著者 伊集院 静
発行所 講談社
発行年月日 2014.03.10
価格(税別) 926円
● しみじみと頭を下げたくなるエッセイをたまには読まないと。
伊集院さんのいう「大人」とは,人には言えないような経験をきちんと言わずにいられる人のことだろうか。
辛すぎる別離を味わい,世間の冷たさをたっぷり舐めながら,それを自分の底に沈めて闊達あるいは端然としている人のことだろうか。
● 人には言えないようなことをひとつも持たないで人生を終われる人は,まずいないのではないかと思う。誰にでもある。ぼくにもある。
それをみじんも感じさせないかどうか。まったく自信がない。そこが大人かどうかを分けるところかなぁ。
● たいていのことは笑いとばせばいい。が,そうはできないこともある。目先の仕事に追われることが救いになることも多々あるだろう。
仕事ができない歳になれば,仕事に代わる何物かが現れるのだろうと思いたい。そうやっているうちに,人生は終わる。
● ふたつほど転載。
小説は才能が作るものと思われようが,それは間違いである。大半は気力と体力。やる気のあるものには何物かが宿るらしい。(p79)
夜は,ヤンキースの選手として現役を引退した松井秀喜君と二人で馴染みの鮨屋で酒を交わした。彼が少し酒を飲んでいたので何やら大人になったのだと思った。 数日間の帰国は高校の野球部の仲間と一日甲子園へ行くという約束を果たすためだという。記者となった友のために時間を惜しまない。やはり人間の格が違うのだろう。(p89)
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