったろうし(ぼくはやったことがないんだけど,危うくやりかけたことはある。その種の本をけっこう読んじゃってたからね),やった人は徒労感に包まれたに違いない。
その理由を明確に言葉にして言われると,それが別に目新しいものではなくても,自分が感じていたモヤモヤはこれだったのかと気づくことになる。
● 学び方についてもタメになることが書いてある。
師匠からなにかを学ぶ方法は「すべて信じる」です。(中略) モノを学ぶというのは,まず無批判に相手がやってることをすべて写すことから始まります。学ぶのが下手な人というのは,早い段階で批評や自分の意見をいれちゃうんですね。(p219)
何かを学ぶ時は信者にならなきゃダメです。それぐらいやったら,ちゃんと効果はある。逆に,そんな様子を笑う人は,誰かの信者にもなれないくらいの中途半端な奴に決まってます。(p221)よく「批判的に読め」といわれるけれど,最初から批判的に読んでたら,学べるものはひとつもないってことになりそうだ。ひょっとすると,小学生の頃から「批判的に読め」と指導されているのかもしれない。罪つくりな言い方かもねぇ。
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