2020年12月27日日曜日

2020.12.27 松浦弥太郎 『人生を豊かにしてくれる「お金」と「仕事」の育て方』

書名 人生を豊かにしてくれる「お金」と「仕事」の育て方
著者 松浦弥太郎
発行所 祥伝社
発行年月日 2020.03.10
価格(税別) 1,450円

● 本書と同じようなタイトルの本がいくつもある。それらいくつもの本と本書が異なるところは,かけている元手の違いだ。
 水増しは一切ない。仕事や生き方の心構えを説いている本なのではあるけれども,ギュッと中身が詰まっている。著者が実際にしてきた苦労(その多くは普通にしていたのでは体験できないもの)とそこから上がってきた教訓で満ちている。
 ゆっくりと読んでいくのが良いだろう。速く読めるのを自慢しているような輩は特に。文章は平易でサッサと読んでいけるものだが,そこをあえてブレーキをかけてゆっくりと。

● 以下に多すぎる転載。
 「体力のある者が勝つ」。ある日,僕のビジネスにおける師が教えてくれた言葉です。(中略)ここで言う体力とは,いわゆる身体的なものではありません。その本質は,知識という底力。人と人とのネットワークと信用,ガソリンとも言える,いくばくかのお金です。(p3)
 作物を育てる。人を育てる。人間関係を育てる。病気の治療や問題解決など,待つことが大切なことは,日常生活でもたくさんあります。ビジネスにおいても「待つ」ことの本質は,それと同じです。それらを待たずに急いだらどうなりますか? 間違いなく失敗するのです。例えば,一カ月で一〇キロ減量できる方法など,本来,一年かけてやるべきことを,待たずに得る成果には,必ず大きなリスクがあり,決して健全ではありません。ですから,「待つ」ということは,あらゆることの基本中の基本。大切な姿勢です。(p5)
 お金の動きが泊まっている時は,何も起きていないということですから,いいことではありません。物事が順調にいっている時には,お金が動いているのです。(p17)
 編集長時代に,人は嫌なことを忘れさせてくれるものにお金を使うのだ,と気がついて,雑誌作りに生かしました。嫌なことを忘れさせてくれるものを作る仕事とは,「困っている人を助けること」です。(p33)
 利益の本質,それは「感動」です。利益とは,感動する人の数に比例するもので,利益が多いということは,それだけたくさんの人に感動を届けたということ(中略)答えはとてもシンプルです。しかし,たくさんの人が感動するものは,そう簡単には見つかるものではありません。(p37)
 せっかく買ったクルマをすぐに売ってしまうのですから,損をしているように見えるのですが,(中略)それは損ではないのです。体験したクルマですから,価値も高く,再販価値も高いのです。その経験のおかげで,誰も知らないようなクルマの特徴を延々と語り続けることができますし,それを発信することもできます。(中略)インターネットのおかげでありとあらゆる情報が手に入る時代だからこそ,体験することの価値がどんどん高くなっています。(p46)
 「自分の頭で考えろ」とよく言われますが,何から始めていいのかわからない時はまず観察から入ることです。そして想像し,思考する。(p55)
 現場では,僕は若くて素直だし,体力もあるから,どこへ行っても一番人気で取り合いになるくらい。そのうち日給も多くもらえるようになりました。人に必要とされれば,多く稼げることはこの時,学んだんです。(p67)
 初めての海外で,言葉も通じないし,そんな安いホテルに泊まったこともない。周りは全員知らない人で,怖いという意味では,すべてが怖かったです。でもそこにいると,いつの間にか,それが普通になるんです。(p69)
 なかなか厳しい旅でしたが,そこで僕が感じたのは自由でした。自分で考えて,自分でやったことが,すべて自分に返ってくる。そんな日々がとても新鮮だったのです。(p70)
 タクシーの運転手さんから面白い話を聞きました。東京都港区の南麻布は高級住宅街として知られていますが,そこから羽田空港に行ってほしいと言われて,「高速道路を使いましょうか?」と聞いたところ,「必要ありません」ときっぱり断られたそうです。(中略)下の道で行っても間に合う時間に家を出ているのであれば,時間を節約したところで大して意味がありません。その人にそって高速代は,無駄遣い,つまり悪い浪費ということです。(中略)お金持ちと言われる人たちは,使い方をしっかり考える習慣が身についていて,悪い浪費をしないのだと感心しました。(p92)
 僕自身,お金の使い方にはたくさんの失敗をしてきました。その失敗を思い返し,原因を突き詰めると,自分の目で確かめていなかった。失敗のリユのほとんどはたったこれだけのことなのです。(中略)他人任せにせず,間接的な情報を鵜呑みにせず,どんなささいなことでも自分の目でしっかりと確かめて判断し,お金をその確かめたものに変えていく。これほどお金が喜ぶ使い方はないのです。(p100)
 「成功の反対は失敗ではなく,何もしないこと」という言葉から,一歩を踏み出す勇気をもらいました。(中略)失敗を恐れるあまりに,勇気を失い,何もしない人になってしまうことくらい残念なことはないのです。(p105)
 株を買って毎日のように株価をチェックしていても,下がってくると,また下がった,今日も下がった,と落ち込んでいるうちにうんざりしてきて,チェックするのがイヤになってしまう,というのも失敗のパターンです。数字から逃げるから損を大きくしてしまいます。(p114)
 異論はない。損切りは大事なことだから。しかし,株についていえば,買ったら買ったことを忘れているくらいでちょうどいい。株価なんかチェックしないこと。ノンびりしている方が儲かる確率は高いと思う。
 好きなことを続けていたら,いつの間にか稼げるようになっていた,という話をよく聞きますが,そこまできれいな話は,現実にはあまりないように思います。やはり仕事をするなら,費用対効果がいつも頭にないと,なかなか稼げるようにはならないし,収入は安定しないのです。(p121)
 やはりただぼんやりしているだけではダメなんです。(中略)どんなことにも通じる法則ですが,自分がしっかりしよう,自分でなんとかしようと覚悟しないと,うまくいかないのです。(p131)
 本が欲しくて買うというよりも,僕とのコミュニケーションの代わりに買ってくれる。人は,ただ,物にお金を払うだけではないという,商売の基本がわかってきたんです。(中略)自分に興味を持ってもらえたら,ある程度は売ることができます。その頃,自分を買ってもらう,自分も売りものの一部なんだ,と知りました。(p132)
