2022年5月21日土曜日

2022.05.21 百田尚樹 『百田尚樹の新・相対性理論』

書名 百田尚樹の新・相対性理論
著者 百田尚樹
発行所 新潮社
発行年月日 2021.10.25
価格(税別) 1,250円

● 副題は「人生を変える時間論」。得に面白くもなかったし,斬新さもなかったと思うのだけど,最後まで読んでしまった。
 何が書いてあるかといえば,以下の転載のとおり。特に人生を変えるようなものでもない。

● 以下に転載。
 人間は人生の中で感動したり驚いたりすると,その出来事が強く心に残ります。喜んだり泣いたり怒ったりしても同様です。人生を振り返った時,そうした出来事が多かった時代は,「長い時間」に感じるのではないかというものです。(中略)中年以降の人生が短いと感じるのは,感動や驚きが減るからにすぎません。(中略)もう一つ大事なことは,喜怒哀楽の感情を大切にすることです。感情の鈍麻は,人生を短くします。(p39)
 つまらない時間は感動や驚きは少なく,あれほど長く感じたのに,振り返ると記憶にも残らず,逆に短い時間となっています。(p43)
 「才能とは,同じことをするのに,他人よりも短い時間でやれる能力」と定義できます。(p83)
 「天才は多作する」という言葉があります。優れた発想を作品という形にする作業において,普通の人よりもはるかに短時間で行う能力があったのです。(p89)
 人類は相変わらず戦争を続けています。これはなぜなのでしょうか。経験と知識を積み重ねているのに,なぜ同じ失敗を繰り返すのでしょうか。それは人の寿命が短すぎるからです。(中略)私たちは知識に関しては数万年分の進歩の地点からスタートすることができるのです。ところが,心の成長は常にゼロからのスタートです。(中略)人類が完璧な人格を作るのには,八十年の寿命では足りなかったのです。(p122)
 囚人に本やテレビを見せるのは絶対に反対です。刑務所の中で,囚人にそんな娯楽を与える意味がわかりません。(p149)
 時間は日常生活にあるほとんどのものに交換が可能です。金,物,楽しみ,感動,評価,成果等々--。しかし,それらを再び時間に交換することはできません。(中略)たとえ百億円を積んでも,一時間の時間さえ買うことはできません。(p157)
 歌手の千昌夫さんはバブル崩壊で一生かかっても返せない三千億円の借金を背負いましたが,今も元気に生きています。一度お会いしたことがありますが,よく笑う明るい人で,暗さなどは微塵もありませんでした。(p172)
 もし映画館で感動的な映画を観たとしても,観客があなたひとりだった時と,満員の観客が全員涙を流して拍手をしている時では,同じ映画の感動でも何倍も後者の方が大きくなるでしょう。(中略)これはなぜでしょうか。私は,「時間」を共有することで,「楽しみ」が増加していくと考えています。これが「時間」の不思議なところで,同じ「時間」を,複数の人々が「楽しい」と感じると,その「時間」は濃くなるのです。(p178)
 現状に対する馴化が早い人ほど,エネルギッシュに行動する面があります。(中略)ただ,それがあまりに早すぎると,逆に永遠に幸せを得られないというのも人生の矛盾です。(p186)
 社会的に「成功者」と言われている人には共通点があります。それは「時間を無駄にしない」生き方をしているということです。これは別の言い方をすると,「やることの優先順位を間違えない」といことです。
 「今やるべきことを,今やる」 人生の成功の秘訣は,実はこんな簡単なことの繰り返しなのです。(p204)
 なぜ,仕事は与えられた時間いっぱいに膨らむのでしょう。これは私たちが時間を支配していなくて,時間に支配されているからなのです。(中略)そしてその時間は,実は第三者が設定したものなのです。(中略)私たちは誰かが決めた時間に合わせて生きているということなのです。(p205)

2022年5月14日土曜日

2022.05.14 三浦雄一郎 『歩けば歩くほど人は若返る』

書名 歩けば歩くほど人は若返る
著者 三浦雄一郎
発行所 小学館
発行年月日 2012.11.14
価格(税別) 1,500円

● ここのところ,三浦雄一郎さんの本をいくつか読んでいる。内容はどれも似たようなものなので,1冊読んで,あとは書いてあることを実行すれば良さそうなものだが,実行はしないで,似たような本をまた読んだ。
 ひとつには,読んだだけで実行した後の自分になった気がするからだな。

● もちろん,実行していないんだから,ひどいメタボのままだし,このままだとメタボは進行するだけなのだけどね。
 アンクルウェイトを購入するところから始めないとね。着手が最も難しい。着手すれば半分は終わったようなものとわかっちゃいるんだけどねぇ。

