2019年2月16日土曜日

2019.02.16 弘兼憲史 『弘兼流 60歳からの手ぶら人生』

書名 弘兼流 60歳からの手ぶら人生
著者 弘兼憲史
発行所 海竜社
発行年月日 2016.11.25
価格(税別) 1,000円

● この本も「まえがき」だけを読めばいいかもしれない。モノ,習慣,人間関係を含めて,捨てるべきは捨てよ,と説く。
ぼくも年賀状はやめた。中元や歳暮には昔から無縁だ。交換した名刺はその日のうちに捨てていた。学校時代の通信簿や卒業証書も処分済み。友人はもともと少ない。
 では,捨てるべきがないかというと,さにあらず。“老前整理”すべきものはけっこうある。

● 以下に転載。
 60歳を過ぎると残された人生は,それほど長くありません。そういう貴重な時間を,いろいろなものにゴチャゴチャと囲まれた,わずらわしい生活にしたくないと思ったのです。(p4)
 「身軽に生きる」というのは,「停滞しない」ということでもあります。(p7)
 その人間関係は今も本当に必要でしょうか。(中略)場合によっては,すでに不要なのに「必要だと思い込んでいる」,または「思い込まされている」ということだってあります。(p8)
 物語は「結」に突入しているのですから,ここから拡大させる必要はありません。エンディング近くでなんの前振りもしていない,新しい登場人物が出てきてしまったら,それこそ物語は収拾がつかなくなってしまいます。(p21)
 数年前から「アンチエイジング」という言葉を聞くようになりましたが,個人的にはあんな無駄なこともないと思っています。(中略)そんなことに抵抗して,いらぬパワーやお金を使ってもしようがない。大事なのは「いかに老いを受け入れるか」です。(p25)
 新人賞を取るほどの力のある漫画家であっても,その後もずっとプロとして描き続けられるのはほんの一握りです。プロの世界とはそういう厳しい世界です。ですから,本気で目指すのなら「夢に期限を設ける」ことが絶対に必要です。(p28)
 いくつになってもオシャレであることは,僕は大事だと思います。そうしないとすぐに老け込んでしまいます。不要になったらまた処分すればいいのです。(p39)
 自分に合った新しい服を買うと出かけたくなります。(p40)
 本でも映像でも写真でも,多くのものをパソコンで取り込み,ハードディスクやクラウドといったものに保存することができます。「どうしても捨てられない」という人にはいい時代なのかもしれません。しかし,その作業にかかる膨大な時間を考えると,僕はそれをまったくやる気になりません。常に見返すのならやる意味もあるのでしょうが,仕事で忙しい毎日の中で過去を振り返っている時間などほとんどないのが現実です。(p48)
 友人の数は多いほうが幸せである,と思っている人は,僕の印象ではけっこう多いのです。(p56)
 比較というのは,妬みやそねみといったネガティブな感情を生み出す原因になりがちです。(中略)比較というのは,そもそも何となく劣等感を感じている部分に関してする傾向にあります。(p65)
 どんなことでも,ひとりで楽しめる人の人生は豊かです。(p72)
 よく同い年ぐらいの友人から「新しく買った機械の使い方がまったくわからない」という愚痴を聞くこともありますが,それも原因は頑固さゆえだと思います。(中略)説明書をきちんと読み,その通りに操作すれば,何歳になっても使い方がわからないなんてことはないはずです。ところが,年を取ってくると「このスイッチを押せば動くはず」などという長年の経験値がありますから,ろくに説明書を読もうとしません。(p75)
 「年長者なのだから俺の言うことを聞け」「少しくらいわがままをしても許されるはず」。そういう態度だと周囲から嫌われ,浮いてしまいます。それは「孤独」ではなく,「孤立」です。孤独を楽しむことはできますが,孤立すると人生には損しかありません。(p77)
 僕が友人は減らそう,というのには,ひとつには日本特有の連帯責任が嫌い,というのもあります。(中略)連帯責任とは,簡単にいえば巻き添えです。(p82)
 同窓会というのはおもしろい場で,基本的に人生がうまくいっているやつしか参加しません。(中略)そうなると場は必然的に明るい雰囲気になります。(p88)
 老後不安であれ何であれ,不安というのは,つまるところお金の不安です。少なくとも日本という文明社会に生きている以上,人生の大半の不安は,お金に対する不安に尽きる。(p95)
 僕は,お金持ちというのは,それほどうらやむ存在ではないと思っています。(中略)お金をたくさん持つ,というのは,他の何かをたくさん持つことと根本的に変わらず,増えれば増えるほどわずらわしい面があるのです。(p114)
 最近では「お盆玉」なんてものまで登場しました。(中略)高齢者にお金を使わせたい企業が新しく考えたイベントにいちいちつき合っていたら,それこそ破産してしまいます。(p118)
