2021年5月25日火曜日

2021.05.25 徳力基彦 『「普通」の人のためのSNSの教科書』

書名 「普通」の人のためのSNSの教科書
著者 徳力基彦
発行所 朝日新聞出版
発行年月日 2020.08.30
価格(税別) 1,400円

● 著者は「note」でプロデューサーを務めている人だから,ネット発信には積極的というか,ネット発信するように勧めるのが仕事だ。
 ということを踏まえて読むべきものだとは思うのだけども,いたってマトモな,正統派のネットへの勧誘が展開されている。

● Facebookは2年ほど捏ねくってしまったが,IDを削除した。やめて正解だった。スッキリした。無駄なことをしている感がなくなった。
 が,Facebookにも貢献点はある。ネットは匿名が常識だった日本社会に,ある程度ではあっても実名主義を定着させたことだ。これは特筆しておくべきところでしょう。

● 本書もまず実名でやることを説く。リアルとネットを切り分けないということでもある。リアルでの自分とネットでの自分を別々にしない。リアルの自分をネットにも置く。
 本書は読者対象をビジネスマンにしているのだが,そうすることによってネットとリアルがうねり出して,仕事にも跳ね返ってくる。

● 併せて,インフルエンサーに影響されるな,ネットで稼ごうとするな,という点も説かれる。バズることよりもコミュニケーションを目的にすべきだ,と。
 できもしないことをやろうとするな,という言い方はしていないけれども,まぁそういうことだろう。
 ハードルを下げて,自然体で継続することが一番大切だ。そうして,ネット発信せよと勧めるのだ。もちろん,そうすることのメリットも説かれている。
 