 困っている人を助けることが面白かったんです。「どうしても欲しいけど見つからない」人に対して,自分ができることを果たす。そこに自分自身の価値を見つけました。そういう仕事の姿勢はずっと変わりません。(p136)
 肉体労働の世界であっても,一生懸命やれば信用されるようになるんです。あいつは真面目でいいやつだ,と評判になると,こっちに来い,と引っ張ってくれる人も出てきます。そういう時のうれしさが僕の仕事の原点にはあるのです。(中略)いつも人に喜ばれること,人が認めてくれることを,藁をもつかむような気持ちでやってきました。(p140)
 投資先のもっとも間違いのない選び方は,自分が一番詳しいもの,もしくは自分が大好きなものです。(中略)一番詳しくて,大好きなものとは,まず「自分」が思い浮かぶはずです。(中略)だから自分という「投資」先を忘れてはいけないのです。(p148)
 鉄則は,自分で調べて自分で考えることです。利益を得たい気持ちで,専門家や詳しい人を頼って,どうしたら良いかを聞いているうちは失敗することが多いでしょう。(p150)
 投資において,欲は禁物。リスクの学び方,楽しみ方とは,この言葉に尽きるのです。(p154)
 チャンスというのはほとんどの場合,常に試練という形でやってくるのです。訪れる試練をただの困難と捉えてしまうのか,もしくは,その中身はチャンスだと思うのかで,リターンが大きく違います。(p155)
 投資の世界で成功する秘訣は,投資対象についてどれだけ詳しくなるかに尽きます。(p155)
 ラッキーが偶然訪れることは,ほぼないと思っています。起きていることは,基本的にはすべて自分次第で,棚からぼた餅が落ちてくることは,滅多にありません。偶然に見えても,それは,その人自身が起こしているものです。(p157)
 こうすれば成功するだろう,と思っているわけではなく,好奇心が旺盛だから,すぐにやりたい,やろう,と反応するのです。そういう態度が偶然を引き起こしているように思えます。(p159)
 ピカソの絵画に興味を持っても,スマホで見ることで好奇心を満たしていると,その好奇心は育ちません。美術館に足を運び,実際に鑑賞することで,次は,この作品が見たい,彼の作品の背景にあることをもっとよく知りたい,と好奇心が伸びていきます。(p160)
 投資信託や株式への投資で一億円の利益を出すのはたやすいことではありませんが,自分でビジネスを始めて一億円の利益を出すことはそこまで難しくはありません。一番リターンの高い投資は自分への投資です。(p161)
 もっともレバレッジが効く投資は,自分が感動することへの投資です。僕は,そう考えています。いろんなことを面白がって,楽しんで,何かに感動するようなライフスタイルを続けるために投資をするのです。(中略)感動すれば,誰かに伝えたくなります。(中略)そうやって感動が人を動かすのです。(p162)
 感動するためには,自分自身が常に学び続けなくてはなりません。同じことを続けていても感動は減る一方です。情報収集も必要になりますし,ワクワクし続けるためには人任せではいけないのです。(p164)
 人は年齢を重ねるにつれ,変化が起きにくくなりますが,それでは成長することができないのです。何より,いい友人を作るためには,自分自身が成長し続ける必要があります。(p171)
 株を運用していて失敗する人に共通して言えるのは,期待しすぎということです。例えば,どこかの会社の株を一〇〇万円で買うとします。そういう人は,来年には二〇〇万円になっていると思ってしまうのです。(中略)感動もそれと同じです。増やすことができるのは,せいぜい年に五パーセントくらい,つまり一〇〇人を一〇五人にするくらいのところから始まります。でも,それを続けた人が成功するのです。(p182)
 時間と仲良くしたいと思ったら,どんなふうに仕事をすればいいのでしょうか。僕が意識していることのひとつに,「準備に時間をかける」があります。(中略)仕事はもっともっと想像力を働かせて,相手の期待値を超えるものでないと成功とは言えません。平均より少し上,八〇点,九〇点を目指すやり方もありますが,それでは誰も感動してくれないのです。一二〇点,一三〇点出せてやっと,喜んでもらえます。そのためには準備に時間をかけることが一番の近道です。(p198)
 僕が続けていたのは,自分が大好きだという想いを語り続けることです。どこへ行っても,事あるごとに語ってきました。(中略)そこから何かが動き始めるのです。だから自分の「好き」を語る時は,照れないで堂々とするのが鉄則です。(p203)
 世の中に「ぼったくり」と言われるようなものは,基本的にないと思っています。高い,これはぼったくりだ,と言ってしまうとそれでおしまい。なぜそれが高いのかが理解できないということです。(p208)
 信用を築くためには時間が必要ですが,失う時はあっという間です。多いのは,お金のトラブルと男女関係のごたごたでしょうか。(中略)会社員であれば,経費の精算などはしっかりと規定に沿って行うようにしてください。(p216)
 なぜなら,そう思わない限り前に進めないからです。(中略)どんなに理不尽で,どんなに自分が不幸な経験をしたとしても,それを許して認めない限り,そこにとどまってしまいます。こういう経験のおかげで自分は学べたのだという感謝がない限り,そこから脱却できません。だから,全肯定なのです。(p220)
 「成功するための条件は何ですか?」と質問されたら,「何かに詳しくなること」と,答えます。人より詳しければ,絶対に成功するのです。世界一詳しかったら世界一になれます。(中略)詳しくなるためにはどうすればいいのか。僕に限って言えば,努力ではなく単純に興味があるから,いつもそういう気持ちで(中略)世の中を観察していて,そこで知り得た情報を,意識しないまま自分の中にインプットしているのです。(中略)自分が詳しいことをどうやって仕事に変えるか,どうすればライフワークになるのか。僕の場合は,わかりやすいところで言うと,言語化とメッセージ。あとは,雑誌やインターネットのメディアで文章を書き続けるということ。(p226)
 僕は「暮しの手帖」の編集長として学んだのは,雑誌の編集技術よりも商売のやり方だったと思っています。いいものを人は「いいね」とは言っても買うとは限らない。どんなものなら欲しくなるのか,買いたくなるのかを徹底的に考えました。(中略)編集長で取次会社に足を運ぶ人はあまりいなかったと思うのですが,僕にとっては情報の宝庫でした。(p233)

