著者 後藤直義
森川 潤
発行所 文藝春秋
発行年月日 2013.07.15
価格(税別) 1,300円
● アップルによって脅威にさらされている日本企業の窮状というか惨状を紹介するもの。
が,アップルは別にあくどいことをしているわけではない。企業として当然の闘い方で闘っているだけだ。
そこから先は力関係で決まる。あるいは経営判断の良否が帰趨を決する。本書で紹介されているシャープやソニーの個々の経営者が愚であったかどうかは知らないけれども(そんなことはなかったのだろうと思うが),経営は結果責任を問われる。あたりまえのことだけど。
● 結果,淘汰されるべきものは淘汰される。そこを無理に(たとえば国が介入して)残すなどということをしてはいけないと思っている。
アベノミクスの円安効果で,ソニーもシャープもひと息つけたけれども,さて,この先どうなるか。
● 本書の最終章は,アップルの繁栄は永遠かというタイトルになっているけれども,これを文字通りに受けとめれば,永遠のはずがないという解答しかあり得ないものだろう。アップルはすでに峠を越えたとぼくは思っているが,著者たちも同様に考えているようだ。
ちなみにいえば,日本の家電メーカーが束になってかかっても歯が立たない,韓国のサムスンにしたって,その賞味期間はいいところあと5年だろう。何の根拠もないあて推量に過ぎないけれども。
● アップル社員の働きぶりの凄さを次のように言う。
看板商品の新製品ともなれば,アップルの幹部クラスの人間まで生産現場を視察する。その日の生産ノルマが終わらず「深夜1時をすぎても幹部が待っているときには,もう,気が気じゃなかった」と,別の取引先の担当者は振り返った。 生身のアップルを垣間見た日本人たちは,そのすさまじい仕事ぶりに圧倒されながらも,「アップルがここまで成長できたのは当たり前のことだ」と納得もする。(p65)
アップルは取引先だけではなく,自社の社員にも極めて厳しいということが挙げられる。 「付き合いはじめて7年くらいたつが,アップルの社員の名刺は数百枚も持っている」と,アップルとの交渉担当者が話すほど,人の入れ替わりが頻繁なのだ。一方で結果を残す人にとっては,それに報いる仕組みがある。(p65)これが本当ならば(本当なんだろうけど),アップルもそんなに長くないことは明らかだ。ここまで厳しい働き方に耐えられるスーパーマンが無尽蔵にいるわけはないからだ。アップルという環境がそうした人を作るという側面を考慮しても,なお,人材供給は先細りだろう。
● ちなみに,ぼく一個はパソコンにもスマートフォンにも格別のこだわりは持っていないけれども,唯一,アップル製品は使わないことにしている。これまでアップル製品のユーザーになったことは一度もないし,これからもないだろう。
これといった理由があってそうしているわけではない。ただ何となく,なんだけどね。
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