著者 成毛 眞
発行所 PHPビジネス新書
発行年月日 2019.10.02
価格(税別) 850円
● 小気味いいほど論旨明快。この内容は成毛さんにしか書けないもの。それを読んで自分も実行できるかというと,できるところもないではない。
が,その部分はすでにやっている。やっていないことは,やらないままかな。でも,いいのだ。
● 以下に転載。
この先,ビジネスの世界で生き残っていきたいならば,悪いことは言わない。古いものを捨てて,新しいものをどんどん使うべきだ。なぜか。それは,古いものを積極的に捨てる意識を持たないと,世の中の変化についていけなくなるからだ。(p17)
私自身も,新しいものはガンガン買って使うようにしている。(中略)見たことのないような画期的なサービスや商品を目にしたら,よほどの金額でなければ,値段を気にせずに試してみる。(p22)
iPhoneの最新型はいま現在のトレンドの集大成と言っても過言ではない。(中略)HDDレコーダーも,全録レコーダーをフル活用している。(中略)私はとにかくテレビをよく見るので,いまやこれがないと話にならない。(p23)
さらに不思議なのは,日本がなぜ,そのデジタル途上国のマネをするのかということだ。誰がどう考えても「タッチ,ピッ」が便利に決まっている。いちいちQRコードを表示させるなど,バカの極みである。(p28)
わかっているにもかかわらず,現実的には,新しいものを取り入れるのに消極的な人が多い。消極的になる理由は,「捨てない」からだ。(p29)
「捨てる」ことが重要なのは,ものだけでなく,考え方や知識も同様だ。(中略)いまの時代に合った考え方や知識を身につけるには,これまで学んだ考え方や知識に上書きをするのではなく,いったんそれらを捨て去って,新たに学び直すことが必要という考え方だという。私は,中高年の学び直しに関しては否定的だが,この考え方には同意する。(p31)
自分がどうやったら勝てるかを考えた場合,何かを加えることよりも,むしろ何かを捨てて,一つに集中したほうが良い場合もある。中途半端に得意としている仕事を思い切って捨ててしまい,ほかの人よりも秀でる可能性のある仕事だけに,自分の持てるリソースを集中投下するのである。(p33)
先日,テレビで,来日した外国人がコンビニのカツ丼を食べて,「これが3ドルなのか」とショックを受けていたが,その外国人の感覚が世界標準なのだ。たかだか500円の弁当で,一流店と遜色ないクオリティに仕上げる技術にこだわるのはどうかしているのである。このような職人気質は日本人のDNAに組み込まれているのかもしれない。ならば,一個人も,それを活用すればいい。(p34)
仕事のムダをなくし,生産性を高める最良の方法は何か。それは,「仕事を捨てること」。作業効率を改善するのではなく,作業全体を止めてしまうことだ。(p48)
日本マイクロソフトの社長に就任してから,私は,会議をなくすことにした。部下たちに「君たちで勝手に会議するのは,構わない。だが,絶対に俺を呼ぶな」と伝えたのである。(中略)社長主催の会議を一つもしないので,アメリカ本社から「会議ぐらいやれ」と言われ,ビル・ゲイツから「お前,普段,何やってんだ?」と聞かれていたが,意に介さなかった。(p51)
メールでコミュニケーションできないのは,思考が整理されていない証拠。つまり,伝えるべきことを的確に伝えるのがヘタなのだ。電話は仕事のできない人間がするものであり,そんなヤツらに,仕事のジャマをされたくない。(p54)
いずれも「営業は足で稼げ」を愚直に実行しているわけだが,ネット証券がこれだけ全盛の時代に,こんな昭和時代のやり方を続けていたら稼げるわけがない。(p59)
若い頃からマナーでがんじがらめになっていると,自分が管理職になったときに,部下をマナーでがんじがらめにするので,ろくなことはない。(p64)
「フリーアドレス」はデメリットもあるので,導入には注意したほうがいい。少なくとも開発系の仕事の場合は,フリーアドレスは逆に捨てたほうがいい。開発者には自分の城を築かせないと,独創的なアイデアが出ないからだ。(中略)オフィスに余計なものを置かないのもダメで,くだらないオモチャやガジェットなど自分が好きなものを仕事場に持ち込ませて,クリエイティブ性を発揮させようとしている。(p66)
かつて早稲田大学ビジネススクールの客員教授をして改めて感じたことだが,大半の人は,セミナーや研修,スクールなどの座学では成長しない。なぜかというと,そこで学んだことを実践するなら良いのだが,そんな人はほとんどいないからだ。「ためになることを聞いた」と言って,それだけで満足してしまうのが,関の山なのである。これほどムダなことはない。(p69)
ビジネススクールで習うような分析方法やフレームワークなどを学んだことで,独創性を失ってしまうのは,よく聞く話である。(p70)
