2019年3月29日金曜日

2019.03.29 櫻井秀勲 『35歳からの「愚直論」。』

書名 35歳からの「愚直論」。
著者 櫻井秀勲
発行所 ナナ・コーポレート・コミュニケーション
発行年月日 2009.10.20
価格(税別) 1,200円

● “愚直に一つ事を”と説いている。堀江貴文さんに代表される,ネットやITで時間を短縮せよという教え(?)とは真逆。
 時代を遡ったかのようなアドバイスだけれども,これは時代を問わず大切なことなのかもしれない。ネットやITを活用しつつも,“飽き”を超えて一つ事を継続していくこと。

● ただし,本書が出された2009年は不況の時代で,若者の就職難,リストラに怯えるサラリーマン,というのが,時代を象徴していた頃だ。
 今はそうではない。人手不足で労働市場は売手が強い。単純業務はやる人がいなくなって,各国で外国人の奪い合いになっている。
 若者人口は減少を続けるのだから,売手市場は半永久的に続くだろう。そうした時代基調の変化は踏まえておいた方がいいかもしれない。

● 以下に転載。
 日本三筆の一人良寛は江戸時代,紙が高くて買えなかったため,「空中習字」という方法で,みごとな署の大家になっています。筆をもって,空中に文字を書くというシンプルな方法ですが,じつは私もこの方法で,小学校時代から毛筆文字を学びました。(p6)
 政府や経営者を責めたからといって,突然,いいことが起こることはないのです。非常にきびしくいえば「他人のせい」にしている人は脱落していくだけです。(中略)これらの理由で辞めたひおとんどの人は,辞めぐせや批判,非難ぐせがついてしまい,社会を斜めから見るようになってしまいます。(p17)
  私は幸運にも,20代の編集者時代に作家の松本清張先生と親しくなり,「もし櫻井君が作家になることがあれば,一日13時間,机の前に座りなさい」というアドバイスを受けました。(p27)
 「アマはプロになれない。プロは最初からプロである」という言葉があります。それはプロになるのであれば,できるだけ早くにその道に邁進しろ,という意味です。(中略)戦争を指揮する司令官で,召集された人間はいません。世界中の指揮官は全員,士官学校,陸(海)軍大学出身といわれます。これは骨の髄から軍人として叩き上げられないと,殺し合いはできない,ということを意味しています。(p32)
 あるプロ野球の元監督は,こう言っています。「ボールスリーから打たないで四球を選ぶような選手は,一人前になれない」 (中略)それは失敗を怖がってしまし,失敗の教訓を学びとろうとしないからです。(p47)
 活力源ともいえる「欲」だけは,絶対手離したくないものです。ここでその欲を一層確実にするには,どうすればいいでしょうか? それは一欲にしぼることです。マラソンでいえば,タイムは捨てても,ゴールまで走り抜く,という欲だけはもちつづけることです。(p51)
 いまの時代は成功を追い求める人ばかりで,下流階層にはなんの興味もない,といってもいいかもしれません。(p58)
 ただ愚直に歩いて行きさえすれば,いつの間にか,才気のある男たちより先に立っていることも,けっして夢ではないのです。(p60)
 その部署の「当たり前の空気」を乱しては,周りに迷惑をかけることになるのです。そんな場合は声の出し方一つでも,大きからず小さからず,並にしてみるのです。これをしっかり覚えておかないと「自分では一生懸命やって,結果を出したのに」と思っていながら,いつの間にか不用の人間にされてしまいます。(p66)
 私の事務所は,JR山手線高田馬場駅の近くにありますが,ここは早稲田大学の本拠地だけに,若者の天国です。そして駅周辺には,未来を夢見るミュージシャンの卵が,毎晩出ています。ところが残念なことに,長い人でも数カ月でいなくなってしまうのです。(中略)愚直さが足りない,と結局私は思うのです。(p70)
 ここであなたが恐れなければならないのは,自分の「顔」です。他人から見ると,あなたの顔は,どう映っているのでしょうか? まだ子どもっぽさが残っていませんか? なんとなく軽く見られる顔ではありませんか?(p80)
 女性にモテるかモテないか,またモテるとしたら,どういう理由で女性が寄ってくるのか-ここは,とても重要な点です。もし,あなたがまだ「甘い顔」だったとしたら,今日からふんどしを締め直さなければなりません。金はなくとも,顔で稼げるほどの,不敵な面構えはとても重要です。そして,この面構えこそ「愚直な生き方」によって,つくられていくものということを知らなければなりません。(p82)