● 以下に転載。
 そうか,とうとうやるのか。人類はその時代に解決不可能と思われることでも乗り越えてきた。この心を失ったらおしまいだ。(p13)
 大好きなアルコールを抜いて,美味しい食事も制限して,自分をストイックに追い詰めて,苦しいトレーニングに明け暮れて・・・・・・そのうえ死んでしまったら,こんなにつまらないことはない。僕の性分にも合わない。(p39)
 次は4つ目の信号まで速く歩こうという風に,見えるものを目標にすると,つい無理をすることがある。登山でも無理は禁物なので,時間を計った方がいいのだ。(p42)
 僕は新しいものは何でも試したくなる性質だ。ゴルフクラブなども,新しいドライバーが出るたびにほしくなり,ついつい買ってしまう。(中略)山の安全とゴルフの腕前は,お金で買える限りは買った方がいいのだ。その方が長続きするし,体にも優しい。(p57)
 僕は電車に乗るのも好きだ。電車の中では,何にもつかまらずにただ立っているだけでもバランスをとる練習になる。(p59)
 片足2kgの重り入りの登山靴を履き,片足にアンクルウエイト6kgをつけ,重さ30kgのリュックを担いで,東京でも,札幌でも,1時間以上歩けるようになればエベレストに登れると思っていたが,3年経つと,その状態になっていた。(p60)
 腹筋背筋は苦手なのでほとんどやらなかったし,筋トレらしきものもしなかった。強要されるのが嫌いなので,トレーナーもつけなかった。ただ,足首にアンクルウエイトを巻き,重りが入ったバッグを担いで楽しみながら歩いただけだ。(p62)
 負荷が自分の体重だけだと,一定のラインで効果の伸びが止まってしまうのだ。それ以上の効果を望むなら,自重以上の負荷をかけることが必要になってくる。(中略)しかも,負荷を与えて歩けば歩くほど血の巡りもよくなるので,血管が柔らかくなり,動脈硬化や脳梗塞などのリスクもへる。(p68)
 ヘビー・ウォーキングを行う際に気をつけているのが,ゆっくり歩くことと,呼吸法だ。(中略)速く歩いて息を切らすと,ストーブにすすがたまるのと同じで,体内で不完全燃焼を起こしてしまう。(p75)
 呼吸を整えるコツは,歩調に合わせて息を吸うのではなく,まず下腹の筋肉に力を入れて絞り出すように口から強く吐き出すことだ。(p78)
 登山事故の約8割は下りで起こっている。(中略)上りの負荷が体重プラス荷物なのに対して,下りは,たとえば30cmの段差をそのまま踏み込めば,負荷は重さの5倍くらいかかる。(p85)
 下りでは,上りに使う遅筋線維ではなく,瞬発力に優れた速筋線維を使う。この速筋線維は,100m競争などのような短時間に強い力を発揮する筋肉だ。(中略)年を取ると一番に弱るのが,この速筋線維でもある。僕も年とともに,下りが苦手になった。(p86)
 筋肉が回復する段階で大量の成長ホルモンが分泌される。このホルモンは,血管の強化や,肌の張りもよくすることなどにも関係し,世界中から若返りホルモンとして注目されている。つまり,速筋線維を使えば使うほど若返りの効果も高いのだ。(p88)
 食事をしないで上ると体の中に残っている糖分がどんどん消費されて糖が足りなくなる。だから脂肪も燃えなくなる(p112)
 世界で長寿の人が多く住んでいる村や町は,標高1500~2000mの場所に多い。酸素が少ないということと不老とは密接な関係があるに違いない(p120)
 決して弾みをつけてストレッチを行なってはいけない。(p128)
 舌だし運動は,父が自分で編み出した運動だ。やり方は口を大きく開いて,舌を前に出すだけ。アインシュタインの,舌を出したあの有名な写真にそっくりだ。(中略)まず肛門を締め,腹をへこませながら,大きく息を吐く要領で舌を伸ばすのだ。苦しくなったらやめればいいが,かなり腹筋を使う。(中略)普段使わない舌の筋肉を使うことによるインナーマッスル強化の効果に加え,顎,口周り,喉などの大きな筋肉も使うという,二重三重のトレーニング効果がある。(p167)
 口を閉じて片方の鼻をふさぎ,一方の鼻だけで息を大きく吸って吐くというものだ。これだけのことだが,鼻の吸引力を強化するとともに,鼻の通りもよくなるし,呼吸する筋肉も鍛えられる。(p169)
 実は高尾山に上るのはこのときが初めて。熊野古道にも似た味わいのある道なのには,正直驚いた。(p175)
 立ったり座ったり,家事や買い物,通勤など日常生活の活動をニート活動と呼ぶ。この運動は,一日の消費カロリーの約40%を占める。つまり,自宅でもアンクルウエイトをつけるだけで活動量を増やせるのだ。(p182)
 父・敬三は,99歳までヨーロッパの山に上り,スキーをやっていました。ですから,年齢を超越して可能性を試したいという気持ちは,私も同じです。それには日々の積み重ねが大切ですから,日常では,最高片足2kgの靴に片足5kgのアンクルウエイトをつけて,背中のリュックに30kg背負っています。(p207)
 足首から下にはなんと(人体の)4分の1以上の骨があるわけです。裸足で歩くことによって,これらの骨や関節も制約されることなく自由に動くので変形もせず,鍛えられて強くなるのです。(p209)
 エベレスト滑降で転んだり,南極で雪崩に巻き込まれたり,クレバスに落ちたり,いつ死んでもおかしくない危機に遭遇したことは幾度もある。でも,命が惜しければエベレストなんかいかなければいい。しかし,死を前提とした覚悟を決めると,反対にどうすれば生きて帰ってこられるのかを必死に追求する。(p214)

2022.05.14 伊藤まさこ 『そろそろからだにいいことを考えてみよう』

書名 そろそろからだにいいことを考えてみよう
著者 伊藤まさこ
発行所 朝日新聞出版
発行年月日 2019.07.30
価格(税別) 1,500円

● 陳志清「からだにいいこと Q&A」が巻末に添えられているのだが,それは読まなかった。何が身体にいいのかを知りたいと思って読んでいるわけではないのでね。
 伊藤まさこさんの著書は見つけ次第読むと決めている。そういう著者は他にも何人かいるが,若い頃と違って “読む” を徹底できなくなっている。そもそも本を買わないようになった。

