著者 伊集院 静
発行所 日本経済新聞出版社
発行年月日 2019.12.13
価格(税別) 1,500円
● ゴルフはやらないんだけども,読んでみた。文章の調べや勢いを味わう。
● 以下にいくつか転載。
プロゴルファーはあまい好きではないが,彼(トム・ワトソン)は数少ない人格者のプロゴルファーである。(p13)
優雅にプレーするゴルファーなど一人もいない。自らのミスショットに,唖然,茫然,憤怒,絶望。ゴルフは辛いことを強いるスポーツである。(p32)
ゴルフには挑むプレーもあるが,己を律して耐える精神も必要である。アマチュアゴルファーの大半は傲慢である。なぜならほとんどの人が,反省というものを知らないし,練習をしようとしない。(p38)
夜明け前,独りで黙々と重いカメラ機材を背負って歩き,凍てつく海風の中で震えながら,一瞬の時間を待っていたカメラマンの姿を想像する。美しいものに巡り逢うためには人は苦境に身を置かねばならない。(p44)
記憶に残っているのは,なぜか,むなしく消えていったショットばかりである。短い半生を振り返ってみると,なぜか苦しかったり,辛かったりした日々ほど懐かしく思い出されることと似ていなくもない。(p104)
普段,懸命に働き,週末くらいは思い切って派手に明るい服装で一日を楽しみたいという考えもあっていいだろうが,私にはそれができない。なぜか? 私にとってゴルフは人生の大切な友であるから,せめて礼節,礼儀を持ってむかいたいからだ。私にとって礼儀のひとつは,他人を驚かせることはしない,というモットーがあるからだ。(p127)








