2019年3月30日土曜日

2019.03.30 弘兼憲史 『男子の作法』

書名 男子の作法
著者 弘兼憲史
発行所 SB新書
発行年月日 2017.01.15
価格(税別) 800円

● そんなことは知ってるよ,と言いたくなることが書かれている。いや,自分はそうは思わない,というところもあるかもしれないが。
 が,知っているのとできているのとは全くの別物。このとおりにできたら確かに人生の達人で,著者はたぶんやってきたのだろう。というわけで,静かな迫力がある。

● 以下に転載。
 世の中には自己啓発本が好きな人種というのがいる。(中略)そういう本に振り回されちゃいけない。(p5)
 高級店でもコストパフォーマンスが悪い店はダメだ。(p19)
 銀座の高級鮨店には,値段に見合った仕事がある。これはどの高級店にも通じることだが,秒を争うような温度管理がなされている。(p10)
 その日の一番いい食材を一番美味しい方法で食べたかったら,店がすすめる料理や作法に従ったほうがいい。(p25)
 パリなんかは内陸部だから,新鮮な素材が入ってこない時代はソースにこだわって勝負していた。(中略)今は内陸部でも新鮮な素材がどんどん入ってくるから,その必要がなくなって素材の味を引き出すようになったわけだ。(p25)
 ゆで時間が10秒過ぎると美味い料理も不味くなる。葉野菜なんかをゆでたりするときは,色がきれいな緑になった瞬間に火を止めなきゃいけない。10秒ずれたらもうおしまいだ。(p33)
 人生で最もストレスを抱える時期が,男性は40代,女性は20代というデータがある。(中略)そういう時期の女性にとって,同じく人生の転換期にある40代の男性はストレスを解消するのに最適な相手となる。(p55)
 そもそも人間はひとりでは生きていけない。だが,男はどこかに自分ひとりでやっていく心構えというものを持っていたほうがいい。起業する場合なんかでも,共同よりひとりでやったほうがいいと思う。(p61)
 他人の感情を読み取るのが苦手な男にとって,上下の関係がはっきりしている組織は楽な環境だ。それだけに会社という組織の中で長い間生きてきた男が,定年退職をして上下関係の介在しない社会に放り出されると,周囲の人たちとコミュニケーションが上手くとれうに孤立してしまうケースが多い。(p62)
 男は違う世界で生きてきた人間とは,簡単に打ち解けることができない傾向がある。(p64)
 編集者から,マーケティングリサーチの結果,こういう漫画を書いたらヒットが狙えると言われてもほとんど従ったことがない。自分が描きたいものを描いてダメだったらそれで仕方ない。(p69)
 漫画家になってからは,時間帯によっていろいろな客が集まるファミレスが人間観察の場となった。同じ空間なのに午前中には午前中の顔があって,夜はまた違う顔があるから面白い。(p72)
 人間観察で気を付けなければいけないのは,自分の経験値に頼らず分析することだ。(p73)
 年をとるということは,年輪を重ねて成長しているということだ。「僕はいつまでも若いだろ」などと自慢するようなヤツは,「いつまでも成長していない」と自分で白状しているようなもの。(p79)
 できないところを指摘するよりも,できるところを指摘して自信を持たせることが大事だ。(p82)
 同窓会は,ある程度の幸せ者同士が会って昔話をしたり,淡い恋心を復活させたいと思ってお洒落をして集まるような場所なのだから,引け目を感じる人間が参加しても場の雰囲気を壊して噂話のターゲットになるだけだ。(p109)
 遊びというのは,同じレベルで遊べる相手じゃないと共有できないものだ。(p110)
 おカネがないときでも,飯を抜いて映画館に行っていた。自宅で見たテレビの深夜番組を合わせれば,多い日は1日8本も映画をみたときがあった。ウィリアム・ワイラー監督の『ローマの休日』なんて40回以上みているが,あれもネタの宝庫さ。いろいろなところからたくさんアイデアをもらっている。(p136)
 大型液晶テレビが普及して,ブルーレイで見れば家にいながらとてもきれいな映像を楽しめるようになったが,映画はやはり映画館のスクリーンで見てこそ,制作者の意図が汲めるというものだ。(p136)
 配偶者だからといって,お互いのことを全部知っていなければいけないことなどない。自分のことを全部教える必要もないし,相手だって知りたくもないと思う。(p147)
 「あったら便利」「みんなと同じ」と追いかけるのはもうやめたほうがいい。(p151)
 そういう40代後半の男女で,僕の漫画を読んでいる人たちがもう一度やってみたいことは何かと考えてみたら,燃えるような恋じゃないかと思った。それで中高年のラブストーリーを描こうと思って誕生したのが『黄昏流星群』だった。(p161)
 人間は「思いつめないで生きる」ことが大事だと思っている。(p171)
 身体的には老化が始まっている40年代でも,脳はまだまだ活性化できる。しかし,感動するものがなくなると一気に脳も老化を始めてしまうという。そのまま10年経つと,もう感受性は戻らなくなるらしい。(中略)そういう感動は,待っていても巡り会えるものではない。追い求める気持ちがなければ,感動するものには出会えない。(p173)
 本来プライドというものは,あくまで内なる自分が持っているものであって,他人に誇示したり自慢したりするものではないと思っている。一流の職人は,「ここにこだわっています」「素材はこれしか使いません」なんてことを,ほとんど口にしない。ラーメン店でも,スープはこういう素材を使って,麺はここにこだわっています,なんてことを壁一面に掲げているところがあるが,あれはプライドではなくて能書きというものだ。そういう店で美味いところは,僕の経験上,少ない。(p176)

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