● 以下に転載。
 どんどん実名で発信していくべきだと思います。SNS発信は「リアルの延長線上」でつかってこそ,ビジネスで真価を発揮するからです。(中略)SNS発信に対して感じられる負のイメージは,リアルとは異なる匿名の別人格がたくさん存在しているからだと思うのです。(p9)
 実名による発信は,ネット上に自分の「分身」を置くのと同じです。「分身」はネット上に発信者の情報を蓄え,他者とのコミュニケーションを誘発してくれます。(p9)
 2020年,世界は新型コロナウイルスのパンデミックに直面しています。道のウイルスの前ではリアルのコミュニケーションは脆弱です。(中略)ネット上に発信の場所をもたなければ生活もビジネスも困難な状況に陥っているのです。(p15)
 自分がこれから書くものを「作品」「記事」「コラム」と思わないことです。(中略)「発信」という言葉を重く受け止めすぎないようにしましょう。(p41)
 プルのコミュニケーションにはプッシュのコミュニケーションにはないメリットがあります。それは,コミュニケーションコストが低く,あなたにも相手にも負担が少ないこと。そして,「ハプニング」を生み出してくれることです。(p48)
 メーリングリストのように相手に直接情報を送りつけたほうが一見,大勢が読んでくれそうに思いますが,実際は逆です。情報をネット上に置いておくほうが,心からその情報を求めている人が少しずつ増えていくのです。(p50)
 SNS発信には「蓄積効果」があります。ニュースメディアとは違い,ぼくらの発信できる情報は地味で小さなものかもしれません。しかし,小さな発信も継続すれば実績として蓄積され,可視化されていきます。ブログで発信しておけば,検索もかんたんにできます。発信を継続することによって,発信者側に対する安心感,信頼感が醸成されていきます。(中略)ネットの蓄積効果が,リアルに還流される現象が起こるのです。(p52)
 発信を続けることは「思考訓練」になります。(中略)インターネットが登場してから,世の中の情報量は爆発的に増えています。このような時代にあっては,もはやインプットに昔のような価値はありません。(中略)アウトプットを前提にしておくと,情報のインプットのしかたはおのずと変わります。(中略)このインプットからアウトプットまでの一連のプロセスを日々くりかえしていると,思考訓練になります。(p54)
 実名でSNS発信をしなければ,人とつながる機会がなくなります。対人関係が薄くなるため,刺激が少なく,成長を促進されることもない。(p63)
 リアルの世界には,おしゃべり好きな人とそうでない人がいると思います。SNSの世界にも向き不向きがあり,(中略)リアルの自分に近い,自然体でSNS発信をすることが継続のコツです。(p86)
 発信のハードルを上げないためのマインドセットがあります。それは,発信を「自分のためのメモ」だと考えることです。(中略)メモですから,フォロワー数を増やさなければ,PV数は10万以上でなければなどとプレッシャーに思う必要もありません。(p88)
 「メモなら何もブログに書かなくても」「パソコンに保存すればいいだけでは?」と思う人もいるかもしれません。しかし,この「自分のためのメモ」をあえて発信するのが,仕事に役立てるための大きなポイントになるのです。(中略)まず,自分の役に立ちます。(中略)ブログにアップしておくと(中略)Googleなどの検索エンジンでかんたんに探すことができます。(中略)「自分のためのメモ」は,じつは人の役にも立ちます。(p89)
 ブログの黎明期には,毎日書かなければ意味がないといわれたことがありました。(中略)(しかし)忙しい時期に無理する必要はありません。毎日でなくてもいいから,長く続けていくことが大事です。(p125)
 読んでほしい「特定の一人」をイメージすることで,あなたのメモが読まれる確率が上がるのもまた事実です。その人が興味をもちそうな切り口,表現を考え抜いて来たメモは,本人だけでなく,その人と似た属性の読者の興味も引きつけるからです。(p131)
 インフルエンサーの真似はしないようにしてください。(中略)いわゆるバズをねらう発信方法は,ビジネスパーソンには危険がありすぎます。(p134)
 ・おっさんは本質的に無駄な議論と説教するのが大好き。
 ・ヲタやギークは専門分野の知識をひけらしたがる。
 ・コミュニティには一定割合で揚げ足取りの好きな連中がいる。
 ということを上手く利用してやれば良いのです。(p135)
 面と向かって人に言わない,言えないようなことを発信しないようにしましょう。人への配慮が必要なのは,リアルもネットも同じです。(p136)
 自分のためのメモからコミュニケーションを生むコツは,発信の方法を人とは少しズラすことです。(中略)工夫といっても難しいことではありません。(中略)たとえば,名刺交換をしたら必ずメールを送る。(p144)
 流行りものや新しいもの,話題のものに飛びつくのは,コミュニケーションの量を増やす一つのセオリーです。(p153)
 大切にしてほしいのが「未来予測」の観点です。過去の事例をもとに他者や他人に批評を加えるより,未来予測に重点を置いたほうが新しいビジネスのアイデアにもつながります。(中略)発信するときは,関係者が読む前提でまとめましょう。ポジティブな内容のほうがシェアされたり反応をもらったりしやすくなります。(p154)
 マスに受ける話題を取り上げるより,ニッチな話題で発信するのもズラすコツの一つです。(p156)
 今のネットメディアは「深さ」より「広さ」を重視する方向に向かっているようにみえます。(中略)しかし,ぼくらは読者数やフォロワー数でなく,自分の仕事に役立てることが目的なので(中略)時には「深さ」で勝負していきましょう。(p157)
 「自分はこの程度の人間だ」と決めつけてしまうと,それを超える「ハプニングはなかなかやってきません。日々の行動でちょっと背伸びをする意識をもってみてください。(p164)
 あなたの発信を読んでくれた1PV,1フォロワーを,単なる数字を思わず,「一人」と出会ったと認識するようにしましょう。(中略)それだけですばらしいことではないでしょうか。(p167)
 こちらから火事場を見に行かなければ,他人の炎上に巻き込まれることはまずありません。「火事場のヤジ馬」にならないようにしてください。(p203)
 本当にあなたにスキや非があったのなら絶対に反撃してはいけません。あなたの印象が悪くなるだけでなく,さらに火を大きくされてしまうおそれがあります。(p204)
 ネット上の議論に勝つことはあり得ない。相手を変えることもできない。このことをまず認識しましょう。(中略)売られたケンカを買ってはいけません。逃げるが勝ち,なのです。(中略)相手が勘違いをしていたり間違った認識をしていた場合,正したくなるかもしれません。それでも,相手の意見を変えることはできないと割り切りましょう。(p204)
 ある意見には,必ず反対の意見が存在します。(中略)指摘されるのは嫌,人の意見は聞きたくないという人は発信をしないほうがいいでしょう。そもそも,個人が発信をすること自体が,ある種のエゴイズムを含む行為です。自分の話を聞いてほしい,宣伝したい,キャリアアップしたいというエゴがあるから発信しているのです。(中略)そのエゴがある以上,あなたのことをネガティブに受け取る人は必ずいます。(p209)

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