2020年12月20日日曜日

2020.12.20 松浦弥太郎 『しごとのきほん くらしのきほん 100』

書名 しごとのきほん くらしのきほん 100
著者 松浦弥太郎
発行所 マガジンハウス
発行年月日 2016.03.31
価格(税別) 1,500円

● 著者が手探りしながら,掴み取った “術” が披露されている。労せずしてそれを知ることができるのは,著者の体験の上澄みを掬うようなものだ。
 では本書を読めば,著者が到達したところからスタートできるのか。そこは心配しなくても,環境がちゃんとゼロから出発させてくれることになる。
 棚からぼた餅的な話はそうそうない。っていうか,まったくない。

● 以下に転載。
 放っておくと僕たちの毎日は「新しさ」から遠ざかり,やるべきことの繰り返しになります。新しさから遠ざかると成長はできません。(p9)
 覚えておきましょう。誰でも知っていることこそ,一番強いテーマだと。(中略)普遍的なものの中に,無限の新しさが潜んでいます。(p11)
 大切なのは,余計なことをしないこと。(p15)
 経験値をもとに積み上げていく仕事をすると,新しさは生まれません。(p23)
 期日がないものは,仕事ではありません。(中略)時間軸がくっきり見えれば,自分で考え,行動に移すモチベーションになります。(p53)
 打てば響くような俊敏さをもつよう,日頃から自分を整えておきましょう。「一日考えてからお返事します」というのでは,チャンスは逃げてしまいます。(p57)
 理屈が通った正しい文句もあります。しかし,文句に問題を解決する力はありません。何か起きたら,自分から動きましょう。(p73)
 「一石二鳥だな」と思ったら,手を出さないと決めておく。これはマナーであり,自分を守る知恵です。(中略)一石二鳥はたかが二鳥。桁外れの大成功をしている人は,一つしか取らないたしなみを知っています。(p77)
 成功している人は,ありとあらゆる失敗をし,それをちゃんと研究した人です。(p81)
 あらゆる仕事の先には人がいるから,答えは人がもっています。(p85)
 人脈が広がりすぎると関係性が空洞化する(p93)
 人は,面白いものと美しいものに引かれます。文章も会話も,伝え方はいつも面白く,美しくしましょう。(p99)
 人を動かすものは感情です。要点だけまとめたリストでなく,思いを込めたストーリーを語ってこそ,動機がちゃんと伝わります。(p113)
 文章を書くコツは,「上手」という言葉を忘れること。(中略)文章の先にいる誰かを思い浮かべて書きましょう。(p115)
 この世界にたくさんの素晴らしさがあったとしても,見つかるかどうかは,その人次第です。(p119)
 正しい方法というのは,愛があるかどうかかもしれません。(p129)
 「ギブ・アンド・テイク」でもなく,「フィフティ・フィフティ」でもなく。(中略)何も要求せず,自分から与えることで生まれる大きな力が,ものごとを成功させるヒントとなります。(p131)
 仕事も人間関係も,一話完結ではありません。(p135)
 自分で見つける。自分で工夫する。自分から発案する。この3つは,誰かから必要とされる「価値ある存在」になるための基本姿勢です。(p143)
 世の中で評価されているものは,興味があったもなくても,知っておくこと。これが仕事の基礎知識となります。(p151)
 本気になれるかなれないかが明暗を分けます。状況を変えるのも,物事を動かすのも,人の心をゆさぶるのも,本気の力。(p183)
 「人がやっていることはやらない」こう決めてしまうと,勝ち負けの渦に巻き込まれずにすみます。(中略)人がひしめいていたら「どうぞ」と譲ってしまいましょう。(p195)
 逃げなければいけないときは,勇気を出して逃げましょう。格好悪くても,弱虫と笑われても逃げる。義理を欠いても,誰かに嫌われても逃げる。(p197)
 いつも笑顔であること。徹底して前向きであること。人に与えつづけること。運を味方につけたいのなら,この3つを守りましょう。(p203)
 もしも迷いが生じたら,計算で答えを出してはいけません。(中略)目を閉じて自分に聞きます。「君はそれをやりたいかい?」。答えがノーならすぐ断る。(p207)
 人の好き嫌いはまた,すぐに変わるもの。(中略)深く考える必要もないことです。(p231)
 言葉で説明できないのなら,自分自身もよくわかっていない証拠です。(p241)
 頭を働かせるよりも心を働かせたほうが,豊かになれる。(p243)
 ときには我慢して,相手を優先しましょう。ただし,控えてばかりだと無責任な傍観者になってしまうことがあります。(p255)
 「食事のしたくが億劫」とお惣菜を買い,「やることがなくて退屈だ」と不平を漏らす。(中略)手間ひまをかければ,退屈するひまがなくなります。(p269)
 不健康なときほど,体に悪いものを食べたくなるもの。ジャンクな味が欲しくてたまらなかったら,体調を崩す前兆かもしれません。(p273)
 「ありあわせで,なんでもやる」とは,無駄がない,賢いやり方に思えます。でも,ありあわせで本質まで届くでしょうか?(中略)日常的にありあわせで済ませるのは,準備を怠っていること。(p279)
 常にちゃんと選ぶ,セレクションという意識を大事にしましょう。(p281)
 すてきな人は,年を重ねるほど素直になり,どんな話も感心して聞きます。(p315)
 優先すべきは,自分が話すことより,相手の話を聞くことです。耳を傾ける姿勢から,さまざまな可能性がひらけます。(p319)
 大人とは静かであるべきです。(中略)擬音がつく動作は慎むこと。(p327)
 辛いときは,息を吐く。緊張したときは息を吐く。覚えておくと役に立ちます。(p329)
 自分が社会とコミュニケーションをとる準備ができているかどうか,きちんと鏡を見ましょう。(p333)
 年をとること,変化していく自分を,存分に楽しみましょう。(中略)時に逆らわずに変化を楽しみ,柔軟に対応していくさまは,実にすてきです。(p335)
 その人という人間がもつエネルギーに,無条件にひかれてしまう。(中略)そんな人は,パッションとロマンがある人。(p351)
 満遍なくいろいろできるオールマイティなプレイヤーが求められる時代は,少し前に終わりました。自分の好きなことを極めましょう。(p403)
 「ミーハーだ」と言われたら,悪口ではなく「好奇心旺盛」というほめ言葉だと受け止めましょう。世の中の人が夢中になっていることに,自分も一緒に夢中になれるのは,心が若々しいから。(p405)
 たしかに生きた証しとは,人の記憶に残ること。突き詰めていくと,どれだけ人の役に立てたか,助けることができたか,感動を与えられたのかということでしょう。(p423)

2020年12月16日水曜日

2020.12.16 和田秀樹 『老後は要領』

書名 老後は要領
著者 和田秀樹
発行所 幻冬舎
発行年月日 2020.08.05
価格(税別) 1,200円

● 著者が若い頃に書いた『受験は要領』は今でも読まれているのだろう。残念ながら,ぼくは著者より早く生まれているので,著者の知見を参考にすることはできなかったのだが。
 で,老後も要領だ,と。この分野での著者の著作はすでに数多く出ているが,本書も読んでいて面白い。何となく元気になる(ような気がする)。その “何となく” のために読めばいいと思う。

● 投資信託の話も登場する。銀行など金融機関が投資に無知な老人を喰い物にする。かんぽの組織ぐるみの悪どさは記憶に新しいが,あれがかんぽだけのことで,銀行や証券会社はそんなアコギなことはしていないと思う人はそうそういまい。
 いずれ,これに対しては法的な歯止めがかかることになると予測はしているが,アコギの対象になる老人は,人がいいというより不勉強な人ではないかと思っている。
 問題は,認知症に足を踏みこんでいるような老人を喰い物にしていることだ。国辱とはこういうことを指すためにある言葉だろう。

