読書で人生が変わるなどということは,まずもってないものでしょう。読書が人を賢くすることも,たぶん,ないと思います。 読書は安価でお手軽な娯楽であり,時間消費の手段です。それでいいというより,娯楽でない読書は可能な限り避けたいものです。 娯楽としての読書があれば,老後もなんとかしのげるのではないでしょうか。というか,しのげると思いたいわけですが。
2012年9月30日日曜日
2012.09.29 A-Works編 『地球でデート!』
書名 地球でデート!
編者 A-Works
発行所 A-Works
発行年月日 2011.06.28
価格(税別) 1,500円
● あまり元手をかけていない感じのガイドブック。拡販用のパンフレットに載っていそうな写真が散りばめられている。
● ガイドブックとしてどこまで実用的かも疑問。ただ,この本をガイドブックとして使おうとする人もいないだろうから,実用的でなくても誰にも迷惑はかけないだろう。
● と言いながらも。
本書の後に『Wonderful World』という似たようなテイストの続編も出てて,これもぼくは読んでいる(見ている)。パラパラとページをめくりながら,写真をながめて(文章は読まないで),ひととき彼の地に思いをはせる。そうした使い方をするとよいだろう。っていうか,そうした使い方しかできないのじゃないか。
2012.09.29 蜷川幸雄 『演劇ほど面白いものはない』
書名 演劇ほど面白いものはない
著者 蜷川幸雄
発行所 PHP
発行年月日 2012.09.05
価格(税別) 1,100円
● 蜷川さんの舞台を観たことはない。っていうか,演劇を生で観たことがない。にもかかわらず,この本を読んだのは,演劇ではなく,蜷川さんへの興味から。
とはいっても,1998年にNHK教育テレビの「人間大学」で「舞台・夢を紡ぐ磁場」と題する話をしているのを聴いたくらいで,蜷川さんについて知るところもさほど多くはない。
● 冒頭,渋谷とヨーロッパの比較都市論?を蜷川さんが披露する。
昔は,日本の都市はゴチャゴチャしてて汚い,看板だらけで秩序がない,ヨーロッパに比べると都市計画などないに等しい,などと言われ,ぼくもそうなのかぁと思っていた。
が,実際にヨーロッパに行って,ロンドンやパリやウィーンを自分の眼で見る機会を持った人が雲霞のごとく出てくると,ヨーロッパ礼賛一辺倒は下火になった。ま,今でもその手合いがいるにはいるけどね。
● 「猥雑で,色彩にあふれ,音もノイズもいっぱい入ってきて,いろんな人がいろんなところから集まり,それらが交差する」(p3)のが渋谷で,「この街には論理以前の,あふれんばかりの感情を孕んだ,アジアの混沌とエネルギーが,沸騰していると感じられる。風俗やファッション,流行りすたりがあって,それが激しいし,変化が速い」(p7)と蜷川さんは言う。
● 対して,「ヨーロッパの,洗練され統一された,整然とした都市で演劇の仕事をしていると,やたら自己主張ばかり強い,西欧の論理性というのがつまらなくなって」(p6)くる。
このあたりの感じ方は,蜷川さんの演劇観の反映。「混沌」を演劇の生命線だと考える。「世俗から離れた修行僧のような人を,僕は尊敬しますけど,そんなふうに精神的にストイックになり過ぎると,演劇はどうなるか?」(p8)。
● 以下,蜷川さんの言葉をいくつか。
いくら志があっても,慣れると,集団は腐っていく。(p49)
その時の言葉が,戯曲の中に満ちあふれていて,現在をつかむ言葉であれば,それでいい。(p59)
僕は2005年頃から5年くらい,演出ノートをいっさいつけていなくて,台本の書き込みもほとんどない。(中略)即興で,その場で思い浮かんだことを指示して,俳優の演技も身ながら直していく。(p85)
演出というのは,文学を演劇にすることだ。(p89)
僕らの演劇を,いまさら輸入文化のようにやるのは恥ずかしいと思います。(中略)髪の毛を赤く染めたり金髪にしたり,目の周りにシャドウを入れたりして外国人に扮するというのは,ひどく恥ずかしい。日本人のタイツ姿というのも,すごく恥ずかしいし,みっともない。(p90)