 たとえば,パチンコをやっていても,負けた場合の限度額を決めて,それを愚直に守り通せる人は,必ず人生の成功者になれます。(p88)
 テレビゲームのように,自分一人だけの完結した趣味は,社会的広がりがないだけに,トクかソンかといえば,結局大ゾンです。酒の趣味は,大きく捉えれば,たいへんなトクです。この世の中で,友だちを広げる最有力の武器だからです。(p90)
 サービス精神もない,会話もできない,押しも強くないコンプレックスだらけの人が,最初に広い門から社会,つまり会社に入ってしまうと,あっという間につまずいて,そのあと立ち直れなくなってしまいます。こういうタイプの人は,対人関係ビジネスは不得意なので,できるだけ小さな企業,少人数のビジネス,細々と続いている業種,あるいは現在,裏通りで繁盛しているようなビジネスなどに,最初から飛び込むべきなのです。(p94)
 私自身が教わったビジネス論では,500人の支持者がいれば,一つのビジネスは成り立つということです。それこそ宗教は500人の信者がいたら,教祖は悠々自適です。絵描きは全国に500人のファンがいたら,会社組織が成り立つほどです。つまり,いまの社会では,500人の購買層を握っていたら,十分やっていけるのです。(p94)
 愛情だって,射精量が一番わかりやすい例だ,という人もいるくらいです。男の愛をたっぷり受ける女性は,受ける射精量もたっぷりなのです。(p96)
 運を貯えるには,金銭を貯えることと,暴飲暴食を慎むことのこの二点は絶対に欠かせません。さらに人に愛されることも,運の貯えとなります。(中略)相手も運も加えて,自分の総量がふえる計算になるのです。(中略)離婚でも,よほどの悪夫,悪妻でないかぎり,まずは我慢をした方がいい,といわれるのも,それをきっかけに運の総量が,いっぺんに減ってしまうからです。(p97)
 私が一番よく耳にする若い人の言葉に,「うちの会社ってダメだよなァ。あんな課長雇っているんだから」「なんでオレにいい仕事をまわさねえんだよ。くだらねえあんなAのやつに回しやがって」 こういったせりふがあります。しかし,こういったせりふを聞いた100人が100人,この言葉をいった男はまったく使いものにならない,という判断をするはずです。(p102)
 この思慮分別だけは,きっちり守らなければ,社会では誰も本気で付き合ってはくれなくなることでしょう。(中略)もっとわかりやすくいうと「思ったことを,そのまま口に出さないこと」などを愚直に守りつづけましょう。(p104)
 歴史は愚か者でなければ,変えることはできないということです。それもただの愚か者ではなく「大愚」とつくほどの人でないと,偉業というものは達成できないのでしょう。(中略)これらの人々に共通していることは,多くの現代人がしがみつきがちな「名誉」という欲望を完全に捨てている,という点です。(p110)
 現在でいえば,彼らの地位は不安定そのものです。龍馬はフリーランサーであり,沖田総司は警備会社の社員のようなものです。ソレでいながら、自分を低く見ているところなどひとつもありません。それどころか,何人もの一流の女性たちから慕われ,愛されています。これは私たちに,一つの生き方そのものを教えてくれています。(p123)
 黒崎編集長からは,もう一つ大切な愚直論を,きびしく叩き込まれました。それは「上の者が先に倦きてはいけない」というものでした。(中略)あるとき俳優の加山雄三もいっていましたが,彼の出世作『若大将シリーズ』も,最後の方では出演者が倦きて『青大将シリーズ』に変更する案すらあったそうです。しかし,監督や上層部が倦きなかったことが,結局はああいった成功につながったのです。「バカの一つ覚え」の実践ほど大切なものはないのです。(p125)
 人間は,ある年齢以上になったら,それほど自分がキレ者である必要はないのです。(中略)反対に考えれば,老年になっているのに,秀でた額で働く人は,人望がありません。(p132)
 私たちの仕事は,本当につまらないことばかりなのが現実です。(中略)それでも有能な人たちは,(中略)自分なりにその仕事を継続しているのです。じつはここが成功者と敗者の,決定的な違いといっていいでしょう。成功者とは,つまらない仕事でも,なにか考え方を変えて,真剣に取り組むことができる人たちをいいます。(p135)