● 以下に多すぎる転載。
 その基本方針は,「できないことを嘆く」のではなく,「できることを楽しむ」ことです。(p4)
 ころんでもたた起きない,コロナでもただ起きない--それくらい前向きに考えることが,コロナ時代を元気に言い抜く要諦だと,私は考えます。(p5)
 80歳まで元気なら,老後には,現役時代に働いた時間以上の自由があるというわけです。私は,この途方もない自由時間を有意義に過ごす方法は,2つしかないと考えています。(中略)ひとつは「働く」こと。そして,もうひとつは「勉強する」ことです。他の方法では,残念ながら,人間の脳は飽きてしまうのです。(p19)
 西洋には,「牛乳を毎日飲む人よりも,毎日配達する人のほうが健康」ということわざがありますが,その言葉の正しさは,世界中の研究者が認めているところなのです。(p23)
 人生,何事もやってみなければ,わかりません。「引退」も希有な経験ですし,引退後の暮らしが心から楽しければ,その後,“引退しづづける” のもいいでしょう。ただし,(中略)“最初の引退” は,期間限定のつもり,仕事を一時休むくらいのつもりで,退くことをおすすめしたい。(p38)
 人間の脳は,旅行にも庭いじりにも,いずれは飽きてしまいます。人類の進化の歴史を考えても,私には,人間の脳が「遊ぶだけの30年間」に耐えられるとは,到底思えません。(p40)
 声を大にしていいたいのは,「勉強は最高の健康法だ」ということです。私は,頭を鍛え,“脳力” を維持することほど,効果的な老後の健康法を知りません。(p44)
 動機は,おおむね “不純” なほうが,大きなエネルギーにつながります。人間,なかなか “久遠の理想” のためには努力できません。(p45)
 その不純な動機を達成するための方法は,「アウトプット」することしかありません。(中略)勉強する最終的な目的は,アウトプットすることなのです。話す,教える,文章に書く--手段は,何でもOKです。(p45)
 私は,老後の勉強のアウトプット目標は,「本を1冊,書くこと」におくといいと思います。(p47)
 本を書くためには,テーマが必要です。そのテーマは,あなたが最も興味のあること,勉強したいことでOKです。ただし,それを将来,売り物にする(本にする)ためには,「具体性」が必要です。テーマは具体的であればあるほどベターです。(p53)
 テーマが決まれば,次は「コンテ」を作ることです。(中略)「本作りはコンテ作りが9割」だと,私は思っています。
 私は,本のテーマが決まったあとは,次のようにコンテを作っています。
1 まず,仮タイトルをつける
2 次に,章立てを考える
3 各章に書きたいことの「小見出し」を書き出してみる(p54)
 60代まで,日本語を問題なく話してきた人なら,本気で書き始めれば,すぐにそこそこの文章を書けるようになります。(中略)そう,今は「ワープロソフト」があるからです。(中略)私自身,もしワープロが発明されていなければ,これまでに書いた文章の10分の1も書けていなかったと思います。(p59)
 本格的な老いを迎えるまえの目標を可視化する作業をしていると,私は元気が出てくるのを感じました。人間の脳は,案外,単純にできています。(中略)そうした前向きの作業をするうち,脳内の神経伝達物質や,男性ホルモンのテストステロンなどの分泌量が増えることになったのでしょう。(p66)
 老後は,現役時代以上に,目標と計画を立てることが必要だと考えています。「目標を立てる」ことは,より具体的にいえば,「期限を切る」ことです。要するに,「締め切りをつくる」ことです。(中略)そうしたスケジュールに合わせて,実現する方法を考え,取り組むことは,前頭葉にとって格好のトレーニングになるのです。(p67)
 夫の定年は,夫にとっては “自由な時間の始まり” ですが,妻にとっては,“自由な時間の終わり” を意味します。(中略)夫が妻の自由を奪わなかったからこそ,これまでは仲よくいられたのです。(p73)
 人間関係には,「ほどよい距離感」が必要です。接近しすぎたヤマアラシが互いの体を傷つけるように,人間も近づきすぎると,心にトゲを刺し合うことになるのです。(中略)どれほど仲のいい夫婦でも,何十年もの間,24時間一緒に仲よくいるというのは,無理な話です。(p74)
 若い頃から一緒に楽しんできたのならともかく,老後を迎えてから,「共通の趣味を楽しもう」などと意気込むと,ろくなことにはなりません。たとえば,妻と,同じカルチャーセンターなどに通っていても,同じ時間帯には行かないように工夫したほうがいいくらいです。(p77)
 まだまだ人生の先は長いのです。家庭内離婚,仮面夫婦状態を続けて,不快な気持ちで過ごすと,確実に心身に悪影響を与えることになります。精神科医として,そうして心を壊していく女性の姿も,嫌というほど見てきました。(p80)
 子供を立ち直らせるには,「とにかく放っておく」ことが必要なのです。長年,引きこもっていても,親が食事をいっさいつくらなければ,コンビニくらいには行くようになるものです。(中略)親が態度を変えはじめ,自分の生活の充実のほうに気が向くようになると,子供の態度にも変容が現れるのです。(p82)
 日本は家族関係が極端な国で,べたべたと付き合いすぎるケースがある一方,いったん距離を置くと,その距離が遠すぎるというケースが多いのです。(p86)
 あくまで「現役時代,そこそこの企業に勤めていれば」という条件付きではありますが,今やこの国では,老後の貯金などなくても,金銭的な心配はほとんどありません。制度に関する知識を備え,利用できるものは利用すれば,日本は北欧諸国並の社会保障大国なのです。(p102)
 私はそろそろ,日本人も,現役時代に支払った税金は,老後「取り返してなんぼ」という発想を身につけたほうがいいと思います。むしろ,それが納税者としての “正しい態度” でしょう。(中略)じつは,国民の多くがそうした考え方をもったほうが,マクロ経済はうまく周ります。(p104)
 定年後,銀行に行き,「退職金をどうすればいいでしょうか?」という質問をするような “超世間知らず”,いや “超投資知らず” の人は,投資を避けたほうが賢明です。残念ながら,そういう人は,金融機関にとって,絶国のカモです。彼らにとって,投資知識のない定年退職者ほど,「いいお客さん」はいません。(p113)