劇場に入って劇の時間や空間へすっと入れない芝居は,創る側の職業的な怠慢だ。(p95)
僕は,演出テーブルの上に箱馬という台を置いて,錠剤をポリポリ噛みながら,よく稽古をしていました。みんなビタミン剤と思うんですけど,胃薬なんです。稽古中に,目の前を虫が飛ぶんです。幻覚ですが,そうやって自分を追い込んで,何かを創ろうとしていた。(中略)
ただ,そうして自分を追いつめて生まれたものは,いいものもあるけれども,いま考えると,ふくよかさに欠けるところがありますね。(p120)
僕は決して,枯れたり,ストイックになるつもりはありません。日本的な,物わかりのいい,物静かな老人にはなりたくないですね。最後まで,創造的な仕事に対して冒険家であるような,過剰な老人でいたい。(p143)● 蜷川さんの幼少時の環境もちょっとすごい。「芸術好きな母親に連れられて,映画やバレエ,オペラ,コンサート,歌舞伎などを,よく観に行ったりしていました」(p21)っていうからね。
失礼ながら,蜷川さんの年齢でこういう幼少時代を過ごしたってのは,庶民の暮らしからは隔絶している。
しかも,「高校生の頃から文学座の支持会員でした」(p29)っていうから,ませてたっていうか,超早熟というかね。そして,それを支える経済的な基盤が親によって整備されていたというわけだね。
幼少時の環境だけがその人を決める要因ではないけれども,こういう事実を知ると,蜷川さんは演出家になるべくしてなったのだとも思えてくるねぇ。
2012年9月28日金曜日
2012.09.27 ほぼ日刊イトイ新聞編 『ほぼ日手帳公式ガイドブック2013 ほぼ日手帳と,その世界』
書名 ほぼ日手帳公式ガイドブック2013 ほぼ日手帳と,その世界
編著者 ほぼ日刊イトイ新聞
発行所 マガジンハウス
発行年月日 2012.08.27
価格(税別) 1,500円
● ずっと「能率手帳」を使っている。おじさん手帳の代名詞なんですかねぇ。よく考えて作りこまれている手帳だと思うんですけどね。伝統はダテじゃありませんよ。
ここ数年は「能率手帳」のシステム手帳版である「Bindex」のバイブルサイズを使用中。そのときの気分でA5サイズにしたり,綴じ手帳の「能率手帳」にしたりしてきたんだけど。
● なぜ同じものを使い続けているかといえば,大きな不満がないからですね。その程度の理由で頑固に同じものを使うってのは,男性にはわりとあるんじゃないですかねぇ。
男って基本的に保守的だし,一度決めてしまえば,以後悩まなくてすむからね。ま,悩むのも楽しいんだけどさ。
● 要するに,「ほぼ日手帳」を使ったことはないんですね。ないんだけれども,『ほぼ日手帳公式ガイドブック』は毎年購入して読んでいる。
なぜって,楽しいからね。メインの記事は,ユーザーが「ほぼ日手帳」をどんなふうに使っているかの紹介。芸能人やスポーツ選手などの有名人から,ビジネスマンや主婦,学生といった無名の人たちまで,いろんな人が登場する。
カラー写真でその人たちの手帳の中身を載せている。人の手帳を覗くって,覗き趣味の最たるものだと思う。その覗き趣味を満たすことができるんですねぇ。
● それぞれ,思い思いに使っているのが,見てて気持ちいい。あるべき使い方ってのを想定して,その型に自分をはめようとするのは阿呆の極み。あるべき使い方と自分の使い方の落差をアレコレ気にやむなんて,してはいけないことだよね。
自由な使い方を受けとめられるのが「ほぼ日手帳」の懐の深さだっていう言われ方をすることもありますな(でもね,「能率手帳」や「Bindex」だって,それぞれなりの使い方はできると思うぞ)。
● それとね,「ほぼ日刊イトイ新聞」にはお世話になっている。
以前はブラウザを起動すると最初に「ほぼ日」のトップページが表示されるようにしていた。「ほぼ日」のすべてのコンテンツを読むことを自分に課していた。上質な世間がここにあるっていう印象なんですね。
