2020年1月19日日曜日

2020.01.19 野口悠紀雄 『「超」AI整理法』

書名 「超」AI整理法
著者 野口悠紀雄
発行所 KADOKAWA
発行年月日 2019.06.29
価格(税別) 1,500円

● 副題は「無限にためて瞬時に引き出す」。いらないものを捨てるという発想をやめて,検索で必要なファイルを引きだすということ。

● 本書の肝は2つ。スマホ&音声入力による「超」メモ帳の提唱。Googleレンズの勧め(写真を撮るだけで紙の文書をテキスト化できる。外国語で書かれたものが格段に読みやすくなった)。
 著者の野口さんは御年79歳。それでこの柔軟性。これからロシア語の勉強も始めるという。爪の垢をいただきたい。

● 以下に転載。
 整理はそれ自体は何も生み出さない仕事なので,いかに整理に時間を使わずに仕事をこなしていくかが重要です。(p5)
 世の中には,ノウハウでないノウハウが多すぎる(p5)
 デジタル情報について重要なことは,「いらないものを捨てる」という努力をやめて,「必要なものを検索する」という方針に転換することです。(p6)
 不要と分かっているものを捨てないで溜め込んでおくというのは人間の本能に反することなので,決して容易ではありません。(p74)
 音声入力によって,キーボード入力に比べて文章を書くスピードを飛躍的に向上させることができます。ただし,速さより重要なのは,いつでもどこでも,思いついたことをすぐにメモにとれるようになったことです。(p7)
 音声入力が可能になったので,われわれは2000年前の権力者と同じことができるようになりました。いや,同じではありません。それ以上です。なぜなら,カエサルといえども,真夜中に思いついたことを即座に口述筆記させることはできなかったろうと思われるからです。それに対してわれわれは,スマートフォンを枕元に置いて寝るだけで,真夜中であっても,簡単に口述筆記ができます。(p28)
 グーグルレンズは,印刷された文字を読み取って,テキストに変換してくれます。これによって,検索が実に簡単にできます。(中略)どんな国の言葉も簡単に翻訳や検索ができます。いまやわれわれは,どんな外国語も読め,森羅万象と歴史と文学とあらゆる学問に通暁した世界一の物識り博士を,いつでも引き連れているような身分になったのです。(中略)グーグルレンズを使っていると,「カメラというのは眼にすぎず,重要なのはその後ろにある脳なのだ」ということがよく分かります。(p31)
 整理法の本にあるもう1つの大きな間違いは,「整理は分類である」としていることです。しかし,分類とは思想です。思想によって分類は変わります。(p54)
 パスポートを収納した封筒を,新聞記事を収納した封筒の隣に置くことは,どうしても心理的抵抗が働きます。「重要なものは,隔離して別のところに置く」というのは,人間の本能だからです。別の場所に置くために紛失してしまうにもかかわらず,この本能を克服できません。「超」整理法の実行は,一見したほど簡単ではないのです。(p59)
 『アルゴリズム思考術』では,「図書館では,返却された本を完全にソートして書架に戻すという作業を行っているが,これは,実は秩序を乱しているのだ」と指摘しています。返却された本がまず置かれる分別用の棚には,最後に利用されてから最も時間が短い本が集まっています。これらこそ最も重要な本なのですから,「そこから本が運び去られるというのは,犯罪行為に近い」としています。そのとおりです。(p65)
 ファイルを名前の順に並べるのは,住所録の発想です。デジタル情報にはまったく適していません。(p75)
 「捨てる努力をやめて,検索で目的のファイルを引き出す」「ファイルの数は,いくら多くなってもきにしない」という方針に転換したのです。すると,用途が一挙に広がりました。(p79)
 私はこれまで,音声入力で長い文章が書けることに注目していたのですが,それだけではなく,検索に音声入力が使えるというのが重要な点です。(p86)
 重要なことがあります。それは,「いらないものを捨てる」「重要なことだけを書き残す」という考えから脱却することです。これは,人間の本能なので,克服するのは容易ではありません。この本能を克服して初めて,「超」メモ帳を駆使することができます。(p88)
