書名 ニッポン47都道府県 正直観光案内
著者 宮田珠己
発行所 本の雑誌社
発行年月日 2019.01.30
価格(税別) 1,650円
若いときは太宰治の文章を真似しがちだったという人がいると思うのだが(生まれてすみません,とか言いたくなるでしょう),宮田さんの口吻にもそういうところがある。
● 以下にいくつか転載。
だいたい半島というのはおしなべて変なのです。煮詰まっているというべきでしょうか。煮詰まっているから文化が濃い。濃縮されている。つまりいろいろやりすぎということです。(和歌山 p11)
それはあくまでオフィシャルな答え。そんな杓子定規な態度では現場で起きている状況に対応できません。私に言わせれば,リアス式海岸とは穴を味わう海岸のことです。(岩手 p17)
なぜ関東平野はダサいのか。答えは簡単。山がないから。これに尽きます。山,ないったらない。東京を出て京浜東北線や宇都宮線で北を目指すとき,車窓に広がる茫漠とした風景の絶望感といったらありません。(埼玉 p23)
長野県は全国にチェーン展開している神様とは違うタイプの神様があふれている気がします。(長野 p116)
京都が陰陽道だの魔界だのオカルト的な側面をたまに打ち出してくることがありますが,それはただ人間の心の闇を表現したものにすぎません。妖怪だの鬼だの幽霊だの名前のついた怪異は,結局は人間が作り出したもの。(奈良 p118)
お寺も神社も,京都に比べて人間くささが薄い気がします。(奈良 p119)
飛鳥ほど正々堂々とわけがわからない場所はありません。(奈良 p122)
不思議なもので,水のきれいな場所は何度行っても飽きません。滝だの湖だの鍾乳洞だのリアス式海岸だのはすぐに飽きるのに,透明な水は飽きないのです。(高知 p138)
食いだおれ,なんて言葉がありますが,いまやおいしいものは日本中にあるので,わざわざ大阪まで行かなくてもいいかも。(大阪 p160)
旅の醍醐味はつまり意表を突かれること。これまでの思い込みが否定され,新しい世界が開けるとき,旅は最大限に盛り上がります。(中略)それまで基本的に海は左側に見えていたのが,関門トンネルを抜けた途端,級に海が右側に現れるのです。その瞬間,世界がねじ曲がったかのような錯覚に襲われます。(山口 p169)
どこであれ神宮と名のつくところは案外見るものが少ないというのが定説です。ほとんど森になっているからです。(三重 p250)
そもそも歴史に興味のない人間にとっては古代ほどどーでもいい時代はありません。(宮城 p275)
何びとも京都を懐柔することはできません。人はついつい京都に選ばれたがります。自分だけに秘密の京都が扉を開いてくれないかと期待しますが,いちげんの観光客にそんなことは起こりません。いや,いちげんでなくても起こりません。(京都 p290)

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