● 本の書き手には,書かずにはいられないから書くという人と,書くことしかできないから書くという人の2つの類型があると思うのだが,作家と呼ばれる人たちは後者が多いのかもしれないと思っている。
 だいたいが,俗世とうまく折り合いをつけていける人では,読んでもらえる作品は書けないものだと思う。古くから森鴎外などの例外はいないわけではないが,鴎外とてギリギリで折り合っていたのではないかと思う。
 伊藤さんは前者。書かなくても彼女の人生は成立する。が,折り合いをつけるのが上手い方ではなかったと思う。であればこそ,今があるのだろう。

● 以下にいくつか転載。
 炒めものは,食材をあれこれと入れないシンプルなものが一番と思っている(p21)
 豚ばら肉は,大きめのブロックで買い,用途に合わせて切りながら使います。ミンチにしてあるものより食べ応えがあるし,なによりこのほうがおいしい。(p27)
 トマトは完熟のおいしいものを,卵は新鮮なものを。シンプルな料理は,素材のよさが決め手になります。(p31)
 でも,ひとつ続けていることがあって,それは時々,食べない日をもうけるってこと。(中略)バカンスの語源は「VACANT」つまり「空き」。気持ちがいっぱいいっぱいだと,心の余裕がなくなってしまうし,いいアイディアも出てこない。(中略)からだに空きができると循環もよくなり快適になる。(p48)
 これが食べたい! そう思ったら,すぐに食べないと気が済まない。(中略)そんな時は,ちょっとジャンクなものでも,気にせず食べます。きっと食べたい理由が,からだや気持ちにあるはずだから。(p52)
 買いものからはじまり,後片づけまでと考えると,料理って手間と時間のかかる大変な家事。それに器えらびまで? と思う方もいるかもしれませんが,ちょっと気にしてえらんでみると,テーブルの上は見ちがえるもの。ひと手間で変わるなら,惜しみなくやりたいと私は思うのです。(p118)
 家の中の散らかりようは,自分の心の中の散らかり具合と比例するものです。(中略)では,そうならないためにはどうすればいいかと考えて,自分の中で決めごとをつくりました。すごく簡単,出したらしまう,です。食器に本,コードやクリップなどの細かいもの・・・・・・ありとあらゆるものの定位置を決め,そこから出したら元の場所にしまう。(p122)

2022年5月12日木曜日

2022.05.12 飯島彩香 『ミニマリスト スマホの中を片付ける』

書名 ミニマリスト スマホの中を片付ける
著者 飯島彩香
発行所 KADOKAWA
発行年月日 2020.06.24
価格(税別) 1,400円

● この本の著者は,正直,あまりお近づきになりたいとは思わせない人だ。損得と合理で生活を設計するのは悪いことではないのだが,駆逐艦のように無駄を省いた形にすればトータルクォリティーが上がるかというと,たぶん,そういうものではないだろう。
 すべてを損得と合理で染めることなどできるはずもないとわかったうえで,スマホを使って効率化できるものはしましょうよ,ということかもしれないんだけどね。

● 以下に転載。
 スマホさえあれば,あらゆる情報はいつでも手のひらの中にあり,世界中のどこにいても,自由に生きていけるのでは? と感じ始めたのです。(p3)
 高い授業料を払って学校に通わなくても,スマホで You Tube を観るだけで,あらゆる知識を身につけることができます。語学だって,金融知識だって,動画編集だって,タダで簡単に習得することができます。(p5)
 不要なものは持たないし,不要な情報は目にすら入れない! これが,情報あふれる時代をスマートに生き抜くコツです。(p39)
 生鮮食品に関してはリアル店舗で買う派でしたが,新型コロナウイルス拡大による外出自粛要請が出てからは,一気にネットスーパーの利用頻度が増えました。(p66)
 (You Tube で)気になった動画は,ライブラリに再生リストを作って保存しておくのがおすすめです。(p73)
 利用している銀行のアプリもいれています。振込や残高照会が自宅や移動中に一瞬で完了します。(中略)キャッシュレス生活だとATM自体の利用頻度が激減します。(p92)
 商品の撮影は,昼間の明るい時間帯に,自然光で写すのがベスト。しかも,白い背景で撮影すると商品が明るくきれいに,清潔感のある写真に仕上がります。(p119)
 アカウント異常系や,設定確認系,購入確認系など,見に覚えのないメールは詐欺サイトへの誘導です。(p150)
 私のInstagramのテーマは「ラクして身軽に賢く暮らす」です。(中略)範囲はわりと広いですが,このテーマにそぐわない投稿は絶対にしません。フォロワーはテーマに共感したからフォローしてくれているので,私の今日のランチや旅先の景色などを投稿しても興味を示してくれません。よって,控えています。(p182)
 私の肌感覚ですが,拡散されるかどうかにフォロワー数はさほど関係ありません。(p184)
 今や「SNSの影響力=フォロワー数」ではなくなりました。つながりの薄いフォロワーをかき集めるのではなく,いかに濃いつながりのフォロワーをつかむかが,重要です。フォロワーの濃度が,投稿する内容への反応にも直結します。(p187)
 ある程度フォロワーがつき始めると,企業からPR依頼が来るようになります。よく見かける時計や,化粧品などを宣伝した,あの不自然な投稿のことです。私は一度もお受けしたことはありません。(p188)
 SNSは写真が命です!(p190)

