著者 森 博嗣
発行所 集英社新書
発行年月日 2010.02.22
価格(税別) 700円
● 工作に関する著者のエッセイはほかにも読んだことがあるけど,本書は工作それ自体を語るのではなく,工作マインド?の欠如あるいは希薄がもたらす問題について,著者の存念を述べたもの。
● まず,設計図の不完全さ。実際に作ってみると,設計者が想定しなかった問題に出くわす。
●著者は教育なんて不可能だという。
教えられるものがあるとすれば,自分の生き方を見せる以外にない。情報を教えることは,本でもビデオでも良く,人間から人間への伝達である必要はない。むしろ書物などの方が効率が良いくらいだ。しかも,いずれも,受け取る側に積極性がなければ伝わらない。 人間から人間へしか伝達できないものとは,その人間が持っている方向性であり,つまりは「生きていく姿勢」と,その要因となる,あらゆる行為のセンスである。(p138)● 「抽象」の重要性も著者が力説するもの。
目に見えるものの方が実はどうでも良い部分,つまり「装飾」であり,ものごとの価値は,その内部に隠れて見えない「本質」にある。(中略)「抽象」とは,見える「象」を取り除く,という意味であり,抽象したものにこそ本来の価値がある。(p130)● まずやってみること。工作でも何でも。
自分でなにかを作ろうと考えると,その対象に向かう観察眼が芽生える。作るためのプロセスを頭に描くようになる。これらは,作ることがない生活では,ほとんど死んでいたプロセスである。ものを見ているようで見ていなかったことに,きっと気づくはずだ。(p161)
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