 このところ,脳のテーマがブームですが,これも多くの人が最新技術に頼ったことで,脳が劣化してきた背景があるからこそのブームです。ここで二つの方法論が考えられます。その一つは,あなた自身が最新技術に頼らないことと,もう一つは,最新技術の真反対の仕事に注目することです。(p140)
 私たちは社会に出るとき,「何をやるか」は考えても「どういう気持でその仕事をやるか」は,考えません。(p142)
 もしあなたが定着した仕事をもっていないのなら,思いきってブログでもメルマガでもいいから,スタートすることをすすめます。ただし,最低でも一日,数回単位で更新することです。内容は問いません。もちろん文章のうまい下手など,考えないこと。要は「毎日やっているものがある」という愚直な生活習慣をつくり上げることにあります。(p146)
 「成功している人はここが違う」といわれると,つい,当たり前にことより,特別なことに重きを置きがちなのが私たちです。「情報が大切」といわれると,裏の情報や,アメリカ発の最新ビジネス情報などを手に入れないと,うまくいかないのではないか,と思ってしまうものですが,そんなものより「眼の前の一人の客のこと」を愚直に考えていることの方が,じつはよほど大切なのです。(p149)
 往々にして大勢が流れていく先は「間違いである!」と知っておくといいでしょう。いわゆる「(情報に)流される人々」の意見は考えは,役に立たないことが多いのです。(中略)なんによらず,「みんな,大勢,大声,大口」といった集団からは遠ざかるべきです。「大儲け,大繁盛,大成功,大騒ぎ」組からも逃げた方が正解です。むしろ少成功を期して,愚直を実践しましょう。(p151)
 高山に登る人は,異常にゆっくり歩きます。けっして急がないのが特徴です。さらに一時間歩いたら五分休憩,というように,けっしてペースを乱しません。まさに「踊り場理論」の実践ですが,これだと世界最高峰の登頂にも成功できるのです。(p158)
 人生に成功する人は,この喜怒哀楽の感情が非常に豊かです。そしてまた喜怒哀楽の豊かな人は,周囲からとても愛され,尊敬されます。それはなぜでしょうか? 喜怒哀楽の感情を,人のために用いるからです。(中略)仮にあなたが,現在,それほど幸せな位置にいなくても,この喜怒哀楽を感情を友人や知人のために発揮できれば,必ず将来,大成すると,私が太鼓判を押してもいいくらいです。特に喜怒楽は除いて,「哀」の感情を他人のために表せる人は,必ず愛と尊敬の両方を受けることになるでしょう。(p162)
 現在どういう境遇にあっても,「電車の中で絶対優先席に座らない」という若者なら,私は彼の将来を心配しません。そういう人間が伸びていくことは間違いないからです。反対に,いまどんなにいい位置にいても,他人の心の痛みに気づかない,電車の中で脚を伸ばしているような若者は,将来どこかで必ず転落するでしょう。(p164)
 小学館は業界第二位の出版企業ですが,先頃なくなった相賀徹夫オーナーは,「真似ることを恐れてはならない」と,講談社の方針を真似て,多くの雑誌で講談社を圧倒しています。これも,私に言わせればもっと「新鮮な企画を出せ」という,他の出版社をあざ笑っているような名言です。(p175)
 私は,全国の図書館に納める出版各社の単行本や全集の選書の仕事をしています。この仕事をしていてわかったのは,図書館から駆り出されるレベルの高い,小難しい本ほどページの半分しか汚れていないということです。つまり,そういった本は,読者から全ページ読まれていないのです。鋭い経営者ほど,こういった現実の傾向をちゃんと見抜いているのです。だから,本の内容の視座を低くするということは,全ページを読者に読みきっていただく出版人としての知恵でもあるのです。(p175)
 実際人間というものは,一日のほとんどを,泥臭い時間を過ごしているものなのです。ファッションビルや美術館,音楽会に行く時間など,あまりにも少ないのです。(中略)このように考えてみると,泥臭さを忘れて成功はない,と思っても間違いないはずです。(p177)
 もともと名前というのは「成る,為す,生る」という意味が込められているもので,もしその名を轟かせようとしなかったとしたら「名無し」となって,生きる甲斐さえなくなってしまいます。(p182)

0 件のコメント:

コメントを投稿