 庭は,少しずつでも毎日手入れをしていれば,美しく保つことができます。しかし,放置すれば荒れてしまいます。情報を蓄積するアーカイブもまったく同じです。作っただけで使わなければ,荒廃します。毎日使っていれば,効率的なシステムを維持できるのです。(p129)
 音声入力機能の最も有効な使い途は,長文のテキスト化であると私は考えています。長文を簡単に入力できることは,知的作業において新しい可能性を開きつつあります。(中略)ところが,不思議なことに,長文入力がきわめて有用であることに気がついている人は,あまり多くないように思われます。(p134)
 音声入力が使えるようになってから,スマートフォンは入力装置になりました。この変化は非情に大きなものです。なぜなら,PCと違ってスマートフォンは,いつでもどこでも使えるからです。(p136)
 メモはきわめて重要です。(中略)メモは,あらゆる知的活動の基礎です。メモが必要なのは,人間の脳は,短期記憶の保持について,能力が低いからです。そのため,思いついたことをメモに取らなければ,すぐに忘れてしまします。(p142)
 「メモすべきかどうか」などと思い悩まず,何でもメモするほうがよいのです。「考えがまとまってから入力しよう」と考える必要もありません。後から編集はいくらでもできるので,思いついたことをどんどん入力していくべきです。(p144)
 私は,「文章を書く際に最も重要なのは,とにかくスタートすることだ」と考えており,「全体の構想がまとまらなくても,とにかく書き始める」ことを心がけていました。(p152)
 適切な構造は,全体がかなりの程度でき上がってからでないと,分からないのです。(中略)この点から見ても,とにかく書き始めることが重要なのです。(p163)
 せっかく文章の形に整えたものを捨てるのは,いかにも惜しいことです。しかし,不要なものが残っていると,文章が弱くなります。(中略)音声入力を利用するようになると,さまざまなことを簡単に書けるため,このことの正しさがさらに増します。(p164)
 まず,思いついたことをツイートします。これは思考の断片でしかありません。しかし,保存しておきたい思考の断片です。(中略)同じ内容のことを何度もツイートしてしまうこともありますが,あまり気にしないことにします。(p188)
 文章に残すことによって,時間を隔てた自分との間で伝達をすることができます。つまり,1人の人間が2人分,3人分の仕事をできるようになるわけです。これはきわめて大きな効果です。(中略)文字は,時間を隔てて別人になってしまった自分自身との間の,伝承や継承をも可能にするのです。(p193)
 グーグルレンズの画像認識を用いて,独学を進めることができます。とくに,外国語の勉強には有用です。(中略)具体的には,つぎの方法によって,正確な翻訳が得られます。まず,ある程度長い範囲を訳させます。一部は間違っていても,全体としておよそ何を言っているかは分かります。そこでとくに知りたいところを訳します。すると,正解に近づきます。さらに細かく取り出すと,正解を出します。専門分野の文献については,こうした「分解法」で,文献をかなりの程度,読みこなすことができます。(p198)
 グーグルレンズを用いれば,グーグル翻訳の読み上げ機能を利用して,音読が聞けます。(中略)これは,外国語を勉強するための最強の方法です。(p206)
 新聞(とくに一般紙)の紙面は,もともと,詳しいニュースを伝えるというよりは,ニュースの入り口としての意味が大きいと考えられます。(中略)印刷物の役割は,詳細な情報を伝えるというよりは,ウェブの世界への魅力的な入り口を作ることになっていくでしょう。(p219)
 いくらストックしても,必要なときに引き出せなければ,宝の持ちぐされです。というよりは,単にゴミの山でしかありません。(p251)
 重要なのは,「ほぼ目的が達成でき,しかも簡単に実行できる仕組み」を考え出すことです。「完璧に機能するが,実行するのが面倒な仕組み」では意味がありません。(p252)
 既存の知識と問題意識のぶつかり合いでアイディアが生まれるのです。(中略)新しい情報に接したとき,それにどのような価値を認めるかは,それまで持っていた知識によります。(p272)
 一般に,文学作品は,原語でしかその価値がわかりません。詩はとくにそうです。(p273)

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