今の「ほぼ日」はあまりに膨大になったので,それはとてもできないんだけど。
でも,糸井さんの「今日のダーリン」は必ず読む。ということは,1日に1回は「ほぼ日」に行ってるってこと。
ちなみに,一番面白かったのは「新宿二丁目のほがらかな人々」。最近はあまり更新がないんだけど,これ,都市文化論として読んでも秀逸だし,現代世相論としても出色のもの。偉そうな言い方で申しわけないけれど。
● でね,それだけ世話になっているのに「ほぼ日手帳」を使っていない,と。「ほぼ日」に参加していない,と。せめて,『公式ガイドブック』くらいは買って,砂浜の一粒の砂ほどの貢献はしなきゃなってのも,ほんのちょっとだけあるかな。
● 「ほぼ日手帳」は2002年に誕生したんだけど,その誕生の様子が「ほぼ日」のコンテンツにもなってた。実況中継のようなものね。「2002年版ほぼ日手帳成功物語」というのがそれ。
その連載を楽しみに読んでいた。このときは,「ほぼ日手帳」を買う方に傾いていたような気がする。
が,その連載に,次のような話が載った。
今回「ほぼ日手帳」を発売して以来,最も多くいただいている質問は,「ほぼ日手帳,来年,再来年も作ってくれるの?」です。
はっ! わたくし不覚にもそこまで先のことは考えていなかったわ。でも,そうだわ,来年(2003年度版)も,さらにその次の年も,もちろん作りたいよー!! ていうか,もちろん作りますよね,darling。
俺も,そう思ってるし,つくると思うよ。ただ,来年も再来年もつくるからお得だという宣伝は,やめておいたほうがいいよ。その考えだと永遠に作ることになっちゃうもん。なんか事情があったら,やめる可能性だってある,と,考えていたほうがいいと思うんだよね。もっといいことを考えたときに,それをじゃましないような“ほぼ”な感じを持ってないと,単なる手帳作りのビジネスになっちゃうからさ。でも,来年分くらいは約束してもいいと思うけどね。さすがは「ほぼ日」の良心の発露なんだよね。なんだけど,ぼくは,そうか,来年は出るとしても,そこから先はわからないのか,と思ってしまったんですね。
それじゃ買えないな,と。再来年以降は出さないよなんてぜんぜん言ってなかったんだけどね。
あの記事がぼくの運命を決めたかなぁ。
● 2つほど引用。
毎年「少しでも,よくしていこう」と思っています。大げさな言いかた方だけど,変わってないものって死んでいくんですよ。(糸井重里 p8)
日本の雑誌を見ると「これが英語で書かれていたら世界でどれだけたくさん売れるだろう」と思います。世界制覇できそうなほど完成されていますよね。(ソニア・パーク p10)
2012.09.27 田口和裕 『ブログのすべて』
書名 ブログのすべて
著者 田口和裕
発行所 ディー・アート
発行年月日 2006.05.10
価格(税別) 1,800円
● ブログの技術的な仕組みや使われ方など,ブログについて解説したブログ概論。図解をふんだんに盛りこみ,文章も平明でわかりやすい。初心者向けでしょうね。それでも,ぼくの頭では理解できないところがいくつもあったけど。
● ブログが普通に認知された頃に出版された本だから,すでに古くなったというか,今では実態にそぐわなくなっている部分があるのは仕方がない。
この手の本は本当に寿命が短い。すでに書店には置かれていないだろう。
● そうではあっても,多少は頭を整理することができた。多少だったのは本書のせいではなく,ぼくの頭の性能のゆえである。
2012年9月26日水曜日
2012.09.17 ロンダ・バーン 『ザ・パワー』
書名 ザ・パワー
著者 ロンダ・バーン
訳者 山川紘矢・山川亜希子・佐野美代子
発行所 角川書店
発行年月日 2011.04.30
価格(税別) 1,800円
● ご存じ『ザ・シークレット』の続編。『ザ・シークレット』は「引き寄せの法則」を説いた。今回のテーマは「愛の力」。