 私は,「毎月分配型の投資信託」を買うくらいなら,馬券でも買ったほうが,まだマシだと思っています。(p114)
 今後,あなたの資産を狙って,金融機関やその他の業者が,さまざまな誘惑の言葉を投げかけてきます。(中略)その攻勢は,あなたが年齢を重ねるにつれて,認知能力が落ちるに従って,いよいよ激しくなってきます。(中略)怪しげな勧誘がまかり通っているのは,世の中には投資に関してあまりに無知な人が多いからです。(p115)
 よほど自分の投資技術に自信がある人以外は,インデックス型を利用し,「半分になっても困らない」程度の金額をコツコツと投資するのが,いいと思います。(中略)それでも狼狽売りすることなく,保持し続けていれば,最終的には報われることは,株式市場と資本主義の歴史が証明しています。(p121)
 私は「走る」ことは,50代以上の人にはおすすめしません。(中略)いちばんおすすめの運動は(中略)「歩く」ことなのです。「人間の体は,1日8~14キロは,歩くことを前提にできている」という説もあります。(p135)
 イライラや怒りをしずめる最も簡単な方法は,「深呼吸」です。脳に酸素が十分に行き渡ると,脳内の扁桃という部位の興奮がおさまり,それが交感神経の興奮をしずめるのです。(中略)大きくのびをしながら,目を閉じる。次に,ゆっくりと大きく息を吸い込み,ゆっくりと吐き出す。呼吸だけに意識を集中し,つとめて無心になるのがコツです。こうして,何回か,深呼吸を続けると,気持ちが落ちついてくるはずです。(p160)
 人間の体の60%以上は水分であり,水分不足に陥ると,格段に疲れやすくなります。脱水症状が進むと,血液がドロ頃の状態になって,血液が流れにくくなります。(中略)すると,疲れやすくなるうえ,いったん疲れると,なかなか回復しにくくなるというわけです。(p174)
 脳機能上は,75歳くらいまでは,記憶力はさほど衰えません。急激に衰えるのは,「覚えようとする意欲」です。(p178)
 「脳は,いくつになっても鍛えることができる」--これは,脳科学的には,21世紀になってから立証された新たな常識です。(中略)つまり,「成人になってからでも,脳の神経細胞は鍛え方しだいで増える」ことがわかったのです。(p181)
 若い頃は誰しもそれなりに記憶しようと努力するものです。ところが,中高年になると,大半の人はそうした努力をしなくなってしまう。それなのに,「昔は簡単に記憶できた」ような美しい錯覚に陥り,「記憶力が落ちた」と慨嘆する。(p191)
 脳内のドーパミンを増やし,頭を働かせるためには,まずは「何とかなるだろう」とポジティブに考える「癖」をつけることが必要なのです。マイナス思考にとらわれそうなときは,まずは「何とかなるだろう」と,口に出してみる。(中略)それだけのことで,すこしはドーパミンやセロトニンが分泌されるのだと思います。(p198)
 松下幸之助氏は,社員採用の面接で,「君は,自分は運がいいと思うかね」と尋ね,「運がいいと思っています」と答えた人だけを採用したという伝説があります。これは,松下氏が「人生では楽天主義が大事」ということを骨の髄から知っていたことの証左でしょう。(p198)
 脳には安定を好む傾向があり,ひとつの考え方,ひとつのものの見方に慣れ親しむと,すべてをその考え方やものの見方ですませて,楽をしようとします。前頭葉は,すぐに怠けてしまうのです。(p201)
 「60点主義で即決せよ。機会を失うのは度し難い失敗だ」--昭和の名経営者,かつての経団連会長だった土光敏夫さんの言葉です。(中略)それくらいの勢いがないと,老いの坂を登り切れません。(中略)判断・決断を先延ばしすることは,やがて思考停止につながります。(p202)
 人生,そろそろ,締め切りが迫っているのです。60年以上生きていれば,何事もさっさと決めたところで,大きな間違いはないはず。(中略)「悩む前に跳べ」くらいを心がけることが老後の坂を登る要領だと思います。(p203)
 日本人に多い考え方の中でも,老後のためにとくによくないと思うのは,「完全主義」傾向です。「100点でなければダメ,90点でも努力が足りない」といった考え方をすると,無用のがんばりすぎを招き,うつ病の大きな原因になります。たとえば「親の介護」をするのに,100点満点など,そもそもありえないのです。(p203)
 欧米では,性ホルモンが減少すると,HRT(ホルモン補充療法)を受けるのが普通のことであり,保険も適用されます。しかし,日本では,副作用を懸念し,男女ともにあまり使われていません。私は,女性も男性も,ホルモン療法をもっと利用したほうがいいと思います。(p210)
 高齢者は,若い頃以上に,見た目が重要だと思っています。過去の臨床経験のなか,外見が老人ぽくなるにしたがって,感情の廊下が進み,ひいては全身の昨日が低下していくケースを多数見てきたからです。(p213)
 このようなアンチエイジング治療を,日本では,まだまだ「反則」のように思う人が多いのですが,私は,老後は「いろいろなことを反則と決めつけない」精神が必要だと思います。(p214)
 年の暮れには,多少は値の張るスケジュール帳を買うようにしてきました。上等な手帳を買うと,「使わなければ,もったいない」と思い,「いろいろ書き込む」,つまりは「予定をつくる」ことにつながるからです。(p217)
 神経伝達物質の正常な分泌をうながすためには,毎朝同じ時間に起きることが必要です。前の晩,多少寝るのが遅かったとしても,いつもと同じ時刻にベッドから出ましょう。その日はすこし眠いかもしれませんが,長い目でみると,それが脳と体を守るコツです。(p223)
 納豆は,最安値のサプリメントといってもいいでしょう。(中略)大豆食品は,脳にとっても,強い味方です。(中略)神経伝達物質の重要な原料「レシチン」をたっぷり含んでいるのです。(中略)中でも,納豆は,大豆の栄養をほぼそのままの形で摂取できる優秀な食材なのです。(p225)
 私は,健康に長生きしたければ,義歯やインプラントなど,歯にはお金をかけたほうがいいと思います。(p235)