2022年5月7日土曜日

2022.05.07 辛酸なめ子 『愛すべき音大生の生態』

書名 愛すべき音大生の生態
著者 辛酸なめ子
発行所 PHP
発行年月日 2020.03.24
価格(税別) 1,300円

● この分野では二宮敦人『最後の秘境 東京藝大 天才たちのカオスな日常』が嚆矢かつ決定版のような印象があるのだけど,続いて本書も読んでみた。
 著者は美術系の短大を卒業している人なので,美大との比較も所々で展開されている。

● 面白おかしくするために,一般大学の学生との違いを強調するために,掲載しなかった話がけっこうあるんじゃないかな。

● 以下に転載。
 絵の場合は下手でも味があるとか,ヘタウマという画風があります。でも音楽の場合は,下手だと普通に聴けたものではありません。(p13)
 才能はもちろん,どれほどの血のにじむような努力と,莫大な自己投資があったのかと思うと,畏敬の念すら感じます。(p13)
 大学生が奏でたり歌ったりする音楽は,音に夢や希望が乗っていて,ポジティブになります。だからこそこんなに人気なのかもしれません。(p62)
 男子は少ないからみんなモテモテです。同じ科のクラスに元カノが何人もいる人もいる(p71)
 龍角散は声楽科の必需品です。(p80)
 手帳は必須です。(中略)音大生の手帳は真っ黒なんですよ。他大学の学生の手帳をぱっと見せてもらったら白くて,遊びの予定とレポート提出くらいしか書かれていませんでした。(p89)
 音大生は,容姿が整っている方が多いですね。人前に出るから(p94)
 海外では間違ってもいいから,どれだけ自分の音で表現できるかっていうところを重視するから。(p110)
 200%演奏に集中したいから,例えば弾いてる時に,ドレスがきつかったりするだけで,もう嫌なんですよ。(p112)
 みんなまず自分に対して一生懸命だから,人がどうあろうとそんなに気にしないですね。日本も同じだと思います。(p117)
 なんか醸し出すものがエロい。フェロモンが出ますね,チェロは。(p120)
 音大生は感覚的に生きているので,楽しくお金を使ってしまい,なかなか貯まらないという享楽的な一面もあると聞きました。(p155)
 やはりステージも芸能の世界なので,多少は芸能界的な部分があります。(中略)ドロドロしたことも多分あるのではないでしょうか。(p166)
 そのための修行はいろいろでも,最終的にそこに到達できるかどうか。(中略)自分自身が自由になれる状態。そういうふうに演奏できるか,作曲できるか,アート作品ができるかっていうところだと思います。(p169)
 今は譜面を使わず,例えば電子楽器の打ち込みや,データを入れて音楽作品とするっていうやり方も一般的ですしね。(p171)
 さっきの自由さも含めて,なんらかの豊かさを知ってるかどうかなんだと思います。それも,お金があってセレブな生活送ってることだけでもないんですよね。別にキャベツだけでも幸せだったら全然問題ないわけで。(p173)
 今の日本の状況であれば,情報に関しては誰にでも開かれています。(中略)ただ,クラシック音楽は,基本的にはお金と時間という余裕があってできた文化なんだということはどこかで知ってないといけないのかな,とは思います。(p174)
 ピアノとかバイオリンていうのは,基本的には早期の特別な教育を受けないとできなくて,だいたい3歳か4歳から始めて,高校生くらいまででもうできあがってしまうと,じゃあ大学で何をやるんだと。(p178)
 自分の学校は,附属の高校から上がってくる人と,大学から入る人と2つの流れがありまして,高校から上がってくる連中っていうのが,なんかもう,ちょっと鼻持ちならない特別な階級なんですよね。演奏も上手いし,余裕があって,それこそ昔の貴族みたいで。(中略)自分も小さい時からピアノをやってて,そういう意味では特別なんですけども,そんなレベルじゃないんです。(p178)

2022年5月4日水曜日

2022.05,04 橋下 徹・堀江貴文 『生き方革命』

書名 生き方革命
著者 橋下 徹
   堀江貴文
発行所 徳間書店
発行年月日 2021.03.31
価格(税別) 1,500円

● 副題は「未知なる新時代の攻略法」。
 対談ではない。テーマを著者2人に出して,それについて語ってもらって,それを適当につないだものだと思う。
 あるいは,すでに出ている書籍からライター氏が文章を作って,2人の承認を得て本にしているのかもしれない。つまり,本書を作るにあたっては,ひょっとすると新たな口述は取っていないのかもしれない。

● 橋下さんの著書を読むのは今回が初めて。彼のキーワードは “流動性”。
 労働市場もマスコミも役所も様々な問題を抱えているが,その問題は(人の)流動性を高める工夫をすれば解決すると考えているように読める。

● 橋下さん,今回のウクライナ動乱をめぐる発言で,一気に過去の人になってしまった感がある。
 いつぞや,自民党の高市早苗政調会長と討論しているのをネットで見たことがあるのだが,手もなく捻られていた感じだった。どうしちゃったのかね。