● たとえば,次のような文章ですね。
あなたが愛し,欲しいと思うポジティブなものを想像する時,愛の力を使っています。何かポジティブなものや素晴らしいものを想像しそれに愛を感じれば,それを与えていることになります。するとそれを受け取るのです。それを想像し感じることができれば,それを受け取れるのです。(p96)
あなたが自分で想像できるものは全て,あなたの人生にすでに存在しているということです。存在しないことを想像することはできません。創造はすでに完了しています。全ての可能性が存在します。(中略)あなたが望み愛するものを目に見えない世界から目に見える世界にもたらすには,想像力と感情を通して欲しいものを愛するだけで良いのです。(p102)
誰か他人の持ち物について良い気分を抱くと,それは自分にももたらされます。他人の成功や幸せや良いことを喜ぶことができれば,人生のカタログからそれらを選んだことになり,間もなくあなたはそれを自分に引き寄せます。(p135)● アメリカの「成功哲学」の要諦は,強く念じよ,さすれば叶う,というものだと思うんだけど,ロンダ・バーンの本もその流れに連なるものですかねぇ。
上に引用した文章が説くところを,そんなこたぁねぇよと一蹴することは,ぼくにはできない。けれども,実際にそれを実行したらこんなに豊かになりましたとか,こんなに幸せになりましたっていう人が,ぼくの回りには(たぶん,あなたの回りにも)一人もいないんだよね。
● この本を読むと,いっとき安心できるっていうか,自分にはまだ使える力があるんだと思えるんだね。しかし,読む前と何も変わりはしない,と。
だからこそ,この種の本が手を変え品を変えて,次から次へと出版される。同じ人が何度も買うんでしょうね。もし本当に変われるんだったら,世の中,豊かで幸せな人で溢れかえってて,この種の本の読者はいなくなるはずだものね。
● 英会話学校で初級コースがいつでも最大ボリュームだってのと同じ。中級以上に進む人が少ないからそうなる。何度も初級コースに入り直している人もいるに違いない。
これは何を意味するか。英会話学校に通っても,英語で会話できるようにはならないよってこと。
● たぶんそういうことなんだと思うんです。それでも,いっときの安心を買えれば,1,800円なんて安いものだ。そのためにこの種の本を使うのは,王道的な行き方だ。存在するものには理由がある。本もまた同じ。理由があって存在している。
2012.09.23 石原壮一郎 『大人の超ネットマナー講座』
書名 大人の超ネットマナー講座
著者 石原壮一郎
発行所 ダイヤモンド社
発行年月日 2010.12.09
価格(税別) 1,100円
● ネットに発信する方法が多様化した。この本は,ツイッター,ブログ,mixi,メールを取りあげ,書くときのマナーやはまっている人への接し方を説いたもの。
ただし,正面切って能書きをたれるんじゃなくて,舞台袖からそっと顔をだし,笑いをかぶせたうえで,ここがツボですよと客席に差しだす。
要するに,知的な装いをまとっているわけで,それあればこそ,面白い読みものになっているんですね。
● そうだよなぁと肯かされることばかりだ。ここで説かれていることは,リアルの人間関係でももちろん通用する。著者は頭のいい苦労人なのでしょう。
● 123ページから132ページは,他とはトーンが異なる。自身のブログが炎上したことを例にあげて話しているからで,あ,この人でもそんな経験をしているのか,と思うことが,こちら側にとっては慰めになるっていうかね。
あるいは,他の部分の説得力を高めるっていうか。
● ぼくもこんな具合にブログをたれ流しているので,ブログについての著者の教えは拳々服膺しなきゃと思った。
たとえば,「世の中のほとんどのブログは,書いている本人以外にとっては,たいした存在感は持っていません」(p90)なんてのは,やっぱり言ってもらう必要がある。
ブログと無縁でいたときには自明の理だったものが,自分がブログを書きだすと見えなくなってしまうってことがあるから。
