発行所 ショパン
発行年月日 1999.10.15
価格(税別) 1,000円
● フジ子さんが世に知られる契機になった,NHKのドキュメント番組「ETV特集:フジコ あるピアニストの軌跡」が放送されたのは1999年2月11日。
その後まもなく出版されたのが本書。
● ということもあってか,内容はフジ子礼賛で埋まっている。たとえば,次のごとくだ。
ぼくの好きなバレリーナ,イヴリン・ハートは,「私は音と音の透き間の音を聴きながら踊るの」と語った。ぼくもまた詩を書くとき,紙に記す言葉より,言葉と言葉の透き間の行間の方を大切にする。まして,偉大な作曲家たちこそ,「鳴ってない音」の方を大切にしていたのではないかと疑う。不思議なことにフジ子さんのピアノを聴くと,その音と音の透き間の音が聴こえるのだ。(松本隆 p14)
一般的に,リスト演奏では華麗な超絶技巧を前面に押し出したスタイルが多い中,彼女の演奏は虹のような多彩な音色で,極めて表情豊かにしかも格調高く,全ての音に因果関係を感じさせる。(中略)このようなマエストロだけが到達できる境地の演奏の中では技術的なミスは全く気にならない。(藤井身理 p20)● 今でも同じ感想を持ちますかと訊ねてみたいという,意地悪な感想もきざすんだけど,錚々たる人たちが,フジ子さんのピアノを絶賛している。
以後,18年間。現在まで彼女の人気は衰えない。つまり,聴衆を惹きつけ続けている。
ぼくも二度ほど彼女のピアノを生で聴いている。正直なところ,ぼくの耳は馬の耳,では測りかねる。
● フジ子さんの発言からひとつだけ転載。
私は,私のことをやりたい。本も読みたいし,掃除もしたい。座ってものを考えるのも好き。もちろん演奏会ではいつも最高のものを弾かなきゃいけないから,乗り切るのは大変ですよ。でもいろいろなことをやったほうが,ピアノもうまくなるんじゃない?(p42)
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