2020年12月13日日曜日

2020.12.13 堀江貴文 『ハッタリの流儀』

書名 ハッタリの流儀
著者 堀江貴文
発行所 幻冬舎
発行年月日 2019.07.10
価格(税別) 1,400円

● 本書のタイトルからは,実力なんか要らない,ハッタリをかまして目眩まし戦法で生きていけばよい,と言っているのかと思われるかもしれないが,残念ながらそうではない。
 本書で説かれているのは,まっとうな努力の大切さだ。第4コーナーを回ったあたりから,その生真面目さが全開になる。

● 以下に転載。
 人は夢を見たい生き物なのだ。大事なのは「そんなことできないでしょ」と思うようなハッタリを大きくかまして,周りからの注目を一気に集めることだ。そうした「ハッタリ人間」が,結果的に突き抜けていく。(p3)
 一億総評論家時代のように,みんながテレビの前やSNSで他人のことをツッコム。だからこそ,これからの時代は「ボケ」の時代だ。「ボケ」られる人間が貴重だ。他人に「ツッコミ」ばかりしている人に熱は起こせない。(p11)
 今後,生活コストはますます下がっていく。生活のために必死になって働かなくても,何とかなってしまうのだ。(中略)そういう時代には,歯を食いしばって労働作業をする人よりも,お笑い芸人より狂った大ボケをかまし,マンガのような世界を実現しようとするハッタリ人間が求められる。そこに熱が生まれ,人が巻き込まれていくのだ。(p22)
 今,多くの投資家は「カネ余り」に直面している。とても自分たちで使い切れる額ではないので,いいアイデアやアートなど唯一無二のものさえあれば,すぐさまそこに投資したいと待ち構えているのである。(中略)手元に資金がなかったとしても,あなたに唯一無二の可能性や面白さがあると思われた瞬間,ノリでお金が集まる時代なのだ。(中略)お金は君と遊びたがっている。(p34)
 時間を持て余している「大衆」を,社会にダブついた「お金」を,自分のところに集める方法。それはカンタン。好きなことに「損得抜きにして」没入することである。皮肉だが,利害を考えて,人や小銭を集めようとするケチな人間には人もお金も集まらない。(p41)
 今後を見据えてあらかじめ何かにハマっておくなんて,そんな器用な真似ができるわけがない。とりあえず今は,眼の前の本当に興味のあることにハマりまくる。後からその点をつなぎ合わせ,線にしていくことしかできないのだ。(p43)
 「役立つ・意味がある」という価値が下がる。そして「面白い・心が動く」という基準が重視されるようになる。(中略)計算可能な頭脳労働はもはやAIのほうが得意だ。意味があること,役立つことは,ロボットのほうが正確にやってくれる。しかし,意味はないけど面白いこと,というのはロボットにはできない。(p47)
 この動きを加速させるためには黙々とハマるだけではなく,過程を発信し続けることが大切だ。(中略)挑戦の過程こそが一番のエンタメだからである。(p52)
 SNSが出てきてからは,情報なんてコントロールできなくなった。(中略)情報を出し惜しみしていたら,埋もれて誰にも気づかれずに終わる。(p54)
 一方的でオフィシャルな発表を聞いても心は動かない。自分にだけ呟いてくれていると錯覚するような日常的な発信を受け取っているうちに,どんどんファンになっていくのだ。(p55)
 可処分所得の奪い合いの時代から可処分時間の奪い合いに移ったと言われる。(中略)読書をするか,LINEをするか,飲みに行くか,すべてがライバルになっている。そしてその次は可処分精神の奪い合いだ。心を奪えるか? 心を預けてもらえるかどうかが問われてきている。人は心を奪われて初めて時間を使う。時間を使ったその後に,財布を開くのだ。だからこそ自分の努力の過程を,成長の軌跡を,自分の言葉で発信し続ける。(p55)
 ファンがいなければ,勝負の土俵に上がれない時代に,これから我々は放り出されるのだ。恥ずかしがらずに人生をさらそう。そしてお金より共感をためよう。(p60)
 一億総老後時代のようになるだろう。貯金も時間もあるんだけれど,やることがない。(中略)多くの人が,何かワクワクすることはないかと,考え始める。すると老後を迎えたおじいちゃん,おばあちゃんが孫の夢を応援するように,好きな人の夢を応援することが,これからはエンターテインメントになっていく。(中略)これからは他人に「応援させてあげる人」が価値を持つ。(p63)
 「どこかで見たことがあるストーリー」に人は熱狂しない。(p65)
 どうしたら「ハッタリ」の器を広げられるか。それは日々,やったことのない経験をして,出会ったことのない人たちと会うことだ。すると自分の目線が上がっていく。(中略)筋トレと同じように,メンタルや行動力も負荷をかければかけるほど強くなっていく。(p70)
 僕は,どちらかと言えば,営業に向いていないタイプの人間である。そんな僕でも,いろいろな場所にプレゼンに行って,多くの仕事や投資を成立させてきた。それは,「知人に紹介してもらった人にしか会わなかったから」である。(中略)巧みなプレゼンをしたり,キレイな資料作りをしている時間があるならば,自分の提案を欲しがりそうな相手を探すことに時間をかけたほうがいい。(p80)
 机の前でウンウンと考えているのではなく,あなた自身がいろいろなところに行き,面白い人と会いまくり,ネタをたくさん持っていなければならない。「こいつは面白い」と思われることだ。(p101)
 スクリーンに映し出すスライドは,「何かを解説するための資料というよりも,口頭で次の話題を出すためのきっかけにすぎない」と考えてほしい。シンプルに,箇条書きで,必要な項目を列挙してあれば十分だ。(p104)
 まず必要なことは「こうあるべき」という世間一般の常識を一切捨てることだ。(中略)「いいハッタリ」とは完全に常識の外部から来る。計算や論理の先にある予定調和なものに人は熱狂しない。(p111)
 「もっともらしい言葉」には未来の真実はない。過去の結果でしかない。まずは頭の中から「もっともらしい言葉」を捨てよう。(p113)
 真面目な人ほど「世間の目」を気にしてしまう。つまり,どうにもプライドが高すぎる。(中略)自分の望みとは関係なく,世間の目を気にして物事を決めてしまう。そんなツマラナイ人間のハッタリなんかに誰も乗ってこない。(p121)
 昔と違ってSNS時代には情報は公開すればするほど,公開した人のもとにも情報が集まる。だから情報は出し惜しみされなくなってきた。人類史上初,成功ノウハウがタダ同然で手に入る時代。ノウハウの価値は下がり,あとはやるか,やらないかだけ。つまり,行動する人が最高に得をする時代なのだ。(p136)
 すでに上手くいっている方法をパクるのは基本中の基本だ。大して才能もない人間が,机の前であーだこーだ考えている時間ほど無駄なものはない。(p137)
 やらされ仕事をやっていると,上司や取引先に怒られない範囲で納品しようという社畜精神が出てしまうが,自分が好きなことを仕事にしていれば一〇〇点以上を目指そうと自然に力が入る。(中略)自分が熱を込められる好きなことであれば,オリジナリティは自然とにじみ出てくるものだ。(p141)
 ハッタリをかます人には共通点がある。それは「根拠のない自信」を持っているというところだ。君から見たら脳天気なバカかもしれない。(p149)
 「ハッタリをかましてその後で辻褄を合わせること」は,あらゆる場面で大きな成果をもたらしてくれる。僕はこれを,人生の最高奥義だと思っている。(p153)
 チャンスというものは,あらゆる人の前に現れる。それなのに,チャンスをものにできる人とできない人がいる。それは,目の前に現れたチャンスに,ノリよく飛びつくことができるかどうかにかかっているのである。(中略)そして,「ノリよく飛びつく」こと自体にも場慣れがある。最初は躊躇していても,いつもいつもノリよく飛びついていたら身体が勝手に反応するようになっていく。(p156)
 目先の苦労を避けることはできない。ラクができる状況のようなものは,大きな苦労をした先にこそ待っているものだからだ。周りの人から「苦労しているな」と思われるようなことをとことんやって,その先にあるラクをつかんでいく,というのがむしろ正解なのである。(p173)
 本気で努力をする人は意外といない。大体が六五点ぐらいまで。一〇〇点までやる人なんてほとんどいない。そして一二〇点までやり切る人間は皆無だ。だからこそ「努力」はコスパがいい。(p176)
 本当の努力は楽しいものだ。逆に言うと楽しくない努力をしているようだとまだまだ甘い。(中略)いま努力がつらくても,焦らなくて大丈夫。「努力」が楽しくなるのは,少し自分が得意になってからだ。(中略)だから,まずはガムシャラに徹底的に,とことんやり切って,自分のレベルを上げてみることだ。(中略)僕は,いろんなことを楽しんでいるだけのように見えるかもしれないが,まずは八〇点くらい取れるようにガッと努力する型を持っているからだ。楽しくなってさえしまえば,一二〇点までは突き抜けられる。(p179)
 成功への道のりは,最初はコツコツ,後から一気に加速する。まずは焦らず積み上げよう。(p184)
 たくさん叱られたし,批判もされた。でも,そんなことは気にしない。「人はいろいろ言うけれど,そのうち飽きる」「他人は自分になんて興味がない」ということがわかっていたからだ。(p189)
 これからは労働がオワコンになり「遊び」の時代になる。そこでは,「大人」になってしまった退屈な人は価値を生まない。バカ丸出しでボケ続ける「子ども」こそが魅力を放っていく。(p189)
 SNSで大きな挑戦をしている人を揶揄したり,笑ったりする人がたくさんいる。しかし,舞台に立っている人を笑っている観客は,人生の大事な時間を人に使っている。一方,舞台に立って周りから笑われている人は,その他人の時間を自分が吸収している。だからこそとんでもないスピードで進化していくのだ。(p195)

2020年12月12日土曜日

2020.12.12 櫻井秀勲 『70歳からの人生の楽しみ方』

書名 70歳からの人生の楽しみ方
著者 櫻井秀勲
発行所 きずな出版
発行年月日 2019.08.10
価格(税別) 1,500円

● 著者は,60歳,70歳,80歳に向けての生き方論を書いているが,これでその3部作を読んだことになる。これからは若い人はどんどん減って,年寄りだらけになっていく。高齢者の不安解消業は需要が多いことだろう。
 と,一般論にして言っているけれども,自分もかすかながら不安を感じているから,こういう本を手に取るのだ。

● カバーのそでに “「生まれて初めて!」の体験を増やそう” とある。好奇心を失わずにいて,それを実行に移せれば,楽しみに遭遇する確率が上がることは理解できるのだが,それは原因なのか結果なのか。

