2018年5月31日木曜日

2018.05.31 出口治明 『働く君に伝えたい「お金」の教養』

書名 働く君に伝えたい「お金」の教養
著者 出口治明
発行所 ポプラ社
発行年月日 2016.01.13
価格(税別) 1,300円

● 若者に向けて書かれたもの。が,ロートルが読んではいけないことはないので,読んでみましたよ,と。

● 老後はこれだけないと経済的にやっていけないというタイトルの本が,わりと次から次へと出版される印象。その“これだけ”というのは億を超える金額だったりする。
 その理由は,世の中が年寄りだらけになって,読者の大宗が年寄りになっていることがひとつある(と思う)。もうひとつは,大衆は不安が好きということだろうね。漠然とした不安がじつは好きなんじゃないかと思うんだよね。
 だから,著者や出版社は大衆の不安を煽ってけしからんというのは間違いで,著者や出版社は大衆(読者予備軍)におもねっているだけなんでしょう。

● なので,本書はひょっとするとドンキホーテかもしれないんだよね。だって,そうじゃないんだよ,いたずらに不安になる必要はないよ,と理路整然と説いているわけだから。
 でも,本書が想定している読者は若者だからね。年寄りじゃないから。

● これは古今の真実なんだろうけど,情報というのは,それを必要とする人のところには行かないもの。
 本書を手に取るような人には,たぶん,本書の情報は不要だろうな。本書を必要としている人が本書を手に取ることはないような。
 でもまぁ,そういう人が5人でも10人でもいれば,もって瞑すべしと考えないとなぁ。

