著者 坂本 達
発行所 三起商行
発行年月日 2001.01.30
価格(税別) 1,700円
● だいぶ前に出た本。数年前にヤフオクで買っておいた。
● 「4年3カ月も有給休暇をもらって 世界一周5万5000キロを 自転車で走ってきちゃった男」が副題。そんな休暇を認めた会社はmikihouse。
でも,誰でもそんなことを認められるわけじゃないんでしょ。坂本さんにそれを認めさせるだけの働きがあったんでしょうね。
● 自転車で世界一周し,それを本にしたものはけっこうある。その書き手としては,石田ゆうすけさんが第一人者だと思っているけれども,本書も面白い。
こういうことをやるのは若い人だし,その体験じたいに希少性があるんだから,普通に書いても面白くなるはずだ。
● ただひたすら走るというところに行ってしまうと,平板になってしまうかもしれない。しかし,そこは移動手段が自転車。どうしたって途中でハプニングが起こる。現地の人たちとの交流が生まれる。
それをそのまま書けば,それだけで面白くなるものだろう。
● とはいっても,現地の人たちとの交流といっても,それができない性格だとしょうがない。過剰に防衛や警戒に走ってしまい,騙されまい,損すまい,っていうのが勝ちすぎるとつまらなくなる。そういう人は自転車で世界一周しようなどとは考えないものかもしれないけれど。
坂本さんのそのへんの闊達さが魅力的だ。人懐こさというか。
● 7歳から11歳までパリに住んだ経験を持つ。大学生のときに1年間のアメリカ留学も経験している。英語とフランス語は堪能だ。中学で自転車のロードレースを始めた。父親が勤務する商社の世界中の支点を連絡拠点として手配してくれた。
というわけだから,自転車世界一周界(?)においてはサラブレッドかもしれない。が,そうしたことは些事に属するだろう。自転車のペダルをこぐというのはあくまで個の行為だし,刻々と変わる状況の変化に対応するのも徹底的に個の行為のはずだから。
● あとがきからいくつか転載。嘘はないと思う。
どんなに強力に思えるコネやテクニックよりも,人の心から出た叫びや個性といった純粋でストレートなもののほうが,いつも結果的に説得力があり勝っていた。未開の村で受け入れられるためには,うわべの笑顔やお金よりも「気持ち」のほうが大切だった。そうして自分を信じる大切さを学んだ。さらに,弱点を弱点と思わずに,個性と考えればいいことも学んだ。(p229)
学んだことは「感謝」であり,できないことをするのではなく,できることを見つけ,それを精いっぱいするというシンプルなことだった。(p232)
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