● 以下に多すぎる転載。
 好きなように人生をというゲームをプレイするには,生まれながらの才能が必要だと思っている人もいるだろう。しかし,その才能とは何だ? 知能テストでいいスコアを出すことだろうか? 上手に絵を描けることだろうか? 作曲できることだろうか? 100メートルを9秒台で走れることだろうか? 自分の好きなようにフィールドを作れるのだから,どんな才能が優れているのかなんて自分で決めればいい。自分の好きなゲームを作って,好きなようにプレイすればいい。(堀江 p4)
 日本企業の株価は,回復してきているとはいえ,1989年の最高値3万8915円を一度も上回っていない。一方,アメリカはと言えば,約40年間で株価は30倍以上にもなっている。(中略)それでは,いったい日本はなぜここまで沈滞してしまっているのだろうか? おの原因は「流動性の低さ」に尽きる。(橋下 p19)
 経済とはヒト,モノ,カネが動いて熱を発するという現象だ。(中略)ヒト,モノ,カネが活発に動けば,そこに必ず熱が生まれる。(中略)ヒトが動かないと,何も物事は進まない。(中略)実際にヒトが動かなければ経済は熱を発しない。(橋下 p24)
 テクノロジーを活用して,できるだけ人間が必要ない状況を作り出すことが結果的に人間を自由にするのだが,そうした流れに抵抗するのも人間だ。(堀江 p48)
 情報リテラシーが低い人というのは,往々にして他人に頼ることができない。他人に頼れないというのは,強さではない。どうでもいいプライドが邪魔をしているだけ。「人に頼る力」に欠けているのだ。(堀江 p51)
 自己責任の自助でがんばれ,それが無理なら共助,最後に公助を頼れと言われても,いまは共助は果てしなく薄くなっている。(橋下 p55)
 ほかに助けを求められない人を助けるための公助とは,役所の窓口に来た人だけに与えられるのではなく,国民全員に対して無理やりに押しつけるくらいのセーフティネットでなければならない。(橋下 p56)
 お金のストレスがなくなれば,家庭内暴力や犯罪も減ってくるんじゃないかという気もする。自己責任で何とかしろというだけではなく,きちんと社会的な支援の仕組みを整えたほうが,社会全体の付加価値を増すことにもなるのではないだろうか。(橋下 p58)
 投入した労働の効果を最大化しようとすれば,企業の資本規模は大きいほうがいい。その点で言うと,日本は各企業の資本規模がとても小さい。(中略)資本規模が小さいと合理化のための設備導入を行うことが難しい。(橋下 p63)
 韓国の場合,最低賃金アップのあと,一時的に失業率は高まったが,すぐに落ち着きを取り戻した。しかも2019年には韓国の労働生産性が日本を上回っている。(橋下 p65)
 個人が付加価値を上げるための一番の方法はしっかり「休む」ことだと僕は考えている。(中略)身体だけでなく,良い知恵を出すためにも休息は欠かせない。(中略)十分な休息があってこそ社会も豊かになる。低賃金で疲れ果てていては,休みの日に消費をしようという気にもなれない。(橋下 p66)
 メールにしても,FacebookやLINEといったツールにしても,最大の利点は記録が残る点にある。記録があれば,言った言わないの水掛け論は起こらない。(中略)テキストとしてきちんと記録を残すことで,何をすべきかが明確になって業務が円滑に回るし,ミスが起こったときの再発防止策も講じやすくなる。(堀江 p72)
 メールやSNSなどは,非同期型コミュニケーションである。これに対して,口頭や電話,ビデオ会議は同期型コミュニケーションだ。(中略)非同期型コミュニケーションならば,相手の都合を考える必要がない。(中略)非同期型コミュニケーションを中心にし,やり取りはきちんとテキストとして残るようにする。口頭や電話での最低限に抑える。こうすることで時間効率は格段に向上する。(堀江 p73)
 テレワークの本質とは,Zoomのようなオンライン会議ツールを使うことではない。記録を残すこと,コミュニケーションを非同期型にすることが本質だ。(堀江 p74)
 幹部や職員の対面至上主義にはびっくりした。幹部や職員とメールで連絡を取っていると,必ず「この案件についてはぜひ直接会って説明させていただきたい」と言い出す。(中略)こういう人たちは,対面で実際に会って自分の熱意をくみ取ってほしいと思っているようだ。(橋下 p77)
 人は現状を維持するための理屈ならいくらでも思いつけるものである。(橋下 p93)
 日本型組織のトップのマインドがなかなか変わらないのは,結局のところ組織の多様性のなさ,そしてその背景となる流動性の低さによると思う。(橋下 p94)
 2019年から2020年にかけて,国会では「マイボトルを委員会室に持ち込めるかどうか」が議論されていた。冗談でなく,こんなことで貴重な国会の日程が空費されたいたのだ。(中略)国会議員たちは「日本の生産性は低い。生産性革命だ!」と主張する。しかし,マイボトルの持ち込みを認めるかどうかを延々と議論しているような人たちが言う,生産性革命とは何だろう。(橋下 p99)
 いまの企業には何をやっているのかよくわからない業務をしている人たちがいっぱいいる。コロナ禍でテレワークに移行できた人は,そのことを実感したはずだ。(堀江 p102)
 テキストで記録が残るチャットでは,プロジェクトに貢献していない人がまるわかりで,そういう人は次第に会議やチャットのスレッドには呼ばれなくなっていく。(堀江 p104)
 大阪市役所は,庁内電子メールシステムの整備が遅れたという。というのも市役所内に「逓信部」という組織が存在していたからだ。(橋下 p107)
 現在,大企業であるかどうかを問わず,会社員になることのメリットはほぼない。(中略)日本の大企業といっても,世界的に見れば,吹けば飛ぶような存在だ。(堀江 p113)
