書名 愛すべき音大生の生態
著者 辛酸なめ子
発行所 PHP
発行年月日 2020.03.24
価格(税別) 1,300円
● この分野では二宮敦人『最後の秘境 東京藝大 天才たちのカオスな日常』が嚆矢かつ決定版のような印象があるのだけど,続いて本書も読んでみた。
著者は美術系の短大を卒業している人なので,美大との比較も所々で展開されている。
● 面白おかしくするために,一般大学の学生との違いを強調するために,掲載しなかった話がけっこうあるんじゃないかな。
● 以下に転載。
絵の場合は下手でも味があるとか,ヘタウマという画風があります。でも音楽の場合は,下手だと普通に聴けたものではありません。(p13)
才能はもちろん,どれほどの血のにじむような努力と,莫大な自己投資があったのかと思うと,畏敬の念すら感じます。(p13)
大学生が奏でたり歌ったりする音楽は,音に夢や希望が乗っていて,ポジティブになります。だからこそこんなに人気なのかもしれません。(p62)
男子は少ないからみんなモテモテです。同じ科のクラスに元カノが何人もいる人もいる(p71)
龍角散は声楽科の必需品です。(p80)
手帳は必須です。(中略)音大生の手帳は真っ黒なんですよ。他大学の学生の手帳をぱっと見せてもらったら白くて,遊びの予定とレポート提出くらいしか書かれていませんでした。(p89)
音大生は,容姿が整っている方が多いですね。人前に出るから(p94)
海外では間違ってもいいから,どれだけ自分の音で表現できるかっていうところを重視するから。(p110)
200%演奏に集中したいから,例えば弾いてる時に,ドレスがきつかったりするだけで,もう嫌なんですよ。(p112)
みんなまず自分に対して一生懸命だから,人がどうあろうとそんなに気にしないですね。日本も同じだと思います。(p117)
なんか醸し出すものがエロい。フェロモンが出ますね,チェロは。(p120)
音大生は感覚的に生きているので,楽しくお金を使ってしまい,なかなか貯まらないという享楽的な一面もあると聞きました。(p155)
やはりステージも芸能の世界なので,多少は芸能界的な部分があります。(中略)ドロドロしたことも多分あるのではないでしょうか。(p166)
そのための修行はいろいろでも,最終的にそこに到達できるかどうか。(中略)自分自身が自由になれる状態。そういうふうに演奏できるか,作曲できるか,アート作品ができるかっていうところだと思います。(p169)
今は譜面を使わず,例えば電子楽器の打ち込みや,データを入れて音楽作品とするっていうやり方も一般的ですしね。(p171)
さっきの自由さも含めて,なんらかの豊かさを知ってるかどうかなんだと思います。それも,お金があってセレブな生活送ってることだけでもないんですよね。別にキャベツだけでも幸せだったら全然問題ないわけで。(p173)
今の日本の状況であれば,情報に関しては誰にでも開かれています。(中略)ただ,クラシック音楽は,基本的にはお金と時間という余裕があってできた文化なんだということはどこかで知ってないといけないのかな,とは思います。(p174)
ピアノとかバイオリンていうのは,基本的には早期の特別な教育を受けないとできなくて,だいたい3歳か4歳から始めて,高校生くらいまででもうできあがってしまうと,じゃあ大学で何をやるんだと。(p178)
自分の学校は,附属の高校から上がってくる人と,大学から入る人と2つの流れがありまして,高校から上がってくる連中っていうのが,なんかもう,ちょっと鼻持ちならない特別な階級なんですよね。演奏も上手いし,余裕があって,それこそ昔の貴族みたいで。(中略)自分も小さい時からピアノをやってて,そういう意味では特別なんですけども,そんなレベルじゃないんです。(p178)

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