 そもそも目標や計画を立てて,仮にその通りにいったからといって,それが楽しいとも思えません。それは,旅行にガイドブックを持っていき,その通りに回るのと似ていないでしょうか。あれは旅行に行っているのではなく,ガイドブックの確認に行っているだけです。(p124)
 誰もが,「お父さんお母さんを大切にしよう」とか「家族は仲よく」なんてことを子どもの頃からくり返し,学校や社会から教え込まれてきています。(中略)しかし逆に言えば,そんなことをくり返し教えるということは,「教えないとそうならない」ということでもあります。(p139)
 一度こじれるとなかなか修復できないのが家族関係でもあります。(p141)
 いつも「お前どっちがしたい? どっちが好き?」と子どもに選ばせてばかりでは,楽なほうしか選ばない人間になってしまう可能性があります。(p153)
 主婦業に定年はありません。ということは,結婚している限り,奥さんはいつまでもあなたの世話から解放されないのです。貴重な残りの人生を,どうしてそんなつまらないことに費やさなければいけないのでしょうか。(p156)
 奥さんから見た場合,「定年退職した男の価値はゼロ」というのは大きく間違っていないはずです。(中略)そのあたりがわかっていないと,旦那というのは,定年前と変わらず奥さんに対して威張った態度で接してしまったりするわけです。(p156)
 奥さんから自立し,嫌われないために,あなたが心がけることは2つあります。それは,「奥さんとなるべく一緒にいないこと」,「お互いの距離を保つこと」。(p159)
 「もう2人だけなのだから,これからは一緒にいる時間を増やそう」なんて発想は,奥さんにとってはいい迷惑ですから,早いこと捨てることをおすすめします。奥さんとの距離を保つには,奥さんのテリトリーに侵入しないことが大事です。奥さんの行動にも干渉しないこと。(p160)
 いずれ近いうちに死んでいく世代が,医師や病院のベッドを占領してはいけないと思うのです。(p179)
 ある医師からこんな話も聞きました。「人の死は,飛行機が着陸態勢に入り,少しずつ高度を下げていくようなもの。延命治療は,せっかく着陸態勢に入った飛行機にガソリンを入れ,ムリヤリ高度を上げさせるようなもの」だと。そして,その医師はそれを「とても残酷なことだ」と言いました。(p180)
 女性の中には「専業主婦がいちばん幸せ」というような考え方があるというのです。つまり,自分は外で働くことなく,「旦那の稼ぎで趣味や習い事をするのが,いちばんのステータス」という考え方です。そして,そんな女性は働く主婦を「働かなきゃいけないなんてかわいそう」と見下すのだそうです。(p197)
 楽をすることが楽しいことだと思っている人は本当の楽しさを知らないだけでしょう。(p198)
 同じ金額で雇うならできるだけ若くて元気なほうがいい,というのが正直なところです。(p200)
 介護の現場というのは,近いうちに亡くなっていく人をケアする場で,未来ある若者を治療し,社会復帰させる医療の現場とは根本的に違います。そういう場に果たして若者の力を使うべきなのか,ということが僕は疑問です。若者にはもう少し違う職場で,日本の未来のために働いてほしい,というのが僕の本音です。(p203)
 僕は京都へ行くと,わざと観光客のいない,ごちゃごちゃっとして狭い路地に行くようにしています。(中略)どこか異国の地にでも迷い込んだような感覚があって,それが僕は何となく好きなのです。(p210)
 日常から少しだけ離れてみるのが旅行です。お金や時間などかけなくても頭を使えばいくらでも楽しむ方法はあるのです。(p211)
 60にもなると,自分でも気づかないうちに考え方や行動が保守的になって,新しいことを受けつけなくなっている場合があります。未知なる刺激を求めるより,「損や後悔をしたくない」という気持ちが上回り,安心や安定を求めるようになるのです。(中略)安心や安定が悪いわけではありません。物事はルーチン化することで,効率を上げ,失敗を減らすことができますから。でも,いつもそれでは何となく味気ないし,つまらなくないでしょうか。(p211)
 何度も通うとどうしても人間関係ができ,店の人から連絡をもらうと,どうしても「行かなきゃ悪い」という気持ちになってしまいますから,僕はそれがあまり好きではないのです。(p213)
 怒るというのは,思っている以上にパワーを使います。ですから,怒りというのは時間の経過とともに薄まっていく。あれは,つまりパワーが持続しないから,薄まっていくのです。僕はそんなことにパワーを使うのはあまり意味がないと思っています。(p236)
 僕がくよくよと落ち込まないのは「そんなことに時間を費やすのはもったいない」という発想があるからです。(p237)
 「老い」も成長のひとつです。何にでも「いい感じ」をつければ,「いい感じに体力が落ちてきた」「いい感じに貧乏になってきた」「いい感じにもの忘れがひどくなってきた」なんて,なんでもいい感じになってしまうのです。(p238)

0 件のコメント:

コメントを投稿