 だいたい,いまの日本ではそう簡単に生きるか死ぬかに追い詰められるようなケースはほとんどない。大したことのないリスクを恐れて,安定を求めるのは愚か者のやることだ。(堀江 p116)
 お金に関する国民のリテラシーが高くなれば,政治の政策論争もより生産的なものになるのではないだろうか。(橋下 p126)
 経済成長が停滞し,少子高齢化が進んでいる現代において,家を買うことにはデメリットしかない。(中略)何より,ひとつの場所に定住するとチャンスがつかみにくくなる。(堀江 p128)
 荷物はスーツケース数個に収まるくらいだが,最近ではそれもなくせないか,いろいろ試行錯誤している。(堀江 p134)
 明らかに未来は,所有ではなく,レンタルの方向に向かっている。いますぐにでも,自分の所有しているモノを,レンタルに替えられないか検討していくべきだ。所有するよりも,時間や空間に応じて自由に貸し借りできるほうがモノの利用効率は高まり,経済活動も活発になる。消費者を洗脳して,いらないモノを無理やり買わせるような産業は,いずれ立ちゆかなくなる。(堀江 p136)
 いかなる生命保険も,人の命を使ったギャンブルだということは理解しておいたほうがいい。(堀江 p139)
 僕は金儲けのための株式取引は行わない。そんなつまらない金の使い方はしない。(堀江 p141)
 「こうすれば絶対に儲かる」なんて断言する人間やメディアは,詐欺師だと思っておいたほうがいい。未来が確実に予測できるなどという人間を信じると酷い目に遭う。(堀江 p143)
 お金というのは,必要なときに必要なだけあればよいもので,貯め込んでいても誰の得にもならない。(堀江 p146)
 今の日本は,お金が余っている。ちょっとどころではなく,余って余って仕方がない状態になっている。(中略)こういう状態だと,有望と思われる投資先が見つかったとたん,そこにお金が集中することになる。(堀江 p147)
 若いときは何とかなっていても,運動習慣がないまま歳を取ると,一気にガタが来る。僕はホテルにスポーツジムがあれば必ず使うようにしているが,利用しているのはほとんど外国人で,日本人はあまり見かけない。(堀江 p155)
 いまはお金がなくても楽しめる娯楽にあふれている。昔ながらに図書館に通って本をいくらでも読むことはできるし,スマホがあればいくらでもコンテンツにアクセスできる。(中略)生活保護を受けていても,一生かかっても見きれない,遊びきれないコンテンツを利用できるのが現代なのだ。(堀江 p158)
 僕は刑務所に2年間服役していたが,その生活ですらそれほど酷いものではなかった。毎度三食,きちんと調理された温かい食事が出てくるし,大量に作っているからご飯の炊き上がりもいい。(堀江 p159)
 僕は地方創生の謳い文句をそのまま受け取ることができない。(中略)実態は「現状維持」だからだ。つまりいまの地方の状態を,とりあえずそのまま維持することを一番の目的としている。(中略)現状維持では力を失う。(橋下 p163)
 身体が健やかであるためには,新陳代謝が活発でなければいけない。古い皮膚がいつまでも残っていては,新しい皮膚に変わっていかない。イノベーションは,新しいものの登場と,古いものの退場が必ずワンセットだ。(橋下 p168)
 都会の暮らしは思っている以上にコスパがいい。確かに家賃に関しては,地方よりも高くなるが,それ以外の生活コストに関しては大きく変わるわけではない。何より,都会には時間を最大限に有効活用する手段がいくつもある。(堀江 p173)
 大事なことは,自分なりに情報を集めてみて,ピンと引っかかるものがあったらすぐに動くことだ。「東京に住むためには,最低限手取り☓☓円が必要」なんてくだらない記事を真に受ける必要はない。(堀江 p179)
 都会でないと楽しめない娯楽を求めているのならともかく,どこででもできる娯楽で十分なのに地方を敬遠するのはもったいない話だ。(堀江 p181)
 僕はそもそも「住む」という概念が不要だと考えている。これだけテクノロジーが発達した時代に,なぜみんな「住む」ことにこだわるのだろう。好きなときに,好きなところへ行けばいいではないか。そんな自由は,誰でも持っている。(中略)移動できるかどうかは,たんに本人のマインド次第だ。本人が移動したいと思えばできるし,できないと思い込んでいるならできない。(堀江 p183)
 個人は国や地方の問題など気にしてもしょうがない。自分の住みたい場所に行って,自分のやりたいことをやるのは,いますぐできることなのだ。(堀江 p188)
 いまの時代は,少し前には存在しなかった職業が次々と登場するし,求められる才能も多様化している。親の経験に基づいて,子どもという他人の才能を測ることなど,どだい無理な話なのだ。(橋下 p196)
 希少性と付加価値の高い能力を才能だとすれば,人と同じことをさせて才能が育まれるはずがない。子供の才能を伸ばしたいと訴える親や教師は,まったく逆効果のことばかりしているのだ。(中略)親は余計なことをすべきではない。「子どもの没頭を邪魔しない」(何がおもしろいのかこっちには理解しがたいことに没頭するものだ)ことだけを肝に銘じてほしい。(堀江 p203)
 子どもはすぐに飽きてしまうが,それはそういうものだと思って諦めるしかない。いつかはわからないが,真に没頭するものを見つけるだろう。あくまで「子どもがやりたい」ことにお金を出すのだ。「親がやらせたい」ことではない。ここを違えてはいけない。(堀江 p204)