● 「ここ数年で社会人になった方たちには信じられないとは思いますが,20世紀のメールマナーでは「メールのタイトルを変えずに頭に「Re:」がついたまま出すのは失礼」というのが常識でした。せっかく「○○の件です」というわかりやすいタイトルがついているのに,わざわざ「ありがとうございます」といった曖昧なタイトルに変えてしまうのが「気が利いている配慮」とされていたのです」(p138)
そうだったのかぁ,初めて知ったよ。「20世紀のメールマナー」がまだ生きているのかと思っていた。救いなのは,ぼくは交友関係がないに等しいくらいに少ないので,そもそもメールのやりとりってあまりしていないのと,仕事でのメールではマナーもくそもあるかいというわけで,遠慮なく「Re:」でやっていたってこと。
しかし,こんなことも知らなかったんだなぁ,オレ。
● というわけで,蒙を啓いてもらったところもあって,読んでよかったと思える1冊でした。
2012.09.22 櫻井 寛 『ぞっこん鉄道今昔 昭和の鉄道撮影地への旅』
書名 ぞっこん鉄道今昔 昭和の鉄道撮影地への旅
著者 櫻井 寛
発行所 朝日新聞出版
発行年月日 2012.08.30
価格(税別) 2,300円
● 「中学生から高校,大学時代に撮影した思い出の地を再訪問する旅紀行」(あとがき)。30年も前のモノクロ写真と現在のカラー写真,同じ場所で同じ構図で撮影した2枚の写真を同時に見ることができる。
時代を考証する貴重な資料にもなっているわけでしょう。だから,本にする値打ちもある。
● その頃から鉄道写真を撮る趣味があって,それを貫いてきたってすごいなぁと思ってしまう。それだけでとんでもない才能だよね。
自分はそういうのがないまま,いたずらに年齢だけ重ねてしまった。だから,一層そう思うんだけどね。何だか,自分のダメさかげんを思い知らされる感じだね。でも,ほとんどの人は同じようなものだよね,ね。
● ただね,こういうことはあるなと思う。つまりですね,著者が育った家庭って中流なんですよ。アッパーミドルっていうか。
当時は,農林漁業が産業の中心だった時代で,都市部のサラリーマン家庭と地方の農家の生活水準には相当な格差があった。サラリーマンって今でこそ大衆の代名詞だけど,当時は自分もああなりたいっていう憧れの対象だったんですよ。
著者は両親とも国鉄に勤めていたっていう家庭で育っているから,いわばお金持ちのお坊ちゃんなんですよ。だからこそ,中学生のときからカメラを与えられて,国内のそちこちに撮影に行くこともできたんでしょうね。貧乏旅だと言いながらでもね。
● ちなみに,ぼくは田舎の農家育ちなんだけど,ぼくの中学の同級生の女子で,ピアノを習っていたなんて子はひとりもいなかったと思う。そんな時代でしたよ。
カメラにしたって,ぼくが初めてカメラを買ってもらったのは中学3年のとき。それも,玩具に毛が生えた程度のもの。それでもカメラを持って修学旅行に行けたのは少数派だったな。
● 写真だからネガも残っているわけで,すごい財産ですよ,それって。日記を残している人はいるのかもしれないけれど,文章だと読む手間がいる。写真は瞬時に訴えかけ,同時に訴えが完了する。
● この本は,著者が若かりし頃を回想する青春記としても読める。そういうものとして読んでも,読みごたえがある。っていうか,楽しんで読める。
● 「そのとき,爆音が耳をつんざく。暴走族ではない。もちろん列車でもない。爆音の正体はジェット機,それも米軍の戦闘機だった。その瞬間,40年前の暑い夏の日の記憶がありありとよみがえった。蒸気機関車の雄姿もさることながら,頭上には軍用機が飛び交っていた。それは横田基地からベトナムへと出撃するB52戦略爆撃機だった。当時は反戦運動も盛んだったが,私は蒸気機関車にうつつを抜かしていた」(p81)
これは八高線沿線の金子坂での文章なんだけど,いいでしょ,「私は蒸気機関車にうつつを抜かしていた」って。こういう人って信用するに足る。声高に平和や反戦を叫んでいる人なんかより,ずっと。