● 以下に転載。
 眼の前のことで不安になったら歴史を振り返ってみるというのは,近視眼的になることを防ぐ一番の方法です。(p23)
 「そもそも,なぜメディアは不安ばかり煽るのか?」を考えてみましょう。答えは簡単。不安を煽るほうが商売がしやすくて,「儲かる人」がいるから。それだけのことです。(中略)不安になれば,まじめな人ほどなんとかしようと行動する。そのまじめな人の行動の先には,必ず「儲かる人」がいる。(p23)
 国の危機とは国債の危機であり,国債の危機とは金融機関の危機です。金融機関がつぶれても国はつぶれませんが,国がつぶれたら金融機関もつぶれます。近代国家では,その国以上に安全な金融機関など存在し得ないのですね。(p32)
 大切なのは,「いまの高齢者たちのせいで自分たちは割を食っている」といじけることではありません。「どうしたら自分たちは少しでもいい人生が送れるか」を考えることです。人生は短いもの。むだなことに思考を割くのはもったいない。損をしているという不安を持つこと自体が,むしろ損なのですよ。(p47)
 手当や助成金って給付される人が偏っていませんか? たとえば,シングルペアレントや,生活が立ちゆかなくなった人とか。つまり,これは不公平なのではなく,「誰でもそちら側になりうるから」ということですか? 誰が「給付される側」になるかわからないからみんなで負担しましょうよ,と。(p59)
 いくらリッチでも,退職した高齢者には所得税や社会保険料はかかりません。所得税は,稼いだお金にかかるものですから。(中略)ですから,基礎年金に使うお金の出どころとして,所得税のウェイトを減らし,消費税のウェイトを増やせばフェアだとは思いませんか? リッチな層ほど高額商品を購入する傾向にありますから,消費税の負担額も自ずと大きくなる。(p62)
 アメリカには消費税(付加価値税)という概念はありません。なぜ必要ないか? 人口が増え続けているからです。(中略)労働人口が増えているなら,所得税に頼るほうが理にかなっている,というわけです。(p64)
 ツイッターやフェイスブックなどのSNSやメディアを盲信してはダメです。自分で一次データを見て,数字やファクトをきちんと把握して,自分のアタマで考えるしかありません。いままで情報を受動的に受け取ってきた人にとっては一苦労でしょう。でも,これが「お金リテラシーのある大人」への第一歩でもあります。(p65)
 僕は「貯める」や「殖やす」よりも「使う」ことのほうがずっと大切だと思っているのです。なぜなら,お金を使うってすごく楽しいことだから。そして,使うことこそがお金の本質だから。(p81)
 お金を使うときのルールはひとつだけ。「楽しいかどうか」です。楽しく,かつマイナスにならなければ,それでいいのです。(p81)
 みなさんの周りにも,大人の美学のように「小銭の計算はするな」とか「タクシーでおつりは受け取らない」といった話をするバブルおじさんがいるかもしれません。けれど,そんなものは美学でもなんでもありません。爆発的な成長を遂げた戦後日本のなかで,お金と真剣に向きあい,考える必要がなかっただけのこと。その場,そのときの社会の状況によって,人の「当たり前」は変わるのです。(p84)
 どうすればツールとして賢く楽しく使えるか。これに関して,僕が定めているルールがあります。それが,「オール・オア・ナッシング」の原則。100か0か。すべてか無か。いいものにはドンと大きく使い,そうでないものにはできるだけ使わない,というルールです。(p86)
 どこまで好奇心を持って庭の奥まで歩いていけるかというと,やっぱり体力に比例する。(中略)体力と気力があるときに使う3万円と,衰えてきたときに使う3万円とでは,前者のほうがずっと濃密な体験ができるのです。(p94)
 いくら物理的な時間があっても,本人に「この時間をめいっぱい使おう」という意欲がなければ,ほんとうの意味での「使える時間」にはならないのですね。いわば,時間という大きな箱を持っているけれど,入っている体力や気力がすかすかなのがお年寄り。小さな箱しかないけれどぎゅうぎゅうに詰まっているのが,君たち20代の若者,ということです。(p95)
 「ケチ」と「倹約」を混同しないことです。(中略)スーパーの値段を調べずに,また,調べたとしてもめんどうくさがっていつもコンビニで買い物をし続けるのは,「浪費」です。「同一商品や同等のサービスは,比較して,安いほうを選ぶ」これは消費の大前提で,全世界共通のルールです。(p95)
 「若者の○○離れ」は,何かを売りつけたいおじさんとおばさんが,自分が若いときのように消費しない若者に向けて発した捨て台詞のようなものでしょう。(p101)
 どこの国でも「伝統」をたどっていくと,意外とおじいちゃん,おばあちゃんくらいから始まっていることが多いのですよ。自分が小さいころから体験している文化や習慣は,まるで平安時代くらいから続いているように勘違いしてしまうものです。(p121)
 本来,人の人生はワンパターンではありません。(中略)原理原則や数少ないルールさえ押さえておけば,あとは自分で決めていけばいいのですよ。(中略)みんなマニュアルに頼りすぎです。(p125)
 みなさんの人生もこれからどう変化していくかわからないし,社会にも何が起こるかわからない。だから,流れる川に身をゆだねて,ゆったりと流されていけばいいのです。あなたが無理して泳がなくても,川は自然と流れてあなたを運んでくれます。(中略)行き当たりばったりのほうが人生楽しいでしょう。(p126)
 ある調査によると,東京で亡くなった高齢者が遺したお金の平均は,なんと3000万円だそうです。その3000万円があれば,若くて元気なときにもっと楽しいことがいろいろできたろうに・・・・・・と思わざるを得ません。(p136)
 親がすでに貧困にあえいでいるなど特別な場合を除いて,親のために貯蓄するという考えは持たなくていいと思います。お金を援助するよりも,みなさんが親にすべきことがあります。それは,親にいつまでも健康でいられるよう,自立を促すこと。シンプルに言えば,放っておくことです。(p180)
 内側から鍵をかけるような生活をしていると,あっという間に足腰もアタマも「弱った老人」になってしまいます。(p181)
 20代のみなさんが親の介護を心配して費用を貯めようというのは,優しさではあるかもしれませんが,むだな責任感であるとも言えます。そういう一見真面目な考えが,人生を窮屈にしてしまうのです。(p184)
 残念ながら,どれだけアタマをひねって将来を予測しようとしても,10年先はもちろん,5年先に何が起こるかは誰にもわからない。それほど人間のアタマはよくできていません。人類の歴史で何かを成し遂げた人は,むしろ偶然の出会いや運によってそれを達成していることが多いのですね。(p202)
 実感を持って「ここに賭けよう」と思える企業を選ばなければ,自分でやる意味がないと思いませんか? だって,評判やマーケットの動きだけをアテにしていたら,本質的には「人に任せる投資」と変わらないでしょう?(p236)
 知らないものに,投資はできない。個別の株式投資は「よく知っている日本の企業に投資する」のがセオリーです。(p238)
 20代では・・・・・・いや,60代になったとしても,「自分の仕事が天職かどうか」なんて誰にもわからないのです。(p249)
 やりがいや自己実現の幻想に縛られ,せっかくご縁があった仕事をないがしろにする。これでは,本末転倒です。(p250)
 「衣食住が満たされるまでは,お金がすべて」。そう言いきってもいいでしょう。そこさえ満たせたら,人間はそれほど不満を抱かない生き物です。むしろ,お金以外のことでものごとを判断するようになります。(p250)
 独裁者という連中は改心したためしがありません。(中略)入った企業がブラック企業だったら,みんなで大脱走するのがいちばんです。(中略)ブラック企業で真っ当なスキルが身につくはずがありません。まずは飛び出して,スキルが身につく場所に飛び込んでみましょう。(p259)
 スキルは,新しい環境に積極的に身を置いて,大変だ,大変だ,と言いながら身につけることのほうがむしろ多いのです。(p261)
 「ひとりで海外旅行ができない人と海外に行くことほどつまらないことはない」という言葉があります。(p267)
 貧困層と言わないまでも,「どうもぱっとしない」「生活が苦しい」「ドツボにはまってしまった」と感じている人もいるでしょう。「このままではどん詰まりだ」,と。その人たちに足りないのは,「ほんとうのことを教えてもらった経験」。つまり,リテラシーを養うための教育なのですね。貧しい生活に陥るいちばんの原因は,受けるべき教育を受けてこなかったことにあります。(p270)
 やる気が高まっているときに気をつけてほしいのは,高額なセミナービジネスや講習ビジネスのカモにならないこと。貧しい人からむさぼり取るビジネスは,そこら中に潜んでいます。「人生を変えたい」という願いは切実ですからね。(p273)
 「教えてもらえない→知らない→不安になる→行動しない」という負のスパイラルをつくってはいけません。(p279)

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