 興味さえ持てば,人は自習であらゆることを学んでいけるものだ。(中略)難解な数学や科学のちぢ機が必要になる研究職は? そのような特殊な職業でなくても義務教育の素養は必要なのではないか?(中略)そんなのは余計な心配だ。まず,研究開発をやりたいという人は基本的に頭が良い。こういう人たちは自分で本を読むなりして,いくらでも学んでいける。(堀江 p205)
 「将来性」があるかどうかで資格を取ろうとするのは浅はかだ。10年後どうなるかなど,誰にもわからない。(中略)スキルがとか,資格がとか,そこから考えようとするからおかしなことになってしまうのだ。好きなことがあったら,スキルなど自然に身についていくものである。(堀江 p211)
 頭でっかちな動機を最初に設定したところで,それは推進力にはなりえない。最初にあるべきは,理屈ではない興味や関心だ。(堀江 p212)
 どんな分野でも1万時間やり続ければ,確かに人より圧倒的に秀でることはできるだろう。だが,飽きもせず1万時間も費やすことができるのは,それにハマっているからだ。(堀江 p213)
 まったく逆だ。つらい努力や我慢を自分に強いているから上達しないのだ。(堀江 p214)
 僕はそのとき自分がやりたいと思ったこと以外は,何もかもそぎ落とす。(中略)楽しいことは人によって違うのだから,家族サービスに夢中ならその時間を満喫すべきだ。家族サービスをいやいややっているのなら,さっさとやめれいい。(中略)自分の時間を,自分のやりたいことだけにつぎ込み,それ以外のことは一切しない。そうやって集中すれば,どんなことでもあっという間に上達する。(堀江 p214)
 研究者が最先端研究を行うために,海外の研究室に行くというのであればまだわかる。高校や大学学部レベルで,はたして留学することに意味があるのだろうか。(中略)スタンフォード大学やハーバード大学,マサチューセッツ工科大学といった世界的に有名な大学がいま現在,MOOCs(ムークス)に参入している。(中略)原則として受講料は無料,受講資格も問わない。つまりインターネット環境さえあれば,いつでも,どこにいても,誰であっても,名門大学の講義を受けられる。(中略)専門的な学術論文が読みたければ,データベースサービスで好きなだけピックアップできる。この種のサービスはいまだに有料のものも多いが,留学費用に比べれば大したことはない。(堀江 p216)
 同級生だとか同窓生だとか,同じ釜の飯を食ったとか,そういうことは人間関係を作るうえで特段に大事ではない。(堀江 p218)
 現地で暮らさなければ,外国語を習得できないというのも幻想だ。何年も海外留学したところで,日本人同士つるんだせいでいつまでも外国語が上達しないなんて人はいくらでもいる。いまならネット上の外国語学習コンテンツをひたすらやり込めば,読み書きでも会話でも実体験に近いかたちで吸収できる。(堀江 p218)
 違う土地に行って暮らしてみたいのなら,大学がどうのと言わず,さっさと出かければよいだけのことだ。(堀江 p219)
 新しいテクノロジーが登場するたび,大人は常に大騒ぎしてきた。子どもどうしの長電話に目くじらを立て,深夜のラジオ番組に夢中になる子どもを叱った。テレビ番組は教育に良くないと言い,パソコンで遊ぶのはくだらないと決めつけた。そして,インターネット,スマホが次の悪者になった。(堀江 p221)
 マンガを読みまくっていようが,ゲームをしまくっていようが,東大に入る人間は入るし,僕自身もそうだった。いまスマホを手放さない子どもにしても,同じことだ。(堀江 p223)
 スマホを使えば,驚くほど多様なことができる。(中略)何が子どもにとって良い使い方で,何が悪い使い方なのかなど,親も含めて誰にもわからない。(堀江 p223)
 多くの人は,情報を入手して活用するということを誤解している。あまり知られていないとっておきの情報がどこかに存在していると思ってはいないだろうか。そういう人間は,一攫千金を狙える投資手法だとかすぐに痩せられるサプリメントだとかの情報にすぐ踊らされて,有り金を巻き上げられてしまう。情報とはそういうものではない。もちろん,企業秘密や国家機密は存在するが,そうした情報も価値がわかる人間が扱わなければ意味がない。(堀江 p225)
 情報を活かせるようになるために必要なのは,莫大な量の情報を浴びることだ。情報のソースや質は問わない。(中略)たくさんの情報を取り入れているうちに,脳の回路が組み変わり,これまではできなかった高度な判断をすばやく行えるようになっていく。(中略)情報事態に意味があるというより,高度な判断を行う脳を作るために情報が必要なのである。(堀江 p226)
 興味を惹かれたニュースに関しては必ずアウトプットをするということ。Twitterで引用リプライをするだけでもいい。アウトプットをするとその情報は記憶に残りやすくなるし,同じ関心を持っている人とつながりやすくなる。(堀江 p228)
 ジャンルの食わず嫌いをしないということ。(中略)ネットにおけるエコーチェンバーの問題もそうだ。自分にとって心地のよい,傾向の似た人々の話ばかり聞いていると,特定の意見ばかりが増幅され,ほかの意見が耳に入らなくなっていく。(堀江 p228)
 取り入れた情報はあっという間に陳腐化していく。次々に新しい技術が生まれ,常識も塗り変わっていく。たゆまず,日々情報のシャワーを浴び続けよう。(堀江 p229)
 何よりも貴重な自分の時間を使うからには,最大限の効率で情報を得るようにしよう。手段として最悪なのは,テレビである。(中略)You Tube は時間や場所の制約についていえばテレビよりマシではあるが,情報収集の手段としてはおすすめできない。(中略)動画や音声は時間当たりに得られる情報量が少なすぎるのだ。(堀江 p230)