● この本は「アヒヒカメラ」の2006年1月号から2010年12月号までの60回の連載をまとめたものだが,地域別に北から南に並べている。連載順のままにした方がよかったかもしれないと,チラッと思った。
● ちなみに申しあげれば,ぼくもその昔,JR線全線完乗というのを目指したことがある。宮脇俊三さんの本に感化されたから。影響を受けやすいタチなんです。
北海道と四国,九州はすべての路線に乗った。が,本州は7割くらいで頓挫したままになっている。ひたすら乗るだけってのを続けたわけなんだけど,どうもそれだけでは面白くなかったんでしょうね。根っからの鉄ちゃんではなかったんだろうな。
2012.09.21 本田 健 『お金の話をやさしく伝える本』
書名 お金の話をやさしく伝える本
著者 本田 健
発行所 PHP
発行年月日 2010.03,04
価格(税別) 1,200円
● お金の話となっているけれども,人生全般にわたる人生論ですね。2部構成になっているが,第2部は第1部の繰り返し。
● なので,第2部は途中で読むのがイヤになり,飛ばし読みになった。この本に最後までていねいに付き合えた人は,自らの忍耐力を誇ってよい人だと思った。
2012年9月23日日曜日
2012.09.22 たくきよしみつ 『デジカメに1000万画素はいらない』
書名 デジカメに1000万画素はいらない
著者 たくきよしみつ
発行所 講談社現代新書
発行年月日 2008.10.20
価格(税別) 940円
● そのものズバリのタイトルが,著者の言いたいことを尽くしている。つまり,「他の性能が同じなら,画素数が少ないモデルを選びましょう。画素数の多さは,今やメリットではなく,確実にデメリットだから」(p39)ということ。
ぼくも画素数が増えるのは進歩だと単純に思っていた方だから,目からウロコ。実際に撮影した写真を掲載して,その理由を説かれると,なるほどと思うしかない。
最近ではケータイのカメラも1000万画素を超えるようになっているけど,こんなのはモッテノホカってことになるのでしょうねぇ。
● デジカメは銀塩とは別物であることを強調する。いくら撮ってもタダなんだから,がんがん撮れ,と。「ガバガバいっぱい撮る,撮った写真はサクッと直す」(p189)という「ガバサク流」を提唱。
なお,直しはもちろんパソコンで。その際に使うソフトは「Irfan View」(フリーソフト)が著者のお薦め。
● 後半は技術的な指南。その前に写真は楽しいものだよという扇動?も。
まずは,「写真を楽しむという意識」を持つこと。「写真の目を持つことで,普通の風景が変わって見えてきます」(p99)というわけだ。
● 「食べ物の写真を撮るときにも,ホワイトバランスを「曇り」に設定してみるとおいしそうに撮れます」(p75)というような役に立つティプスがたくさん出てくる(知ってる人はとっくに知ってるんだろうけど)。
少なくとも初心者には具体的に助けになる本なのじゃないでしょうか。
● と,多少,他人事のように書いているのは,ぼくがデジカメをあまり使わないからなんです。スマホのカメラで充分だと思ってる方なんですよ。
というわけですから,「写真を楽しむという意識」を持たない人でも,それなりに楽しめる内容になっている本だと思いましたね。
2012.09.20 たくきよしみつ 『大人のための新オーディオ鑑賞術』
書名 大人のための新オーディオ鑑賞術
著者 たくきよしみつ
発行所 講談社ブルーバックス
発行年月日 2009.06.20
価格(税別) 780円
● 「音楽のデータ管理はデジタルで行い,再生は思いきり贅沢なアナログで楽しむ」(p146)ことを説いた本。著者によれば,「録音や演奏の現場にデジタル技術が導入され,音楽の世界は激変しましたが,その変化は音楽シーンを豊かにさせるより,むしろ貧相にさせる方向に向かった」(p81)とのことで,その辺も本書を書いた動機のひとつなのかもしれない。