● 以下に多すぎる転載。
 年を取ると,過去に目が向くようになります。(中略)それはそれで,楽しいことです。でも,それだけではもったいない,と私は思います。(中略)せっかく70歳まで,なんとか生きてきたのです。だったら最後にもう一回,楽しむのです。(p6)
 それこそ,山あり谷あり,どん底ありで,今ここにいる,という人がほとんどでしょう。(中略)あなたがいま,ここに生きているということには意味があります。だから,何かを成し遂げよう,ということではありません。ただ,楽しむことをすること。少なくとも,それをしようと努力することが,命を与えられていることへの義務,ではないでしょうか。(p8)
 自分だけが楽しむわけにはいかない,などと考える必要はありません。あなたが人生を楽しむことで,あなたのまわりの人たちの人生が,明るく幸せになることもあるのです。(p11)
 まわりの人たちからは「若々しい」といわれても,やはり,からだは正直んものです。でも,それは仕方ありません。それだけ長く使ってきたのですから,新品のようにはいかないわけです。だから,そのことを気にしすぎないようにしています。(p27)
 70歳からの人生を楽しむコツは,自分の世界を狭めないことです。どこにでも出かけていき,誰とでも会うことで,世界は広がっていきmす。(中略)「自分の世界を広げなさい」というのは,若い人たちのための言葉のように思われるかもしれませんが,若い人たちの世界は,放っておいても広がっていくものです。けれども,60代,70代となれば,世界はどんどん狭まっていきます。(p28)
 年齢よりも若々しい人に共通して見られるのは,よく食べることです。(中略)それだけ歯と胃が丈夫だということでしょう。(中略)足腰は使うことで強くなります。疲れない程度に,歩くことは毎日の日課として心がけるようにしましょう。(中略)そのためには,「食べたいものがある」「行きたいところがある」というのが一番です。(中略)逆にいえば,多少のからだの支障はあったとしても,「食べたいもの」「行きたいところ」があるというのは,元気で,人生を楽しんでいる人です。(p28)
 70歳で,いま入院するようなこともなく過ごせているとしたら,もともと健康だということがいえそうです。そうであれば,自分の健康に自信を持つことが大事だと私は思います。「自分は健康である」と思えれば,それだけで大きな自信になるはずです。(p37)
 「お酒を飲む」「煙草を吸う」というのは,健康を害する二大巨頭のように思われがちですが,それをしていても,健康で長生きする人は大勢います。煙草やお酒が害になるというのは,やはり,その量が多すぎるということがあるように思いまず。でも,それより重要なのは,どんな場所で喫煙,飲酒しているかです。(p44)
 70歳を過ぎてから,足腰が重要だと考え,歩くことは心がけていましたが,歩幅については,それこそまったく気にしていませんでした。けれども,大学の同級会などで,「老けたなあ」と思うような級友たちを見ていると,彼らの歩幅が小さいことに気づいたのです。颯爽と歩く,というのは若さの象徴のようなものです。(p48)
 立つときは,できるだけ顔を上げ,まっすぐ前を見て,背筋を伸ばすことです。背筋が伸びると,胸が前に出ます。そのときに,両肩が内側に向かないようにしましょう。(中略)胸を張れば堂々と見えます。男性でも女性でも,この「堂々と見える」ということが,とても大事です。(中略)堂々とするだけで,逆に自信も湧いてきます。(p50)
 それに笑顔を加えることです。じつはテレビを見ていてもわかりますが,70代に入った人で,笑顔に慣れるタレントは,ほとんどいません。ビートたけしは72歳ですが,自分では笑っているつもりかもしれませんが,そうは見えません。(p50)
 悪くなった目や耳のメンテナンスにも,手を抜かないようにしましょう。杖や補聴器を使うことに抵抗のある人は多いですが,いまの時代,それらはどんどん進化しています。(中略)私が経験から学んだことは,「文明の利器は使うべきだ」ということです。(p51)
 70歳になったら,あらゆるコンプレックスを手放していきましょう。自分の容姿やスタイル,学歴,仕事,パートナーの職業などなど,自分の理想とはほど遠い現実に,落ち込んだり傷ついたりしたことがあったかもしれませんが,「70歳を過ぎたら,皆同じ」と私は思います。どんな美人も,どんな神童も,どんな大会社の社長でも,70歳になれば,ただの人。たいした差はない,ということです。(p59)
 教養の有る無しで,その人の品格が決まります。70歳を過ぎたときにいちばん大切なのが,この品格ではないかと私は思っています。品格のある人は,まわりから大切に扱われます。それだけ幸せに,日常を送ることができるはずです。(中略)「教養」と「説教」は,まったく根本から違います。説教には教養がありません。(p62)
 若い人に「得」を取らせるのも大切なことです。わかりやすい例でいえば,たまには「メシをおごってやる」ということです。(p63)
 よくも悪くも,私たちは見た目で判断したり,されたりしてしまいます。70歳になったら,この見た目をいままで以上に意識したいものです。「ただの老人」と「紳士」「マダム」の差は,「年齢」よりも「見た目」にかかっているといっても過言ではありません。(p65)
 品格のある人というのは,身なりもきちんとしています。逆にいえば,身なりに気を配ることで,品格を高めることができます。ふだんから,たとえ近くに行くだけのようなときにも,きちんとした服装を心がけましょう。(p67)
 品格を高める方法としてオススメしたいのが,「高い場所」に行くことです。「高い場所」というのは,高級な場所という意味もありますが,高層階の建物や,地上を見下ろすような展望台など,文字通り「高い」ところのことです。(中略)70歳を過ぎたら,できるだけ明るい場所に行くほうが,あなたを若々しくさせます。(中略)品格のある人といえば「神様」がその最高位ですが,神々しさは光が満ちたところに表れます。(中略)人は,明るい場所に集まります。明るい人にも,人が集まるのです。(p67)
 70歳から学び直しをするというときに心得ておきたいのは,「うまくいかなくても気にしない」ということです。(中略)「70歳」という年齢を迎えて楽なことは,語弊を恐れずにいえば,「期待されていない」という点です。(p73)
 いまの私は88歳ですから,たいていの場所で,最高齢者になります。慣れないうちは,そんなポジションに気恥ずかしい思いもしましたが,いまは最高齢者としての役割を果たせるようになってきました。「最高齢者」の役割とは,堂々としていることです。威張るということではありません。(中略)仮に名刺を交換するとしたら,先に出すのではなく,相手から名刺を受け取ってから出すことです。(p76)
 ここで伝えたいのは,「いざというとき」というのを漠然としたイメージだけでとらえない,ということです。イメージだけでは,どんどん不足額が膨らんで,老後の蓄えはいくらあっても足りない,ということになってしまいます。(p79)
 私は,相手に得を取らせることが人脈につながるとかんがえています。相手に得を取らせるとは,自分が損をするということです。(中略)利益が少し減るくらいのことであれば,喜んで私は損をします。(p91)
 お金の使い方で大事なのは,ケチになりすぎないことです。「情けは人のためならず」で,人のために使うお金もまた,「人のためならず」であることを覚えておきましょう。(p92)
 「櫻井さんは恵まれているんですよ」といわれてしまえば,それまでですが,本音をいうなら,恵まれているのではなく,恵まれるように生きてきたのです。(p95)
 前に出る,というのは怖いものです。どんな非難を浴びるかわかりません。自分の名前と顔を出して仕事をしている人には,たとえそれがペンネームであったとしても,それだけの覚悟を持っているのです。舞台に立つには,それだけの覚悟が必要だともいえますが,(中略)舞台に立つといっても,最初から大舞台をめざす必要はありません。自分が経験したこと,勉強したことをシェアする感覚で,「小さな勉強会」を開いてみてはいかがでしょうか。(p95)
 「お金さえあればできるのに」というようなことは,じつは「お金があってもしない」のです。(中略)大切なのは,自分が,それにどれだけの情熱を向けられるか,ということです。情熱というのは,年を重ねるほどに燃えにくくなっていきます。(p99)
 世話をしてくれる人に感謝はしても,どのことで卑屈になったりしないように気をつけましょう。自分ではなく,家族が患者になったときには,とにかく患者の気持ち優先で,その場を対処していきましょう。(p109)
 どんなことでも予定を立てるのは楽しいものです。(p113)