 拘置所にいたころは,とにかくずっと読書をしていたものだ。(中略)1日20冊くらい読むのはそれほど難しいことではない。速読などの特別な技法を身につけていなくても,知識が増えてくれば本を読むスピードも自然と上がってくる。ただし,それでも1冊の本を読むには時間がかかる。書籍の要約サイトや要約アプリを使えば,大まかな内容を圧倒的に短い時間で取り入れることができる。要約を読んで気になった本だけをきちんと読むようにしたほうがはるかに効率的だ。(堀江 p232)
 情報密度が高く,僕もよく読むのがマンガだ。ビジュアルとテキスト,ストーリーが一体化されたマンガは,1ページ当たりの情報量が実は極めて多い。(堀江 p233)
 いまなら同じ内容を勉強するのも,はるかに短時間で済んだだろう。スマホアプリやネットの教材を使えば,中学・高校の授業内容など,6時間もかけて学ぶ必要はない。というより,いまならわざわざ大学に行くという非効率なことをしていなかったと思うが。(堀江 p233)
 現在の社会は,数十年前と比べてすら激変している。それなのに義務教育をはじめ,100年以上前に作られた枠組みに従って生きようとしてもうまくいくはずがない。(堀江 p237)
 みんな一律の教育を受けて,おとなしく言うことを聞いているだけでは幸せになれなくなってしまった。(中略)知見が共有されることで,あらゆる分野の変化がスピードアップしている。いま求められているのは,起こっている変化を感じ取り,短期集中で変化についていける人間だ。(中略)おもしろいと思った手法やテクノロジーはすぐ試し,短期集中で身につけ,活用できるようにする。これが変化についていくということだ。のんびり学校に通って,みんなと同じことを勉強している暇などない。(堀江 p241)
 学校こそが,良くない集団行動を拡める感染源になってしまう面もあるのではないか。(堀江 p250)
 テレワークを含むテレビ会議やネットコミュニケーションが一般化していくのであれば,日本において日本人であることのアドバンテージはどんどん低下していく。(橋下 p260)
 人が激しい競争のなかで挑戦するためにはセーフティネットが絶対に必要だ。サーカスの芸人が空中ブランコで大技を繰り出せるのも,安全のためのネットや命綱があるからだ。セーフティネットがなかったら,恐怖心の欠如した一部の人間しかチャレンジなどしないだろう。(橋下 p263)
 そうしてわかったのは,授業はオンラインで十分だということ。いや,この言い方は正確ではない。オンラインの方がずっと効果的な授業ができるということだ。(中略)頭の良い生徒について言えば,そもそもオンライン授業すら必要ない。(堀江 p271)
 先の音を恐れて不安な人ほど,どうでもいい情報にすぐ騙される。(中略)未来が不安でしょうがない人は,たんに情報が不足しているのである。(堀江 p286)
 情報をたっぷりと浴びて,さまざまな選択肢がすぐに思いつける脳内ネットワークを築く。わからないことはわからないと腹をくくる。考えるためのベースとなる情報がない事柄については,考えない,気にしない。(堀江 p289)
 僕がこう主張すると,「そんな技術はすぐには実用化しない」「仕事にはまだまだ人間が必要」という反論がすぐに寄せられる。そう考えている人は,テクノロジーの進歩を甘く見ている。テクノロジーは,比例的に進歩していくのではなく,指数関数的に,いやもっと複雑かつ休息に進歩していくものなのだ。(堀江 p302)
 単純にスマホの情報処理能力だけを比べても,2007年に登場した初代iPhoneと最新モデルでは,数百倍,一千倍もの開きがある。(堀江 p303)
 僕や堀江さんは大規模な炎上でも耐えることができるけれど,そんなことができるのは日本でもせいぜい数十人くらいではないだろうか。(中略)なぜ僕が冷静でいられるかと言えば,誹謗中傷してくる人を哀れんでいるからだろう。(橋下 p309)
 自分のやりたいこと,やるべきことに真剣に取り組んでいるのであれば,他人にかまっている余裕などないはずだ。(中略)自分の人生を生きていない「かわいそうな人たち」のために,あなたの人生を消耗させる必要などまったくない。(橋下 p310)
 なぜマスメディアがこのような批判一辺倒な意見に終始し,一部の学者やインテリの声ばかりを取り上げるのかといえば,マスメディア自身に流動性が欠けているからだと思う。(橋下 p314)
 やりたいことがない,というのは本当だろうか。世間にあるぢごとや趣味をざっと見て,そこから選ばないといけないと思っているのではないだろうか。(堀江 p321)
 行動力だとかやる気などというものは必要ない。何かの「好き」を持っていて,膨大な情報を浴びていると,必ず琴線にふれる情報に気づく。わずかでもピクンと脳波が反応することがあれば,その情報を深掘りしてみる。(堀江 p323)
 古い枠組みを保ったまま方程式を解こうとするのは非常に難しい。仮に解けたとしても,恐ろしく面倒くさい解が出てきたりする。働かないといけない,お金がないといけないと,みんな思い込んでいるから,失業率を気にしたり,最低賃金を上げるとか下げるとか,そんな話になってしまう。だが,いま起こっているのは,どういう些細なレベルの変化ではなく,もっと根本的なものだ。数世紀にわたって成り立っていた枠組み自体が揺れ動き,流動化している。そのことに気づけるかどうか。(堀江 p331)
 既存の常識が気に食わないからといって,その反対だけが正解だと考えるのはナンセンスだ。既存の枠組みがひっくり返るというのは,たんに既存の枠組みが否定されるということではない。テクノロジーの進歩によって,ありとあらゆる可能性,選択肢を選べるようになったということだ。(堀江 p333)
 「こうであらねばならない」という思い込みが,人を幸せから遠ざける。その思い込みを解くのは自分にしかできない。(堀江 p334)