● 音楽ファイルのファイル形式の多さに絡めて,メーカーの顧客囲い込みに関する批判も展開されるが,ここで愚者の代表として紹介されているのがSONY。
アップルのiPodに先んじてフラッシュメモリ搭載のWALKMANを出していたのに,MP3に対応する姿勢を見せなかったために,消費者に受け容れられなかった,と。
とすれば,愚かだったのは,現場ではなく経営ってことだね。顧客を自分の方に囲い込もうっていう発想は,覇権主義だもんね。自分が顧客の方に行かなきゃねぇ。
でも,これで行けると思ったんでしょうねぇ。囲い込めるだけの魅力を備えた製品だとね。
● 著者はロスレス圧縮形式のFLACを推奨している。リッピングも再生もFLACに対応しているソフトを使った方がいいですよ,と。
● ちなみに,ぼくはiTunesをデフォルトのまま使っている。大きく困っているわけじゃないから,それでいいやと思ってるんですよ。
というのも,ぼくの音楽を聴くスタイルはスマートフォン+イヤホンだからね。もしくは,ノートパソコンに安いスピーカーをつなぐだけだからね。
3月までは車通勤だったので,運転中にカーオーディオ(ナビのハードディスクにCDをコピー)で聴いていた。そのカーオーディオが,ぼくの音楽環境の中ではダントツでまともなものだから。
要するに,おおもとが貧しいわけでね。持たざる者は強いよ。
● アンプやスピーカーはどこまで行ってもアナログなもの。そうしたアナログ機器に関しては,「贅沢なオーディオライフを楽しむなら,ヤフオクで中古を探すに限ります」(p165)と著者は言っている。
● その他,豆知識も得られる。iPodユーザーは,聴いている楽曲のほとんどをCDからリッピングしてて,iTunesストアからの購入はわずかしかないってことも,初めて知った。
というようなことを含めて,本書は読みものとしても面白く読める。ぼくはもっぱら読みものとして楽しんだ。知識を得て,それを自分の生活に取り入れようというんじゃなく。
読みものとして面白いのは,著者の「オーディオ鑑賞術」に元手がかかっているからだろう。金銭も時間もたっぷり注ぎ込んできたのだろう。
2012/09.17 藤森香衣 『女性のためのブログ講座』
書名 メールしかできない人でもわかる!女性のためのブログ講座
著者 藤森香衣
発行所 高陵社書店
発行年月日 2007.04.20
価格(税別) 1,200円
● 5年前の発行だから,この世界ではだいぶ昔の本ってことになるんでしょうね。
● 「第4章 ブログで気をつけること」で,肖像権・パブリシティ権・著作権を侵害しないようにとの注意が展開され,ここだけトーンが違う感じ。ちなみに著者はタレント・モデルと紹介されている。
● 巻末にtanakake20さんとの「ブロガー対談」が収録されている。第4章とここだけ読めばいいんじゃないか。ゆっくり読んでも10分ですむ。
● その巻末対談の最後は,「最初はわからないことがあっても,後々わかってくるから大丈夫。とりあえず始めてみるのがいいと思います」というアドバイスで終わる。
これって,ブログに限らず万事に通用する格言?で,実際,このアドバイスは世間のそちこちで頻繁に発せられているんだろう。
でも,ちょっと違和感があるっていうかね。何の情報も付け加えていないよなって思うね,文字で読んでしまうとね。
2012年9月21日金曜日
2012.09.15 日経BP社出版局編 『Twitterの衝撃』
書名 Twitterの衝撃
編者 日経BP社出版局
発行所 日経BP社
発行年月日 2009.11.09
価格(税別) 1,400円
● Twitterって,やる人はもうやっていて,今やっていない人はずっとやらない人なのじゃないか。そうでもないのか。ぼくはやらない側に属している。
が,そもそもTwitterとは何ものなのか。よくわからない。140字とか「つぶやく」とかいうけれど,Twitterで何がどう変わるの?
