● はるかな昔,サントリーが『洋酒天国』を発行していた。こちらの現物は残念ながら見たことがないのだけれども,『洋酒天国』の連載からいくつもの単行本が生まれている。
ことがらの性質上,それと比較するのは妥当ではないと思われるものの,ユニクロはファッションという文化に資する(あるいは,資したいと考えている)企業だと訴えたい,との意図は達成されていると思う。
● ユニクロはファッションをこう考えるというのも伝わってくる。冒頭に登場する「服に個性があるのではなく,着る人に個性がある」という文章に集約される。
このことは,フリースがブレイクした頃にすでに柳井社長が言われていたことで,ここにブレはないように思われる。言葉だけではなく,商品にも。
● 企業哲学のようなものも示される。ユニクロの基本姿勢のようなもの。
ユニクロの革新には限界も例外もない。すべてのアウターウェアは,常に改良の余地があり,ディテールにこだわり続ける価値があり,生地の研究開発が実現しうる希望がある。(p81)● たぶん世の中のお洒落さんには常識になっていることかもしれないけど,ジーンズについて蒙を啓かれた。次のようなところだ。
デニムジーンズの発祥の地はアメリカだが,日本で独自の発展を遂げた。特にここ数十年間においては,日本のデニムジーンズは,一つの文化としてその地位を築くこととなった。世界中のほとんどのデニムジーンズ工場が大量生産に応じた織機へ以降する中,日本の工場はその耐久性と高い品質にこだわり,シャトル織機を使い続けた。そのこだわりこそが今日,日本のデニムが世界でも一目置かれる存在となった理由である。(p32)ぼくはジーンズはおろか,デニム地のものは生まれてこの方,一度も身にまとったことがないんだけれども,そういうことなら一度は着てみようじゃないかと思った。
● ユニクロといえばヒートテック。その仕組みを簡単に説明してある。
レーヨンが,身体から発散される水分を吸着。水の分子には気体になると空気中を動き回る性質があり,繊維にキャッチされても動こうとする水分子の運動エネルギーが,熱エネルギーに変換されて発熱する。その発熱で温められた空気が,マイクロアクリルの持つ断熱性の高い空気層によって糸の内部にとどめられ,保温性が確保される(p45)糸の断面図が添えられているので,それを参照しながら読むと,わかったような気になる。本当にわかったかどうかは別だけれど。
● このコマーシャルブックは,顧客よりもむしろ社員に向けて発刊されたのではないか。
店頭で無料で顧客に配っているのはいうならオマケであって,まず社員に向けて,あなたが勤める企業は何をどうしたいと考えていて,今までどうしてきたのか,これからどうしたいと考えているのか,それをこの本で理解してほしい。会社の実績もわかりやすく載せているから,できうれば,誇りと愛着を抱いて欲しい。
そういうことなのではないかと思えた。
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