著者 中嶋茂夫
発行所 河出書房新社
発行年月日 2017.12.30
価格(税別) 1,500円
● 1泊2日で30万円とか40万円。カップルで乗ったら何やかやで100万円。いくらなんでもお金を捨てるようなものじゃないか,もっと賢い使い方があるだろう,と思っていた。
そうではないのだと教えてくれるのが本書。クルーズトレインにはそれだけの内実がある。しかし,と言われてもということはある。
● 以下にいくつか転載。
カシオペアは6回だが、トワイライトエクスプレスには58回も乗車した。理由は,展望室スイート以外のもっと他のところにある。それは「料理」。(中略)「トワイライトエクスプレスに乗る」というのは,私にとって「トワイライトエクスプレスというレストランへ行く」と同義語だった。(p28)
時代は,鉄道ファンが臨む寝台列車に「No!」を突きつける。(中略)「ななつ星が今後の寝台列車のスタンダードになる」と私は確信した。(p35)
トワイライトエクスプレスにはガチガチのマニュアルがあるわけではない。クルー一人ひとりがゲストに楽しんでもらうためにはどうしたらいいかを自ら考えて実践しているのが大きな魅力である。(中略)アマン東京やザ・リッツ・カールトン東京など,「ラグジュアリーホテル」と呼ばれる一流ホテルのサービスと比較すると、クルーズトレインのサービスの質は未熟かもしれない。しかし,「クルーのゲストに楽しんでもらいたいという気持ち」を十分に感じることができるので,サービスの細かい中身は気にならない。(p37)
クルーズトレインに乗車するには,お金よりも「抽選に当たる運」を持っているほうが重要である。(p41)
乗車しているゲストはフレンドリーな方が多い。積極的に話しかけてくる,好奇心旺盛な人たちだ。そんな人同士がひとつの列車に集まれば,盛り上がらないわけがない。(中略)私はクルーズトレインに乗車したら,就寝時を除いて室内にはほとんどいない。乗車時間の大半をラウンジカーで過ごしている。なぜなら,他のゲストやクルーとの会話が楽しめるからだ。(p44)
沿線のレストランや料亭での食事も魅力的だが,それは四季島に乗らなくても味わえる食事である。せっかく四季島に乗車したのだから,もっと車内で食事をしたいと思う。(p87)
ななつ星はリピート客だけでも十分成りたつビジネスモデルになっており,乗車するゲストが増えれば増えるほどリピートするゲストも増える仕組みになっている。(p176)
2017年9月27日から10月5日までの9日間,取材を兼ねてスイスの観光列車に乗る旅に出た。(中略)このツァーの料金は約80万円。ちょうどクルーズトレインの3泊4日コースの料金に相当する。日本に戻った後に考えてみた。もし手元に80万円の旅行費用があれば,私は「9日間スイスの旅」と「クルーズトレインの3泊4日の旅」のどちらを選ぶだろうかと。私なら迷わずクルーズトレインを選ぶだろうし,友人や知人にもそうすすめる。(p219)
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