● というわけで,本書を読んでみた。
複数人の分担執筆。ぼくには林信行氏の「第2章 Twitter×iPhoneが切り開く新情報時代」と,津田大介氏の「第4章 プロと素人の差を縮める属人的メディアの誕生」が面白かった。
● 140字以内という字数の制限がかえって創造性を高めるというのは,なるほどそういうことはあるだろうなと思える。
敷居が低い。気軽に書ける(つぶやける)。それが投稿の量を増やし,量が質に転化するということもあるのかもしれない。
● 本書ではTwitterの光の部分を俎上に乗せているが,もちろん,影もあるわけだろう。
● Twitterって何なのか,自分に必要または有用なものなのか。結局,わからなかった。っていうか,自分でやってみなきゃわからないよね。解説書をいくら読んだってダメ。
では試しにやってみるかって気になったかというと,ならなかった。自分がTwitterに手を出すことはまずないだろうとわかっているから,安心して解説書を読んでお茶をにごせるのかもな。
2012.09.14 樺沢紫苑 『SNSの超プロが教えるソーシャルメディア文章術』
書名 SNSの超プロが教えるソーシャルメディア文章術
著者 樺沢紫苑
発行所 サンマーク出版
発行年月日 2012.04.10
価格(税別) 1,500円
● Twitter,Facebookなどに投稿する文章をどう書けばいいかについての解説書。平明な文章でソーシャルメディア文章術を解説している。
「共感ライティング」「交流ライティング」「伝わるライティング」「スピード・ライティング」という章立てのタイトルが,内容をよく現している。
● さらに,「永久にネタ切れしないネタ収集術」を加え,痒いところに手が届く。最後に「ソーシャルメディアのマナー」を加えて,著者がいうように「書くための教科書」「コミュニケーションの教科書」として,相当以上に役立ちそう。
痒いところに手が届くような内容を盛りこむためにはどうすればいいか。それも本書で説かれている。
● 細かいティプスも盛りだくさん。
パソコンの画面で書くと,どうしても誤字脱字が発生しがちだけれども,それを防ぐために,まずWordで書いて,Wordの校正機能を利用せよという。言われてみれば何でもないことなんだけど,言われて初めて気づくっていうか,意外に盲点に入りやすいところを指摘してくれている。
● ソーシャルメディアのマナーはリアル社会でのマナーと同じ。きちんとした社会人,大人であることが,共感や交流や伝達をスムーズにするための必要条件であるという指摘も,素直に納得できる。
● 本書のような文章術の解説書であれ,ビジネス書であれ,読みものとして面白くなければ,読むに値しないとぼくは思っているんだけれど,本書は読みものとしても面白く読める。
「文章読本」としても相当な水準にある。TwitterもFacebookもやっていないという人でも,読んでおいて損はないと思いました。
● っていうか,ぼくもTwitterもFacebookもやっていないけれど,ブログでの発信をもっともっと増やしたいなぁと思わせられた。で,このブログを始めたわけね。
ソーシャルメディアの可能性や素晴らしさと表現の楽しさを熱く説き,その気にさせる本。
● ホームページ,ブログ,SNS,Twitterと,ネット上の表現表出の方法がどんどん多様化してきた。話すことによる対面コミュニケーションに対して,書くことによる遠隔者とのコミュニケーションの比率が増えたことは間違いないのだろう。ぼくのような者までがブログを書くようになっているのだから。
自分もその方向に漕ぎだしてみようかと,この本を読むと思うかもしれない。
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