私は,前任者のやり方は何もかも変えるようにしてきた。日本マイクロソフトでも,前社長のやり方をすべて変えてしまった。オフィスの場所まで変えてしまったくらいだ。(中略)後任の社長にも,「俺のやり方は全部捨てろ」と言っていた。それぐらい,私は思い切って変えることが重要だと考えている。(p72)
人生を振り返り,私が最も捨ててきたのは何かといったら,おそらく「人」だ。(中略)転職するたびに,それまで付き合っている人間をバッサリと捨ててきた。転職した翌日から,まったく会わなくなるのだ。(p76)
過去を語り合っても意味などない。私が語りたいのは明日だ。明日を語る知り合いや友達は,時代と自分の年齢に合わせてどんどん変わっていくものなのだろう。(p79)
フェイスブックでは,友達の誕生日に「おめでとうございます」のメッセージを送ると,他人も読むことができるが,はっきり言って,自分はいかにつまらない人間かということを何千,何万人にさらす最高の方法だと思う。(p82)
何らかのSNSで自己発信することはいまや必須だが,そのとき,最重視すべきなのが,プロフィール写真だ。私のように名前を忘れる人でも,プロフィール写真に特徴があると,ビジュアルとして記憶されるからだ。(中略)一度設定したら,プロフィール写真を変えないことも重要だ。(p91)
会社は仕事をする場であり,ウエットな人間関係なんて関係ない。(中略)私は,飲みニケーションに限らず,会社関係の付き合いは,とことん排除していた。慶事ですら断っていたぐらいだ。部下の結婚式や披露宴に招かれることは何度もあったが,じつは一度も行ったことがない。(p92)
ただ,そんな式嫌いの私でも,葬式だけは顔を出す。かつて仕事をしたことのある人や知り合いの経営者が亡くなったときは,必ず行くようにしている。(中略)「結婚式に行くバカ,葬式に行かぬバカ」という有名な言葉があり,経営者の多くはこの言葉を知っていて,実践している人も多い。(p97)
私は,スターバックスやタリーズなど,ちょっとおしゃれなコーヒーショップにはほとんど行かない。その理由は,それらの店のコーヒーが嫌いだからではない。そこにいる,気取ったヤツを見たくないからだ。具体的に言えば,「MacBook Pro」を開いてスタイリッシュに仕事をしている(と思い込んでいる)ノマドワーカーが嫌いなのである。(中略)飲みに行くときも,客層が悪そうな店には行かない。(中略)要するに,“頭の悪い人”と同じ空間にいるのが嫌なのである。(p101)
人間はバカとつるんでいるとバカが伝染るけれども,頭の良い人や気持ちの良い人と付き合っていると,良い影響を受ける。とくに,40代以上の人たちにすすめたいのは,自分より10歳も20歳も若い世代の人たちと交流することだ。(中略)何かを教えようとしないで,流行や視点など若い人から何でも吸収しようとする謙虚な姿勢をもつべきだ。(p106)
最近,ビジネスをしていて,大きく様変わりしたと思うことがある。かつては同業者同士は変なライバル意識をもっていたのに,それがなくなってきていることだ。(p110)
保険は,塵が積もってゴミとなる典型だ。(p129)
蕎麦屋を推すのは,手間をかけるほど美味しいのが明確だからだ。寿司は新鮮なネタの仕入れルートを確保して,半年ほどの修行を積めばそれなりの味を提供できるが,蕎麦はそうはいかない。(p145)
SNSを見ていると,毎日のようにミシュランの3つ星レストランのような場所に足を運んでいる人がいるが,愚の骨頂である。田舎者がルイ・ヴィトンのモノグラム・バッグを持つのと一緒で,所詮「ブランド信仰」だろう。(p146)
穿いている下着が高級ブランドでもユニクロでも,ランチがホテルのレストランでも駅前の牛丼店でも,ほとんど自分自身は何も変わっていないことに気づくだろう。だったら,悩む時間は極力減らしたほうがいい。(p148)
答えは,「良い本だろうが,つまらない本だろうが,どんどん捨てる」だ。分類などしている時間の余裕はないし,いまなら一度捨ててしまっても,読み返したくなったら,ネットですぐに購入できる。それに読み返すといっても,たいがいの本は読み返さないものだ。読んだ本は,遠慮なく捨てて良い。(p150)
子供のオモチャは,湯水のように買い与え,飽きたらポイポイ捨てればいい,というのが私の持論だ。(中略)その理由は,子供には,とにかく多くの体験をさせてあげることが大切だからだ。(p163)
中学・高校までに,好きなことや自分の才能を見つけることは,のちの人生を大きく左右する。その年頃に見つからないと,やることが受験勉強ぐらいしかなくなる。(p165)
本来,インプットはアウトプットして,生産性を高めたり,イノベーションを起こしたりするために行うものである。しかし,インプットはそれ自体が目的になりがちだ。(p181)