 東京にいると,自分で運転しなければならない必要性は感じませんが,地方であれば,そうはいかないこともあるでしょう。(中略)それでも,事故を起こして,被害者を出してしまっては,事情も何も,理由にはならないわけです。70歳という年齢を迎えて,戒めなければならないのは,自分に対する過剰な自信です。自分だけは大丈夫だという驕りが,一瞬で,あなたの運命をどん底に突き落とすのです。(p115)
 病気やケガをすると,弱気になります。自分の寿命が来たと思って,「病気の自分」を受け入れてしまうのです。病院というのは不思議なところで,たとえ検査入院でも,何日かいると病人らしくなってしまうところがあります。(p117)
 人生は「もう終わった」と思ったところで終わってしまいます。(p118)
 70歳を過ぎたら,悲観的になりすぎないことだと,私は思います。悲観的になったとしても,どうして悲観的になってしまうのかと考えてみることです。悲しいことがあったら,悲しくなるのは当然のことです。それをなかったように振る舞うのは,無理があります。悲観的になっている自分を受けとめることで,悲観的になりすぎるのをくい止めるのです。(p120)
 セックスも恋愛も,したいと思えば,それを我慢することはないし,したくないと思えば,無理をする必要はないわけです。ただ,もったいないと思うのは,「もうできない」と決めてしまうことです。(p127)
 相手との距離が50センチ以内に縮まっても,感情的にイヤでなければ,セックスの相性は悪くないかもしれません。相性というのは理屈ではなく,いいなと思っていた人でも,相性が悪いと,近くにいることが居心地が悪くなるものです。(p128)
 60歳よりも,70歳のほうがモテる,といったら信じますか? でも,これは本当の話です。ことに男性の場合は,100パーセントそうだといっても過言ではありません。(中略)男性が,60歳よりも70歳のほうがモテるというのは,生々しさが抜けるせいかもしれません。いまの60歳は,若すぎるのです。(p130)
 年齢よりも,感覚が合うかどうか,話が面白いかどうか,優しいかどうかで,女性は相手を判断します。その点で,女性というのは,若いときから「人を見る目」を持っている人が多いのです。(p132)
 1人だけにのめりこまないようにするのも,大人のテクニックです。(p135)
 「自分のことを好きな男性はわかる」という女性がいましたが,そう思っていた相手が,自分以外の女性に走ってしまいそうだと思えば,急に惜しくなることがあるわけです。(p135)
 70歳からの恋愛は,それが「人生最後の恋」になりうる可能性が高いでしょう。だとしたら,世間のルールより,自分の気持ち,相手との関係を大切にすべきです。ただし,だからといって何をしてもいいわけではありません。自分の気持ちを大切にしながら,周囲も大事にできる,というのが大人の甲斐性です。(p141)
 身近であるがゆえに,ないがしろにしてしまうことがあるのです。70歳になったら,近くの人こそ,大切にすることです。あらためて,自分のパートナーを見直しましょう。(p149)
 運命の人というのは,その出会いによって,自分の運命が変わっていく存在ですが,生涯にただ1人というわけではない,というのが私の持論です。また夫婦だけが,運命の人とは限りません。ただし,夫婦でも,運命の人ではないことがあるかといえば,それはないでしょう。運命の存在だったからこそ,結婚したのです。(p150)
 チャンスというのは,じつは誰にも,いくつになってもあるものです。あなたの人生も,あなたがその気になりさえすれば,まだまだ変わっていきます。可能性の扉は,いつでも開かれているのです。(p164)
 70歳を過ぎたら,「自分に残された時間」を考えてみましょう。(中略)毎日というのは,なんとなく流れてしまいます。よほどの計画を立てない限り,あっという間に1日は過ぎて,「何もしなかった日」が続いてしまうのです。とくに男性は定年で仕事がなくなると,そうなってしまいがちです。(p167)
 「シャンパンタワー」というのは,グラスをピラミッド状に積み上げ,シャンパンを注ぐセレモニーのことです。そのすべてのシャンパングラスをシャンパンで満たすには,ます一番上の,1つめのグラスを満たし,それがあふれることで,下のグラスにシャンパンが注がれていくわけです。(中略)まずは,自分自身に注ぐことが大事なのです。自分に注いであふれたエネルギーが,次の段へとあふれていくことこそが,美しくエネルギーが行きわたる形なのです。(p174)
 昭和生まれは,自己犠牲を美徳だと考えがちです。(中略)が,70歳を過ぎたら,自分優先でいいのです。いや,本当は70歳を待たず,60歳でも,それをすべきです。(中略)自分を優先するというのは,自分のことをするというのではありません。自分がしたいことをするのです。(中略)あなたの人生が充実していると,元気でいられます。70歳を過ぎたら,あなたが元気でいることが,あなただけでなく,あなたの周囲の人たちにとっても,幸せなことだと気づくのではないでしょうか。(p176)
 外食や旅行をするときに,目的は何かといえば,自分を喜ばせることではないでしょうか。(中略)誰かに見栄を張るための贅沢は,70歳になったら,もう卒業していいでしょう。いや,卒業すべきでしょう。(p180)
 年を重ねると,それだけで気持ちは暗くなりがちです。どんなに若々しさを保っている人でも,自分の老いを感じない人はいないからです。(中略)その暗い気持ちが,病気を誘発してしまうこともあるのではないかと私は思います。だからこそ,気持ちを明るく持っていくことが大事なのです。(p180)
 「お金は使えない」となったら,知恵を絞りましょう。知恵は,そうして使うのです。「フレンチのフルコース」に行くのが難しいなら,自分でフレンチを勉強して,家族にふるまってはどうでしょう。そのほうが,ホテルで食べるより,ずっと楽しそうだと私は思います。(p181)
 未来というと,ずっと先のことを考えてしまいます。30代,40代の若いうちはそれでよいのですが,70歳の未来は,明日のこと,明後日のことでいいのです。(中略)昨日の失敗を引きずることもありません。後悔している時間は,70歳にはないのです。「今日,何をするのか」「明日,何をするのか」ということを考えていきましょう。(p182)
 年を重ねれば重ねるほど,人生の表舞台には立てなくなる,というのは,これまでの常識でした。でも,いまは違います。(中略)人生70年時代,80年時代のロールモデルはあっても,それ以降はどうして生きていけばいいのか,健康をどう保っていけばいいのかを,模索していかなければなりません。いわば,いま70歳のあなたが,そのモデルとなっていくことができるのです。(p188)
 「自分なんて」という言葉を使ってはならない,ということを本や講演で伝えています。(中略)そういっている人には,どんなこともできません。仕事もまわってこないでしょう。(中略)「自分になんてできない」と考えるより,「自分にもできるかもしれない」「いや,自分でなければならない」と考えるほうが,人生は楽しくなるでしょう。(p190)
 たいていは「年齢」や「家族」の話になるのです。(中略)そういう話しかできない人は,話材のない人です。つまり,「内」の話しかできない人は,その話を発展させていくことができません。(p194)
 興味のあることには,列車の時間も忘れて,それだけ没頭できるというのは,やはり大きな才能でしょう。(p196)
 私は,70歳になった人にこそ,手帳を持つことをオススメします。105歳で亡くなるまで,生涯現役を貫いた医師,日野原重明先生は,100歳のときに「10年日記」を買って,3年後の予定も書き込んでいたといいます。(中略)人生というのは,気を抜いていると,あっという間に,なんとなく過ぎてしまうものです。悪いことに,なんとなく過ごしてしまっても,年を取ると誰も叱ってくれません。(中略)そのために,日記や手帳を使って,これからの予定や,その日に知ったこと,気づいたこと,考えたことなどを書き込んでいきましょう。スマホなどに記録することもできると思いますが,私は手と脳はつながっていて,「手で書く」ことで,脳も活発になると信じています。(p198)
 年長者というのは,その存在感で貢献できるということがあるのです。(p203)
 若々しいことは素晴らしいことですが,それよりも大切なのが「自分らしい」ということです。いくつになっても,自分らしく生きられることが,人生の目的といっても過言ではありません。その「自分らしさ」を守るには,「年齢」に制限されないことです。(p207)
 70歳を過ぎて,私が一番無駄なことだと思うのは,「自分にないもの」を数えることです。(p208)
 どんなことでも10年続けていけばプロになれる,といわれます。あなたも,これからの10年をかけて,「残せる仕事」に取り組んでみませんか。(p211)