著者 かとうちあき
発行所 徳間書店
発行年月日 2012.02.29
価格(税別) 1,500円
● 野宿をする。寝袋にくるまって外で寝る。何のために,と言われても困る。そうしたいからそうしている。
そうしていると何か面白いことがあるのかといえば,別にそんなことはない。
● でも,野宿をする。あってもなくてもいいものを軽妙なエッセイに仕立てて,1冊を編む。その結果,誕生したのが本書。
それをやっているのが女性だというのも,本書の特徴のひとつに挙げていいと思う。
ゆるゆると読む。何が起きるわけではないけれども,面白くてページを繰るのをやめることができない。
● 何でもないことを面白く書くというのは,ひとつの芸だ。文章の芸。
ただし,読ませようという作為があざといとイヤになる。しかし,読ませるためには,ある程度のあさとさが必要だ。そのあたりが難しいのだろう。
● 以下にいくつか転載。
「隣の駅で友人が寝ている」 そう思うと,ほくほくした気持ちになる。「一人じゃない」って思えてくる。(p82)
「野宿の天敵」とはなんだろう。雨,お巡りさん,口うるさいおじさんおばさん,などなど,いろいろ思いつくけれど,「天敵」というなら,それは「ヤンキー」なのではないか,とわたしは思う。(p89)
「ヤンキーはとても元気だ」「ヤンキーはなんとなく明るいところへと集まってくる」 これが野宿をすることで,わたしが新たに獲得した知識なんだった。(p91)
シシャモ,のろい。まだ焼けてない。そこで,「木をくべても木をくべても我がシシャモ・・・・・・」などと言い言い,じっと見る。なぜって,暇だからです。だってわたしが今夜ここでやることといったら,お腹をいっぱいにして,眠りたくなったら寝る,それだけなのだ。(p209)
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