発信する内容は自由であり,ビジネスに限らず,趣味についてでも構わないが,絶対に避けたほうがいいテーマがある。大衆が取り上げそうなネタだ。(中略)私もフェイスブックでさまざまなことを発信しているが,令和ネタはいっさい発信しなかった。(中略)他人とは一味違う視点で発信できる気がしなかったからだ。一目置かれるようなことを発信しないと,意味がないのである。ありがちなのは,経済や政治関連の出来事の是非をあれこれ論じる人。これもやめたほうがいい。自分はいかに賢いかを誇示しようとしているのだろうが,残念ながら,周囲はそうは見てくれないからだ。(中略)そのように,大衆的なネタを避けてアウトプットをしていると,SNSのフォロワーから,「あの人の言うことは,ほかとは視点が違っていて面白い」と見られるようになる。たったこれだけで,SNS上では,凡人の領域から一歩抜けた存在になれるだろう。(p184)
私も,フェイスブックで発信するときには,「人と違う見方」を意識するし,自分のアイデアが誰にどの程度受け入れられるかを日々試しながら,次作の企画のテストマーケティングをしている。したがって,フェイスブックへの投稿は,つねに真剣勝負だ。誰でも思いつきそうだが誰も考えてこなかったことや,誰でも知っているようで意外にホントのところは知られていないことをひねり出すように投稿するのは,これだけ本を出している私にとってもけっこう大変なのだ。(中略)たくさん投稿しようとすると,どうしても平凡なネタを投稿せざるをえなくなる。投稿するほど平凡な人に見えてしまうぐらいなら,思い切って頻度を減らすべきだ。(p186)
コツはない。ともかく最初の1行を書き始めるのだ。全体の構成やら落とし所を考えない方がいい感じの文章になると思っている。(p189)
ただし,私の場合,フェイスブックに投稿してからも,平均5回以上書き直している。本職の作家ならさらに推敲を重ねているだろう。文章は書いて,直しての繰り返し。訓練しかない。(p189)
(インプット手段の)おすすめは,ズバリ「テレビ」だ。(中略)テレビは,素晴らしい番組が山ほどある,最強の情報源だ。それを知らないヤツこそ,完全に情弱だ。(p190)
できるだけ効率良く見るにはコツがある。まず,リアルタイムではなく,録画で見ること。そうすれば,1.3倍速で見られるので相当な数の番組を短時間でチェックできる。(p197)
見るべき番組は,自分の興味のある。興味のないものをいくら見ても頭に入ってこないが,興味のあるものは,子供が恐竜の名前を簡単に覚えてしまうように無限にインプットできる。苦もなく見続けられるので,ネタも見つけやすいというわけだ。(中略)逆に言うと,自分の興味のないことは,たとえ流行だろうがなんだろうが,情報をインプットする必要はない。私もそれを実践していて,ベストセラーは読まない。みんなが読んでいるものを読んでもネタにならないし,何よりつまらないからだ。(p199)
私のように書評をルーティンワークにしている人は,電子書籍ではなく紙の本を読むべきだ。付箋を貼ったり,ポイントを書き込んでいくので,電子書籍だと作業効率が悪い。同じ作業をしても紙の本のほうがサッとできて,読書そのものに集中できる。(p201)
友達だろうがなんだろうが,つまらないことを言う人は,どんどん「ミュート」することを強くすすめる。(中略)こうして,自分にとって欲しい情報だけを得られるタイムラインを編成するのが,SNSの魅力だ。気に入らない人をミュートしていくと,同じ思想・志向で偏りやすくなるが,気にする必要はない。SNSぐらい自由にやってもいいだろう。(p204)
私がブログやメールマガジンでは発信せず,フェイスブックにしか投稿していないのは,SNSがメディア化しているからだ。最近は「note」を書く人が増えているようだが,いちいち好みの情報を探しに行くのは面倒くさく,今後,そこまで大きく広がることはないと思う。誰もが気軽に見られるメディアに無料で投稿し続けて,アナログの形でマネタイズ(私の場合は書籍化)する。これこそが,令和型のアウトプットだろう。(p206)
アウトプットするときに,私がもう一つ意識していることがある。それは,できるだけほかの人が書いたものを見ないことだ。(中略)他の事例を参考にしすぎると,そちらに引っ張られてしまい,斬新な事業ができない。それよりは,思い込みで突っ走っていったほうが,面白い事業ができるし,その事業は発展する。何事も,駆け出しのうちは先人の真似をしたり,参考になる事例を勉強したりすることから始まる。しかし,オリジナリティを発揮したいなら,先人の教えや先行事例などを捨て去って,自分一人で考えることが大切なのである。(p209)
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